トレンチコートと白銀鎧   作:キョウさん。

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14444字、うわっ、縁起悪い!


第三章:西の森を行け 27話『研究者セネカ・アンナ』

 

 

 

 

「おつかれー、コーヒーでも飲むー?」

「あっ、ありがとセネカ。くぅーっ、やっぱ仕事終わりに飲むコーヒーはうまいよなぁ、淹れるの上手いしよ」

「ははっ、褒めても何も出ないよロイズ君。しかし今日のぶんのノルマがもう終わっちゃうなんてねぇ」

 

 動作のやや錆びついてきたコーヒーメーカーをバンバンと叩き、絞り出されたコーヒーをカップに注ぎながらセネカは、にっと笑顔でロイズと会話する。ロイズはカップを受け取ると、苦味の含んだ香りをすんすんと嗅いでから口をつけた。

 

「“無法者”や”無知者”から技術を取り上げて保護、保管するのがB.O.Sの役割なんだよ、でもここにあるもの全部しょっぴいて持って帰る能力なんてねーし、この街と全面戦争なんてごめんだしよ、だから知識人に”正しい知識”を与えて管理してもらうのが一番って」

「そう言ってもらえると研究者冥利に尽きるねえ。しかし君の知識には本当に驚くべきことが多いよほんと、これらの器具を動かしている”デンキ”、なんとなく使っていたけどやっと理解が追いついた、全能の神が降らしていると言われる雷の力を貯めこんだものだったんだね」

 

 一人納得し、コーヒーメーカーのランプを見てはその輝きに見惚れるセネカ。ロイズはまた逆に、少し違うんだけどなあ、となんともいえぬ顔をすると、しかしそれでこの世界の人間には理解の限界なのだろうと納得し、心の中で落ち着けた。

 

「それに異界の言語!”エングリッシュ”に精通しているというのは本当に驚いたよ!かねてより解明するために異界の辞書とにらめっこしてたりはしてたんだけど、さっぱり理解できなくてさぁ!君がかたくなに込み入ったところまでは教えてくれないのは残念だけど、まあ君がいる間、異界の書物から情報を引き出せるのは実に嬉しいねえ!」

「イングリッシュ、な・・・まあそこは本部の研究成果だからおいそれと出せないっつーか・・・」

 

 まったくのでたらめだ、だがロイズとしては、言語を身につけさせることについては大きな弊害があると推測してのことだった。

 

 このVaultには凄まじい数の蔵書があり、それらのことごとくが旧アメリカの字体を採用していから当然彼は読める、微妙なニュアンスから旧字体、筆記体まで幅広く、スクライブである彼は教養に満ちていた。

 

 だが危険なのは中には科学書や化学書が存在してしまうことであり、言語を彼女に身につけさせた場合アメリカの最先端科学、とはいかずとも進歩的な科学がこの世界に誕生することになり、それすなわち近い将来研究、産業の革命が引き起こされることを意味する。

 

 人のことを言えた身分ではなかったが、自ら身につけた技術ならば共に歩み安全に突き進めたであろう。だが与えられた技術というものは、得てして振り回され破滅を迎えること多し、ゆえに彼は言語は彼女に与えなかった。

 

 ロイズは遠回しに言語の教授を催促してくるセネカをのらりくらりとかわしながら、ごまかすようにコーヒーを飲み干し、おかわりを逆に催促し返してやる。

 

 するとセネカも諦めて、カップを手に取るとしずしずと戻っていった。だがその顔は実に残念、むしろ無念といった意味合いの陰が強くついロイズは、そこに眠る何かしらの感情に興味を惹かれてしまう。

 

 そうするとデリカシーがないと分かっていながらも、彼はさんざん聞かれたんだ、聞き返してもいいだろうと自分を納得させてやると、そこに一歩、やんわりと踏み込んでいった。

 

 

「そういやセネカって・・・なんでこんなとこで研究してるんだよ?」

「おっ?ようやく聞いてくれたねロイズ君、まあ君から聞いたぶんの情報とはじゅーうぶんに釣り合うだろうから教えてあげよう!それはね?まあつまり―――」

 

 セネカはカップを置き、目を光らせる、知識人が知識をひけらかす時にする目なのだと身近にそれがいるロイズは察し、それからセネカはぎゅっと襟を整え、もったいぶるようにちらりとロイズを見る、それから指をびっと彼に突き出し、そして、

 

「―――家族代々研究者だからさっ!」

「・・・あ?溜めといてそれだけ!?」

 

 期待を誘発するような素振りをされただけに、ロイズはなんとも空回りさせられた感を感じずっこけてしまう。

 

「別にいいだろぅ?私も私でちゃんと目的を持って研究はしてるんだ、ただ家が代々ここで研究に生を費やしてる奇特な家系で、私はその研究を受け継いだってだけさ・・・まあほったらかしにしてるんだけど」

「それダメだろ・・・」

 

