トレンチコートと白銀鎧   作:キョウさん。

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14170字。
激戦回。


第三章:呪われたグラディエーター 20話『呪われたグラディエーター』

 

 

 

 長い廊下を歩き、いざ戦いの場へ。

 心構えはそんな風で、彼らは”三人”、されど唯一欠ける男の帰還を信頼し血潮滾る舞台まで、最後まで待とうと心に決め歩んでいた。

 

 

「・・・フラティウさん、来なかったね」

「まだわからないじゃない、行ったらいるかもよ?あの筆跡はフラティウ様のものだもの、きっと来るわ、信じてなさい!」

 

 不安げに漏らすバラッドの背中をばんっと叩くシェスカ、身長差からそれは腰元を叩く形になってしまい、バラッドは存外の痛さに苦い顔をしながらしかし、この少女にはかなわないと腰をさする。

 

 そうしていると、やがて光指すゲート、彼ら”上位者”を指す赤色枠のそれが見えてきて、彼らはくぐると開いていた瞳孔に入ってくるまぶしい光に少しめまいを起こしながら、浴びせかけられる歓声を一身に受けるのだ。

 

 

 だがそれよりも―――

 

「フラティウ様!?」

 

 最初に走りだしたのは他ならぬシェスカで、赤髪を靡かせ三角帽を揺らしながら舞台上に駆け寄る。膝丈の舞台を上がり、舞台上へ走って行く。そこには一人の男、フラティウが座った姿勢のまま目をつむっていた。

 

 シェスカが彼を背中から抱きしめるが、反応はない。

 それにシェスカは不思議がるが、耳元をよく近づけてみればそれはフラティウが規則正しい寝息を立てている、眠っているからにほかならないということが理解できた。

 

「フラティウ様ったら、一日中鍛錬でもしてたのかしら?起きて?試合の時間よ?」

「おっさん、心配かけやがって・・・一人で闘ってもらうのも悪くねーかも・・・冗談だよ、睨むなよ」

「でも良かった、これで試合が出来るね」

 

 ほっと一息つくバラッドと、意地悪じみた笑みを向けるロイズ。

 パワーアーマーの調子は万全であり、両手に持った一対のフィストと合わせ彼もまた、戦闘に臨む覚悟で闘争心に火が付きかかっていた。司会がゴングを鳴らせば彼は今にでも飛び出し、敵に向かってパンチを叩き込むであろう。

 

「まあ、最悪の場合グールの奴連れてくるってのもあったんだけどよ」

 

 彼は相棒と再び並び立つ可能性を示唆し、しかしその必要が無かったことに安堵する。

 そうしていると、背後のやや上、座席からはまた彼の相棒、そしてその連れのにぎやかな応援が投げかけられた。

 

「相棒!・・・なんだ大男は寝てるのか?じゃあ代わりに後で言っておいてくれや!相棒待たせた分今夜はたっぷり奢ってもらうぞってな!バラッド、相棒!俺らが潰れたら頼むぜ!」

「任せて下さいよティコさん!僕らで最高の勝利を持ち帰ります!」

「パーティーの準備なら今からしといたほうがいいんじゃねーかグール!見なくても勝つぜオレらっ!」

 

「街の人達がもう準備してるって話だよ!今日はいつもの酒場がサービスしてくれるって話さ!勝ってきてよロイズ!ボクも応援してる!」

「ふぁいとー!」

 

 やかましく、しかし確実に着火剤とも燃料ともなるその声援に手を振り返す。

 ふと目を別のところに向けてみれば、反対側だろうか、見知った顔が別にあった。

 

「ゼノ!そっちオレじゃねーぞ!」

「ごめーん間違えちゃったの!」

 

 手を大きく振って応えるゼノに、ロイズも手を振る。

 勝利を願う彼女にサムズアップで返すと、ロイズはがんがんと、拳を打ち鳴らした。

 

 その頃合い、実に見計らったかのようなタイミングであっただろうか、対戦相手も青いゲートをくぐって会場に姿を表す。身の丈巨大、猫背でなければ3m近い身長は更に彼を大きく見せたであろう、巨漢の亞人、虎の性質を持つ”超獣”ウグスト・ラゴンを筆頭とし、彼の信頼する弟子によって構成された、未来を担う人間を養成することも兼ねたチーム、”豪腕ペンドラゴン”の面々であった。

 

「ウグストのおっさんか、今日は正々堂々ッ、ぶつかり合おうぜ」

「おお、ロイズであるか・・・そうであるな、”正々堂々”だ、そのために某も骨を折ったのだから」

「あ・・・?何のこった」

 

 肩を回しながら、いかにも苦労したと言わんばかりのウグストの姿に、ロイズは何か知らないかと彼の側に立つ弟子たちに目線を送る。だが彼らも何も知らないと、首を横に振りロイズも首を傾げるのみであった。

 

 そんな彼らを手で制し、ウグストは前に出るとロイズを見下ろす。

 これから闘うとはいえ、この身長差、体格差の相手と殴りあうというのはいくらパワーアーマーを身に纏っているとはいえど、背筋に走る寒気を感じずにはロイズもいられなかった。

