ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
オーディンによる無差別爆撃。
スカイライダーは元より、シザースや集夢も当然攻撃範囲だった。
周囲が巨大な爆発音と爆風、閃光に埋め尽くされる。
風に流され煙が晴れた時、鏡像の城戸真司とオーディンと化した葵、そしてネオショッカーの姿はもう無い。
変わりにいたのは、集夢を盾で庇うシザースの姿であった。
「やれやれ、流石にきついですね」
背後をチラリと確認する。集夢は無事のようだ。
それを確認すると、とたんに全身の力が抜ける。
片手に持った盾をどさりとその場に投げ捨て、シザースはその場に腰を下し変身を解く。
「須藤さん、大丈夫ですか!」
「ええ、なんとか。頑丈さには自信がありますから」
慌てて駆け寄ってくるスカイライダーに、須藤は手をひらひらと振って応える。
幸い致命的な損傷はない。デッキも無事だ。
とはいえオーディンの無差別爆破から人一人を守った代償は決して軽くはない。
エネルギーと体力をごっそりと持っていかれた。大きな怪我こそ無いが、当分の間は戦闘は無理だろう。
「それよりも、逃げられましたね」
「ええ……」
葵の意識がギリギリ残っていたのか、無差別爆破による建物の被害はない。
だが、破壊された車両が転がる駐車場には、鏡像の城戸真司とオーディンの姿は何処にもなかった。
それどころかあれだけいたアリコマンドや、彼らが通り抜けて来た穴も埋まっている。
「追うんでしょう?」
「もちろん。葵ちゃんを助けないと」
分かり切っている事を尋ねる須藤に、変身を解いた筑波も闘志に満ち溢れた表情を見せた。
ああ、やっぱこいつも仮面ライダーなんだと、同僚たちを思い出し須藤は苦笑を浮かべる。
「すいません。私はついていっても役に立てそうにないので、ここで本部の応援を待ちます」
「無理はしないで。たぶん大変な事態になると思うので、町はお願いします」
無理をすれば動けない事も無いだろうが、流石にそこまでする気は須藤に無かった。
それに、警察官としては応援を待つべき場面であり、後続で来るG3チームを待つ必要がある。
須藤の言葉に、筑波も頷く。
そんな二人の会話に、何もできなかった青年がこう申し出る。
「俺も、俺も行きます。筑波さん! 葵さんを助けないと!」
「集夢君、君は……」
「良いじゃないですか、連れて行けば」
一瞬難色を見せようとした筑波の声を、須藤が遮り連れて行くように勧めた。
「須藤さん?」
「まぁ、あの不良小僧と戦うには実力不足ですが、ミラーモンスター相手なら十分な力量はあるでしょう。逃げ場なんて無いんです。サポートが出来るうちに見せてあげるのも、親心ですよ」
変身システムこそ未完成だが、聞いた話では戦闘能力そのものはそれなりにある。
自衛や後方からの支援なら十分な能力はあった。
それに……。
「ま、それだけではアレなので分木さん、君に一言だけ」
「なんですか、刑事さん?」
どうも黒いショッカーライダーを以前から知っていたらしい刑事に若干の警戒をしてしまう。
そんな内心を察しているのだろうか。須藤は苦笑いを浮かべながら、彼に向かってこう言い放った。
「ああ、現実を見ても折れなかったら警察に来なさい」
「警察?」
「あの不良小僧を殴る力が欲しいんでしょう。良い師匠を紹介しますよ」
「須藤さん……」
集夢の事を心配してだろう。
中途半端な青年にライダーたちの現実を見るように勧め、それを見てもなお進む気があるのならと次の道を示す須藤の姿勢に筑波が感嘆の呟きを漏らす。
勘違いである。
一見真面目で誠実そうに見える須藤だが、過去の悪徳警官よりはましになったとはいえ、その中身はスリルジャンキーの不良警官だ。
だから、この勧誘も決して青年を心配してではない。
小沢管理官あたりに投げたら面白い化学反応起こしそうだ。
そんな不埒な事を考えていただけである。
※※※※※
月明りに浮かび上がるのは、正義の焔を現す深紅のマフラー、そして優しさと強さを表す緑のボディ。
俺のような紛い物には逆立ちをしても出せない、本物の仮面ライダーだから出せる正義の気迫が周囲に満ち溢れる。
葵さんを乗っ取ったオーディンが金色の羽根をまき散らす。
エネルギーを奪い、爆発を引き起こすそれがあたり一帯に広がる。
美しくも絶望的な光景に、スカイライダーが腕を振るう。
かつて、ネオショッカーの念動力使いの力を弾きかえした彼の引き起こした旋風は、舞い落ちる羽根をあっさりと吹き散らし粉々に打ち砕く。
後は、無力化した羽根の残骸が舞い落ちるのみだ。
リュウガがその拳から炎を放つ。
鉄すらも溶かすその火炎を前に、スカイライダーは拳を無造作に振るう。
ただそれだけで、黒い炎は拳にかき消され涼風に変わる。
俺も似たような真似は出来る。
だが、あそこまで無造作に振るった拳で炎を消せるだろうか?
