ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第107話 episode・RYUKI ミラーワールド崩壊、長い夜が終わる時

 やはり、押し込まれている。

 

 既に俺やディケイドは元より、龍騎たちやスカイライダーも後退に後退を重ね目視できる距離で戦っている。

 ディケイドの一人オールライダーなんて予想外の無法とデンライナーという援軍をもってしても、この始末だ。

 単体で見ればそこまで強く無いのだが、とにかく際限なく湧く上に動きが速い。1体倒している間に後方から増援が来るのだ。ワンミスでも取り返しのならない事態になる。

 

 こいつらが現実世界に出た日には被害がどれだけ出るかわからない。ここで完全駆除をしておく必要がある。

 

 俺は迫りくるハイドラグーンと量産型ライダーをリボルケインで切り捨てつつ、ライダーたちの様子を確認する。

 

 龍騎とナイトは大丈夫であろう。契約モンスターに乗り込み、空中でハイドラグーンの群れと戦っている。火力ではハイドラグーンを大きく上回る二人の猛攻の前に、モンスターは次々に爆散して落ちていく。

 回り込んで二人を攻撃しようとするモンスターもいるが、そのようなモンスターはほぼスカイライダーに阻止されている。あの空中戦を繰り広げるライダーたちを完全にフォローし、それでいて徒手空拳にも拘わらず一番多くミラーモンスターを叩き落としている様は、流石は10人のライダーの一人と言ったところだろう。

 

 カメンライドしたディケイドたちと共にここまで聞こえるくらい騒がしく戦うのは、いつの間にかやってきていた電王組だ。

 とにかく一挙手一投足が馬鹿みたいに騒がしいが、注意力散漫に見えて次々にハイドラグーンを始末していくのは流石は歴戦のライダーと言ったところだろう。

 なんかあっちの士が一々騒いでいるが、こっちの士が全力で気が付かないフリをしているので俺も気にしない事にする。ざまぁ。

 

 集夢さんたちや現地ライダーは俺の言ったことを守り、ゲートの防衛に徹している。まぁ、突出したくても出来ないというのが実情だろう。

 ミラーモンスターにとって現実世界に逃げ込める唯一の出口があのゲートだ。それゆえにあの場所にミラーモンスターが集中する。その大半はライダーの活躍によりたどり着く事なく叩き落されてはいるが、全方位からやってくる怪物を完全に食い止める事など不可能だ。

 各戦線毎にすり抜けるモンスターは僅かでも、ゴールであるゲート付近に集まるころには大群となっていた。

 それでも現実世界へは一匹たりとも通していないのだから、彼らの頑張りには頭が下がるという物だ。

 

 戦況を把握し、残り時間を確認しながら戦っていると、横にいたノーマルのディケイドがこんな事を聞いてくる。

 

「おい、そろそろ教えろ」

「何をだ?」

「お前が本来考えていた想定だ」

 

 ……腹が立つなぁ。そこも見抜いていたか。

 ここまで来たら隠す必要もない。俺はディケイドの問いかけに素直に答える。

 

「耐えられるのは最大でも10分が限界だった」

 

 龍騎やスカイライダーの力を見縊る気は無いが、時間ギリギリまで耐える事は不可能だと考えていた。一部の例外を除けばハイドラグーンの群れによる数と速さの暴力はライダーの力で何とかなる代物ではない。連中の繁殖地が人里離れた現実世界の土地ならプルトンロケットでも叩き込んでやるのだが、ミラーワールドではそれもかなわない。

 アメリカでは本郷さんや一文字さんの助力もあり、制御装置であるコアミラーを破壊する事で何とか解決する事が出来たが、今回はそのコアミラーに該当するものが無い。いや、もしかするとあるのかもしれないが、余程巧妙に隠したのか現実世界側で吸い出した資料ではわからなかった。

 そもそも、ハイドラグーンにまで進化したミラーモンスターがコアミラーの制御下にあるかどうかという問題もある。制御を離れ独自の生態を持つ、鏡面世界のはぐれミラーモンスターも相当数が世界に存在するのだ。

