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日刊15位
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ファッ!?
趣味とはいえ評価されると嬉しいもんです。
今後もお願いします。
しかしFallout4が発表されずに2014も終わったなぁ。
「ハハハ!見なよ、昼空の月があんなに綺麗に見える、まるでボクの今の心境を語っているかのような実にいい昼だね、そうだろうロイズ?ほんのひとときの時間だったのに、まるでパティトの甘クリーム煮のように濃厚な時間だった・・・いや、濃厚だったからことひとときの時間に感じられたのかもしれないね!」
「せめて・・・仮眠くらいさせろよ・・・ああっ」
紡ぐ言葉をぷつりと切らし、そのままぱたりとベッドに倒れるロイズの顔は疲労一色だ。
一方カーテンを窓の隅に押しやると、その上機嫌のままガララ、と勢い良く窓を開き、窓枠に腰掛け外を眺めるテッサの顔はツヤツヤと喜色一色だった。
見てくれは極めて整った、しかし少女らしい丸みを帯びた顔は一面の笑顔で更に魅力を増し、かつては膝に至るまで伸ばしていた髪は先の逃亡時ティコにばっさりと半分にされてしまったもののそれがかえって快活そうな印象を見せ、現にキラキラと光を吸い輝くそれと、上から下までまとまりのあるプロポーションとの相乗効果は外を歩く警備兵や、近所のお父さんたちの目を吸い付け離さない。
その後ろに、彼女に朝まで付き合わされ口から魂を吐き出し天に昇ろうとする青年がいるとは知らずにだ。望まずとも罪作りな女、王道直進ムーンエルフのテッサリアは今日もぶれない。
「しかし君たちの故郷にそれほどまでに高度な文明が栄えているとは知らなかったよ、実家では本ばかり読んでいたボクだけど、やっぱり外の世界に出た甲斐があったというものさ!・・・次に飛び出す時はそこに行ってみたいものだね、良かったら今度簡単な地図を書いてくれないかな、なあ、ロイズ?」
「寝かせろ、もう夕方くらいまでは起きたくない・・・それに、オレらの故郷への道なんてオレらも知らねーよ・・・」
「おや、故郷への道を知らないとはまた面白い答えが返ってきた。良かったら、事情を伺ってもいいかな?」
暖かな、まだ先日の雨の湿気を含んだ風がなびき、窓枠に腰掛けるテッサの銀の髪を揺らす。
その風はロイズにも流れていき、それに気を引き戻されたのかロイズは半開きにしていた目を開いて、ベッドを横断した姿勢のままテッサの方を向くと彼女と目を合わせる。
青く澄む、可愛らしくくりりとした目は新たな知識を待ち望み輝いていて、風に揺れる髪は彼女の魅力を演出している。
一方、彼女が無防備にも体育座りをするせいで、彼女の月の光に照らされたように白い太股の間から覗く下着をロイズは直視してしまう。今着ているのは、悲しいかなエリスが女性的な事情で衣装ダンスに仕舞いっぱなしだった青が基調のノースリーブなワンピース風衣装であったが、下につけているのは彼女が元より着ていた、特別上等なシルクだ。
「見えてんぞ」
「減るものでもない」
恥じるでもなく悪びれるでもなく、目を輝かせてそのままの姿勢でロイズの話を待ち望むテッサ。
その堂々たる様にロイズは顔をほんのり赤くしたまま、しかしこれ以上注意する気をそがれ、こっちのエルフってのはみんなこんなもんなのかなぁ、だの、そりゃ長く生きてりゃそうなのかもなあ、だのと夢にちょっとした傷をつけられたようで軽くため息を吐き、くるりと寝返りをうち視界を変え、天井を向いてから口を開いた。
「道歩いてたらある日突然飛ばされて、コーラもコミックもない場所に放り出されたって。せっかく戦争が終わって外の世界を歩く許可も貰えたって矢先にこんなの、絶対に納得できねー、”外”を知り尽くすまでオレはこんなとこでくだばらねぇ」
「外の世界とはまた絶妙な表現だ、詩人だね。君の故郷は確かロスト・ヒルズ・バンカー・・・君から聞いた話では地上の脅威から逃れるために築かれた強固な地下城塞らしいけど、単に外だって言うならこの先の旅でも十分に目標達成できるんじゃないかい?まぁボクは君が知識欲たくましい人間だって分かって少しうれしい気分かな」
