トレンチコートと白銀鎧   作:キョウさん。

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(´・ω・`)たぶんTwitter見てくれてる人的には「毎日画像上げてんじゃねぇよあくしろよ・・・」みたいに思ってたかもしれませんけどすいません、Fallout4の誘惑がウルトラジェット級でもうだめねこ。

(´・ω・`)X-01ボディとT-60脚部の組み合わせが至高だと思うのです。
(´・ω・`)ジェットの設定といい、4で再設定されたのか矛盾してるのかよくわからない設定が散見される点はこっちではうまいこと話を噛み砕いて描いています。

12842字。


第四章 妖精郷と再臨の氷魔 7話 『選択肢』

 

 

 

「おっ」

『あっ』

 

 

 平日の昼下がり、眠気が押してくるも落ちかけていく日差しがどこか余裕の無さを感じさせる頃合い。貸し出されて今は住まいとなっているウィルウィルの屋敷の一室の扉を開いたとたん、ロイズは何かにつまづく。

 

 それが何かを確認するまもなく、バランスを崩した彼の手からはお盆とお盆に乗った三杯のカッファが飛び出そうとするのだ。されど彼は必死の抵抗を一瞬のうちに見せ、しかし一杯が中空にその状態のまま浮き中身が零れ落ちそうになる。

 

 

 だが―――

 

「ッさせるかぁーっ!」

 

 吠え、彼は身体を一気に加速させると飛び出した一杯をお盆へと無理やり引き戻す。

 身体をひねり、重力を振り切らない程度の勢いでお盆をぐるりと移動させると地面を足でたたん、とタップ、無理矢理に姿勢を整えた彼の手に乗ったお盆には三杯のカッファが乗っていて、やりきった彼の顔は焦りの残滓と達成感を堪えたものとなっていた。

 

 

 その矢先、ぱちぱち、と手を叩く音。

 

「さすがロイズ、こういう時ほんとに器用だよね」

「いい曲芸を見せてもらったわい、今度暇な時広場で何かやらんか?」

 

「人に運ばせといてそれかよ!てか・・・」

 

 テッサとウィルウィルに小さな反抗を見せつつ、彼はすぐ足元の後方を見る。

 

 そこには自身のつまづいたものが鎮座していた、球形の本体に折りたたまれた脚、全体的にメタリックで機械的な部分が目立つ彼はそう、ガッツィータイプへの転換を経たMr.ハンディ、Mr.フォートウォースだ。

 

 ガッツィータイプの緑色とは違い銀色なものだから、開いた扉から差し込む日差しをやけに弾きまぶしい。

 

 そのあからさまに場違いな場所に座り込んでいる彼を見て、ロイズはじとっとした目を向けた。

 

「・・・ン何でそんなトコにいるんだよ、フォートウォース」

『ちょっと童心に帰りたくなったといいますか、箱詰め時代を終えた、あの家のドアを開いた瞬間ご家庭の子供が箱に抱きついてきた時の瞬間を懐かしく思ってつい同じことを・・・』

「お前Vault生まれだろ」

 

『・・・そうでした』

 

 そそくさと、立ち上がってはくるりと回ってみせるMr.フォートウォース。

 その様にごまかしのような意思が見えて、ロイズは改めてロブコ・インダストリーとゼネラルアトミクスという、旧世界の二大企業の集大成たるこのロボットの人工知能、その高度さにふとため息をついた。

 

 嬉しさだって感じれば、寂しさに座り込む、それがウェイストランド、もといアメリカで生まれたロボット達であった。

 

『実のところ自分がガッツィー型への転換を受けたことを忘れておりまして、ロイズ様の置かれたパワーアーマー他機器類のメンテナンスを行っていたところ、意図せぬオーバーロードを起こして機体がスリープモードに入ってしまったのです』

「そんな簡単にダメになるもんなのかよ?」

『ハンディ型の時とは違い、ハードを入れ替えて戦闘特化にされた私めではパワーアーマー一着のメンテナンスが精一杯の様でして、ハードの性能をソフトの処理要求が上回ってしまった結果このようなことに、いやはや恥ずかしく』

 

 戦端にプラズマライフルの取り付けられた物騒なアームで、自分の頭をこつんと叩くMr.フォートウォース。

 お茶目でやや軽快な動き方が板についている彼ではあるが、装備を満載した彼がその動作をするとテクノロジーに造詣のあるロイズとしてはいちいち、指先がぴくりと動いてしまうのはなんとも言えないだろう。

 

 