 同じ研究者として、看破できない問題を彼女から受け取ったロイズはやんわり彼女にとげを刺す。セネカはそれに痛手を感じたのか、面もくない、と頭を書くとまた落ち着き、今度は冷静にロイズに向かって話を続けた。

 

「でも私の目的と父さん、お爺ちゃんの目的が違うだけでやってることは変わらないんだよ、異界のものを集めたり、使い方見つけたり書物を解析したり――― 最初はお爺ちゃん、もともと貴族だったらしいけど隠居して研究を始めたらしくてね、それに賛同して一緒になって研究受け継いじゃったのがお父さん、それから同じ事やっちゃったのが私、ってことさ」

「そんだけ熱意のある家系ってのも羨ましいよなぁ、ウチも色々やってるけど派閥争いとか鬱陶しくってよ、オレなんか実験台にされたようなもんだし」

 

 腕に取り付けたPip-boyと、それ用に改良された、今は部屋の端に立たせてあるパワーアーマーをちらりと見て言うロイズ。セネカはその素振りに彼の苦労を垣間見る。

 

「君のところも苦労してるねぇ、スクライブ(研究者)君。ともあれ、だ、その二人を経て今私がここを受け持っているわけさ」

 

 くるりと回って広い広い、研究室を見回してみるセネカ。

 その際片付けられていない道具に腕が当たり落ちかけたが、特になにもなく終わるとほっとし、互いに向き合う。小休止にはコーヒーをもういっぱい、青年にはブラックを、女には砂糖を多めに、ぜいたく濃糖な一杯を堪能しながら、二人は話を続ける。

 

「お爺ちゃんの研究目的は”28番目の金庫の解明”だったからずっと外にでることは無かったみたい。王都とかよりずっとここは異界に近いし物資も頻繁に流れ着くから、晩年もここに篭ってたみたいだねー。それからお父さんが研究を受け継いだんだけどその・・・輪を広げちゃったみたいで、”異界の文明物の蒐集”になったんだよね」

「前の研究が終わらないうちに新しい研究を始めるなんざ、何も知らないお上からの通達があった時だけで十分だって思うけどな、オレは・・・」

「だよねえ、でも、受け継いだ研究はその輪の中に入ってたからお父さんも生涯かけてここを調べあげたりはしてたみたいでさ、扉もいくつか開けてるんだよ?それに、ここにあるものの多くはお父さんが集めたものさ」

 

 ばっと手を広げ、並べられた棚に積まれた物品の数々をロイズに魅せつけるセネカ。

 

 ロイズからすればそれは壊れた圧力鍋であったり、ショートしたパイロットランプであったりとガラクタにしか見えないがそれでも、集めれば山を築けるほどの物品をたった一人で収集した男には敬服した。

 

 

「そんな研究馬鹿だったからさ、私が跡を継ぐまで研究一筋何十年と続けてんで―――」

 

 言い淀むセネカ。

 そこにロイズはつい、下手なところまで踏み入ってしまったのか、と下手をしたのかと感じてしまい、口を挟んで続く言葉を遮ろうとするが。

 

 

 それよりずっとセネカの方が早くて―――

 

「―――今は諸国漫遊で遊んでます」

「死んだとかじゃねーのかよ!なんだよそのオチ!ガックリした!あ、いや安心した!生きててよかった!」

 

 はっはっはっ、としてやったりと笑うセネカに、ロイズは唸って負けを悔しがる。実のところ何が負けであったかなど誰にも分からなかったが、彼女が会話にジョークを挟めるような一枚上手であることは確かだった。

 

 だがそこで続けて彼女は、はっと思い出したかのように物の雑然と置かれた棚に向かうと一個の機械を持ってくる。それを大事そうにテーブルに置き、ロイズに見せると自慢するのだ。それはロイズも見たことがあるもので、とても貴重な”テクノロジー”に違いなかった。

 

「・・・電子ロックピック?」

「知ってるのかい?お爺ちゃんから受け継いで、お父さんが私に残した秘密兵器ってやつらしいんだ。これを使えばここの扉を開けられるらしいんだけど―――」

 

 電子ロックピック、それは電子扉を解錠するための道具であり、端末に差し込めばロックを無条件に解除してくれることがウリの”消耗品”だ。

 

 消耗品というのはつまり、機器はロックに対しクラック、解除するとともに大抵の場合オーバーロード、加熱し使い物にならなくなってしまうからで、そのぶん通常のロックピックキットなどと比べても、高価で取引されているVault探索や戦前の工場施設探索にはもってこいのアイテムであった。

 

 悩ましい顔をするセネカ、大事そうに電子ロックピックを撫でる。

 

「あと一回しか使えないってことみたいでね、だからお父さん言ったんだ、”本当に使いドコロを見つけたときだけ使え”ってね。だから大事にとってある・・・勝手に使わないでよ?賠償請求するからね」

「わ、分かったよ・・・」

 