 

 ロイズが気丈にも目線を睨み返していると、ウグストはゆっくりと、しかし真剣に話し始めた。

 

「―――今までの君たちは、実に不正であった、そう思う」

「んだぁ?」

「魔道具を全身にまとい、その出所は分からず・・・どこのものか分からぬ呪い品で肉体をごまかし、それに”ガイウス”だ、一級の貴族が相手で本気を出し挫ける者がそうそういると思うか・・・?実に不正だ、身分を盾に相手に不安を囁き勝利をもぎとる、実に」

「・・・なあに急に?ウグスト、アンタ今日ちょっとおかしいんじゃない?」

「ウグストさん、僕ら別にそんなわけじゃあ・・・」

 

 突拍子もない、思い当たるフシもない、ゴシップ誌が載せるような出所不明のウワサ話だ。

 しかしこれには仲間意識が元来強く、共に戦った彼らの努力をバカにされたような気がしてならずロイズはウグストを睨む。

 

「おいウグストのおっさん、どこの誰に吹き込まれたか知らねーがよ・・・いい加減」

「・・・それに、君たちの時ばかり”面白いこと”が起こるようだな?何故だ?あれから君たちの人気は更にうなぎのぼりだ・・・一体どれだけの金を積んだ?コネを使った?怪我人もいた、どれだけの人間に迷惑をかけ、そして―――」

「おいっ!!」

 

 ロイズが一喝、ウグストは出端を挫かれたのか興が削がれたのか、押し黙る。

 それから彼は空に目を向け、曇り空が雨の不安を誘う昼空をひとしきり見つめたあと――― ようやく口を開いた。

 

「・・・そうであるな、試合を、しよう」

「それでいいんだよ・・・後で誰に吹き込まれたか教えろよ、きちんと証明しに行ってやる」

「誰に、吹きこまれたか、か」

 

 ふふ、と口元を笑みに変えるウグスト。

 ロイズ達はそれに怪訝な顔をしながらも、舞台上に並ぶ。

 

 だがフラティウは目覚めない、座ったまま寝て、そのままなのだ。

 

『・・・試合を始めたいのですが、フラティウさんはまだ?』

「心配ご無用、すぐにでも起こそう、この手の者を起こすツボを知っていてな・・・試合を始めてくれ、最後の試合に盛り上げなど不要――― 闘うだけで十分に盛り上がるさ」

 

『はあ、なら・・・』

 

 司会が催促するのを目で黙らせ、ウグストは試合開始を促す。

 仮にも彼はNo.2だ、その言葉を信頼したのか司会は手を上げ――― ウグストも、片手を上げる。

 

 指と指を合わせた、そう、指パッチンであった。

 

「起きるが良い、フラティウ・・・”黒の剣士”よ」

 

 指が鳴らされ、同時、フラティウの目が開くと同時に立ち上がり、周りを見渡す。

 それに司会も開始の合図を送り、シェスカはフラティウに寄ってその目と目を合わせた。

 

 

 ―――だがその目は―――

 

「ねえフラティウ様、ちょっと充血しすぎなんじゃ―――」

 

 

 少女が一歩後ずさる、途端―――

 

「おおっ・・・オオォォォッ!!」

 

 地の底から昇るような咆哮、刹那、呪い剣を引き抜いたフラティウはその剣を”周囲を薙ぐように”大きく回す。その座標には当然シェスカが無防備に立っていて、逃げる隙もない。やがて剣圧の風が止んだその場所には、

 

シェスカの三角帽が、まっぷたつになって空を舞っていた。

 

「っだぁぶねぇ!?」

「童顔!?あ、ありがと!」

 

 剣が首を横薙ぎに跳ね飛ばす直前にロイズは、V.A.T.Sによる高速化でシェスカの身体へタックルをかますと、自身の装甲で剣を弾き跳んでいた。

 

 当然痛みにシェスカは肩を押さえるが、それでも切断される痛みなどよりよっぽどマシと言っていい、これには普段彼につんけんしているシェスカも素直に礼を述べしかし、今なお信じられないといった顔をする。

 

 そしてその目を彼の持つベルセルク、彫刻が赤く染まった”呪い剣”に向けて言うのだ。

 

「そんな、ベルセルクは一日血を吸わせないとこうなるけど、けど・・・!フラティウ様、一度もそんなヘマしたことないわよ!?どうして、なんで!?」

「どうしたもこうもねーっ!一旦下がれよ胸ペタ!バラッド、試合始まった!こいつに魔法使わせろ、お前はこいつ守れッ!来るぞっ!」

「わ、分かったロイズ!・・・危ない!」

 

 後ろを向いてシェスカとバラッドを背に距離を取る立ち位置を取り、自分を盾にその最大の能力を行使することを要求するロイズ。しかし後ろを振り向いている間にバラッドのとっさの叫びを聞き届け、彼もまたとっさに前を向くと同時、腕を交差させて迫り来る”ハンマー”を受け止めた。