 するとそれに続くように、Mr.フォートウォースの”中”から声が響いた。

 

『知識と智慧は私が提供するから、彼にはあなたの戦う背中を守ることをお願いしたのです、ロイズ監督官』

「ZAXか・・・その監督官って呼び方、イマイチ何かこう、ぞわってするってかさー」

『仮にも監督官と任命されている、という自覚を持っていただかなければ、私が寂しくなってしまいますから』

 

 前にも話はしたが、おおよそMr.フォートウォースのボディ内にこっそりスピーカーを仕込んでおいたのだろう。Mr.フォートウォースの意思を完全に無視し内部から響くZAX1.24の声と、ロイズは会話する。

 

 その語り口に、少しの含み笑いがあることを感じさせるあたりにも、この高度なAIに対する感服をロイズは抱いた。

 

「でもよ、フォートウォースが全部やってくれたら楽だよなーって思ったんだけどさー、残念」

『あなたのサポートが十分に出来るよう、ちゃんとT-51b型のメンテナンスだけは可能なよう調整してあるのです。銃器に関してはアナログな部品も多いですし、それに日々出来るようにしておくに越したことはないでしょう?それになりより、元々Mr.フォートウォースはメンテナンスボットではなくホームメイドロボットですから』

 

「うー・・・文句言えねぇっ」

 

 ずばりと、論点のど真ん中で返されたロイズは頭を抱えて唸る。

 

 するとその隙を見計らったか、ロイズの会話の終わるまで待っていたか、ウィルウィルと向い合ってテーブルに座し、この世界におけるコーヒー、もしくはココアに近い飲み物であるカッファを嗜んでいたテッサがぴょんと椅子から飛び起きて、Mr.フォートウォースの目の前に顔を近づけた。

 

 彼女がにっと微笑むと、Mr.フォートウォースが若干後ずさる。

 

 

「こんにちわ、精霊ザックス」

『ZAX1.24でございます。分かりますよ、あなたは美しい娘だ、このMr.フォートウォースの内部温度が少しだけ上昇している・・・あなたと、未知なるこの世界の更なる外の知識を交換し合えることは、私にとって大きな利益になる。ご用件は?』

「うん?まああいさつしただけだったんだけど・・・ああ、そうだ」

 

 問いかけられ、テッサはぽんと手を叩く。

 それからまたMr.フォートウォースへ顔を近づけた。

 

「あれから、街はどうしたかって」

 

 思い出すのはほんの一週間程度しか前でないが、それでも濃厚に駆け抜けた日々。

 

 闘技場、緑の小人、壁に覆われた街――― そしてVault。

 自分たちの力が及ばなかった、と責めるのは傲慢だ。だがそれでも手が届かず炎に包まれた下町、侵略の手を受け、しかしすんでのところであの赤い魔法使いと剣士、そしてこの場所にいる二人の手によって食い止められた豪奢の街。

 

 世界が入り混じり混沌とした街で、戦った。

 それはテッサリア・ルナ・レオミュースも例外ではなく、心に刻み込まれている。

 

 全てが終わった後、ほんの一週間ではさほど変わってはいないだろう。だがそれでも、彼女にはあの場所が気になった、ずっと籠の鳥が嫌で外の世界に足を踏み出した彼女にとってとてつもなく大きな出来事であり、大きく触れ合ったから。

 

 

 ZAX1.24はふふっ、と軽く笑うと応える。

 不安を感じさせない、穏やかな口調だった。

 

『ご心配なくテッサリア嬢、街の復興は滞り無く順調であります・・・精霊と呼ばれ、祀られる聖堂が小規模ながら出来上がったり、ロボットが通るだけで祈りを捧げる人が現れたり、少し、私に寄り掛かられすぎている気がしますけど』

「無償で手を貸してくれる精霊なんて伝記くらいでしか登場しない存在だもの、これから世界中から地位のある人が来てムチャを言われることを覚悟しておいた方がいいよ?・・・ああ、君は”えーあい”だっけ」

 

『よくご存知で、げに恐ろしきは宗教ですから私の名の下に聖戦や違法な検問を行わないよう、私がうまくコントロールを成さねば、とは自覚しております。ともあれ街のインフラはようやくメンテナンスボットが完了させたところです』

「へぇ、早いねぇ」

『そう言えば、フランシェスカ嬢とフラティウ殿に関しては王都へと旅立った模様です、もし彼らに要件があるならそちらに』

 

 更に思い出すのは赤の魔法使いと、黒の剣士だ。

 

