ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
リュウガサバイブの力は圧倒的であった。
左手に持つ銃型召喚機ブラッグドラグバイザーツバイから伸びた刃でナイトを、右手で別のリュウガから渡されたドラグセイバーでアナザー龍騎を斬りつける。
二人のライダーは装甲から火花を飛び散らせながら後退を余儀なくされた。
「こんなものか?」
後ろに下がり肩で息をする二人を前に、リュウガリバイブは余裕の態度を崩さない。
二振りの刃を下段に構え、肩で息をするライダーに向かいゆっくりと歩みを進める。
「くそっ……」
ナイトが小さく毒づくと、立ち上がりウイングランサーを構え直す。アナザー龍騎も曲刀を構えリュウガサバイブを迎え撃つ態勢を整える。
だが、迎え撃とうとした二人に対し、闇の中から出現した二体のリュウガが宙を舞い襲い掛かってきた。
『FINAL VENT』
しかも、リュウガたちが選んだカードは、ミラーワールド系ライダーが必ず持つ切り札、ファイナルベントのカードだ。
黒い炎を纏ったリュウガが天より二人に向かい落ちてくる。
「またかっ!」
「ちくしょう!」
当然、ファイナルベントといえども崩しも何も入っていない状態のキックを素直に食らう二人ではない。横に転がりドラゴンライダーキックの着弾点から身をひるがえす。
とはいえ、7000APの威力を誇るリュウガのファイナルベントだ。直撃を避けたとしても余波だけでも無視できない衝撃がある。
態勢を維持できないナイトとアナザー龍騎は派手に転がり、咄嗟に立ち上がる事も出来ない。
その瞬間を狙って、リュウガリバイブの持つ銃からビームの弾丸が解き放たれる。
「うわああああっ!」
転がる二人にそれを避ける術は無い。
悲鳴を上げ、吹き飛ばされ建物にその身を叩きつけられる。
二人が劣勢なのは連戦の疲労もあるだろうが、それ以外の理由が大きい。
なにせ鏡像の城戸真司は、分身であるリュウガのファイナルベントを弾丸に使いながら戦っているのだ。
それが当たればそれで良し。
はずれてもリュウガサバイブが追撃すれば良し。
そう、たった今必殺技を使い終えたリュウガは砕け、黒い炎の中に消えて行っている。
同じ意思の元統率された分身を持つゆえの贅沢な戦法だ。
「城戸、大丈夫か?」
「ああ、ま、まだ大丈夫だ。まだいける」
膝立ちになり立ち上がろうとしているナイトの言葉に、壁に両手をつき立ち上がろうとしているアナザー龍騎が応える。
だが、ナイトはまだしもアナザー龍騎は傍から見ていても明らかに弱っていた。
二人が劣勢な理由はもう一つある。
そう、明らかにアナザー龍騎の消耗が異常なのだ。
肉体を奪われた城戸さんを保護するため、ディケイドが無理やり仮初の肉体を作ったという。そのため、今も無理をしている状況なのだろう。
「無理はするな、今は下がれ」
「そんな……、余裕ないだろう」
アナザー龍騎が睨むのは、リュウガリバイブを中央に迫りくるリュウガの群れだ。
その数は10以上。しかも、ファイナルベントで使い捨てても補充されてしまう。さらに空にはレイドラグーンと量産型ライダーも控えている。
アナザー龍騎が一人抜けただけでも、均衡は容易に崩れ落ちるのは確かだ。
そんな城戸さんの言葉を鼻で笑うのは、当然リュウガサバイブだ。
奴はアナザー龍騎に銃口を向けるとこう言い放つ。
「その強がり、どこまで持つかな?」
黒い火炎弾とビームの雨がアナザー龍騎に向かい降り注ぐ。その数はもはや炎の壁と呼べるほど広く分厚い。
流石にあれをまともに食らってはたまらないと、アナザー龍騎が横に飛び躱そうとした。だが、それはかなわない。