足を伸ばし、意識していなくても流石に徹夜の疲れは無視できなかったのか手をんーっ、と伸ばしながらテッサは言う。ロイズは彼女が足も伸ばしたのを横目にチラリと見ると、少し気落ちしたようなため息を吐き、テッサに向かい横になった。
それからテッサから目線を逸らし、どこか遠くへと向ける。
「故郷の外の世界だよ、こっちじゃない」
「それはまた複雑だね・・・そこに関してはおいおい聞かせてもらうとしようか。それより今はもっと気になるものがある、コーラ、コーラとは何だい?君が故郷に帰りたい理由のひとつになるほどなんだ、さぞ素晴らしいものなんだろう!?」
「絶対にやんねー!グールのバカが煮物に使って虎の子の三本しかねーんだよ!デビルエッグつまみながらコーラ飲む時間をこれ以上減らされてたまるか!」
「飲み物、飲み物なんだね!?一口、一口でいいんだ、君の幸せをボクと共有させてくれないかい!?」
「そんな言い方してもダメなもんはダメだっ!」
窓枠からぴょんと跳び、ロイズが寝っ転がり横断するベッドへと這いよるとテッサはロイズの上に四つん這いになりにじり寄ろうとする。
ロイズはその腕を引っ捕らえると、ぐぐぐ、と迫ってくるテッサを徹夜明けで足りない力の限りでなんとか押し返そうとするが、この細腕と華奢な身体のどこからそんな力が湧いてくるのか、仮にも鍛えているはずのスクライブとキラッキラな目のムーンエルフとの攻防は、一進一退になっていた。
「おらぁ!」
「わぶっ」
ロイズが身体をひねり、ベッドの上へとテッサを転がす。
テッサは大人用なのかやや大きめな柔らかベッドの上に投げられゴロゴロと転がると、ついにはフットボードに激突する、そして身体を弓なりに反り返らせひとしきり痛みに悶えた後、恨めしい目をロイズに向け身体を起こした。
「強情だねロイズ、だがボクは諦めない、なぜならそこに知識へ至る最短の道があるからだ。君が何度ボクをベッドから追いだそうとも何度だって立ち上がろう、さあ、分かったら早いとこ観念してコーラを・・・おや」
テッサがロイズへ再び飛びかかろうと身構えたところで、彼女はロイズが寝息を立てていることに気付く。ここ一番で身体を動かしたせいでどっと疲れが湧いてきたのだろうか、ものの数十秒も経たないうちに、顔にタオルケットをかぶせたロイズは夢の世界へ旅立っていた。
「・・・まあ、ここで起こすのも流石に残酷だろう、ボクも悪魔ではない・・・ふわぁ」
寝姿を見ているうちに、伝播したのかテッサもついあくびを漏らす。
彼女は肩を回し、思うように素早く身体が動かないことを感じ自分が想像以上に疲れていたと悟ると、自身も目をこすり、やがて横になる。
ベッドを横断するように寝転ぶロイズ、着ている戦前モデルの春服の裾からちらりと除く肌着越しの腹、そこに彼女は悪びれること無く頭を乗せ枕代わりにすると、目を閉じた。
全くの未知、そして素性の分からない二人の男――― ワクワクする。
実家に置いてある本は全て読んで、机上の知識として得られるものは全て知り尽くしたと思っていたボクだけど、まだこの世界は捨てたものじゃない。彼の言う『ウェイストランド』にはきっと、まだ知らない存在が無数にあるのだろう・・・あんなことになってしまったけど、彼に言わせれば”結果オーライ”というやつなのだろう、本当に、楽しみだ。
ああ、ちょうどいい固さで枕にいいな―――
頭にそれだけ過ぎらせると、すぐに彼女は意識を手放す。
春うららの暖かい風がそよぎ、窓から差す日光の下、二人は共に寝息を立て始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ぺらり、とページがひとつめくられる。
テーブルの上に開かれている一冊の本、丁寧な装丁をされつつも、幾度と無くページをめくられ続けてきたであろうことが分かるカバーのほつれや紙の汚れが目立つ、学校の教科書程度の厚みを持つ本。カバーに”新版世界史”と書かれているそれをめくる手は人間のそれとは一つ違い、皮膚を一度火に炙ったような、ボロボロの様相を呈している。
大理石の床の上には踏み込んだ一歩をほどよく反発する上等なカーペットが敷かれ、木造りの本棚が縦横無数に並ぶ。
アーチ状の天井にはこの世界における神々、星や月、生や死、豊穣といった要素にまつわる謂れを持つ存在を形とした絵が描かれ、ぶら下げられた照明の魔道具と合わさり神々しく下々の者を見下ろしていた。