無理だ。それなりにエネルギーを籠め、集中してこその技だ。
似た技を使えるからこそ、圧倒的な力量が嫌でもわかる。
「それで終わりか?」
声を荒げたわけでは無い。ただ、淡々と語りかけただけだ。
それだけなのに、この場にいる誰もがスカイライダーから目が離せなくなる。
幾多の仮面ライダーを見てきた。幾多の悪の大幹部を見てきた。
本物も偽物も、俺はこの世界に生まれてから何人も見てきた。
彼らが筑波洋と比べ劣っているわけでは無い。
当たり前だ、本郷猛が劣っている事などあってたまるか。
だが、それでも今のスカイライダーはどの仮面ライダーよりも強烈な存在感を放っている。
彼を一段上のステージに押し上げている感情は怒りだ。
恋人を失った女性の苦しみに付け込み、邪悪な陰謀を成し遂げようとするネオショッカーに対する怒りだ。あるいは、彼女を苦しめる切っ掛けとなった俺に対する怒りもあるだろう。
あれが本気の怒りを見せた仮面ライダーか……。
一応は庇われた形の俺ですらスカイライダーの気迫に押されているのだ。リュウガたちの受けるプレッシャーはいかほどのものだろうか?
「葵ちゃんを返してもらうぞ、ネオショッカー」
「失礼な。そこに転がっているショッカーとは違うんだ。彼女の望みを叶えた後は、ちゃんと家に送り返すさ。広夢君と共にな!」
言うが早いが、リュウガとオーディンは黒い炎と金色の羽根をあたり一帯にまき散らす。
だが、それは攻撃の意図はない。単なる目眩しだ。
ショッピングモールに植えられていた植木や彫刻、ベンチに炎や羽根が触れると、それらは巨大な音と共に爆発をする。
いや、これは対侵入者用のトラップの一つか?
「葵さん! くそっ、まてっ!」
集夢さんが二人を追うべく駆け出すが、疑似ライダーの力をもってしても連鎖する炎と爆発の突破は難しかった。
彼が僅かに足を止め身を守った次の瞬間には、リュウガとオーディンの姿は忽然と消えてしまう。間違いなく、鏡をくぐってミラーワールドに逃げ込んだ……。
いや、違うか。俺一人なら後顧の憂いを断つために倒すつもりだったが、俺が復活しスカイライダーと組まれた場合の可能性を考え有利なフィールドに撤退したのだろう。
だいぶネオショッカーに毒された鏡像の城戸真司だと思っていたが、無駄な所で戦略眼が残っているな、あいつ……。
そんな事を考えていると、グイっと俺の身体をスカイライダーが抱え込む。
「何のつもりだ、スカイライダー!?」
「動けないんだろう。君には聞きたい事がある。集夢くん、一旦引くぞ!」
「でも、この炎は!?」
このままでは火に巻かれる。そう考えて撤退を指示するスカイライダーに、集夢さんが躊躇の言葉を漏らす。
無理もない。ここから見える範囲での炎の勢いは凄まじい。この炎を放置しておけば、町に燃え移り被害が出るのではないかと思うのも当然の考えだ。
もっとも、それは杞憂ではある。
「大丈夫だ。ここを囲んでいる障壁は京都でも使われていたネオショッカーの最新型だ。炎どころか音すら外には漏れないだろうよ」
痛む体に鞭打って、俺はこう伝える。
京都のネオショッカー基地にも使われていた素材だ。衝撃どころか音すら外に漏らさないので、連中の基地を発見するのに随分と手間を取らされたものだ。
「本当なのか?」
「つまらん嘘はつかん。それよりも、俺など構わず彼女を……」
「動けない身体で何を言っているんだ。引くぞ、集夢君」
「はい!」
そう言うと、スカイライダーと集夢さんは囲いを飛び越え町に戻る。
そして、俺の言葉通り囲いの内側は爆音を立てて燃えているというのに、囲いの外に出ると音すら聞こえない。
いや、正確には上は開いているので何かが破裂する音は聞こえるし、明かりも流石に漏れている。だが、それは細やかなもので、町の喧騒にかき消される程度でしかない。
割と便利そうだから、京都で回収した破片を解析させているんだよな。
「驚いた。疑っていたわけじゃないが……」
まぁ、スカイライダーがそう言うのも分かる。
囲いの外の公園に降り立ったスカイライダーは、態々俺をベンチに座らせる。
適当にぶん投げても文句が言える立場じゃないのだが、ダメージを受けなかっただけありがたい。回復に専念できる。
「それで、聞きたい事とはなんだ?」
「お前っ!」
力無くベンチに体重を預けながらも、俺はふてぶてしい態度を貫く。
仮面越しに集夢さんの殺意を感じるが、それでも彼は行動に起こす事を抑えている。
貴重な情報源というのもあるが、葵さんの救助を優先したいだろうに、町への被害を気にしていた点からも本来は正義感の強く理性的な青年なのだろう。
「君の知っている事を全てだ」
俺の態度を咎めることなく、スカイライダー……。いや、変身を解除した筑波さんが単刀直入に問いかける。
まぁ、この状況ならそれが正解だろう。
