ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
見えて来た光景は何も知らない者が見れば幻想的であった。
満天の星空と月明かりの下、金色の羽根が天から降り注ぐ。空に飛び交う人影が、空の地上の明かりで人影を作る。
ああ、本当に幻想的だ。
問題は地上の明かりとは町を焼き尽くす破壊の炎であり、金色の羽根はエネルギーを奪う爆弾。
空に飛び交うのは量産型のゾンビライダー……、いや、倒した連中の残骸を見たらよりにもよって中身がゾンビだった。
悪夢的な光景は慣れているが、今回も負けず劣らずの酷いありさまだ。
そんな状況に抗うのは黒と銀の騎士、仮面ライダーナイトと天空の勇者スカイライダーだ。
といっても、舞い落ちる羽根を避けながら、さらには空を飛び交う量産型ライダーをいなしながら、これまた10体使くに増殖している仮面ライダーリュウガを相手にしているのだからかなりの劣勢だ。
集夢さんとおそらく現地のライダーだろう二人がナイトとスカイライダーを援護するべく宙を舞う量産型ライダーとレイドラグーンを撃ち落としてはいるが、次々に飛び上がり続けるレイドラグーンと、金色の羽根の妨害により思うようにうまくいっていない。
「やばそうだ……」
スカイライダーやナイトは百戦錬磨の強者だが、降り注ぎ続ける金色の羽根が厄介だ。
そうえばオーディンの姿も見えないな。
恐らくはあの金色の羽根で出来た雲の中にでも隠れているのか。あれならスカイライダーといえどもおいそれ近づけない。
戦場まではもう間もなくだ。早々に行動を決定しなければならない。
「あの程度なら、消し飛ばせる」
まずは金色の羽根を何とかして、次にレイドラグーンと量産型ライダーを何とかしなければスカイライダーやナイトも自由に動けないだろう。特に二人とも空戦に秀でたライダーだし。
スクリューキックで巻き込んで羽根を吹き飛ばすか。
そんな事を考えて跳躍の為姿勢を低くした俺に、ディケイドが呆れの混じった声でこういった。
「先走るな。あの程度なら、俺が何とかしてやる」
「できるのか、士?」
「余裕だ」
城戸さんの問いかけに、ディケイドはいつもの自信にあふれた声で答えると、流れるような動作でライドブッカーから一枚のカードを取り出すとディケイドライバーにセットする。
バックルの前の空間にライダーを現す文様が浮かび上がり、軽快な電子音性が響き渡る。
『KAMENRIDE! W!』
ディケイドが姿を変えたのは街を泣かす者を許さぬ風都の守護者、仮面ライダーWだった。
メタリックグリーンの右半身、黒い左半身を持つその姿は、ベルトを除きかつて俺が戦った仮面ライダーと全く同じ姿だ。
Wの姿になったディケイドは足を止めると、まるで何かを迎え入れるように両手を広げる。
最初はわずかな、誰も気が付かないようなそよ風であった。
だが、そのそよ風は徐々に力を増していき、地面に転がる残骸を転がし始める。
燃え残った木々が葉を揺らし音を立てる。その音は瞬く間に巨大な重奏となり周囲に響き渡る。
その急激な変化に戦っていたはずのライダーたちも天を見上げた、その瞬間風は竜巻となり辺りを支配する。
「なっ!?」
「こ、これは!?」
戦っていたはずのナイトやリュウガも思わず驚きの声を上げる。
空を舞っていたレイドラグーンや量産型ライダーはバランスを崩し、漂っていた金色の羽根共々が一か所に集まっていく。
そう、これこそ仮面ライダーWのメモリーが一つ、サイクロンメモリーの力。
大気を操作し、風を生み出し、嵐を操る。正しくサイクロンの名にふさわしい大気を支配する能力。
一か所に固められた金色の羽根を見て、真っ先に動いたのはアナザー龍騎となっている城戸さんだ。
「しゃああああっ! ナイスだ、士! これなら、はああああっ!」
彼は真っ先に戦場に躍り出ると、その左腕の龍の頭部の先に力を集める。
竜の咢から赤い炎が漏れだし、あたりを照らす。
貯えられた力は、振りかぶり突き出した拳から迸る。真っ直ぐ一直線に伸びた炎は、一か所に集められた金色の雲に飲み込まれていく。
周囲に巨大な爆発が響き渡る。
そう、アナザーリュウガの炎に晒された金色の羽根が一斉に引火し、ついには巨大な爆発を引き起こしたのだ。
羽根はもちろんの事、レイドラグーンや量産型ライダーも炎に包まれ次々に墜落する。
そして、その爆発から身をひるがえす人影を俺のセンサーは見逃さなかった。
あの状況で無事抜け出せるような奴など、一人……いや、一体しかいない。