 

「っでぇああぁっ!?」

「ははは!流石頑丈であるなロイズ!いや白銀闘士!」

「ウグストのおっさん――― てめぇっ、何やらかしやがったぁっ!?」

「何も?ただ”公正”にしただけであるさ!下がっていろお前達!・・・君の後ろの木っ端もこの乱戦では魔法など使えまい!一と一と一!実に公正であるなぁ!」

「ふざけろぉ!」

 

 ウグストは弟子たちを下がらせ、シェスカもバラッドもロイズとフラティウが同時に存在する状況で魔法も弓も手を出せない。

 ロイズとウグストは互いの言葉をぶつけあい、そして決裂したところで、二人の間に割って入った存在に互いにバックステップで距離を取ると睨み合う視線を外して再び襲い来る巨剣をロイズは受け止める。

 

 ウグストはというとその後ろでただ、じっと目を血走らせ、心既に無くといった狂相でひたすらにロイズのパワーアーマーに剣を叩きつけ続けるフラティウの姿をずっと、”満足気”といった顔で見続けるだけであった。

 

「フラティウのおっさん戻れ!元に戻れよッ!敵は向こうだろうが・・・!」

「おぉ、オォォォッ!!」

「くっそぉ!後で謝る!」

 

 何度叫ぼうとフラティウはその状況から戻らない。

 ならばとロイズは今は許せと、右手のフィストをフラティウの土手っ腹に叩き込んだ、普段の彼のような繊細で緻密な、見惚れるような剣技とは程遠い”振り回し”は隙が大きく、容易にその懐に潜り込めたのだ。

 

 サタナイトフィストの一撃がフラティウの鎧越しに鈍く、凄まじい衝撃を与え、同時に跳ね飛ばすと彼は舞台外に飛んで行く。

 パンチはまともに入って、恐らくロイズの見立てでは骨の二本はヒビを入れたと自負しただろう、だがフラティウは舞台外に排出された瞬間―――

 

「剣を突き立ててぇ!?」

 

 フラティウは舞台外の地面に剣を突き立てると、そのまま剣を蹴って舞台内にさも当然のように戻ってくる。呪い剣は彼が剣を構えようと手を動かすとそれに従って飛来し、すっぽりとおさまると同時、再びロイズを襲うのだ。

 

 ウグストはただその様子を、離れたところから楽しげに見ているだけだ。

 ―――だが、その目は”愉悦”や”復讐心”のような濁った色をしていない、まさしく今の彼の眼の色はそんなものではなく、正しく公正な戦いを楽しむような、自身の正しさを信じて疑わないような――― そんな。

 

 

 こうなると、ロイズもガチンコだ。

 何が何でも止めてやると、巨剣を振りかぶるフラティウに対しノーガードの殴り合いを決行する。

 

 巨剣が振り下ろされ、装甲を打つ、衝撃は大して通らないが、音や慣性はそのまんま通るのだ、その痛みや不快感に振り回されながらロイズは右手のサタナイトフィスト、左手の強化パワーフィスト、剣撃の隙を縫って細かなジャブを叩き込み狂化したフラティウをよろけさせ、着実なダメージを与えていく。

 

 だがそれでも、ロイズは違和感を感じずにはいられなかった。

 それは自身の身体というわけでもなく、むしろ相手の、

 

「・・・さっぱり動きが鈍る気配がしねェ・・・!」

 

 確実に殴り、機械拳の打撃はフラティウの鎧越しに確かな衝撃と、それに伴うダメージをねじ込んでいるはずであった。

 だが襲い来る衝撃を受け止め、それを幾度と無く続けてもフラティウの動きそのものにまるで”衰え”というものが感じられない。だが感じるものはある、それはまさに、無敵などではなくただ、無茶苦茶に突っ張ったやせ我慢というような―――

 

「痛みを感じない、ってのはまずある、それ以上に多分・・・」

 

 剣が身体と同調している、動かしている。

 

 この世界には”マナ”という摩訶不思議物質が大気中をうろついているだけに、信じられる話ではあった。ロイズの着ているパワーアーマーのように、そのマナというものがパワーフレームの役割を果たし肉体のダメージを無視して身体を動かすのだろう。

 

 科学を崇拝するB.O.S、その研究職スクライブたる彼としてはこんな非現実的な要素の極致に現実味を持たせるのはたまらなかったし、様々な嫌気が差してくる気分にもなったが今は信じるしか無いと、一旦彼と距離を離す。

 

 その途端、フラティウの身体は一時的に活動を止め、肩で息をし始めた。

 疲労は確実に溜まっているらしいが、だが身体に無茶をさせても動き続けるこの狂った大男を止めるのは生半可ではないだろう。

 

 それに―――

 

「ウグストのおっさんまで加わったら、捌ける気がしねぇ・・・」

 

 注意を片手落ちに収めておくのには辛い状況だ。

 せめて片方に意識を集中できたらと、分断を出来たらいいとロイズが思う、その瞬間―――

 