サンストンブリッジ都立図書館。
魔道具を利用した効率的な紙の生産の実現、そして活版印刷が誕生したことにより発生した大規模な出版ブーム、それに伴う本の値下がりによって世界各地に誕生した図書館のひとつであり、ここ大陸デレクタでもとりわけ大きな場所となる。
容易に様々なジャンルの本にありつけるこの場所は主に貴族を筆頭に流行したが、今では料金さえ払えば平民でもその日に限り好きなだけ本を読むことが可能だ。
とはいえ貴族が主な顧客層だったことの名残と、無教養な人間が本を傷つけるのを避けるためある種のドレスコードが設定されており、本棚と本棚の間をしゃなりしゃなりと歩く人々は総じて身なりの良い、最低でも染みやほつれの無い春服を着ている。
だが、その中でたった一人、あまりにも他と離れた風貌を呈し――― 言い換えれば場違いな人間が一人、四隅の足に緻密なエッチングのされた上等な長テーブルに本を開き、フカフカなクッションの座を持つウィンザーチェアーに座っていた。
「やっぱ北東のパーミットか・・・時空の裂け目大発生ってのが気になるな。でも北の鉱山跡もなかなか・・・原因不明の病で閉鎖ってのが気になる、他にも―――」
「ダンナぁ、ちょっと休みましょうよ、アタシも読み上げるの疲れてきましたよー」
「あぁ悪いな嬢ちゃん、ここ読んだら休むからもうちょっと頼む」
ページを押さえながらこめかみをとんとんと癖で叩くティコは、自分の真横に椅子を持ってきていかにも疲れた、と言った様子でテーブルに突っ伏し短めの赤毛の頭をとんとんと叩くアルの頭を撫でる。
彼はいつものジーンズにカーボン製コンバットアーマー、その上にNCRのマークたる”双頭のベア”が刺繍されたトレンチコートの姿ではなく、私服として使っている、トップはカーキ色のミリタリーシャツに肩がけベルトでバッグを持ち、ボトムスには尾錠に牛を模したプレートの取り付けられた革ベルトを締めたチノパンといったカジュアルな出で立ちであった。
「ダンナぁ、ほんとにそれかぶんなきゃいけないんですかー?なんか余計目立ってる気がするんですけど・・・」
「俺も正直判断を誤ったんじゃないかと思ってきたが、今更、更にインパクトのある面見せるのも気が引けるからな・・・」
彼の周りには今なおそれなりに人がおり、目当ての本を探すために様々な場所を練り歩いている。
その彼らの視線はチラチラとティコを向いており、訝しむようなものもあれば物珍しげにしているものまで様々だ。
彼は奇特なことに、カジュアル服の上にヘルメットをかぶったままなのである。
最初ここのことを聞いた彼は、当初の自分たちの目的を思い出し情報収集をすべく赴こうと思ったのだが、ドレスコードのことを聞いた途端に萎縮してしまった。
ドレスコードがあるということは見た目を気にする者がいるということ。そうなると、顔をおろし金で摺り下ろしたような、グールである自分の顔で通るかはなかなかに難しくなってくる。
自分は文字が読めないため、代わりに見た目に似合わず読み書きができるアルを連れて行くことにはしたが、そこでこの問題に突き当たった。そこで苦肉の策として――― ヘルメットをかぶり、後の問題はエルヴェ騎士団支部長から頂いたありがたーい賞状の力に頼ることにしたのだ。
「あの若い団長さんの名前にこんな力があるなんざ思っちゃいなかった・・・まだ20後半だよな?」
「そうみたいですよー、アルレットさんと同い年らしいんで間違いないです」
「それであの肌のハリなのか・・・ヒューマンの若作りってのはなかなか効果的みたいだな、今度アルレットの姉ちゃんに秘訣を聞きに行くか、よう!アンチエイジング教えてくれよ!って」
「たぶん三枚おろしにでもされちゃうんじゃないですかね・・・てーかダンナ効くんですか・・・?」
静けさが支配する図書館の中に、ワハハと笑い声がこだまする。
しかし通りすがりに司書の一人がゴホン、とわざとらしく彼らの後ろで咳をすると彼ら二人もビクッとし、さすがに騒ぎ過ぎたか、と反省し、再び開かれた本に目を落とした。
読めないティコの代わりにアルが、迷惑にならない程度の小声で要点を読み上げるのだ。
「んーっで、北のバレライト鉱山跡で原因のわかんない奇病が発生したとかで、急に閉鎖することになっちゃったってことだそうです。バレライトって純度の高いのは凄い値段になるから閉めるまで一悶着あったらしいですよー、それまで10人以上が死んで、特に最後に入っていった調査隊は一人も帰ってこなかったそうで」