 いつか使う日が来る、そう思っていると出し惜しみして案外使わないことがあるとは心の中に仕舞っておき、ロイズは気を取り直すと彼女に聞き直す。

 

「・・・で、セネカの研究内容ってのは何だよ?」

「んー?まあ名目上は”異界の文化の研究”ってとこかな?物はいっぱい集まったからね、あとは調べるだけだし――― でも、それは建前、私にはもっと別の目標があるんだ、聞きたいかい?」

「お、おぅ」

 

 反射的に肯定を返すロイズ。

 するとセネカは上機嫌になり、鼻を鳴らしてテーブルに腰掛ける。

 

 また大げさな素振りで大したことのない内容が出てくるのでは、とロイズは前例を思い出し脱力するが、セネカは足を組み替えるとまたちらりとロイズを見て、それからまたも、指を彼に指して叫ぶように言い放つのだ。

 

 ロイズはコーヒーを口元に運んで、期待はせずにそれを―――

 

「異界の人間に会って、話を聞くこと、それが私の夢さ!」

 

 ―――とたんに、ピシッ、と身体に走るものを感じた。

 吹き出しそうになるコーヒーを抑え、ロイズはそうかそうか、と笑ってみせる。

 

 されどセネカはまだまだ話すことはあると止まらず、新たな会話を展開しだす。

 

「いや、一応確認されてるのはいるんだよ?でもね、その数人程度はいざ調べてみたらもう亡くなってたり、王都の後宮に閉じ込められてたりもしくは所在不明だったりさ?だから!私はこの街に居座って”人間”が流れてくるのを待ってるってわけさ!すごいだろぅ?」

「お、おぅ・・・すごいな!」

 

 なんとなしに返してはみるが、当の本人のロイズとしてはなんと返していいかわからないことこのうえない。自分がここでその本人です!などと名乗ってみるといい、永久就職先を決められるのがオチで二度と帰れない、バッドエンド一直線だ。

 

 ぎくしゃくと、不自然な動きなものだからセネカが気遣って声をかけてくるのに対し、コーヒーが苦いんだ、と答えて凌ぐ。するとセネカがどばっと、砂糖をスプーンにこんもりと乗せてコーヒーに投入してきたものだからまた、彼はなんともいえぬ気持ちになった。

 

「私の学説では、恐らく”異界”の人間というものは我々と違う生命体なのだと思うんだ、だが旅をしている個体がいると聞いているから恐らく、こっちでいう亞人程度の違いなんだろう。これだけの高度なカラクリを簡単に作ってのけるのだから指が多いか・・・もしくはものすごく精密に動く細い指を持っているんだろうね、だから戦いは不得意で、戦闘はああいったカラクリ人形に頼るってわけさ」

「そ、そうかぁ!セネカ賢いよな!」

「だろだろぅ?それで、気質に関してはかなり温厚で、臆病なものだと思っているよ。あの”じゅう”というものは剣が振るえる距離まで近づきたくないから創りだした叡智なんだ、それで最低限の武装をしたあとはひたすらに便利な道具を作っていたと・・・どうだろう、ロマンが広がらないかい?異界の人間はきっと言語が違うだろうからそこを学ばないとだろうけど、まあそこまで君には頼らないさ、教える気もないみたいだしね」

 

 すらすらと並べられる推論は突拍子もなく、しかし微妙に的を射ているような気がしないでもないから二の句を継げない。でもよくよく考えてみるとロイズとしても、未知の存在に大いなる期待をすることは無理がないと、そうも思う。

 言うなれば自分たちが、見知らぬエイリアンは身体が貧弱で宇宙服に身を包み、レーザー銃を持っているものだと勝手に結論付けるようなものなのだ。実際のエイリアンはもっと猛々しいのかもしれない。

 

 

 そうしていると、ずいっと近寄ってきたセネカが彼に顔を寄せる。

 

「・・・というわけだけど、助手の君としてはどうだと思う?参考にしたいんだけどね」

「・・・オレ?」

「むちゃくちゃでもいいよ、その方が楽しいだろう?」

 

 唇で唐突に紡いだ言葉は楽しそうで、ロイズは毒気を抜かれる。

 ロイズは少しうつむき、考える素振りをしたあと、頭に紡いだ思考を表に出してみせた。

 

「・・・オレは」

「うんうん」

「―――たぶん、オレ達と同じようなのだと思う、でも」

 

 でも、がつくから、セネカもそれ以上は口を挟まない。

 ロイズはセネカと目を合わせると、続く言葉を話し始める。

 

「きっと、心に余裕がないんだと思う。言うとおり臆病かもしれないけど技術は確かにすごいし、人知に及ばないけど・・・でもきっと、高まっていく技術に心が追いついていかなくって、使い方を間違えていつか大失敗するようなことがある、そんな人達が―――」

 

 

 ―――異界の人間だと思う。

 

 ロイズの”推論”だった。

 セネカはその言葉を受け、興味深そうに顎に指を当てるのだ。

 