 

「ファイア、ウォールっ!」

 

 少女の声が、響く。

 途端に現れるのは炎の壁だ、その向こうが見えないまでの、極厚の炎壁は向かい合うロイズとフラティウ、それとウグストを隔て分ける、シェスカのことが既に目に入っていなかったのだろう、思い出したといった感じで意表を突かれたと言わん顔をするウグストは、炎壁に近寄るとその熱の凄まじさに、突破を諦める。

 

「胸ペタ、ナイスっ!」

「いいから戦って!フラティウ様だけでも止めないと無理よ!フラティウ様に、自分の知らない敗北なんて味あわせたくないの!あたしのマナが切れる前になんとか呪い剣を止めて――― ロイズ!」

「任せろよシェスカっ!・・・武器が心許ないなんてどうでもいい・・・!やるだけやってやらあ!」

 

 ロイズはシェスカに向くと、サムズアップを送って賞賛する。

 だがシェスカがそんなことはいいと、ただ今は戦ってくれと懇願するとロイズはフラティウに、再び剣を構え突撃の姿勢をとるフラティウに向き直り、拳を構える。

 

 

 いつもの、彼が最も得意とするボクシングスタイルだ。

 

 だが今日の彼は回避には一切の余裕を持たせないつもりでいた、彼がとった構えは、普段の彼のとる攻守両面をカバーする”ボクサー・ファイター型”とは違う、接近し連打をもって相手をノックダウンまで持ち込むための超攻撃的な、インファイトボクシングのスタイル。

 パワーアーマーの防御力をいいことに、”擬似パワーアーマー”との力比べと洒落込む心意気だった。

 

「もしその”剣”がおっさんの心を奪ってるって言うならよ・・・そいつをぶっ壊してやら、来いよ”呪い剣”、ぶん殴って、叩き折って、ポイしてやる、200年誰も来ないジャンクヤードで寂しく錆んだ・・・だから―――」

 

 がんっ、と拳を叩き、前に出る、フラティウが身を屈め跳んだのも、同じだった。

 地を蹴り走る彼は、黒き剣士と対峙する。

 

 アイスリットの裏側で、彼は確かに燃える瞳を持っていた。

 

「―――遠慮なんかすんなよッ!」

 

 

 

 

 観客席では、ざわめきが場を支配している。

 

 闘技場No.1のチームがその最終戦で仲間割れを起こし、血みどろの斬り合いを起こしているのだ。悲鳴と怒号、突如仲間を裏切った黒い剣士の八百長を指摘する声が飛び交い、その最中にあってティコは耳をふさいでいた。

 

「ああクソッ、やかましい!しかしどうしたあの大男!相棒に晩酌のヤムヤムでも盗まれたか!?」

「冗談言ってる場合じゃないですよダンナ!すぐに助けに・・・」

「駄目だよアルベルト、ミスリルゴーレムやあのスキンヘッドの時とは違って司会が止めてない、”ルール上問題ない”ってことになるんだ」

 

 テッサは指先を舞台の傍ら、審判を兼ねる司会へと向ける。

 彼は唐突な事態に判断が進退窮まるのだろう、色々と思考している様子であったがしかし、しばしそれが続いたあと、手に持った中断用の旗を上げる直前にゆっくりと下ろした。

 

 それに試合が”ルール上に則った正式な戦い”であることが公式に決まったことを見せつけられたアルは、ならどうすればいいのかとテッサにティコをまたいで詰め寄った。

  

 ティコも彼女に向くと、その知識を頼る。

 

「そもそもテッサ、あの大男は一体何がどうしたってんだ?士気の低いNCRの兵隊でもあるまいし、金で動いて味方をおおっぴらに売るようには見えん、何だ、例の”ハイイロ”って奴の仕業ってか?」

 

 頭の上でくるくると指を回してから、手のひらをひらひらとさせる彼は表現が豊かだ。

 テッサはその言葉に眉を寄せると、目を細めて舞台を見る。

 

 視線の先は今の暴れ、斬撃をロイズに叩き、自身もまた主に手をメインに狙われているフラティウであった。

 

「その可能性は高いと思う、でもなんだろう・・・また変な魔道具を使ったんじゃないんじゃないかな、彼のマナは今、とても荒れ狂っている・・・彼が手に持つ剣からありえないほどの量のマナが彼に流れている」

「ってーと?」

「呪い剣の暴走、その影響が彼を狂化させているんだろう、つまり―――」

 

 テッサが言い終えようとする、その時に、テッサは隣に座っていた人物が立ち上がったのを感じ言葉を詰まらせる。

 テッサの隣のティコは立ち上がると、見えない、見えない、とやかましい後ろの観客に手のひらを立てて謝り、それから自らの側にあった一つの大袋を背負う。見た目からしてパンパンの袋は重量も相当であり、ティコでも持つのに一苦労だった。

 