「あっ!?」
小さな声と共に、アナザー龍騎の膝が崩れる。
疲労とダメージを前に、先に体に限界が来て膝が崩れたのだ。
「城戸!」
このままでは炎に飲まれる。
誰もがそう思った瞬間、割って入ったのは当然ナイトであった。
いつの間にか取り出していたマントで身を守りながら、アナザー龍騎の身を抱えると、炎の壁を突っ切り空中へと逃げ出す。
だが……。
「逃がすか! やれ!」
だが、それを許す鏡像の城戸真司ではない。
宙を舞うレイドラグーンの群れに一言命令を下す。
空を埋めていたミラーモンスターの群れは、その命令を受け一斉に襲い掛かる。アナザー龍騎を抱えた状況では迎撃どころか逃亡すら難しい。
瞬く間にレイドラグーンが群がってくる。
そして、何より致命的だったのはレイドラグーンの群れの中に量産型ライダーが混じっていた事だろう。
籠手の一部が切り離され、ロケット弾となってナイトを襲う。そのうち数発は何とか防御で凌ぐものの、全てを防ぐことなど到底適わない。
「しまった! うわあああっ!」
直撃こそ避けるものの、ロケット弾の爆発に巻き込まれアナザー龍騎とナイトが落下していく。
そこまで高度を上げていた訳ではないので落下のダメージ自体はさほど無いだろう。だが、二人は別々の場所に落下してピンチな事には変わりがない。
だが、レイドラグーンによる空からの追撃は無かった。
変わりにゆっくりとアナザー龍騎に歩み寄ったのは、リュウガサバイブであった。
奴はアナザー龍騎の傍に歩み寄ると首を掴み、片腕でその巨体を吊り上げる。苦しそうに呻くアナザー龍騎に対し囁く。
「苦しいだろう、城戸真司。肉体を奪われ、むき出しの魂もそろそろ限界だ」
奴の言っている事は正しいのだろう。城戸さんの動きは明らかに精彩を欠いている。
城戸真司が普通の人間とは言わないが、同時にそこまで特殊な素養がある人間でもない。ウォッチの力で何とか維持していたとはいえ、肉体から追い出された状態でここまで自分を保っていられたこと自体が奇跡と言って良い。
だが、その超人的な意志の強さも限界が来ていた。
「だから、消滅までの僅かな時間我がネオショッカーが貴様を使ってやろう」
そう言ってリュウガサバイブがもう片方の手に握っているのは……黒いスイッチ!?
いや、あれは……それに今の声!?
黒いドラゴン……。ドラグブラッカー……。呪術を使うカガミトカゲ……。
「まさか、お前は!?」
謎ではあったが、解き明かす必要が無かったため放置していたピースがかちりと嵌る。
なぜ鏡像の城戸真司がネオショッカーなどと行動を共にしていたのか。
俺と同じ事に気が付いたのだろう。リュウガの群れと戦っていたスカイライダーが怒りの声を上げる。
「貴様! ネオショッカー大首領か!」
その声に、リュウガサバイブが愉快そうに肩を震わせる。
「ようやく気が付いたか、スカイライダー! そしてショッカーの犬よ!」
「そうか、黒いドラゴンという繋がりで、鏡像の城戸真司を乗っ取ったか!?」
リュウガサバイブから聞こえてきたのは、スカイライダーの宿敵、そしてかつて俺が京都で戦ったネオショッカー大首領の声に間違いが無かった。
これは魔術や呪術、錬金術などの世界になるが、似た属性の物をその繋がりをもって融合させる技術があるという。黒いドラゴンであるネオショッカー大首領と黒い龍のライダーであるリュウガはさぞ相性が良かった事であろう。
だが、この俺の予測は少し違っていたようだ。
ネオショッカー大首領の声に続き、リュウガサバイブから鏡像の城戸真司の声が聞こえてくる。
「なんと人聞きの悪い。別に乗っ取ってなどはおらん。少々間借りする代わりに力と組織を提供したのだ」