「・・・なるほど、心が追いつかない、ねぇ・・・認識を改めておくのもいいかもね。これだけの家を地面の下になんてわざわざ作るのはきっと気候が厳しいんじゃないかって思ったんだけど、逆に――― 地上の何か、技術を悪意に使う者から身を守る、っていう使い方をしてたって考え方もできるわけだね?賢いねロイズ」

「お、おぅそっちも」

 

 賢いのはそっちが一枚上手だ、と言いたい気分ではあったが心の中にしまっておくと、セネカはもう一杯のコーヒーを飲もうとコーヒーメーカーのボタンを押す。

 

 されど切れてしまったのか、出ないことに興ざめするとコップを片付けだした。ロイズもそれを皮切りに既に仕事終わり、長居してしまったなと家に帰る準備をする。ここのところはパワーアーマーは使う機会がないので、専らここのジャンクパーツで性能低下をどうにかできないかここに安置し奮戦中だ。

 

 ショルダーバッグをぶら下げ、立ち上がる。

 セネカが手を振って彼を見送る。

 

「少し時間取っちゃったねえ、まあ明日も逢えるんだ、お話きかせてよ、まだまだ尽きないんだろう?」

「・・・たまには休ませて欲しいよな、顎が擦り切れちまう」

「こんど週休とは別に休みを与えるよ、羽をつかんだままのは悪いし、羽を伸ばしてきたらいい・・・じゃあね、ロイズ君」

「またな、セネカ」

 

 

 手を振って、機械扉が二人を分かつ。

 道中出会ったMr.ハンディの頭をぽんと叩きながら、彼は今日は気分が優れると、荷物を置いたら外にでるのもありかな、とそう思った。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 一等市民区市民館、”特別試合”でも使われた強固な要塞じみたそんな市民のための場にて、一人の影。

 

 

 まだまだ子供が抜けないぱっちりくりりとした顔立ちに、揺れる赤髪は腰まで長く、炎のマナの輝きを受け反射する。髪色に対照的な紺を基調とした魔法使い(ウィッチ)用のミニスカートと軽装服を身につけ、頭にはキャッチーな三角帽、フラティウに真っ二つに斬られたのち新調したそれは同じものだが、服と対照に使い込まれていないことが目についた。

 

 そんな見れば見るほど、キャッチーな魔女っ子をイメージできるような姿形の彼女、フランシェスカ。闘技場での激戦の後多くの有力者に目をつけられ、それらを勝ち抜いた者より与えられた退屈な屋敷に放り込まれ暇を持て余していた彼女は今、この場にて両手を杖に添え魔法を行使する寸前であった。

 

「そうよそうよ・・・そうやって、もうちょっと・・・ああ、そう!今よ、いけっ!」

 

 宝石付き金の杖の先端に真っ赤に輝く不思議な粒子、炎のマナを集めるとシェスカは脳裏に走りかける雑念を蹴り飛ばし、同時に指先の神経を集中させると一気に燃え上がる。

 いや、実際に燃え上がったわけではないのだ、立ち上る炎のマナ、彼女が集めしかし杖に収まりきらなかったマナがまるで燃えているかのように彼女を包んで昇っては消えてゆく。その様は、彼女が魔術師を超えた”魔法使い”であることの証左だった。

 

 刹那、彼女の目の前に現出した赤い魔法陣から飛び出したのは真っ直ぐ空気を焼きつくす炎の槍とも形容すべく爆炎の投射で、市民館の端、ステージ上に立つシェスカから反対側、三方を覆う観客席の一方に差し掛かるが、だが直前、突如出現した強靭な魔法障壁によって弾かれしゅぅ、と音を立てて消えてしまった。

 

 その熱波は室内の気温が上昇するほどの凄まじいものであり、何か何かと観客席に見に来た興味本位の人々もその”炎のショー”に盛況するも、当のシェスカはぺたんとへたりこんでため息をついてしまう。

 

「はぁ・・・また”赤い炎”ねぇ、今度はうまく行ったと思ったのに・・・はぁ」

 

 彼女は自身の魔術の不出来を嘆き、ため息はまだ収まらない。

 

 事実、彼女がこの場に来ていたのは魔法の練習のためであり、ある種”自身の限界突破”が目的だった。以前ミスリルゴーレムとの闘いで感じた無力感を打破すべく、負けず嫌いな彼女は小さな身で幾度もこのような修練を経ていて、しかし、そのたびに同じようにため息を吐いていた。

 

 彼女の目的とするものは、ロイズがエレキハンドやディスプレイサーグローブで見せた”閃光”や”衝撃波”と同じレベルの、いかなる敵をも倒すことを可能にするようにすることだったがこれはひとえに自分の得意分野とも離れているためか考えても見えてこず、ひとまずと着手したのは”炎のランクアップ”。後者はやや不明確だったが、彼女は自身の知識と照らし合わせ普段の”赤い炎”をより高熱の”青い炎”にすべく奮闘していた。