「・・・殴り込みはルール違反として無効試合にされちゃうけど、いいのかな?」

「分かってるさ、参加しなけりゃいいんだろ?俺らの故郷には”セコンド”って役割があってな、ちょっとばかしデカいマウスピースを送るくらい許してくれるさ・・・許してもらわなきゃならねぇ」

 

 普段よりも真剣で、それを表す低い声で。

 ティコはなら何も言わない、と席に座ってまた戦いに目を向けるテッサに場を任せ、彼女の隣に自分も行くと立ち上がったアルを座らせると、頭をなで手で制し、静かに待つことを決めた彼女にウィンクで応えまた大袋を持って座席から離れる。

 

 そして階段まで到達した彼は、首を回して調子を整えるとなんとなしに、独り言を呟くのだ。

 

「ってーこた、全力で奴さん倒すしかないってこったか・・・しかも俺は手を出せないと来た、なら」

 

 背負った袋をがっちりと背中に密着させ、彼は走りだす。

 階段を一気に駆け下り、貴賓席の手すりに足を掛けると警備兵が止めるよりもずっと早く、彼は”跳ぶ”。

 

 カーキの外套に黒兜、その姿はつい前を思えばこの闘技場に大混乱を起こした者達を、白銀闘士と共に制した男が大袋を持って会場に乱入する、その姿を目で追う人々はどっと湧き、今度は何をやらかしてくれるのかと、期待の目で彼を追うのだ、彼を止める警備兵などもはや、いなかった、止められたのだ。

 

 

「―――相棒に全部任せるかっ!」

 

 レンジャー・ティコが持つのはピストルの一丁、力不足は極まりない。

 だが彼を見る期待の目は、彼の背に幾度と無く突き刺さった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 打ち込まれる一閃を肩部装甲で受け止め、その衝撃に歯を食いしばりながらカウンターパンチを叩き込む。

 されどフラティウは正しく化け物じみた反射神経をもって、頭部に投げかけられたその一撃を回避し、更にその勢いをもって一回転、ロイズの身体を横薙ぎにしようとした。

 

「ないってぇー!?」

 

 ロイズはやや屈んでその一撃を”胸で受け止めた”。

 T-51bパワーアーマーの上体と下体の中間にはやや装甲の薄い、チェインメイルと特殊ゴム素材の複合装甲が張られているがそれは装甲板よりもずっと薄く、衝撃はダイレクトに伝わる。これはいかんとロイズは、そこへの直撃を避け胸で受け結果、大きく転倒するのだ。

 

 そこに更に迫る剣撃は容赦なく、騎士道武士道、あらゆる道義をぶち壊さんとばかり。

 ロイズはその剣を白刃取りの要領で勢いを殺し、胸部装甲でなんとか受け止めると一転、更に剣を押し付けようとするフラティウを蹴っ飛ばし、パワーアーマーの馬鹿力で大きく引き離すと起き上がった。

 

 

「やられてばっかじゃあ・・・!」

 

 戦いの先の見え無さにロイズは切り札を発動する。

 

 V.A.T.S、その高速化は彼の認識力をまさしく、目の前の”黒い剣士”の一挙一動が目で追えるほどゆっくりと動くレベルにまで引き上げる。刹那、精神力、身体限界を示すAPが減っていくのを感じながら彼は飛び出し、返すフラティウの巨剣をタッチの差で交わすとその懐に潜りこみ、その肩をひっつかんだ。

 

「これで安らかに死んでくれよ・・・ッ!」

 

 肩を押さえたまま、ロイズは右手を振りかぶり――― その胸元へと叩きつける。

 

 ボクシングなら反則負けで、喧嘩なら相手を殺す勢いだ、現にロイズはフラティウを一旦殺し、蘇生させ意識を喪失させることを目的としてこの、過激とも言えるパンチの連打を彼の鎧越しに叩き込んだ。

 

 

 サタナイトフィストのプレスが心臓マッサージのように、何度も胸を打つ。

 常人なら死んでいるだろうし、それはフラティウであってもだろう、度重なる打撃に体の動きが止まり、食らうがままになったフラティウに十発以上の拳を叩き込んだあと、ロイズはその胸元を掌底で大きく打ち跳ね飛ばした。

 

 されど、されど狂化とは、呪い剣とは恐ろしいものか、跳ね飛ばされたフラティウはハンドスプリングの要領で地面を腕でジャンプすると一回転、再び立ち上がる。

 その様子にはロイズも流石に目を丸くし、フラティウの血走った目がなおも彼を見据えて離さないことにはさしもの彼も青筋を立て一歩後ずさった。

 

「ウッソだろお前・・・」

「オォォォ・・・!」

 

 叫び声は、もはや唸り声だ、野生の狼のごとく様相が、彼には似合っている。

 

 彼の口元からは血が流れているから、胸の中は、骨は、内蔵は既にボロボロであろう。しかしなおも身体が動くのはひとえにその”呪い剣”のせいであろうと、彼に狙うターゲットを変更する判断を与えるには十分だった。

 