「お互いの復活と世界の破壊、利害と目的の一致という奴さ」
「最悪の組み合わせだな」
話を聞いていたディケイドが、レイドラグーンを撃ち落としながら呟く。
まったくもってその通りだ。最悪の組み合わせとしか言いようがない。今回の鏡像の城戸真司の下種な性格は、融合したネオショッカー大首領の影響か。
「まて、城戸をどうする気だ!」
「くっくっくっくっく。こうするのよ」
膝をつくナイトの声に、リュウガサバイブは哄笑を上げながら手元のスイッチを押す。
スイッチから漏れ出した黒い煙がアナザー龍騎に吸い込まれていく。赤い複眼から光が消え、一瞬の間を置き禍々しい輝きを取り戻す。その喉からは人手は有り得ぬ獣の雄たけびを上げた。
傷つき、抵抗力を失った城戸真司にネオショッカー大首領の放つ邪悪なエネルギーが注ぎ込まれたのだ。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
次の瞬間、アナザー龍騎を中心に炎の波動が迸る。
その威力はすさまじく、リュウガ達は回避したものの、俺たちは元より上空のレイドラグーンやオーディン、オルタナティブ・スカイまでもが巻き込まれる。
「集夢さん、俺の後ろに! ライダーチョップ!」
取り繕う暇もない。
咄嗟に防御に問題があるオルタナティブ・フレイムを背後に庇い、ライダーチョップで炎を吹き飛ばす。
周囲を見れば、他の面々もそれぞれの方法で何とか炎を凌いでいた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
そして炎をまき散らしたアナザー龍騎が向かってきたのは……こっちか!?
「城戸!」
「おっと、せっかくの見世物を邪魔はさせない。お前の相手は俺だ!」
アナザー龍騎があれを獲物に定めたか。それを悟ったナイトが追おうとするものの、それを阻止するべくリュウガサバイブが動く。
その攻撃に、ナイトは槍を構え撃檄するより他なかった。
一方、アナザー龍騎の狙いは当然因縁などない俺ではない。
狙っているのはオルタナティブ・スカイとフレイム、そしてオーディン。そう、分木兄弟と葵さんであった。
まったく、とことんまで趣味が悪いったらありゃしない。
「正気に戻れ! 城戸さん! ライダーチョップ!」
流石に城戸さんに彼らを殺めさせるわけにはいかない。俺は間に入ると、手加減したライダーチョップを頭部に叩き込む。
これで正気に戻ってくれれば……。
「セイタ……ガアアアアアアアアアアアアアッ!」
くそ、やっぱダメか。
とはいえ今の弱っている城戸さん相手にそう何度も打撃を叩きこむことはできない。しかも、弱っているのは魂だけで動きは邪悪なエネルギーに支えられていて、技もへったくれも無い癖に早く鋭い。
戦闘センスは全ライダーでもトップクラスという噂は聞いた事があるが、マジに強い。
強化戦闘服の各所が裂け、その下から鮮血が流れ落ちる。
そして、俺の敵はアナザー龍騎だけではなかった。
炎に巻き込まれていたはずのオルタナティブ・スカイが態勢を立て直し、巨大な剣を振りかぶりこっちに迫ってくる。
「兄さん、止めるんだ!」
その動きに割り込んできたのは集夢さんだ。
オルタナティブ・フレイムは銃剣を使いなんとかオルタナティブ・スカイの攻撃を受け止めた。
「下がっていろと!」
「そんな場合か!」
確かに彼の言う通り余裕はなかった。
スカイライダーはリュウガの群れに囲まれ動きが取れない。
ナイトはリュウガサバイブと対峙しているために防戦一方だ。
ディケイドと現地ライダーも、炎に巻き込まれなかったレイドラグーンと量産型ライダーの迎撃に忙殺されている。