 

 この場所はそれには都合がよく、強靭な魔法障壁が彼女の全力すら弾くため悔しみは感じたがここのところは頻繁に使っている。そのたびに彼女の”ファン”のような人種が訪れていたが、彼女自身、自信家な側面があったので悪い気はしなかった。

 

「シェスカちゃんがんばってー!」

「ったりまえじゃない!こんなのでへこたれるほどヤワな気質しちゃあいないわよっ!」

 

 気丈に胸を張り、期待に応えるシェスカ。

 

 しかし初めて数時間か、それだけの長時間マナが尽きないのも彼女の才能を表していたが、それでも万策尽き、彼女は考えるだけになってしまう。

 

 

 また肩をとんとんと杖で叩いてため息。

 そこでふと彼女は気づくと、杖に目を向けるのだ。宝石付きの金の杖、豪奢な彼女の持つ”白金のケーン”は長く使い慣れた彼女の相棒に違いなかったが、それでもじっくり目を向けてみれば以前気がついた時のように、荒い使い方の代償というべきか、ひびわれや擦り傷が数多く見受けられた。

 

「・・・そろそろ買い替えどきかなぁ、でも実家から持ってきたこれ以上の杖なんて――― あら?」

 

 くるくると器用に、座り込んだまま杖を指で回して見せながら、シェスカは愚痴っていると、そんな彼女にふらりと近寄る影。

 

 おや、誰か、ここは不得意な氷の魔法で扉をつべたくしてやり無理矢理封鎖していたはずなのに、どこから入ってきたのか。だが衆目環境の中、下手人が下手なことはするまいと、彼女はたかをくくってよっこらと立ち上がる。

 

 見ればその影、”彼女”は、一人の配達人であった。

 

 帽子を深被りしているためなのか、なぜか、かたくなに顔はよく見えなかったがそんなことはどうでもいいとシェスカは”彼女”に何が用か、と聞く。すると配達人は、声だけを露わにしてただ、彼女に向かって一箱の荷物を手渡した。

 

「シェスカさんにおとどけものです!」

「なあに?あたしのファンか何か?」

「多分そうだと思います、出処は黙秘されています!」

「ふぅん・・・」

 

 興味はやや少なげに、手渡された荷物の風を開けていく。

 リボンをほどくとぴりぴりと、無作法にラッピングをちぎっていき、地面に箱を置くとぱかっと一思いに開けるのだ。とたん、シェスカはわあっと目を見開いてしまう。

 

 箱の内側から出てきた”ファンの贈り物”、それは木づくりに宝石が埋め込まれた一本の魔法杖であった。

 

 

「っへぇー・・・!これ神木?それに炎の属性処理したバレライト(魔法石)?っへぇー!っへぇー・・・!」

 

 最初に興味なさげな素振りをした手前、どうしても急にはしゃぐわけにもいかず静かに喜ぶ素振りをする。しかしあっというま、湧き上がる衝動に諦めた彼女は立ち上がると、くるくると杖を見て回った。

 

 その仕草はさながら年頃の少女で、気張っていても隠しきれぬ少女の片鱗がかいま見える。

 

「っへぇー!すごいいいじゃないこの杖!誰?誰が譲って・・・って」

 

 

 再び配達人に目を向け、黙秘されているとしても何が何でも無理矢理にでも名前を聞き出しておきたいと、これほどの銘器を平然と譲り渡せる者の名くらい心に刻んでおきたいと、シェスカは思う――― 

 

 しかし目を移す頃には、既に目の前からはその姿は陽炎のように消えていた。

 

「・・・別にちょっとくらい待ってくれてもいいじゃないの、忙しいのかもしれないけど」

 

 結局顔も見れなかった配達人の姿に愚痴をこぼしながら、彼女は”白金のケーン”を傍らに置き、ぽんと手を合わせ供養する。

 

 それから心機一転、とばかりに新たな魔法杖、心の中でこっそり”老神木のグレイス”と名づけたそれを手に取るとまた、気分の転換になったとばかりに鼻を嬉しげに鳴らし、構えるのだ。

 

 再び立ち昇るマナ、真っ赤に燃えるそれは以前の比ではない。

 

 彼女の才能が持ちうる量を余すところ無く汲み取り、シェスカが大気とつながるハブなら杖は優秀なコンデンサとしての役割を果たす。もはや真っ赤に染まるその身体は、身体自体が輝いているといっていいほどの凄まじさを醸し出し、それを見る野次馬達におおっ、と一声出させるほどであった。

 

「いっけぇっ!」

 

 再びの着火、魔の法の発現。

 

 杖先から現出した炎の槍はまたも空気を、今度は焦がしすらする勢いで前進、それはスピードも、大きさも、熱量も違う、格段に上回る一撃であり――― 市民館の魔法障壁を、”一瞬だけ”打ち破ると弾かれ、またも消える。

 