 ここに関してはロイズこそしみじみとするもので、ナマイキで可愛げがないが実力は確かな、憎たらしい赤毛の魔女っ娘と全身に真っ黒な甲冑を着込んだ、身の丈ほどの巨剣を振り回す大男の姿が想起される。

 

 だが、そういえば―――

 

「バラッドの奴はどうしたんだよ?」

『彼に関しては街に残ることを決意したようです、曰く街に家族が残っているし、給与のいい仕事を得られたので手放すのも惜しいと』

「あーなる」

 

 記憶に残る茶髪の優男とは当面会えそうにないな、とロイズは思う。

 共に戦い、駆け抜けたわずかな日々。そうしていると、思い出すのはもう一つ。

 

 ゆらり、と揺れる猫の耳と灰色の髪、その行方だった。

 

「・・・ゼノビアの奴は」

『今のところは確認されていません、あの時の状況から判断するに他の場所へと逃亡した線が濃厚でしょう。これは私の勝手な予測ですが、彼女はあなたを”待っている”と言い残したので――― あなたの近くに潜伏している可能性は低いと思われます』

 

「そっか」

『彼らは組織であるとのことですから、アジトのような潜伏場所を用意しているのでしょう。それでもお気をつけ下さい、待たされすぎた女性は思いがけない行動に出る可能性も十分にあると認識しております。特に彼女の、あなたへの執着は並々ならぬものを感じていますので・・・』

「わかった、気をつけとく」

 

 聞き終わり、ZAX.1.24に礼を述べロイズは振り返る。

 

 灰色髪のゼノビア、今起きている問題、逃げ去った竜――― そして元の世界への帰還。この世界における”決着”をまだいくつも残しているのだと感じ、自分にはまだまだ当分、心底休む機会は与えられないのだなと思いふと、頬の傷を小さく掻いた。

 

戦闘職(パラディン)は本業じゃねーってのに」

 

 小さく愚痴る。

 

 改良型パワーアーマーのテスト運用に駆りだされただけとはいえ、元々彼は内勤、研究職にあたるスクライブだ。

 技工、斥候の役割を持つナイトのように最前線や要注意地域の偵察に駆り出されることもなければ、戦闘の華形であるパラディンのようにパワーアーマーを纏いエナジー・ウェポンを携え戦闘区域で他を圧倒するのはない、本来専門外なのである。

 

 もっとも、スクライブであるがゆえにパワーアーマー、装備、機器類のメンテナンスが滞り無く進むために自分たちがここまで戦えてきたことも確かであった。

 装甲はともかく、パワーフレームに関しては200年以上の時を経ても問題なく動作するとはいえパワーアーマーも機械、適度な補修をしなければその性能は大きく落ち込むことになるだろう。

 

 一応はパワーアーマーの能力と、持ち前の格闘技能でごまかしきれているが本来、パワーアーマーはそのような用途に使われるべきものでもない。生身の人間が扱いきれない重火器や危険な武器を用い、強固な装甲を活かして最前線で敵を撃ちあうためのものだ。

 

 殴りに行くのは問題外であるし、そもそも機運動性の関係上相手が逃げればこれがなかなか追いつけない。特殊樹脂と合金製で軽く機動性に長けるT-51b型とはいえ、このあたりは拭えないのだ。

 今は、対峙した相手の戦略、戦術、攻め手に能力、そういった諸々の要素をパワーアーマーの性能が上回っていたからこその勝利であるからこそ、なんとかやってきているのだ。相棒はプロフェッショナルで思い切りがいいがロイズ本人はまだまだ実戦の素人なのである。

 

 

 ―――もし、パワーアーマーの能力を上回る相手や、力の差を戦術で逆転させる相手と向き合ったら。

 

 

 部屋の隅に置いてある、最近各部に無茶をかけすぎたせいか性能がやや落ち込んだパワーアーマーに手を置きながら思う。

 されど今はまだ、考えても仕方ないと思いながらロイズはパワーアーマーの下まで行き、工具箱から取り出した六角レンチとバールでパワーアーマーの装甲部分を取り外しながらパワーフレームを露出させ、メンテナンスに入った。

 

 すると、横合いからテッサが覗き込んでくる。

 ふと見るとその下にはウィルウィルがちんまりと収まっていた、こうしてみると年齢さえ知らなければ姉妹か、預かった子供とお世話をするお姉ちゃん、程度の関係に見えてくるから面白い。

 

そんなことを考えていると、見透かされたのかウィルウィルがぶぅ、と頬をわざとらしく膨らませたから、ロイズは手を動かすに集中させた。

 