「やはりそこにいたか。逃がさん!」
逃れた人影に向かい跳躍する。
一瞬で数十メートルの高さに到達した俺は、不死鳥を模した金色と赤銅色のライダー……オーディンと相対する。
「さて、先ほどの借りを返させてもらうとするか」
中身が葵さんだ。最悪の場合は仕留めるが、出来る事なら救出したい。
依怙贔屓と言われるかもしれないが、こちとらショッカーであり正義の味方でも公正の番人でも無い。好き勝手人の生死を決めさせてもらうとしよう。
俺はオーディンを捕まえようと手を伸ばす。
その俺の手を逃れるように、オーディンの姿が多重にぶれて……。
「ワンパターンなんだよ! ブースト!」
人を素体とするだけで、人間では無くプログラムが動かすライダー。それがオーディンであり、良くも悪くも人としての柔軟性が無い事が最大の弱点だ。
唐突に接近されたら瞬間移動で避けるだろう。そう予測していた俺はすでにエネルギーのチャージは完了している。
誰も追いつけない世界に一人突入した俺は、消える直前のオーディンの胸ぐらをつかむと、そのまま宙を蹴り急降下を開始する。
「一人空にいるのも寂しいだろう。貴様も地面に降りて来い!」
中身が葵さんの為手加減はする。だが、オーディンの機能を低下させるには十分なダメージを計算して、ライダーの肉体を地面に叩きつける。
再び動き出した時の世界に轟音が響き渡り、金色のライダーはいくつかのパーツを脱落させながら地面を数回バウンドした。
葵さんには申し訳ないが、骨の一本ぐらいは勘弁してもらおう。中身が無事なままあれを引っぺがすのは中々骨なのだ。
空中の敵がいなくなったことを合図に、戦っていたスカイライダーやナイト、リュウガの群れが距離を取る。
仕切り直しという事だろう。
ライダーたちが自然とこちらに集まってくる。いや、なんで俺のところに来る?
「誠太郎君! それに城戸さん! 翔太郎君とフィリップ君ではないな……ディケイドか?」
「ああ、久しぶりだな。筑波」
「相変わらずだな、君も」
Wからディケイドに戻りながら戦場に向かい歩いてくるディケイドは、大先輩を前にしても傲岸不遜な態度を崩していなかった。
まぁ、何も言うまい。ここで門矢士が殊勝な態度を取ったら、それはそれで気持ち悪い。
「城戸、お前何処をほっつき歩いていたんだ」
「悪い、心配かけた」
一方、ナイトはというとやってきた城戸さんに一言だけ毒づく。
そう言えばなんだって一人俺の前に出て来たのか。あの時はスルーしてしまっていたが、この様子だとレイドラグーンの襲撃で一時はぐれたとかそんなところだろう。ディケイドはそれを探しに来たか、こいつもこいつでうっかりはぐれたのか。
多分後者な気がする。
「さて、これで全員揃ったわけか」
レイドラグーンが一時的とはいえ全て落ちた事もあり、後方で援護に徹していた現地ライダーと集夢さんがやってくる。それを確認したスカイライダーが全員の顔を見回し確認する。
その言葉に頷く者、反応しない者それぞれではあるが、揃ったに俺を入れられては迷惑である。
「たまたま同じ獲物をねら……」
「やる事は分かっているな」
とりあえず仲間扱いされるのもアレなので一言断っておこうとしたら、ディケイドの奴が俺の言葉にかぶせるように全員に確認した。
というか、これで何度目だ? 人に喋らせないの流行っているの、ライダーの中で?
複眼越しに憮然とした視線をディケイドに向けたが、仮面抜きに鉄面皮だろうこの男には通じない。なんとなくだが盛大に呆れられたような気がしてむかつく。
まぁ、いい。ここで反応しては負けも同じだ。
「貴様らの目的など知らん。俺の目的は連中の殲滅だ。城戸の肉体の奪還や小娘の救出は、俺が連中を殺すまでの間に精々頑張る事だな」
俺の言葉にライダーたちがぎょっとするが、こっちはショッカーライダーだ。
これぐらいの距離感が一番丁度いい。
俺たちの短い会話の間にも、町の各所よりレイドラグーンと量産型ライダーが飛びあがりこちらに向かってくる。
さらにはリュウガの集団にオーディン。
こちらも錚々たる面子だが、戦う相手も一昼夜で都市を灰燼に出来る面子だろう。
「ライダーがショッカーと肩を並べるとは面白い。こちらも切り札を切らせてもらう」
俺たちを見渡したリュウガの一体がさも楽しそうに呟くと、ベルトに装着されたデッキから一枚のカードを取り出す。
それと同時に、奴の腕に装着された竜の頭部を模した小手が黒い炎に包まれ、やはり竜の頭部を模した銃へと変わる……って、おい、待てや!?
何故お前がそれを持っている?