 しかしその余波は大きな白い煙となって市民館に吹付け、それが彼女の魔法が先の一撃より、遥かに優れたものを行使することに成功したことを表現していた。

 

 

「・・・すっごい、この杖・・・!やっぱりちゃんとした道具さえあればあたしだって・・・」

 

 思い返せば浮かぶのは、思い慕う人が使っていた呪い剣や黒の魔導鎧、いけすかない青年が身にまとう白銀鎧。彼らは才能を引き出す魔法の道具に頼ってあれだけの強さを手に入れているのだ、ならば同じ条件に到達して実力を引きのばした自分は、確実に並ぶだけの才能を持っていたのだと再認識しつい笑顔がこぼれる。

 

 だが、やはり”青い炎”には届かない。

 ランクアップという目標からすれば確かに届いたのかもしれないが、当初の目的とそれてしまったことはプライドの高い彼女としては不服であったらしく、笑顔から一転、顔をむすっとさせるとぺたんとへたりこんだ。

 

 

 それから彼女はもう一度だけやって、それで終わろうと再び杖を構えるのだ。

 

 そんな矢先だろうか、急に市民館の扉が開かれる、否、強引にこじ開けられたのだ、凍らせてうまいこと占拠していたのに突き破られたと言ってよかった。

 

 無粋な、と思いながら、シェスカはその方向を見る。

 

 だがそこに立っていた男を見て彼女はばつの悪い顔をした、白銀鎧こそ身につけていなかったものの、その姿はまさしく先に想像した”いけすかない青年”であるロイズであった、フィストをはめ戦闘態勢の彼は無理矢理に、扉を殴りこじ開けてきたのだ。

 

「・・・何やってんだ?胸ペタ」

「セクハラ発言極まれりよ童顔、なあに?何しに来たの?」

「いやスッゲーでかい熱源反応があったから何かあったのかってよ・・・なんだ、何もねーのか良かった」

 

 またわけのわからないことを言う、とシェスカは思う。

 しかし偶然にしろ何かを追いかけてきたにしろ、この姿を見られるのは気恥ずかしい、と彼女は思っていた。なまじプライドが高く、相手を見下すような発言をしていることは自覚しているがためそんな自分がひたむきな努力をしている姿など、恥の骨頂だったのだ。

 

 ずかずかと、無遠慮に近寄りステージに飛び上がってくるロイズに慌て、彼女ははっと地面に置いたままの白金のケーンや箱を隠そうとするも場所がない、彼女はステージど真ん中だ。

 

 結局すべてをありのまま見られた彼女は、ぷいとそっぽを向くだけだった。

 

「杖二本ってこた、新しいの試し撃ちか、魔法の練習してたってことかよ?」

「わ、悪い?別にあたしがたまに練習くらいしてたっていいじゃない?・・・嫌味でも言いに来たの?そうよね、あんたはあのミスリルゴーレムを一人で仕留めきる男だものね?笑いなさいよ、あたしを―――」

 

 望んではなくても、素直ではない唇はつい高圧的な言葉を紡いでしまう。

 みっともないかもしれないが、止まらないのだ。

 

 この強い白銀鎧の騎士は、自分のコトを見下すだろうか、仲間としての関係が半ば解消された今、遠慮する必要はない。彼女も言葉の中で覚悟をし、投げかけられる言葉を目を逸らしながら待つ。

 

 二人の間には短い時間が流れ、そして―――

 

 

「―――いいじゃねーか」

「は?」

「いいじゃねーか、練習、見なおした。お前プライド高くって厭味ったらしいいけすかないガキだって思ってたけどよ、こーやってひたむきに努力して・・・自分を弱いって思ってんのか?それならそれを克服しようとしてるなんざ十分ってもんだろ」

 

「・・・褒めてるの?バカにしてるのっ」

「褒めてんだよ、お互い口悪いのは自覚してんだろ?ならいいじゃねーか、バカみたいな言葉ぶつけあおーぜ、弱いなら弱いでいいんだよ、強くなろうって思えるうちはずっと伸びしろがある――― って師匠が言ってた」

「・・・ロイズ」

 

 ふと、名前で呼んでしまう。

 

 彼は彼女へ手を差し出すから、彼女も取って立ち上がった。

 ぱっぱとスカートのほこりを払い、髪を掻き上げる。

 

「オレだって努力してんだ、才能頼りなんて便利な技持ってねーからよ、オレ達の手に残る智慧と、手に残る輝きが無法者の連中に奪われないように、いつだって努力してる。それがB.O.Sで、そこに生きる男のやることだって信じてる」

「・・・変な組織ぃ」

「それでも200年続いた由緒ある組織なんだよ・・・あーでもやっぱなんかイヤな気ィしたな、やっぱお前努力すんなコラっ、お前見た目いいし頭回るんだからそのうえ強くなったらもう無敵だろ、一つくらい欠かせとけよっ」

「褒め言葉って受け取っていいのね童顔!あはは!あんた見た目それだもんね!あはは―――」

 