「それにしても、いつ見てもとてつもなく・・・」

「精巧、じゃねぇ、歴史に残るドワーフの精匠でもこれほど高度で緻密で、しかも強力な鎧を作り上げるなどできやしまいて」

「戦争は技術を発展させるって言うだろ、旧世界じゃこんなもん作んのにこっちの(きん)がいくつあっても足りないくらいの(かね)をかけたんだよ・・・これだけ作るのにたったの何年ってのが信じられねー、ホント」

 

 パワーアーマーの歴史は深く、それは210年以上遡る。

 

 2065年から始まったパワーアーマー、”人体ベースの戦車”の開発において多くのパワーアーマー”もどき”が生み出されたが、それは民間の事業や作業等においては有効であったものの戦場に持ち出すにはあまりに未熟なものであった。

 弾丸を防ぐ装甲も、膂力を与えるフレームも、動力となる核融合技術も、その当時にはまだまだであったのだ。だがこれが契機となり、アメリカの軍産業、パワーアーマー開発は一気に飛躍することになる。

 

 

 紆余曲折を経て現在規格初の量産型パワーアーマー、T-45d型が開発された2067年に、それによって戦争そのものが変わったと言っても過言ではないだろう。

 アメリカと中国、その戦争は当初拮抗し、2066年には中国軍がアメリカ領土のアラスカ州アンカレッジへの侵攻を開始、事実上の戦場となりその状況が完全に膠着していた頃、T-45dを装着した部隊が投入され戦況は一変した。

 

 歩行戦車、小さく狙いづらく、しかし防弾板を身に纏った彼らは軽戦車並みに強靭、そしてミサイルランチャー、ミニガン、重火器を容易に振り回す兵士は中国軍との最前線に投入され、彼らの前線の後退と恐怖の植え付けを招く。

 

 結果拮抗していた戦局は一気に傾き、あと一歩のところまで中国軍を追い詰めることに成功したのだ。中国軍もこの事実を知りパワーアーマー開発を進めたものの頓挫、現在好事家や軍関係者の間でたまに出回る、”中国軍ヘイ・グイステルスアーマー”がその名残と言われているが定かではない。

 

 しかしそれでも一歩足らず、中国軍を仕留めるにはいかない。

 そこで投入されたのが今ここに存在する、T-51bパワーアーマーであった。

  

 

 50口径の大口径弾を弾く装甲、軽量で機動性に優れ、かつ表面の銀アブレーションコーティングは唯一パワーアーマーにも有効であったエネルギー兵器による攻撃すら弾く。アンカレッジ戦線に投入されたこのパワーアーマーは、大戦争当時のパワーアーマーの頂点と言われる性能を誇っていた。

 

 T-51bによる大部隊、歴史に残る二人の潜入工作員、これらによってアンカレッジは解放され、アメリカはひとつ、勝利を重ねた―――

 

 

 ―――しかしそれは、”最終戦争”の前年。

 生産された多くのパワーアーマーは、今、倉庫と砂の下に眠っていて時折掘り起こされまた戦争に駆り出されるのだ。

 

「それは前にも聞いたね、でも一つ作るのに数年かけるって・・・」

「いやたぶん数百、他の奴合わせれば数千はあるかもしれねーけど」

 

「えっ」

「生産力がダンチなんだよ、ラインで一気にガーッと造っちゃうの」

「ロイズ君、テッサちゃんから聞いたが君の世界がわしらのとこに攻めてきたらひとたまりもなさそうだのぅ・・・」

 

 掘り尽くされた、もしくはパワーアーマー配備の関係上西側、特にカリフォルニア近辺では歩けばパワーアーマーが落ちている、といったことは滅多になく、B.O.Sを除けば力のある商人などが隠し持っているのがせいぜいだろう。NCRがまともに扱えるパワーアーマーを確保するのに奔走していたことに、そのあたりが見て取れた。

 

 一方、首都防衛や生産の関係で東海岸では歩けばフレームとコアごとパワーアーマーが落ちているという話をロイズは聞いたことがあった、事実かどうかは知らないが、かの有名な”リオンズ派”に敗走したエンクレイヴ残党が保有していたX-01改良型パワーアーマーも稀に見つかるという噂もある。

 

 特にパワーアーマーを使えないスーパーミュータントに占拠された施設や、デスクローといった危険生物が徘徊する場所、旧世界の研究所や軍施設など防衛設備が厳重な場所に関しては顕著であるらしい。