 ウグスト・ラゴンは今炎壁の向こうで手が出せない、バラッドでは相手にならず、シェスカは魔法の維持に精一杯だ。正確な一対一、今しか彼を救う――― 呪い剣を仕留めるチャンスはないと、ロイズはそう考えまた拳を握る。

 

 ―――その時だった。

 

「危ない!」

「っえっ――― いつっ!」

 

 飛来したナイフ、炎壁の隙間の縫って投げられたそれは投げられた四本のうち、二本を炎壁に通すと、残る一本をバラッドの反射神経に受け止められ、彼の手のひらを切り裂いてようやく止まる。

 

 だが残る一本は―――

 

 

「ッ!炎の壁が消えやがった・・・!ウグストォッ!」

 

 シェスカの肩口に突き刺さり、彼女のマナが乱れると同時に炎壁が消え去る。

 元々シェスカは後衛で、なまじ前衛が優秀なため怪我とは無縁であった。

 

 ゆえに怪我にはあまり慣れておらず、肩口を切り裂かれた彼女は思うように魔法を行使できなくなる。

 

 結果、ゆらりと、残熱が起こす陽炎の中から現れる影。

 ロイズは振り向き、それを目に入れると舌打ちをもって応えた。

 

「予備というものは持っておくべきだな!ははは!ロイズよ、楽しそうではないか?某も混ぜていただきたい」

「あっち行ってパンツ脱いで待ってろ!蹴り飛ばしてやる!」

「はははっ!君は冗談が上手いなぁ!それ、いざ参ろう!」

 

 走りだす”超獣”ウグスト・ラゴン。

 だがそれだけとは思うまい、既にロイズに痛めつけられ、ロイズを再優先破壊目標としたフラティウも彼めがけて殺到する。

 

 振り下ろされ戦槌、ハンマー、その一撃を避けたかと思えば次には剣が飛んできており、装甲を打ち鳴らされる。それを終えたと思えばバランスを崩したところにハンマーの一撃が到来し、彼は腕を組み衝撃を殺す。

 

 だがハンマーと、ウグスト・ラゴンの体格から来る力は尋常ではない。

 彼はパワーフレームが悲鳴を上げ、パワーアーマー自体の性能低下が引き起こされる感覚を、肌で感じていた。

 

「そらそらそら!どうしたロイズ!ミスリルゴーレムを仕留めた時のような華麗な動きはどうした!?」

「オォォォォ!!」

 

 二重の打撃が避けても、受けても、幾度と無く殺到しきりがない。

 カウンターパンチを叩き込む隙など無く、パワーアーマーの装甲のおかげで生き延びてはいたが、これが並の鎧であったならあっとういうまに五体を分離され内蔵を潰され、頭骨を砕かれていただろう。

 

 

 そんな最中だっただろうか、ロイズは脳裏にひとつの疑問が浮かび、それを呟く。

 ウグストの手が止まったところでフラティウをカウンターパンチで大きく飛ばし、しかしまた到来するまでの間の、ちょっとした質問だった、ウグストの言葉に、引っかかる点が見つかったのだ。

 

「なあ、ウグストのおっさん・・・ミスリルゴーレムって言ってたよな」

「いかにも、それがどうした?聞くが良い」

「ああ、ちょっとした、ちょっとした疑問なんだよ・・・なあ」

 

 アイスリットの下で彼を睨みつけ、彼はふと思ったことと、現実のとの剥離を願う。

 ほんのちょっとの、小さな疑問。口に出して確認するのは今。

 

 

「―――見てたんなら、なんで何もしなかった・・・!」

 

「ああ、そんなもの」

 

 ウグストはにっと笑うと、彼を見下ろし答えた。

 

「君達の敗北する姿を一度、目にしたいと思ってしまったからかな・・・悔しいのだよ、某もな」

「この野郎ッ!」

 

 感情の勢いのままに叩き込んだジョルトブローは容易にかわされ、刺し込まれるように食らったウグストのハンマーに胸を打ち鳴らされロイズはごろごろと、舞台の端にまで到達する。

 

 大の字に寝転び、頭は慣性のままに揺らされ少し呆然気味だ。

 彼はパワーアーマーのモーターの音からその能力が、全力から離れていっていることを察する。

 

「・・・性能低下、現在92%ってトコか・・・」

 

 たった8%されど8%だった。

 予備パーツが不足しているために中々痛い、これも死ねば戻るのだろうか、と彼はつい思ってしまう。

 

「クソッ、このままみすみす・・・」

 

 されど、打開策は見当たらない。

 そして見上げた空は曇りが指していて―――

 

 

「―――よう相棒、もうダウンかい?」

 

 夜が訪れ、最中に真っ赤な太陽が見えた。

 

「うわぁ!?」

「うおぁっ、っつー・・・ヘルメット被ってなかったら俺がダウンするとこだったな・・・くわばらくわばら、よう相棒、ずいぶんボロボロだが一人で大丈夫か?」

「・・・どっちみちお前参加できねーだろ、っくそ、何で来たんだよ、冷やかしなら帰っていいんだぜ?しっしっ」

 