 

 そこでふと、彼女の脳裏に浮かぶ。

 

 目の前の男は知識と技術を蒐集する組織の一員だ、ならば自身の目指す目標への到達方法を知っているのではないか――― 癪だったが、でも自然と悪い気はしなくなってくる、知られてしまった、秘密を共有したからだろうか、彼女は聞いてみる。

 

「ねえ、あんた・・・”青い炎”の出し方知ってる?」

「あ?そんなの空気の含有率で決まるだけだろ・・・ってこっちじゃ知られてないのか、まあガスバーナーも無いしなー、一般的にゃ赤い火しかないか」

 

 またわけのわからないことを言う、だが目の前の男は確実に、知っていた。

 語りたがりだから、ロイズは更に話を続ける。知識の片鱗を見せつけるように。

 

「要はモノ燃やした時・・・あ、まさか魔法でやる気かよ?」

「そーよ、悪い?」

「・・・うー、専門外だけどよ・・・火って基本青いんだよ、空気が余計に混じるから赤くなるってだけで。要は例えばガスバーナーなら燃える時にどんだけ空気入れてるかで決まるんだけど、マナ(不思議物質)かぁ・・・完全に燃焼させるんだよ、マナだけで、それで多分青くなると思うんだけどよ・・・間違ってても燃やすなよ、今日はアーマー着てねーから」

「じゃあちょっと焦がすだけで勘弁して・・・冗談よ、気分がいいからやめてあげる。そうかぁ、空気なのねぇ・・・」

 

 言いながら、彼女が構えるのは再びの杖だ。

 またあの嫌に熱い炎壁か、炎柱でもかますのだろうか、と察したロイズは苦い記憶から後ろに下がって不安げな顔をする。

 

 ―――その位置だったから、彼には彼女の表情は見えていなかった。

 彼女にとっては幸いだったかもしれない、いつになく自信に溢れ、口元を笑んでいた少女の表情は計らずも深被りしたウィッチハットで間近以外、誰からも見えなかった。

 

 

 彼女が行使するは再びの炎の槍、立ち上るマナは赤く――― しかし、その中に異色が混ざる。緑色、風色の、”風”のマナだ、彼女は高度な複合魔法を難なくとこなし、杖先に集まる炎のマナを包むように風のマナを展開させる、才能の片鱗が、魔法を実現させる。

 

「そうよ、今ならできる・・・!空気を、風をかき消すの!風の刃よ真空となれっ!」

 

 赤と緑のキャンドルライトが美しく少女を彩り尽くした矢先に、シェスカは吠える。

 刹那、再三の炎の槍が直進――― しかし、その色は。

 

「空気よかき消されなさいっ!」

 

 ”青い炎”。

 

 彼女は風の魔法を、風の刃が生み出す真空を”空気を奪う”ことに使った。真空状態の風の刃を炎の槍を包むオーラのようにし、間に緩めたガスバーナのバルブのように必要最低限の空気を入れ、あとは一直線にマナを投射する。

 

 尾を引く炎は赤けれど、その前を行く炎槍は2000℃を超える真っ青な高熱、威力の凄まじさは歴然で、回転する風の刃と合わさりさながらドリルが飛んでいくかのよう。シェスカの放った”新たな魔法”、彼女が、ロイズの知識を受けて生み出したそれは―――

 

 

「―――やっばっ!」

「は?え・・・うおぁ!何やってくれてんだよ胸ペタ!」

「あんたが教えたのが悪いんでしょ!あたし悪くないっ!」

 

 魔法障壁を完膚なきまでに突き破り、その炎が消えるまでの間のごく少ない時間に炎槍は向かいの壁、上等な大理石を用いた壁にわずかな白い焦げ跡を残してしまった。

 

 

 いったいどれほどの価値がその石材ひとつにあったのだろう、それを想像すると二人は顔面蒼白となり、向い合って罵詈雑言、互いに責任をなすりつけあう。

 

 だがしばし、言葉のぶつけあいが途切れると、”今やるべきこと”を察するのだ。

 焼けた大理石、取っ手を殴り壊した扉、壊れて修復に時間のかかる魔法障壁――― すなわち。

 

 

「逃げるわよ!」

「お、おい!」

「だったらあんた一人で払いなさい!あたしはごめんだからねっ!」

 

 すぐさまと逃走経路を設定し、一目散に逃げ出すシェスカと、一歩遅れて後を追うロイズ。開きっぱなしの扉を抜け、正門をくぐると夕暮れ時の空のもと、どこまでも走って行くのだ。後ろは振り向かない。

 

 どこへ行こうと言うのか、きっと分からない。

 だがやがて分岐路が見えてくると、唐突に二人は互いを両断するルートを選ぶのだ。

 

 そして近づく互いの裂け目、差し掛かった瞬間ロイズと、シェスカは互いを見て―――

 

 

「・・・でもありがと、童顔!」

 

