ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
ライダーがたくさん出る話を書きたいなーと、そんな軽い気持ちで書き始めた本作ですが、
出来る限り頑張って書きたいと思います。
火野映司にはかつて友がいた。
戦いの最中に出会った彼は、一言で言えば欲望のみの怪物であった。
怪物と映司は互いに利用しあい、時に反発し、時に助け合った。
怪物に過ぎなかった彼は、出会いと戦いを経て人を知り、命を知った。
映司は怪物を知り、彼に心がある事を知った。
死線を潜り抜けるたびに、二人に友情が生まれ、深まっていく。何時しか彼は無二の存在へとなっていた。
そんな彼は最後の戦いで散っていった……。
旅を続ける映司の手には少しの小銭と明日のパンツ、そして彼の遺品である割れたメダルが残るのみ……。
本来の歴史であれば、彼は旅の末に友を蘇らせる方法を見つけ出すものの、それを果たせたのは最期の時であった。
だが、この世界は……、世界修復の際に切り捨てられた、一直線の時間の上に多くの可能性が存在する事を内包した世界。
ゆえに、本来の彼の世界ではありえない可能性が存在していた……。
「お願いです。俺に……力を……貸してください」
目の前で土下座をせんばかりの青年に、枝見鏡花は端的に事実のみを伝える。
「言っておくけど、今とは方式の違う古代の錬金術の産物よ。時間と……相当な費用がかかるわ」
突如来訪してきた青年が見せた一枚の割れたコイン。コアメダルと呼ばれる古代錬金術の遺産だ。彼の話によれば、鴻上ファウンデーションでも割れたメダルの修復はできなかったらしい。
現代の錬金術師である鏡花からしてみても未知の技術の産物であり、確実に修復できるという保証はなかった。
費用と時間が無駄になるかもしれない。そんな彼女の忠告に青年……映司はこう即答する。
「一生かかってもどんなことをしても払います! きっと払いますとも!」
彼のその言葉に鏡花はにんまりと笑うとこう返す。
「それを聞きたかった」
見る人が見れば感動的なやり取りだろう。数年後に出会う少年が知れば、感動のあまりテンションが爆上がりしていたかもしれない。
だが、二人のやり取りを見ていた少年……黒鋼スパナはものすごく冷めた目と呆れ声でこう語る。
「何を馬鹿な小芝居をしているんですか……」
アンチョコを用意してお客さんを巻き込んで何をやっているんだ。スパナの絶対零度の視線に、鏡花は明後日の方向に視線をそらせた。
付き合わされた映司はきょとんとしていたが。
「で、直すんですか?」
「治すわよ」
映司から預かった割れたコアメダルとサンプルとして手に入れた数枚のセルメダルを前に、スパナが師である鏡花に問いかける。
言葉のニュアンスが微妙に違うのだが、その事にはあえて触れない。
「見た目だけならすぐにでも治せるんだけどね」
物体の形状変化は錬金術の初歩だ。割れたメダルを直すだけなら錬金術を修めた者なら誰にでもできる。現代科学を基本とする鴻上ファウンデーションでは繋ぐことすら難しいだろうが、錬金術師にとっては朝飯前だ。
もっとも……。
「流石は伝説の欲望の王が残した遺産よね。保持している情報量、エネルギー量が桁違いよ。ケミーにも勝るとも劣らないわ。くっ付けただけじゃ、治った事にはならない」
この半分に割れて破損した状態でも、莫大なエネルギーと情報を持つ。
これを単純にくっつけたところで治った事にはならないだろう。最悪、このメダルが持つ彼の情報が永遠に失われる。
「まっ、映司さんにも説明したけど、時間をかけてゆっくり情報とエネルギーをすり合わせていけば治せると思うわ」
もしくは莫大な欲望のエネルギーを使い、瞬間的に繋ぐかだ。
もっとも、これは桁違いのエネルギーがいる。それこそ、死の間際の最も欲望のエネルギーが高まる瞬間でもない限り不可能だろう。しかも、本当に修復できるかどうかは賭けになる。
当たり前だがそのような乱暴な手段を取る気など欠片も無く、時間をかけて研究、修復することになるのだが……。
「あれが……グリードのコアメダルか……」
全ての人に誤算があったとすれば、この時期の錬金連合は腐敗と悪意に満ち溢れていた事であろう。
ある邪悪な存在の信奉者であったその人物は、枝見鏡花が集めた資料を無断で複製、古代の王を手駒にしようと研究、画策する。
あるいは、火野映司にも変化があった事も誤算だったのかもしれない。
彼は東京から長く離れる事が出来なくなり、しばらくして旅を行う事を止めた。いずれ蘇る友を待つ事に決めたのだ。
そんな彼に、亡き祖父の友人が一つの道を示す。
彼の次の旅が始まる。動きやすかった装束と明日のパンツは、見栄えの良いスーツに代わる。