 手でしっしと追い返そうとするロイズだが、声色が笑っているからティコはつい、くすっと笑う。それからティコは手に持った大袋をがばっと開くのだ。ロイズもそれが気になって、つい覗きこむようにするも、彼に”ケツ蹴られて外に出ちまうぞ”と注意されてようやく控える。

 

 

 ティコはしばし袋の中をまさぐると、目当ての物を放り出したようで引っこ抜き、それをすぐさまロイズに向かって放り投げた。

 

 二種類のフィストで、待ち望んだ状況の打開策でもあった。

 彼はそれらを順に見て、それからティコに目を向けるとティコは、何も言うなとばかりに手で制し、自分のほうから口を開く。

 

「なあに、ちっと今回は俺は無力みたいだからな・・・代わりといっちゃなんだが、お前が一人で何でも出来るよう、持ってこられるだけのものは持ってきた。少なくとも今まで使ったやつは全部あるからその・・・呼んでくれ!そしたら投げ渡す!」

「グール・・・」

「頼むぜ相棒!フィストなんか俺が持ってても宝の持ち腐れだ、お前が握ってようやく道具として一丁前に働けるってもんだ」

 

 ぐっとサムズアップを送り、マスクをずらしてにっと笑った口元を見せる。

 ロイズも同じように、ヘルメットをずらすとにっと笑った、彼はパワーフィストとサタナイトフィストを取り外すと、彼に預け、受け取ったフィストを嵌めるといつものようにシャドーボクシングで調子を整え再び戦場に舞い戻るのだ。

 

 振り返ることはなかったが、信頼は感じられた。

 その背中にまたサムズアップを送ると、ロイズも後ろ手に応えた。

 

「全部出しとけグール!呼んだら頼む!」

「合点だ相棒!でも略称は勘弁な!」

 

 ロイズは再び戦場に、舞い戻る。

 

 

 

 舞い戻った戦場では、ウグスト・ラゴンとフラティウが激戦を繰り広げていた。

 一進一退、ハンマーと剣撃、されど狂化したフラティウからは剣技が失われ、力押し、互いの性質が似ているのか決着は一向につかない、むしろ決定打のひとつも入れられない始末であった。

 

「うむ・・・ロイズを先に仕留めておきたかったが・・・彼は何を?」

 

 決着に先行きが見えないと察したところで、彼は自身が跳ね飛ばした一人の青年を目で探す。

 舞台上には自身が下がらせた部下を含めまだ残りが多かったが、ふと見れば視界の端ではロイズが、相方から新たな魔道具を受け取っているのが見えた。

 

 それにウグストは目を見張る、片方はそう、ミスリルゴーレムを仕留めたあの武器に違いなかったからだ。

 

「またあれを・・・!あんなもの、某でも耐えられん!フラティウをけしかけて―――」

 

 

 ―――言うのと、気づくのは同時だっただろうか。

 

 超高速のロイズがすぐ目の前に迫っていた事実に、ウグストは驚愕する。

 彼は目を合わせ、しかしその目が血走っていることに気づき、

 

「おぉぉ!?」

「だっしゃぁぁぁ!!」

 

 ハンマーの柄で、パンチの一撃を受け止めるのだ。

 必殺の一撃だったのだろうか、防げたことに彼は安堵し、柄を外そうとするが、

 

 カチリ。

 

 何の音だろうか、気がついたのはその”ディスプレイサーグローブ”が光を放った瞬間であった。

 

 衝撃波が、ウグスト・ラゴンを跳ね飛ばす。

 ガウスライフルと同様の電磁加速機構を用いた衝撃波は凄まじく、舞台の端までお返しだ、とばかりにその巨体を叩き飛ばし、結果その身体はしばしまともに動けないほどのダメージを負っている様子であることにロイズはにぃ、と笑う。

 

 ターボを服用し、かつV.A.T.Sだ、長生きしないなと自嘲しながも、超高速化からの必殺の一撃が叩き込めたことに満足しやがて、ターボの効果が切れていくことを彼は感じていく。中毒性が高いから、使うのはまた今度であろう。

 

 だがこれでこの”黒の剣士”と一対一で戦えると、そう彼は拳を握る。

 

 睨み合いの威嚇し合いだ、喧嘩そのものだ。

 そうしていると真っ先に踏み込むのはフラティウ、与えられる一閃を、彼は―――

 

「こいつを待ってたッ!」

「オオォッ!?」

 

 振り下ろされる巨剣の一撃。

 

 しかしロイズは避けようなどとはしない、肩部装甲に剣を”押し付ける”ように、彼は巨剣ベルセルクを”固定する”。

 そうなると動けなくなるのはフラティウの方だ、狂化していてもその力はパワーアーマーの圧倒的膂力を下回る。それに再び笑いを返すとロイズは”左拳”を大きく振りかぶりその、がら空きになった腕に叩き込み、バックステップで距離を離した。

 

 フラティウは剣を両手で持つ戦士だ。

 ゆえに―――

 