 出来るのは次善の策。ゲートを囮にぎりぎりまで間引き、後は現実世界で警察の力も使い迎撃する以外の手段は思いつかなかった。おそらくはアメリカを超える犠牲者が出るだろうが、それはいい加減な作戦を無理やり実行したショッカーライダーの責任だ。ライダーたちや警察に責任がある訳では無い。

 

「だったか?」

「分かっていて聞くな。今なら殲滅が可能だ」

 

 ディケイドの一人オールライダーなる無法や、何故かやってきたデンライナーのおかげで現状でのベストであるが不可能だったダミープランに成功の目が出て来た。

 多少は別の鏡面を通って現実世界に逃げ出した個体もいるようだが、そちらは現実世界にいる警察やライダーが倒している。他の鏡面世界に逃げ出した奴も居るが、こればかりは追跡のしようがないので諦めるより他が無い。

 幸い、一番問題となるハイドラグーンは全てゲートに向かっている。ネオショッカーがやった品種改良や制御の残り香かもしれない。

 

「あと3分を切ったな。ゲートに向かうぞ」

「わかった」

 

 周囲を見れば他のライダーもゲートに向かって移動を開始している。

 流石にこの状況で粘って崩壊に巻き込まれるのは馬鹿らしい。最後のひと踏ん張りはゲート傍での迎撃となるのだ。

 

「あ、誠太郎だ。やっほー、久しぶりー!」

 

 なので、手をぶんぶん振るう電王ガンモードなんて知らない。というか、面識は無い筈なのに何で本名を知っている!?

 向こうの士がこっちを見る目がすごく厳しいんだが、そんな目で見られても困る。

 俺が困惑していると、こっちの士が訝し気に尋ねてきた。

 

「お前、あいつらを知っているのか?」

「いや、面識は無い筈なんだが……」

 

 デネブさんから話を聞いたって訳でもなさそうだ。となると、どこか別の時間で俺に会ったって事か?

 カマタロスの奴もそうだったが、時間移動者はこちらが知らなくても一方的に面識があるなんて事があるので困る。

 そう思って見ていると、電王たちが何やらもめはじめる。

 

「バカ、リュウタ! 向こうはまだ知らないんだろう!」

「あれ、そうだったっけ?」

 

 うん、どうやら正解らしい。

 未来で会うのか―。絶対妙な騒動に巻き込まれるんだろうなぁ……。

 ちなみに、会話をしながらでもハイドラグーンをビシバシ落としているのは流石は電王を構成する4人のイマジンである。

 

「内緒にしておけって言われてたろう!?」

「いいじゃねえか、どうせすぐ分かるんだからよ。態々ご指名で頼んでき……」

「先輩、ストップ! ストップ!」

 

 おい、マテ。

 あいつらを呼び寄せたのは未来の俺!?

 いや、戦力が足りないから呼び寄せたのは合理的ではあるが、向こうの士のみならずこっちの士まですごい目で睨んでいるのが仮面越しでもわかるぞ! 言葉にはしていないが、呼ぶなら別の連中にしろと言っている気がする!

 俺は無罪です、未来の俺が悪いんです。

 

「よっ、あいつら相変わらずだなぁ……」

「緊張感がないな。あいつらがそんなものを漂わせていたら、それこそ末期だが」

 

 大騒ぎをしながらドタバタゲートに向かっている電王たちを横目に呆れ声を上げたのは龍騎とナイトだった。

 激戦だったのだろう。契約モンスターの背に乗り俺たちと並走する彼らは、スーツの端々が黒く焼け焦げている。

 逆にハイドラグーンをたらふく食ったのだろう。二人の契約モンスターはダメージの痕跡こそあるが、どこか満足そうに見える。

 

「良いじゃないか、彼等らしくて」

 

 空から舞い降りて来たのはスカイライダーだ。

 パッと見た限り大きなダメージを受けた様子が無いのは、流石は伝説に謳われる仮面ライダーの一人と言ったところだろう。

 だが、そんな彼でも肩が上下をしているあたり、連戦による疲労が見て取れる。

 