ほんの少しの小銭の代わりに、友を思わせる赤い羽根飾りを胸に付ける事となった。
そして時は流れて……。
人払いは済んでいる。
この場にいるのは関係者だけだ。とはいえ、こうも学び舎を破壊されてはたまらない。
4人もの戦士がそろっていても、近づいてくる敵の圧倒的な力の前に防戦一方だ。
「くそっ、なんて力だ……」
赤紫のヴァルバラドが片膝をつきながら、悪態をつく。強化スーツの限界か、息をするのも辛いダメージだ。
「ったく、冗談じゃないぜ……」
ダメージの大きさでは仮面ライダーバースも変わらない。装甲の一部が砕け散り、下の機械部分が見えている。
「でも、諦めるわけには……」
青いメタリックボディの仮面ライダー……ガッチャードは3人の中では一番ダメージが少なかった。
とはいえ、肩で息をしており限界は近い。
「君たちは……逃げてくれ」
そんな3人をかばうように、最後の仮面ライダーが立ちふさがる。
赤いマスク、金色の腕、緑の足‥…彼の名は仮面ライダーオーズ。火野映司のもう一つの姿だ。
「映司さん、でも!」
「あいつの狙いは……アンクのコアメダルだ。これ以上進ませるわけにはいかない」
オーズはこれまで数々の死線を潜り抜けてきた歴戦のライダーだ。それゆえにまだ未熟な少年をかばうように戦っており、そのダメージは計り知れない。
だが、その意思は微塵も折れておらず、闘志も尽きていない。
「すまない、アンクを逃がしてくれ……。俺は刺し違えてもあいつを止める!」
「ほう、私と刺し違えるとは大きく出たな」
粉塵の彼方から、攻めてきた敵が姿を現す。
その姿はオーズと瓜二つ。胸にサークル上のブレストアーマーを持つ、仮面の戦士。その存在の名は古代の王仮面ライダーオーズ。
800年の眠りから覚めた欲望の王である。
古代の王はその赤き目で若き仮面ライダーたちを見つめると、つまらなそうに吐き捨てる。
「冥黒王が生み出したケミーとやらも大した事は無いな……」
力があるのなら多少は腹の足しにでもなるかと思ったが、期待外れもいいところだ。もはや不要、王の時間を無駄にとらせた以上、処刑こそがふさわしい……。
古代の王はゆっくりと満身創痍の仮面ライダーたちに近づく。
それを止めるべく、セルメダルをエネルギーに変換する特殊な剣、メダジャリバーを構え古代の王にオーズは挑む。
剣が交差し、激しく火花を散らす。
何度となく剣が打ち合い……やがて限界を迎えたのはオーズのメダジャリバーであった。
剣は唐突に砕け、へし折れる……。
「この程度か……オーズは一人でいい」
そのまま古代の王の斬撃がオーズを切り裂く。
激しい火花と共にオーズは吹き飛ぶと、ついには変身が解除される。
倒れた彼にとどめを刺すべく、王は剣を振り上げる。
「映司さん!」
「やめろおおお!」
激しい戦いに手出しが出来ずに見守っていたライダーたちが、次々に古代の王に襲い掛かる。
だが、結果は同じであった。
王が剣を一振りするたびにライダーたちが吹き飛び、その変身が強制的に解除される。
「無様だな……。地獄に落ちろ、未熟な錬金術師ども!」
最後とばかりに、王の掌に莫大なエネルギーが蓄積される。
解き放たれれば、彼らはこの世から消え去る事になる。
「させるか!」
最後の力を振り絞り映司は立ち上がる。
せめて彼らだけでも守らねば。その一心でその身を盾にする。
……そして……。
衝撃は……来なかった。
誰かが放ったエネルギー弾が、王の放つ力を相殺したのだ。
「何をやっているんだ、映司」
崩れた学園の奥から、一人の男が足音と共に姿を現す。
奇妙な出で立ちの男だった。黄金色に染めた髪に赤いメッシュを一房たらし、目鼻がくっきりとわかるメイク。着崩したシャツと黒いズボン。
「アン……ク?」
「何、ハトが豆鉄砲を食らったかのような顔をしていやがる」
挑発的な笑みを浮かべる男に、映司は泣きそうな、笑いそうな、こんな危機的状況には全くふさわしくない表情を浮かべ……一言こう言った。
「おかえり……アンク」
その言葉にアンクは何も答えない。
だが、いつもしかめっ面の彼には珍しく、照れたような、微笑んだような、微妙だけどとても良い表情を浮かべた。
それだけで、二人には充分であった。
「ほう、アンク……蘇っていたか」
そんな二人の再会に水を差すのは、古代の王。
傲慢な仕草をそのままに、王はかつての配下に声をかける。
「けっ、起き抜けに嫌な顔を見たな」
かつての配下が主だった存在に向けたのは、侮蔑の視線。
心底嫌そうに、汚いものを見たかのように、嫌悪の感情をむき出しにする。
「ほう……かつては最も忠実だったお前が言うようになったな」
不快さと愉快さ。二つの感情が王から発せられる。
遥か過去の時代なら……アンクは反発しながらも恐怖していたかもしれない。