「おっ、おい!?」
「まさか貴様、持っているのか!?」
奴が取り出したのは、抽象的なデザインの翼が描かれたカードだ。
だが、他のカードと違うのは、翼の下は常に動き続ける黒い炎が描かれている事だろう。
その事に驚きを隠せない俺やナイト、アナザー龍騎を余所に、奴はカードを展開した銃身に挿入し読み込ませる。
『SURVIVE』
召喚機ブラックドラグバイザーツバイから男性型の電子音が響く。
次の瞬間リュウガの姿が変わる。
奴の姿は黒い炎に包まれ、その下から全身が黒と金の突起に包まれた禍々しい鎧姿のライダー。
「サバイブだと……」
ミラーワールド系ライダーがそれぞれ持つ最強形態、それがサバイブだ。
俺の知る限り龍騎とナイト、そして王蛇しか持っていなかったはずだが、供給元であるオーディンを支配下に置いている今なら持っていても不思議ではない。
そして、俺たちを驚かせる奴らの動きはそれだけでは無かった。
リュウガサバイブは背後にいた一体のリュウガ、恐らくは中身がカガミトカゲであろう配下にこう尋ねる。
「力の溜まり具合はどうだ?」
「ははっ、連中が量産型をだいぶ倒しましたので、十分かと」
「そうか、ならば契約を果たせ。誠実にな」
「ははー、そういたしましょう。ラーミー、ラーミー……」
妙に楽しそうな二人の声に、何かおぞ気が走る。
阻止しなければならない。そう考え走るよりも早く、奴らの行動が完了する。
オーディンの姿が一瞬だけ輝いたかと思うと、その体から輝くエネルギー体が飛び出す。エネルギー体はオーディンの横に漂い、徐々にその姿を人型に変えて行く。
「それは?」
「なんなの、それ……」
まず響くのは困惑の声。
スカイライダーと現地ライダーの二人はエネルギー体が何を形どっていくか分からなかっただろう。
当然だ、彼らはその姿を見た事が無い。ただ、それが戦うための姿だとわかり警戒をする。
「おい、それって……」
「オルタナティブ?」
「今更あんなものがどうして!?」
アナザー龍騎とナイト、そしてディケイドもまた困惑の声を上げる。
黒い複眼のマスクに各所にリベットとレザーを組み合わせたかのようなボディースーツ。腰にはミラーワールド系ライダーとはデザインの違うデッキケースを装着し、右腕に機械的な召喚機が備わっている。
それはかつて神崎士郎のライダーバトルオリジンにおいて、バトルを阻止し世界を守ろうとした香川英行が生み出した疑似ライダーシステムだ。
オリジナルとの違いは、身体の各所を走るラインが青いところだろう。
確かに、今更だ。
今更ではあるが、今更ではない。あれが何かを知る者はこの場では二人。俺と集夢さんだけだ。
その姿を前に、集夢さんが呆然とした声でこう言った。
「に、兄さん?」
そう、それはかつて俺が殺害した集夢さんの兄、分木広夢が変身したオルタナティブ・スカイであった。
スカイの変身システムは俺が奪い、ショッカー日本支部に投げておいたはずでその後どうなったのかは知らない。ご遺体は荼毘にされ、墓地で眠っている筈。
「てめぇ! 何を企んでいる!」
集夢さんの言葉に、アナザー龍騎がいきり立ち怒声を上げる。
当たり前だ。亡くなった年下の友人を愚弄する行為だ。城戸さんが怒るのも無理もない。
そんな城戸さんの様子を見て、リュウガサバイブは楽しそうに笑いながらこう返した。
「俺は誠実に広夢と会いたいって葵ちゃんの願いを叶えたんだよ。まぁ、中身まで戻っているかどうかは責任が持てないがな」
リュウガサバイブの哄笑がミラーワールドの夜空に響く。
奴の言う通り、中身は戻っていないだろう。何故ならオルタナティブ・スカイはどこからともなく取り出したスラッシュダガーをこちらに向けて構えている。
中身が戻っているなら、そんな事はしないだろう。
そもそも、葵さん自身もオーディンに取り込まれ、自我が無い状態だ。こんなものは間違っても再会とは呼ばない。
まったく、人を苛つかせてくれる。
「茶番はそれで終わりか、寄生虫」
「なにっ!?」
その苛立ちの感情をそのまま口にする。
敵としての敬意などいらない。あれはただの塵だ。
「お人好しのライダーどもならともかく、俺にそのような惑わしが通じるとでも?」
誰もが願う、もう一度会いたいというささやかだけど叶わぬ願いを踏みにじる行為の何たる醜悪さか。
ああ、死の尊厳すら奪われ心無く戦わされる人形なら、速やかに葬りあの世に送り返してやるのが慈悲だろう。
こんな事、もう慣れている。全てを終わらせてやる。
「下らん遊びは此処までだ。貴様の薄汚い魂、ショッカーに捧げてもらう」
その言葉が、戦いの始まりを告げる合図であった。
スカイライダー(いざとなったら、自ら手を汚す気か)
ディケイド(もはや習性だな)
龍騎(くっ、急がねえと)
城戸さんだけが癒し(主人公視点)
NEXT Rider?
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ゆ゛る゛さ゛ん゛!!(BlackRX)
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サムズアップ(クウガ)