 残り1分を切ったところで、俺たちはゲートの傍までの撤退を成功させる。

 

「筑波さん! 城戸さん!」

「頑張ったな、皆!」

 

 どうやら集夢さんら3人や現地ライダーの2人も無事のようだ。

 もっとも、彼らの中に無事な姿の者はいない。スーツの各所に脱落や皹が見え、武器にも破損跡が見える。タンク役をやっていた二本角のライダーなど角が一本折れている。

 だが、それでも5人とも健在であり、戦闘能力を残していた。

 

「お前らは現実世界に撤退しろ」

 

 少し早いが、ここまで来たら素人は必要ない。

 せっかく生き延びたのだから命を無駄にする必要もない。

 そう思い帰る様に伝えるが、帰ってきたのはこんな言葉であった。

 

「ここまで来たら、ギリギリまで付き合うよ。きついんだろう」

 

 二本角のライダーが槍でハイドラグーンを突き殺しつつ応える。

 他の面々も帰ろうとする様子が無く、黙々とミラーモンスターを倒し続けていた。

 まったく、これだから本物の魂を持つライダーは嫌なのだ。力が弱くても、最後まで諦めない。

 俺ら悪党には無い精神性だ。

 

「勝手にしろ! 5秒を切ったら全員ゲートに飛び込め! つまらん事で死んだら俺が殺してやるからな!」

「おう! ナイスツンデレ!」

 

 迫りくるミラーモンスターの前に、最初に限界が来たのは意外にもディケイドであった。

 30秒を切った時点で唐突に50人の分身が消え、ノーマルディケイド一人になる。レンタルされていたリボルケインこそ消えはしなかったが、ライダーたちは次々に消えて行く。

 

「士!」

「すまん、これ以上の分身の維持は難しい……」

 

 ディケイドとは思えぬ弱気な発言だが、肩で息をするなど明らかに意地っ張りの門矢士とは思えぬ仕草だ。

 元々あの分身は使用者の負担が高いという。更にオールライダー状態という二重の意味で力を振り絞っていたのだろう。限界が来るのも当然と言えば当然であった。

 

「俺っちの出番はここまでだぜ……」

「バイスー!」

 

 騒がしいのがなんか消え、電王たちも憑依していたディケイドが消えた為にイマジンの姿の身が残る。

 デンライナーは健在だが、そろそろこちらも限界か。

 50人のライダーが消えた結果、最大の障害はデンライナーになるのだから当然だ。

 

「あんたらは現実世界へ戻れ! このままではデンライナーが集中的に狙われるぞ! 士、あんたもだ!」

「いや、俺は最後まで残る」

「なんでぇ、俺に逃げろって……」

 

 俺の言葉に素直に従う奴らではない。

 だが、もはや彼らに戦闘能力はほとんどないだろう。その状態を見抜いたイマジンたちの行動は本当に素早かった。

 

「ほら、先輩も士も意地を張らない!」

「すまん誠太郎! 後は頼むでぇ!」

「またねー、誠太郎」

 

 最後まで残ろうと意地を張る士とモモタロスをキンタロスとウラタロスがひょいと小脇に抱え、放せと騒ぐモモタロスを無視してすたこらさっさとゲートの中に入っていく。

 その際、帰りがけの駄賃にとデンライナーが全火力を一斉に解き放った。

 その破壊力はすさまじく、轟音を立てミラーモンスターの大半が吹き飛ぶ。

 

「あれでまだお替わりが来るのか」

 

 うんざりした声を上げるのは龍騎だ。

 確かに迫ってきていたミラーモンスターは消えた。だが、それでも少し離れたところからハイドラグーンの群れが飛び上がり迫ってくるのが見えるのだ。

 恐らく彼の言葉は、この場にいた全員の代弁だった。

 

「きゃあああっ!」

 