「鉱夫の宿命はどこでもそんなもんか・・・こっちでもB.O.Sの連中が金鉱脈を爆破したせいで路頭に迷った鉱夫が大勢いたらしいが、生き残ったあっちはあっちでどうなんだろうな」
「んで、生き残ったのも奇病の治療をしたけどじきに死んじゃったらしいですよ。特に最後は・・・うげっ、皮がバリバリに割れてドロドロに溶けて、骨もボロボロになってたそうで・・・こうはなりたくないなぁ・・・」
おえーっ、と舌を出し気持ち悪がるアル。
一方ティコは、その状況をありありと頭に浮かべ――― というより見覚えのあるものに重なるようで、顎に手を添えると、うーむ、と唸った。
「まるで放射線障害の末期症状みたいだが・・・仮にそうだとしたら、近づくだけでも相当危険ってことになるな」
「心当たりあるんですかダンナ?なんでも時折盗っ人がバレライト堀りに行って命からがら帰ってくるとかなんですけど、まだ治療法も分かってないらしいんで王都の治療術師会あたりに垂れ込めばたっぷりもてなしてもらえるかもしれませんよ?」
「いや、根本的原因は俺も分からんが、俺の思う通りならそこには絶対に近寄るべきじゃないってことだな・・・こうなるぜ」
ヘルメットを少しずらしその、二重の意味で”焼けただれた皮膚”をアルに見せてみるティコ。
アルはその仕草だけで重大さを理解できたのか、ブルっと身震いすると縮こまり、次に行きましょう、と本のページを進めた。
「―――で、次の目標候補のパーミットってこったな、今思う中じゃ最有力候補だ」
「まぁそーですねー、ダンナの目的が”時空の裂け目”のあれこれを調べながら北に進むってことなら、ここしかないでしょ」
「だよなぁ、もう一度読んでくれるか嬢ちゃん」
「終わったらリンガシャーベットおごってくださいよー?」
目を合わせ、やれやれ、といった身振りでティコが了解するのににんまりと笑顔を作ったあと、アルはテーブルに開かれた本、新板世界史の”パーミット”と記載された項を開き、隣には同名の項を開いた大陸の街案内に関する本を広げると、その小さな指先を文に這わせ、指が指す文字に従うように口を開いた。
「王歴420年、だから・・・」
「ざっと206年前ってとこか」
「計算早いですねダンナ。それで、行ったことないから実際どうか知らないんですけど、それまでは何の面白みもない無味乾燥な離れ村だったパーミットに時空の裂け目が大量発生・・・異界の魔獣が何匹も穴を通ってきたとかで、大騒ぎになったらしいですよ」
「そりゃ気の毒だが、俺らにとっちゃ喜べる情報だな」
「あ、これ見て下さいよ、”大王サソリ”ってアレのことじゃないですか?ダンナがこのまえ叩きのめした青いやつ!」
きゃっきゃとなんだか嬉しそうにするアルが指差す挿絵に、ティコも目を移す。
挿絵は活版印刷の宿命か、彼が窓辺で読んでいたパブリス・コミック社のコミックや銃器雑誌に比べ非常に荒い印刷であったが、大きく鋭いハサミ、反り返る毒針、そして八本の足――― 目の数が違かったり多少脚色されたパーツもあったが、紛れも無く先日仕留めたサソリのミュータント生物、ジャイアント・ラッドスコルピオンの佇みが描かれていた。
「こいつは脱皮を繰り返して成長する生き物だからな・・・横に書かれてる人と比較すると、間違いなくジャイアント・ラッドスコルピオンか、しかしこいつみたいなのが何匹も出てきて生き残った奴がいたってのか?自慢するつもりじゃないが、俺程の男が重装備したところで、二、三匹が同時に相手するならいいところだぜ」
「うーん、そうなんですがねー」
すすす、と指を動かし、別の文に指を這わせるアル。
ティコも赤いアイピース越しにそれを追った。
「なんと犠牲者はほとんど出なかったそうなんですよ、なんでも異界から飛び出してきたのはそれだけじゃなくて・・・異界の建物とか、異界のカラクリ魔導人形まで飛び出してきたそうで、飛び出してきた頑丈な建物に住民は避難して、異界の魔獣は魔導人形が全部仕留めちゃったそうです。悪いことばかりじゃないですねー」
「魔導人形・・・」
ティコの頭にいくつかの影が過ぎる。