 

 東海岸に派遣された部隊では前エルダーの様態が芳しくない、など不穏な情報ばかりが流れてくるがそれでも一種の宝探しだ、ロイズの夢のひとつに、それらのトレジャーハントもあった。

 

「あんま数ないけど、最終戦争ギリギリでロールアウトしたT-60が最高だとかエンクレイヴには敵わねーとか言ってる奴らがいるけど、オレはこのT-51bが一番好きだよ、T-60はゴツいしX-01は重すぎる」

「色々着たことあるの?・・・っていうか、これ以上のものがあるの?」

「スクライブで身体が頑丈、おまけにPip-boyまでつけてるってなると色々頼まれてよ、パラディンが手ェ離せないってT-60の調整に駆りだされたこともあるし、誰も着たがらないとかでX-01着せられたこともあった・・・あれは肩曲がらねーしイヤだ」

 

 

 特にX-01などはB.O.SもNCRもこぞって残党狩りに勤しむかのエンクレイヴの保有していたパワーアーマーであるため、奇特なエンジニアでもなければ好んで取り扱いたいと思う代物でもない。

 

 性能に関してはさすがに米軍部や技術者、政府関係者の子孫の末裔が産みだしたものであるだけに、セラミックと軽量合金を組み合わせた装甲は現存する全てのパワーアーマーの防御力を上回りT-51bですら目ではないほどの防弾性とエネルギー防御、構造を持つ。

 

 反面、可動域と機動性、そしてなにより不人気な”悪人面”のヘルメットがB.O.SでもNCRでも気に入られなかったらしく、特にNCRではまともに扱える物をエンクレイヴが最後っ屁でほとんど残さなかったのも大きい。

 

 B.O.SとNCRが同盟を組みパワーアーマーを引き渡された後でも、X-01は性能から喜んで使う少数の者を除けば、そもそも絶対数が残っていない、敵の使用していた装備というだけもありロイズ含めた多くは好んではいなかった。

 

「ロイズ君の方の兵隊さんはみんな、こんなのを着とるんか?暑くないんか?息は?」

「うちの戦闘員はだいたい着てるけど、そんなのB.O.S程度のもんだからなー・・・たぶん専売特許だよ。ヘルメット被ってるとちょっと息苦しいけど呼吸はできるし、ガス撒かれてもフィルターで抑えられるし、排熱機構があるから暑くねーし大丈夫」

「ほえ~、なんかわからんけどすごいねぇ、こんなのいじくり回せるなんてロイズ君すごいんねぇ」

 

「ば、婆ちゃん撫でないで・・・」

 

 座り込んで脚部を弄っているものだから、ウィルウィルがなでりなでりとロイズの頭をかき回す。

 

 これにはロイズも気恥ずかしくなったのだが、しかし相手の年齢が四捨五入で四桁代に突入しかねないと考えると振り払うわけにも行かず、仕方なしに弱々しく言葉で抵抗しながらやんわりと受け入れる。

 

 しかしながらロイズは、なんとかこれを振り払えないかと議題を変えてみることにした。

 

「ああ婆ちゃん!そういやあのさ!」

「突然に話題を変えたけど、そんなに嫌だったの?」

「テッサうるせっ!」

 

 見透かされてふふっと笑われるロイズ、テッサはそのすぐ横に腰を下ろした。

 そして当のウィルウィルもまた、ロイズの呼びかけを受け床に正座したのだった。

 

「どうしたかの、ロイズ君?」

「いや、あのさ、あの女の子」

「・・・ああ、ニュイのことか」

 

 思い出すのはこの集落に棲む者達と同様、金糸の髪を持つ少女。

 

 今、彼の相棒に”兄”という幻影を見ている女の子だ。

 とっさに話題を変えたかったのもあるが、気になっていたこともあった。

 

「発破かけてきたけどよ、アイツ一人じゃどーにもなりそうにねーっつーか」

「まあねえ、わしも数百年生きとるから幾らかああいったことに面と向かった経験もあるにゃあるけんのぉ・・・黒い相棒君はまだ150くらいじゃけ?世界も違うし、なら立ち会ったことがなくてもおかしくはないかねぇ」

 

「まだって、ウィルおばあちゃんが長生きなだけだよ」

「ま、そうか」

 

 テッサに言葉をかぶせられ、カッファをすすり肯定するウィルウィル。

 ちなみに彼女はこれでもかというほど砂糖を入れるので、ロイズは口の中がざわざわした。

 