 残り20秒。限界を迎えたのは現地ライダーの二人であった。

 先生と呼ばれたライダーにハイドラグーンが取付き、肩をかみちぎられる。

 持っていた拳銃が地面に転がり、彼女の身体から力が抜ける。

 

「こいつ!」

「させるか! リボルケイン!」

 

 そのまま上空に飛び上がろうとしたハイドラグーンを、龍騎が射撃で仕留める。

 動きを止めた彼女に群がろうとしたモンスターも多数いたが、鞭状にしたリボルケインでその全てを叩きとした。

 倒れる相方に、二本角のライダーが慌てて駆け寄り抱き起す。

 

「先生!」

「気を失っているだけだ! お前は彼女を連れて急いで撤退しろ! 周囲に警察の救護班がいる!」

「すまない! 後は頼む!」

 

 一瞬取り乱しそうになった二本角だが、俺の声に正気を維持し相方を抱きかかえゲートに飛び込む。

 骨の一本ぐらいは折れたかもしれないが、ミラーワールド系のライダーは総じて装甲が厚い。重射撃系だった彼女は特に防御力も高いので、恐らくは大丈夫であろう。

 

 残り15秒。 

 

 このままなら守り切れる。

 そう考えた俺達であったが、ミラーモンスターも無謀な突撃を繰り返すほど愚かでは無かった。

 変化は、ここより距離が離れた場所で巻き起こる。地中より轟音を響かせ、巨大な柱の様なものが天に向かって突き出す。

 

「何、あれ?」

 

 それはある程度の高さまで成長すると横に倒れ、爆音を響かせこちらに向かい進攻を開始した。

 その動きはまるで鉄道の様だ。

 いや、違うか……。

 

「デンライナーを参考に進化したのか? ハイドラグーンエクスプレスと言ったところか!」

 

 ナイトの叫びの通りであった。

 それはあまりにも巨大なハイドラグーンであり、飛行能力を喪失した代わりに口からレールを吐き出し突き進む弾丸特急であった。よく見てみれば、残っていたハイドラグーンが次々にハイドラグーンエクスプレスに取りつき、一体化していく。

 ハイドラグーンたちが取り憑くたびに、そのエネルギーを吸収したハイドラグーンエクスプレスの速度は増していった。

 

「まずい! あの速度と質量だと、ゲートを突破される!」

 

 恐らくは俺と同じことに気が付いたスカイライダーが叫ぶ。

 早い。あれの速度を計算したところ、破壊の1秒前にゲートを通過してしまう。止めようにも新幹線程度のサイズまで大きくなったハイドラグーンは通常サイズと違い、通常の攻撃だけで倒す事は不可能だ。

 あるいは必殺技を解き放てば倒す事は出来るかもしれない。だが、それはゲート破壊前の脱出に間に合わず、ミラーワールドの崩壊に巻き込まれる事と同義語だ。

 

 誰もがその事を悟る中、不意に二人の人影が俺達の傍から消える。

 

 消えたのはオーディンとオルタナティブ・スカイ。葵さんと広夢さんだ。

 

「兄さん! 葵さん!」

 

 その事に気が付いた集夢さんが二人の名を叫ぶ。

 ゲートから少し離れた場所に出現した二人は、少しだけ振り向いて俺たちに向かいこう語る。

 

「ごめんね、これは私が引き起こした事態だから、私が責任を取らなきゃいけないの。みんなは現実世界に帰って」

 

 そう言って少しだけ申し訳なさそうな、それでいて決意を秘めた仕草をオーディンが見せる。

 

「俺はもう死人だからさ。少しだけでも会えて嬉しかったよ」

 

 その声は、本当に嬉しそうだ。片手を上げ手を振る彼の歩みに、何の後悔も見いだせなかった。

 そう、二人は殿となり、あのハイドラグーンエクスプレスを止める気なのだろう。

 それが自分たちの死と同義語だとわかって。

 

「やめるんだ、兄さん! 葵さん!」

「駄目だ! 君まで間に合わなくなるぞ!」

「放してくれ! せっかく、せっかく会えたのに!」

 