異界、ウェイストランドには古今東西150年を生きた彼でもまだ未知のものが数多く存在するが、カラクリ人形、として思い当たるものはたった一つ、世界戦争が起こる以前に多数生産され、主を失ってもなおメンテナンスウィッグで延命を続け、200年以上の時を動き続ける工学と科学の権化。
ロブコ、レプコン、ゼネラル・アトミクス、旧アメリカ合衆国が誇る、天才たちを擁する企業が開発した、自分で考え、しかし命令には忠実で、時により牙を剥く、自律してタスクを完了できる鋼の人形、ロボットである。
「ジャイアント・ラッドスコルピオンを仕留めるったら・・・ガッツィー、いやセントリーボット・・・大穴でセキュリトロンってこともあるな・・・」
かつての開発競争時代、多くのロボットが世に排出された。
メディア配信のためにブラウン管やスピーカーを取り付けられた浮遊型ロボット、キュートな丸いデザインが目を引く、今では専ら権力者のプロパガンダや暇人のアマチュア無線放送に使われるのがせいぜいな”アイボット”。
家庭用ハウスキーピングロボットとして開発され、戦前においては多くの家庭で人間が携わっていた食事、洗濯、その他の雑多な家事を全て引き受け、人間の生活に多大なゆとりを与えた三つ足のロボット”Mr.ハンディ”とその戦闘用モデル”Mr.ガッツィー”。
非常に鈍足だが強固な装甲と遠距離火力を備える、戦前警備員の職を奪った”セントリーボット”から、ローラーダッシュによる高い走破性、暴徒鎮圧から軍事的な運用まで可能な高い汎用性を持ち、最近では独立を宣言した旧ラスベガス、ニューベガスを拠点に観光客へのサービスに使われている”セキュリトロン”。
他にも上げればキリがないが、ウェイストランドにはそういった数多くのロボット達が、皮肉にも強靭な装甲や高度な修復システムにより主亡き戦後を動き続けており、時に人に対して無害なときもあれば『職務』として人に仇なすこともある。
ウェイストランド人にとってとても密接な隣人であり、同時に命をおびやかす異邦人でもある、それがこの時代におけるロボットの常識であった。
「ともあれ、それだけ挙げられりゃここに行くのは確定だな、テッサの嬢ちゃんの故郷への進路上にあるし丁度いい」
「まだ当時の異界の建物とか物は残ってるらしいですよー、それを求めたり研究したりするために色んな人が集まって、お金が流れてまた人が集まって、今ではそこそこ大きな街になってるそうですねー、一度行ってみたいなぁ」
「片道だけならいいが、嬢ちゃんみたいなのが一人で帰るなんてもってのほかだぜ、もう少し大きくなって、頼れる仲間を作ってからにしときな」
「そんなぁ、じゃあダンナがお嫁に貰ってくださいよぉ、一石二鳥でしょー」
ねー、とシャツ越しに腕に頭を押し付けるアルに、もう少し大人になったら考えてもいいぞ、と答えてティコは笑う。するとアルもにんまりと笑い、しばらく笑い声がこだました。
「・・・ゴホン!」
「あっ、すまんね、もう出てくから・・・」
そんなことをしているものだから、また後ろを通った司書がわざとらしく咳をする。
それにはっとし振り向いた二人は周りを一瞥し、投げかけられる視線が更に増えたことを察すると冷や汗を垂らし、愛想笑いを浮かべながら本をぱたりと閉じた。
「さて嬢ちゃん、じゃあ今日は終わりにしようや」
「リンガシャーベット、食べてもいいんですよね?」
「おうよ、今日の俺は太っ腹だからダブルでいいぞ、二倍でも二種類でも好きに食え嬢ちゃん」
「やたっ」
ぐっ、とガッツポーズを取るアルを見て微笑み、硬くなった腰をほぐしながらよっこらと立ち上がると、彼女に手を差し出す。
見下ろす赤い目を見返し、アルはその手を握ると彼の腕に引っ付く。
「じゃあ、こいつは頼んだ」
「ええどうも・・・今度は静かにお願いします」
「また世話になる時は善処するさ」
後ろにいた司書に本を渡すと、二人は受ける視線を意に介さぬままに図書館を出る。
外に出て、少しヘルメットの隙間に風を入れた時、ティコは一つ肩の荷が降りた気がした。
技術が発達してないからソーダファウンテンはないけど、氷魔法のおかげでアイスクリームパーラーが出来ているようなちょっと滑稽な世界観です。育ち盛りのロイズ君が炭酸水の魅力に勝てるわけがないので、深刻なコーラ不足によりロイズ君のストレスマッハが期待されます。
アイボットは可愛いんですけど、初代のフライングアイボットは物凄嫌な外見してるんですよね・・・攻撃回数多くて苦戦した記憶が。