「はっ! 都合が良いから利用していただけだ。映司、いけるな?」
だが、そんな感情は欠片とわかない。王の発言を鼻で笑うと、相棒に向かい問いかける。
「当然だ。いける」
映司はすでに満身創痍だ。それなりに値段がするスーツはもうボロボロだ。トレードマークである赤い羽根飾りに至ってはどこかに吹き飛んでおり失っている。
だが、赤い羽根飾りはもう必要が無い。彼はすでに取り戻していた。
今まで以上に気力を漲らせ、映司は構える。
「上等だ、これを使え!」
投げられたのは赤いメダル。いや、赤かったメダル。
メダルは空中で発光すると、赤と金色のグラデーションを刻む。
ベルトのスリットに3枚のメダルが差し込まれる。
メダルがスキャニングされ、ベルトが声高らかに歌う。
【タカ! クジャク! コンドル!】
「変身!」
灼熱の炎の羽根が舞い散る。
業火の不死鳥が、その身を覆う。
それはそれまでに無い、新たなる力……。
「な。なんだ、なんだその姿は!?」
古代の王が、初めて見る……自分では到底到達できない究極の欲望に慄きの声を上げる。
そして、声を上げる人物がもう一人……。
「すごい……、すごい……最高の、二人のガッチャだ!」
倒れていた宝太郎が興奮気味に叫びながら立ち上がる。
あれは、自分とは違うが一つの究極の形……最高のガッチャだ。
その思いが彼の胸を焼き、その熱さは……熱さは……。
「あちっ!? あっちちちちち!? な、なにっ!?」
唐突に熱さに悶える宝太郎に周囲が思わずきょとんとする。
慌てて胸を探ると、そこには少し前にこことは違う世界を守護する青年から託された一枚のカードが……。
「オーズのカード? なんで……って、あちちち!?」
燃えるように熱いオーズのカードが脈動する。
カードは熱く、眩しく輝き……やがてもう一枚のカードを生み出した。
「えっ!? なにこれ……アンクカード?」
「えっ!?」
唐突に知らない小僧に名前を呼ばれたアンクが、彼にしては珍しい間の抜けた声を上げる。
先ほどまでの再会の感動の余韻を吹き飛ばす展開についていけない。
「そっか、そういう事か!」
一方、唐突な展開ではあるが、何をすればいいのか……、宝太郎は自らのベルトにオーズカードとアンクカードをセットする。
【オーズ!】
【アンク!】
「お、おい、まて、小僧! お前何をしている!?」
慌てて宝太郎を止めようとするが、もう遅い。
【ガチャーンコ!】
宝太郎のベルトがうなりを上げる。
二枚のカードが一つに……。
「お、おい、おおおおおおおおおっ!?」
それと同時に、アンクの姿が宝太郎……いや、仮面ライダーガッチャードに引き寄せられていく。
「ちょ、ちょっと!? アンク!?」
唐突に別のライダーに引き寄せられていく友の姿に、事の次第を見守っていた映司も思わず声を上げるが展開は彼の想像をはるかに超えていた。
宝太郎の姿が変わる。そこにいたのは、灼熱の赤い装甲と炎の翼をもつ、新たなるガッチャード……。
「ど、どうなってるんだぁ!?」
ガッチャードの中より、アンクの悲鳴が木霊する……。
「ハッピバースデー! 仮面ライダーオーズ! 仮面ライダーガッチャード!!」
鴻上ファウンデーションの会長室にて、一人の男が自作のケーキを前に奇声を上げる。
彼は此処ではない場所、いずこかで戦う新たな戦士たちの誕生を祝うべく、ケーキ作りにいそしんでいた。
クリームが載せられ、ホワイトチョコのボードに二人の新たな名が刻まれる。
「新たな誕生の時、古代を超える友情の仮面ライダー……その名も仮面ライダーオーズ・タジャドルコンボエタニティ!」
それはオーズの新たなる姿。
「そして、新時代を切り開く若き錬金術師が継承した新たなる錬金術! その名も、仮面ライダーガッチャオーズ!」
それはガッチャードの新たなる姿。
そして、戦いは佳境へと向かっていく……。
一流の悲劇を三文喜劇に変える快感。この快感を知らないなんて人生損をしている!(おい
ダイジェスト版なので、ドラマ部分は丸々カット!(おいおい
限定フォーム仮面ライダーガッチャオーズの姿はご想像にお任せします(おいおいおい
TV放映部分は細部を除くと原作とほぼ変わらない(たまに事故が起きて酷い話になる)
後日談だとひどいライダー玉突き事故が多発しているイメージ
よく考えたら、一番の被害者は出番が完全にカットされたゴーダくんかもしれない……
ダイジェストですが……。
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お前の始めた物語だろう!
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ダイジェストはダイジェストのままで