時間が無いのだ。俺も無駄な挑発をしないよう意識を割きながら知っている事を話す事にする。
「分かった。ただその前に一つだけ確認をさせてくれ」
「なにっ!?」
「貴方はカガミトカゲというネオショッカー怪人を覚えているか?」
戦ったのは40年ぐらい前、ネオショッカーが暴れていた頃の筈だ。
その後同型怪人が出たという話は聞いたことが無いので、恐らくはその時の怪人が復活したのだろう。
俺の問いかけに筑波さんも流石に少しだけ考え、すぐさま俺が言いたい事を気が付いた様だ。
「ああ、覚えている。確か呪いの鏡で鏡人間を……まさか、そういう事か!?」
「そうだ。本物の城戸真司はミラーワールドに捕らわれている」
後は、秋山さんから聞いた内容と、こちらで集めた情報を伝えるだけだ。
俺の話を二人は静かに聞く。変身を解いていない集夢さんは分からないが、筑波さんの目がさらに鋭くなっていく。
まぁ、そりゃそうか。それぞれの願いがあったとはいえ、結果的に町を守っていたライダーたちがすでに犠牲になっているのだ。
この人が怒らない理由がない。
「ナイトがミラーワールドに入ってだいぶ時間が経過している。何らかのトラブルが発生している可能性が高い。急いだ方が良い」
俺はそう締めくくると、ベンチから腰を上げる。
「お、おい! その怪我じゃ!?」
一瞬だけよろめいた俺を見て、集夢さんが思わず止めようとする。
やっぱ良い人だな。
ほんと、俺みたいな悪党に関わったばかりに……。
いや、こんな無駄な事を考えている場合じゃない。
「旧式どもと一緒にするな。この程度ならもう問題はない。今連絡が入った。連中はニューヨークで暴れたレイドラグーンの作成に成功したようだ」
流石にダメージは軽くは無いが、もう一戦できる程度には回復している。
なにより、本当に時間がない。
データの吸出しをさせていたサイクロンヘルから報告があった。
ネオショッカーはレイドラグーンをもう保有している。これがもう一つ上になったら、もう手が付けられない。
「君は……。いや、時間が無いな。ミラーワールドに向かおう」
何かを聞きたそうだったのは筑波さんだが、すぐさま話を打ち切りミラーワールドに向かう事を決断する。
この辺の判断の速さは流石歴戦の戦士だが……。
「こういう時に限って須藤がいないのが痛いな。あいつに連絡を取ってミラーワールドへの道を作らせなければ」
集夢さんはともかく、俺にミラーワールドに入るような能力は無い。
こういう時に便利なのは蟹なのだが、あの野郎何処をほっつき歩いているのか姿が見えやしない。
分かっていただろうに、今度しばく。
「いや、自力で入ればいいだろう?」
「え?」
いや、スカイライダーにそんな能力が?
あ、いや、あれ? そういえば……。
「俺でも出来たんだ、君も出来る」
「え? 筑波さん何を!?」
「あ、あの、ミラーワールドに行くなら俺が……」
なにその、頑張ればできるみたいなさわやかスマイルは!?
ほら、集夢さんが困惑しているよ。
いつの間にか捨ててあった全身が映る鏡を立てかけていますよ、この人!?
「これをやるのも久しぶりだな。集夢君、誠太郎君、俺に続くんだ!」
「え、ちょっと、人の話を聞いて!」
「呪文を唱えて集中するんだ。ラーミー、ラーミー、レワカレイ」
目を閉じ指をお祈りのポーズで組み、ついには呪文を唱え始めたぞこの人!
そうだった。この人は精神集中と呪文だけでカガミトカゲの作った鏡の世界に突入したことがあるんだ。
その時は呪いの鏡という触媒があった筈だが、普通の鏡でも出来るの!?
あっ……。
「鏡の中に入っちゃいましたね……」
「え、ええええええっ!?」
困惑する俺と集夢さん尻目に、筑波さんの姿は忽然と掻き消えている。
そして鏡を覗きこんでみると、鏡の前には誰もいないのに筑波さんが映っておりこちらに手招きをしていた。
口の動きは……君も続くんだ。
「あ、俺は先に行くので」
流石に妙な呪文と集中で鏡の世界に入ってみせた筑波さんに毒気が抜かれたのか、宿で見せた普通の調子で俺に話しかけ鏡の中に入っていく。
まぁ、彼は出来るよね。
えっと、これは……俺もやらなきゃ駄目だよな……。
「ラーミー、ラーミー、レワカレイ」
半ばやけくそに呪文を唱え精神を集中する。
人間、意外と何とかなるものだと、この日初めて知るのであった。
仮面ライダー(新)第46話『怪談シリーズ くだける人間!鏡の中の恐怖』にて、筑波洋(スカイライダー)は鏡の世界へ突入した原作基準の行動です。
すごいぜ、昭和ライダー!
NEXT Rider?
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ゆ゛る゛さ゛ん゛!!(BlackRX)
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サムズアップ(クウガ)