 数秒後、”小爆発”。

 

 使ったフィストは”ツーステップ・グッバイ”。

 爆弾つきの杭を対象に叩きこむことによって、このフィストは信じられないほどの破壊力をもたらす、まさに一回限りの近接戦闘用超兵器だ。事実一本しか今は持ってきていないようなので、使い捨ての形になるだろう。

 

 されどその爆発はフラティウの右腕を切り飛ばし、左腕にも少なくない損傷を与える、も、左腕は呪い剣によりなお動くのだ、しかし失った右腕は戻らずかつ、弾き飛ばされた呪い剣は主人の腕が飛ばされなお握られていることに混乱する。

 

 しかし数瞬の無機物的思考のあと、主人がどちらかを認識直し中空に浮くのだ。

 だがそれを逃すほど、ロイズは甘くない、彼はフィストを脱ぎ投げると、手だけを後ろに向け催促した。

 

「グール!爆殺とエレキ!早く!」

「よしきた!」

 

 とたんに投げられたフィストをロイズは受け取り、嵌める。

 

 右手には一撃必殺の”爆殺フィスト”を。

 左手には再びの”エレキハンド”を。

 

 まず彼は右手を握り―――

 

「このド外道剣ッ!」

 

 中空に浮いたベルセルク、呪い剣の方を狙うと勢い良くその上っ面から叩きこむ。

 無機物にはそれを避けるだけの知能もあるまい、なすがまま土手っ腹に受けた瞬間、爆殺フィストのプレスが押されショットシェルが炸裂、ゼロ距離で放たれた散弾は甲高いどころではない、鉄骨同士でも殴り合わせたような音を鳴らしその無機質な図体を地面に叩きつける。

 

 呪い剣ベルセルク、その存在は”生きている”のだろう。

 見れば彫刻の色がやや鈍っており、そして再び距離を取り、中空に浮いたその切っ先はロイズへと向けられる。

 

 命を持ち、しかしまるで虫の息であるようにふらふらな切っ先であり、それはロイズにこの呪い剣の終焉を、自らがもたらすことのできるという確信を与えるに至るのだ。彼は再びフィストを投げ捨てると、”相棒”に催促する、この状況に終わりをもたらす武器を。

 

 

「ディスプレイサーグローブだけ!」

「あいさーっ!」

 

 投げ渡されるグローブが宙を舞い、ロイズの投げたフィストと交錯する。

 

 ロイズはぱしっ、とそれを受け取ると、今度こそ右手に嵌め今なお、か弱い抵抗を見せる呪い剣へと手を伸ばす。だがその拳は相手を倒すためではなく――― 中指をぐっと立て、”倒します”と宣言するためのものであった。

 

 とたん、突き進んでくる”呪い剣”。

 

 中空を移動するそれをロイズは避け、そして横合いから叩き落とす、甲高い音は地面に叩きつけられると同時に鳴り、その間抜けな音はこの無機物から、剣としての誇りを奪うのに十分だったであろう。

 

 そして―――

 

 

「フィナーレだッ、この野郎ッ!しびれろぉ!」

 

 ぐっと地面に押し付ける。

 その途端、閃光が呪い剣に走るのだ、エナジー・セルが放出する高圧電流、パワーアーマーですら長時間浴びればショートするその電流を浴びないよう細心の注意を払いながら、ロイズは押し付けたエレキハンドで呪い剣ベルセルクをたっぷりと、いたぶり続ける。

 

 めまぐるしく変わる彫刻の色、ガタガタと震える刀身、ロイズはなおも電池が切れるまで叩き込み続け、そして放電が終わった瞬間、”ようやく終わったのか”とばかりに安堵するかのように転がる呪い剣。

 

 

 だがそれは休みではない、次なる攻撃のインターバルであった。

 

 再び振り上げた”右拳”、ディスプレイサーグローブ。

 ロイズはその先端を刀身へ向け叩き込む。

 

 何度も何度も、繰り返し、こちらも電池が切れるまで、相手が壊れるまでひたすらにと拳を打ち込み続け、衝撃波を流し込み続けるのだ。そこに慈悲はなく、あるのは全身を破壊されてもなお操り人形にされた仲間に対する義侠心と、剣に対する報復の心のみ。

 

 

 

 ―――やがて刀身にはヒビが入っていき、その寿命が限界を迎えることを表す。ロイズはただ心のままにパンチを打ち込み続け、そして―――

 

 

 

 




(´・ω・`)日曜日に法事、土曜も用事で次は月曜以降だと思います、たぶんそこから書き始めるので。
(´・ω・`)金曜日のうちに興が乗っても次回も長くなる気がしてやまないので。

参考なまでに、

http://fallout.wikia.com/wiki/Two-Step_Goodbye_%28GRA%29
・ツーステップ・グッバイ
 ロマン武器筆頭、とどめ時に爆弾打ち込んでくれます、「お前はもう死んでいる」ですね。ガンランナーが普通に売ってるので彼らが持っていてもいいと思って採用。
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