 最後に彼女はそれだけを残して、消えた。

 答えを待たなかったのは彼女なりのプライドなのだろう、それを察するとロイズはふと彼女に可愛げを見出し、ふと悪くない気分となる。

 

 そしてやはり追いかけてきた、不運にも全て自分に向かってきた街の巡回球体兵器を背にし―――

 

 

 背筋を登ってくる悪寒に追い立てられながら、自身もまた全力で逃げ出した。

 

 

 

 

 

 ―――それを見ていたモノ一人。

 頭に猫耳身体にローブ、極めつけは”灰色の髪”。

 ”配達員”の帽子をくるくると回し、ふっとそれを、跡形もなくかき消す――― まるで幻影のように。

 

「・・・シェスカちゃん、カワイイなぁ」

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 ―――ひとり、部屋の中央に立つ。

 

 

 右手には9mmの自動拳銃(オートマチック)を一丁、左手には45口径の回転式拳銃(リボルバー)を一丁。ティコはただじっとその、Vaultの一部屋、広く間取られたその場所に立ち尽くすと、時を待ち、つぶやいた。

 

「―――来たか」

 

 刹那、身を屈め飛んでくる飛翔体をかわし背後へ右手の銃を向け、撃つ。

 ほぼ後ろ手に放った銃弾であったにもかかわらず正確に”敵”を撃ち抜き残酷に散らばらせ、再び、再三、幾度と無く襲い来る敵へと銃弾を見舞っていく。

 

 大きな的が前から来れば撃鉄を起こしレンジャー・セコイア(.45-70ガバメント)の重い一撃を、後ろから来れば気配を察し、ちらりと見て脇の下から9mmを撃ち貫く。飛んでくる緩やかな弾はもはや彼の反射神経と針路予測の前には当たらない。

 

 長年の経験による空気、気配の読みが究極的な回避行動とそれに準ずる正確な照準合わせをもたらすのだ、数は弾丸の数と同じ、一発もミスはできないと、しかし冷静に研ぎ澄まされた思考は一滴の冷や汗も垂らすことはなく、状況を一方的にするのだ。

 

 時折トレンチコートをかすめることあれど、彼自身は無傷のまま―――

 

「こいつで最後かっ!」

 

 リロードなし、正真正銘最後の弾丸と共に敵を撃ち貫く。

 とたん―――

 

 

『おめでとうございますティコ様!パーフェクト!いやあ武器庫が封印されてからというもの、こっそり設計されたこのアトラクションをプレイする人は実に204年と8ヶ月、15時間42分24秒ぶりでして実に――― あっ、景品は置いておきます!貧相なものしかご用意できませんでしたが・・・』

「十分さ、もとより練習のために来たわけでな」

 

 やや古びた、Mr.ハンディがかちかちと両手を叩く動作をし、次いで差し出されたガムドロップをポケットに収めながら、ティコは的が破壊されつくし、交換作業が始まる”演習場”から踵を返す。

 

 何度か今日はこの”練習”を彼は続けていて、合計で数十発の弾丸を撃ち終え銃身を見、今日はこれで頃合いかと思ったところであった。彼は手に持った9mmの拳銃をじっくりと見ると、ふと、一人こぼす。

 

「マガジンも上手いことスライドするし、狙いも正確だ、スプリングもまだ十二分に使える範囲にある・・・嬢ちゃんに使わせるには早いが、確認しとくことに越したこたないからな」

 

 手元の9mmの小さなピストルは自分が使うにも十分過ぎるほど信用のおける状態であり、ひとえにこれは頻度が減れど、ログハウスを訪れてはメンテナンスを怠らない相棒のおかげだな、とティコは心の中で笑うと近いうちに、彼に差し入れでもしないとな、と思う。

 

「こっちじゃ銃は抑止力にはならん、使えるようにならなきゃいかんのだ、だが―――」

 

 この小さな拳銃を確かめたのはアルのためだ。

 22口径の拳銃に使い慣れてきた彼女の次のステップとしてであった。

 

 あの小さな少女(アル)には血を流してほしくない、だが誰かの血を流すにもまだ早い。それでもこの街が戦場になる可能性があると察した時は、その力がきっと必須になると彼は悔しながらも思った。

 

「―――俺らがきっと守る、だが守り通せなかった時のために、身を守る力はつけていてもらいたいからな」

 

 

 懐の小さなホルスターに9mm拳銃を差し込み、彼は歩く。

 万一――― いつか少女が戦いに身を投じることになった時に、自身の命に優先的な序列をつけて、引き金を引く覚悟を持ってほしいと、そう願いながら。

 

 

 

 





参考なまでに、

電子ロックピック Vault-wiki.
http://fallout.wikia.com/wiki/Electronic_lock_pick
使うかというと微妙というか、終始使い道がよく分からないで終わるアレです。でもかなりの便利ツールなんですよね。

気がついたらUAも30000超えみたいで、どうもありがとうございます。
今後ともよろしくです。
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