 だが先の言葉を受け、ロイズは食いつく。

 幾多の時を経て得た知恵があるのなら、すがりたいと。

 

「でも婆ちゃん、経験したってこた対処法も分かるんだろ?」

「食いついたねロイズ君、まああるにはるんじゃがその・・・なぁ」

「・・・ボクも知識の上では知ってるんだけど、ね」

 

 テッサを見て、ウィルウィルも共に困った顔をする。

 ロイズはそれでもなお、聞かなければ済まないとばかりにメンテナンスの手を止め、ウィルウィルの手を握って相対し目を正面から見据えて問う。

 

 年の功、手慣れてはいるのだろう、ウィルウィルは「情熱的なのは嫌いじゃない」とロイズの手を軽く撫で自覚させると、少しだけ表情を重くして答えた。

 

「荒療治と、生兵法と、気長に待つ、選べるかの?」

「ナマ・・・何だって?」

「生兵法、未熟や不足なのにするものじゃけん、じゃからやりたかぁないんだけどね」

 

 目をやや逸らしながら言うウィルウィルに対し首を傾げ、しかし教えを請うロイズ。

 ウィルウィルはしばし考えこむと、口を開いた。

 

「まあ教えるけんの、ロイズ君は続けてくりゃれ」

「お、おうわかったっ」

 

 言われるがままにメンテナンスを続行するロイズ。

 聞く耳に意識が向きいかんせん手の動きが鈍りはしたが、察したMr.フォートウォースが助手として補助をすることで元の手の動きに戻ることになりロイズは順調に、二つの作業を平行できた。

 

 ウィルウィルはもう一口、カップからすすると言葉を続けた。

 

「順に説明するさね」

 

 カップを床に置く。

 ロイズは外したヘルメットを、床に置いた。

 

 

「ひとつは気長に待つ、つまり時間じゃね・・・ただホーリーエルフの時間は長い、最低でも数年かかるじゃろうて」

「きっつぃなぁ・・・」

「じゃからこれはナシってことさね、本当はこれが一番良くて、本当は集落のみんなで取り組んでじっくりしなきゃならないんじゃけど・・・あの黒い相棒君がどこかへ行けばきっとあの娘は狂う、荒療治せざるを得なくなってしまうけんのぅ、君たちがここにいてくれればいいんじゃが、それは我儘さね」

 

 横にいるテッサも頷く。

 ロイズは手元を狂わせないまま、調整の終わったヘッドランプをネジ留めした。

 

 ウィルウィルはカップを取りまた一口すすると、続ける。

 

「ふたつは生兵法・・・つまりわしらの専門外じゃね、”催眠”じゃよ」

「催眠って、それ・・・」

「外法一歩手前、ってとこだね。あのゼノビアのような記憶操作、それは忌むべき魔法って言われて外法扱いされてるから使われるのはためらわれるんだけど・・・催眠は何かと便利だから除外されてる。ボクの故郷でも尋問官とかがよく使ってるし」

 

 横からテッサが補足し、疑問を解消する。

 だがそれでも噛み砕けず、ロイズは更に問いかけた。

 

「催眠ってアレだろ、輪っかにヒモくくりつけてゆらゆら揺らしたり、何かよくわからないパゥワー・・・で寝てる人に喋らせたりするあの」

「それが何かは知らないけど、催眠は歴とした魔法だよ?陰系統に強い適性がないとダメだからボクはできないし、ウィルおばあちゃんも」

 

「専門外じゃねぇ、できんことはないけど成功するかわからんけ」

 

 腕を組み、首をふるふると振って応えるウィルウィル。

 また一口すすると、続けた。

 

「寝てる時でもいいし、眠気眼でもええ、意識がぼんやりしてるあの娘に催眠をかけ、現実を無意識下にねじ込む・・・辛いと思うよ、起きたら現実を認識してて、それが望んだものでもない。でもはっきりと分かっちゃるん、それにもしかすると」

 

「もしかすると・・・?」

「起きてから、もっとひどい現実逃避をするか最悪壊れてしまうかもしれんけねぇ」

「廃人、か」

 

 頬を抑え考えこむロイズ。

 相棒の性格を考えるときっと、それは認可しないだろう。

 

「そいつはチェンジ、保留で、最後は?」

「まあそう言うと思ったさね、最後は・・・君らにかかってるだろうねぇ」

「オレら?」

 

 ウィルウィルはぐっと、カップを深く傾ける。

 飲み終えた頃には、もう中身は空っぽだった、まるで、これ以上はないと語るように。

 