もう、やるしかないのか……。
俺がそう腹を決める横で、彼もまた腹を決めていた。
「お前がでしゃばるな! 俺が決める! 俺がやるべきことだ!」
「まて、早まらないで!」
止める間もなく、オルタナティブ・フレイムは腕の召喚機にカードを差し込む。
機械の小手は無情に、機械の声を上げた。
『FINAL VENT』
ミラーワールド系ライダーの放つ必殺の力。
フレイムが持つ銃の先端に、巨大ミラーモンスターですら一撃で焼き尽くす灼熱のエネルギーか収束していく。
それを確認したオルタナティブ・スカイもまた、召喚機に一枚のカードを読み込ませた。
『FINAL VENT』
オルタナティブ・スカイの召喚に応じたのは一体のミラーモンスターだ。
モンスターはその身を有り得ぬ方向に曲げ、あるいは存在しなかったパーツを生やし瞬時にバイクに変形する。
「馬鹿野郎! 止めるんだ!」
いくら心無い人形といえども、兄だった存在を弟が消し飛ばしていい道理なんて無い。
あるいは、弟を兄がひき潰していいなんて事は無い。
止めなければならない。
だが、その思いとは裏腹に二人が持つエネルギー派瞬く間に最高潮に達し、解き放たれる。
「だ……め……」
不意にか細い、戦場では聞こえないほどの小さな声が耳に届く。
誰の声か。考えるまでもない。葵さんの声だった。
弱弱しげに見えて、彼女の精神は強い。
オーディンの洗脳を跳ねのけ、ミラーモンスターを操り、事態を止めるため自らの命を断とうとするほどの精神力を持つ。
そんな彼女が、この土壇場でその身を二人の攻撃の射線に身を投げ出した。
「まて、止めるんだ!」
叫び走りだそうとする。
このままでは、三人の命が危ない。
何とか止めなければならない。
解き放たれるエネルギー、身を投げ出す葵さん。
まるでコマ送りのように見える。
何とかしなくちゃ。アナザー龍騎を無視して俺は駆けだす。
そんな俺を追い越す影が一つ。
時代が望む限り、助けを求める声がある限り、ライダーは必ず蘇る。
葵さんを攻撃の射線から突き飛ばし、二人の必殺技の間に躍り込んだ影。
それはたった今まで俺と戦っていた、ネオショッカー大首領の邪悪なエネルギーに侵されていたはずのアナザー龍騎であった。
そう、城戸真司は仮面ライダー龍騎だ。本物の仮面ライダーだ。
助けを求める声に彼が反応しない訳がない。彼が奮い立たない訳がない。邪悪に負ける筈がない。
「サセ……ル……かよぉ!」
オーディンを突き飛ばしたアナザー龍騎に、兄弟が放ったファイナルベントが吸い込まれていく。
膨大なエネルギーが龍騎の肉体を蹂躙し、その竜燐を、鎧兜を、腕を、足を打ち砕いていく。
悲鳴すら上げる間もなく、アナザー龍騎の部位が打ち砕かれ、粉みじんに砕け散る。
「自分から飛び込むか!」
リュウガサバイブの歓喜の声が響く。
「城戸ぉぉぉぉぉぉ!」
ナイトの、秋山さんの悲痛な叫びが周囲に木霊する。
「きどさあああああああああああん!」
アナザー龍騎が、皆の前で火花を吹き散らしながらゆっくりと倒れ、ついには巨大な爆発を引き起こし炎の中に消えて行く。
次の瞬間、目も眩む眩い輝きが周囲を覆うのであった。
なんかどんどん長くなる龍騎編。
これもそれも城戸真司って奴が悪いんだ!
NEXT Rider?
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ゆ゛る゛さ゛ん゛!!(BlackRX)
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サムズアップ(クウガ)