 ロイズは固唾を飲み、その答えを待ち受けた。

 

 

「―――”復讐”」

 

 ゆっくりと、しかしはっきりと話す。

 ロイズはその言葉だけで、察してしまった。

 

「人間もエルフも亞人もどんな生き物も、程度はあれど何か重大な局面を乗り越えた時――― ”踏ん切り”を経ることで辛い経験や記憶から決別できるんじゃけぇのぉ」

「踏ん切りって言うけどよ、でもそれだったら本人がやらねーと意味ねーんじゃねぇの婆ちゃん?つまりオレらにあのドラゴンぶっ倒せってんだろーけどよ?そりゃオレと、あのグールとならやってやるけどよ、でも・・・」

 

「いいんじゃよ、重要なのは心を壊した、兄を殺した存在が死したという事実、まあ紅竜の首でも引きずってくればそれでええ・・・復讐ってのはねロイズ君、終わったあとむしょうに虚しくなるもんなんじゃよ、とっても・・・」

 

 立ち上がり、カップをテーブルまで置きに行くウィルウィル。

 その顔はうつむき加減であり、その爪弾いた髪から見える横顔には一抹の哀愁をロイズは感じた。

 

「でもね、その虚しさのうちに”区切り”をつけるんさね。受け入れて、虚しく感じて、納得して・・・それでようやっと前に進める、いや、進まなきゃいけんのさね」

「区切り、か」

「もちろんあの娘にゃできん、そしてきっと今は君たちにしかできんね・・・いいんじゃよ、そんな無理しなくても、竜に立ち向かうのは王都から派遣されてくる”炎神”のような規格外の英雄のやること、あれだけ派手に飛び回ってるののならそのうち来るて、それにこの問題はわしらの集落の問題、君らが去っても時間がきっと解決してくれるけんの」

 

 にっと笑って、しかし悲しさは滲ませる。

 そんな彼女の顔を見て、ロイズは六角レンチを工具箱に収めると立ち上がった。

 

 時を同じくして、パワーアーマーのメンテナンスは完了していたのだった。

 

 ロイズは少し、頬の傷を掻くとしばし考えこみ、頭を掻き、あちらこちらに目をやりしばし、ふぅ、と息を深く吐く。それはため息であったが、呆れや、疲れといった感情は込められていなかった。

 

「―――っ婆ちゃん」

「決まったかい?」

「まあよ」

 

 きっと、それは。

 覚悟はもう決まっているという、意志が篭っていて―――

 

 

「・・・オレ、いつかは故郷に帰りたくってさ」

「遠い、すごく遠い場所なんじゃってねぇ、わしも空間系の魔法には造詣はあるけんど・・・世界を超えるにはもうちょっと研鑽が必要そうじゃ、ごめんね」

「あ、いや、謝んないでいいよ婆ちゃん、オレ気にしてないから、それでさ」

 

 こつん、とT-51bの胸部を叩く。

 竜との戦いで擦り切れた白銀のペイントからは、元の緑色が少しだけ覗いていた。

 

「だから一直線にそれだけやってていいかってーと、何か違う気がすんだよ、流儀は通して悪は断罪!なんてのがオレとグールの決まり事なんだけど、それとは別に・・・出会った人達もどうせいつか会わなくなるから見捨てていいかってーとなんかさ」

 

 T-51bの右肩をなぞり、そこに塗られたマークに手を添える。

 剣と歯車、そしてサークルと翼、B.O.Sの旗印であった。

 

「・・・結局、戻ってもここにいる人達は生きて、同じ時間を生きてるんだろーって思うとよ、それがひでー目に遭ってるのに知らんぷりして逃げるってのはあんまりにも・・・寝覚めわりぃっつーかさ、だから手ェ届くうちは手ェ伸ばすのもいいんじゃねーかって」

「強いね、君は」

「べっつに・・・まあ、あいつは絶対見捨てていくなんて言わねーだろうし、そしたらオレだって動けねーし?だっ、だから少し付き合ってやるっつーかさ!だから・・・」

 

 ウィルウィルに向き直るロイズ。

 ぎゅっと握った拳を突き出して、言った。

 

「やるだけやる、時間に任せる前にオレらで出来るならやってやる。ドラゴンぶん殴るんだって何だって、オレの身体が動いて拳が握れるうちはオレは折れねぇっての!だから婆ちゃん、ドラゴンの居場所早く見っけてくれよな!絶対オレらで仕留めてやるからよ!」

「・・・ふふっ」

「どしたよテッサ?」

 

「いや、やっぱり君は素敵だなって」

 

 くすっと笑って、にっと笑って言う。

 その可憐な笑顔にロイズはつい、目を逸らして顔を赤らめた。

 

 

「べっ、べっつに今更・・・あっ、そうだ、婆ちゃん!その、例の侵入者ってのは!」

「また話題を変えたね?」

「うっせテッサ!」

 

 ムキになって言うものだから、ウィルウィルもテッサも笑って仕方がない。

 されど聞かれては答えると、ウィルウィルもまた微笑んで答える。

 

「増えとる、数人ほどが付近をうろうろしておって・・・何か調べとるらしい、位置だけなら完全に把握されとるようじゃけぇ、いつ攻められてもおかしくはないけんの。アウルの奴にはもう言ってあるから警備は厳にしとるが気をつけぇ」

「分かった婆ちゃん!じゃ、オレパトロールついでにこいつのテストしてくるっ!」

 

 

 顔の赤みの抜けないまま、ロイズはパワーアーマーの背部バルブに向かうと、手に持ったフュージョン・コアをバルブ中央の差し込み口に叩き入れ、バルブを反時計回りにガコン、と回す。

 

 核融合バッテリー、フュージョン・コアを起点とし予備燃料のマイクロフュージョン・セル、各部のモーター、集積回路、様々な箇所に通電すると同時に眠っていたパワーアーマーが目覚め、駆動音を響かせるのだ。

 

 統一規格のパワーアーマー、パワーフレームの上に載せられた装甲、機器、オプションパーツがパワーフレームの展開に従って脚部、腕部、背部に頭部と順に、しかし一瞬で展開しその精巧極まりない科学の極致の内側をさらけ出す。

 何度か見ているテッサはともかく、ウィルウィルに至ってはその曲芸じみた装甲展開ギミックに感嘆しつい拍手してしまうほど。

 

 そしてリコンアーマーを装備したロイズがその”歩行戦車”に”搭乗”すると同時、装甲とパワーフレームが閉鎖され彼の身体を外部の脅威、あらゆるものから守る防壁となって立ちはだかる。50口径の弾丸すら弾く鉄壁が、彼の身体を360°全てを覆い尽くすのだ。

 改良されたT-51bはPip-boyを取り付けた腕だけも綺麗に露出させしかし、隙間なくフィットさせるとそのシステムと結合する。

 

 

 修理を終え自動化したバルブの回転と同時リコンアーマーとパワーフレームの接合部がオートフィットされ、低めの身長を持つ彼の身体にもぴったりとその、身体を覆う装甲服と強化外筋の感覚が伝わってくる。

 そして最後に、彼の視界にパワーアーマーの各データが映り込むのだ、Pip-boyを通して得られたレーダー表示、パワーアーマー各部の被害状況、もう100年は持ちそうなフュージョン・コアの残量、そして精神力とV.A.T.S残量を示すAPゲージ、様々だ。

 

 彼が身体をゆっくりと動かす。

 自分が動くのではなく、パワーアーマーをついてこさせるように。

 

 彼の意志に従って動き出したパワーアーマーは、彼の動きと寸分狂わず追従し歩き、そしてやがて走りだして外の世界へと扉をくぐっていく。

 

 あとに残されたテッサとウィルウィルはまた、テーブルにつくとその背中を見送った。そしてふと、もう一度カップに残されたカッファを飲もうとしたころ、ウィルウィルは自分のものが空で、テッサは既に冷えきっていたことを思い出した。

 

 

「・・・もう一杯淹れてもらえばよかったかなぁ」

「彼のはうまいけんのぉ、まあいいさ、ロイズ君のが残ってるから」

「さすがロイズ、これを見越してたんだねーっと」

 

「ふふっ、それにしても頼もしいねえ、彼」

「でしょう?だから素敵なんだ、ロイズはね・・・そう」

 

 頬杖をついて、テッサを見るウィルウィル。

 その視線を受け、テッサは笑って答えた。

 

 

「だから結構、好きなんだ」

「どういう意味でかなぁテッサちゃんは」

 

 

「・・・今はきっと、友人として」

 

 

 

 昼下がりの空、開け放たれた扉からは日差しが差し込んでいた。

 少なくとも今日は暗雲に見舞われることはないだろうと、そう彼女は思えた。

 

 

 

 




https://pbs.twimg.com/media/CVX8VAIU4AAcJoI.png
(´・ω・`)ちなみに普段はこんなパワーアーマー使ってます。
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