 集夢さんは必死に叫ぶ。慌てて彼らを追おうとして、ナイトに、秋山さんに羽交い絞めにされ引き留められる。

 彼の悲痛な叫びがミラーワールドに木霊する。

 

 まったく……。

 

 

「素人が余計な真似はやめてもらおう」 

 

 

 彼らの背後に出現した俺は、二人の手首を握り締めた。

 

「えっ!?」

「なっ!?」

 

 突如現れた俺に、二人が驚きの声を上げる。

 

 まったく、大仕事前だというのに無駄に力を使わせて。これだから素人は困るのだ。

 殿は俺がやると伝えておいただろう。 

 

「無駄に罪を感じるな。貴様らに許されるのは我らを恐れ許しを乞うか、無謀な抵抗を試みる事だけだ」

 

 いや、これは俺のミスだな。

 いくら戦力が足りなかったとはいえ、素人を戦場に立たせたのがそもそもの間違いなのだ。

 

 俺は軽く腕をひねると、そのまま体を回転させ二人をぶん投げる。

 投げ技もそれなりに得意だ。怪物の膂力で投げられた二人は放物線など描く事無く一直線にゲートに向かい飛んでいき、飛び出そうとしていた龍騎とスカイライダーが慌てて受け止める。

 それを確認した俺は、振り向きハイドラグーンエクスプレスに向き直りながらこう伝えた。

 

「その素人どもを連れてさっさと消えろ。そして、貴様ら旧式と俺の格の違いを思い知れ!」

 

 振り向いてしまった俺に彼らの表情は分からない。

 いや、そもそも全員が仮面を被っているのだ。表情など分かりようがない。

 それでも、きっと彼らが苦々し気な表情を浮かべている事は声からだけでもわかった。

 

「誠太郎君……すまない」

「誠太郎……死ぬなよ!」

 

 もう助けに行く時間も無い。3人を連れて撤退しなければならない。

 その事を悟ったスカイライダーと龍騎の別れの言葉が耳に届く。

 

「何なんだ! 奪ったり助けたり! お前は一体何なんだよ! 仮面ライダーなのか、ショッカーライダーなのか! お前は何がしたいんだ! アインロールド!」

 

 集夢さんの叫びは、きっと自分でも叫んでいて意味が分からなかったのだろう。

 だが、確かな事は一つだけ。俺は仮面ライダーではない。ただの化け物だ。

 だから、俺が返す言葉はこんなつまらない物であった。

 

「俺の名はアインロールド。地獄を行く怪物だ」

 

 6人の気配が背後から消える。

 残っているのは俺のみ。

 

 いや、違ったか。6人の気配が消えるのと入れ違いに、ゲートの奥から聞きなれた爆音が響く。

 その爆音の主は一直線に俺の元に向かう。

 俺は視線もくれずに跳躍すると、座りなれた我が相棒のシートに腰を落ち着けた。

 

「こんな事にまで付き合わなくてもいいんだぞ」

 

 呆れ半分、喜び半分に声をかける。

 帰ってきたのは、いつもの強烈なエンジン音だ。

 まったく、実に酔狂なバイクに育ったもんだよ、サイクロンヘル。

 

「まぁ、いい。行くぞ、サイクロンヘル!」

 

 目の前に迫りくる巨大な怪物、ハイドラグーンエクスプレス。

 あれを倒さねば、世界はミラーモンスターに蹂躙される。それほど巨大な悪意をあれは秘めているのだ。

 だが、俺とサイクロンヘルに倒せぬ敵などいない。

 いつも通り、蹂躙し、敵を滅ぼすのみ。

 

 一直線に、俺たちは駆ける。

 ハイドラグーンエクスプレスも目の前の小さきものなど目に入らぬかの勢いのまま、一直線にゲートに向かい突き進む。

 一切速度落とさぬまま、両者が激突する。

 その瞬間であった。

 

「リボルケイン!」

 

 俺は腰のベルトに手を当てると、ディケイドから預かった超兵器の名を叫ぶ。

 瞬時にその超兵器はその姿を形成する。握った拳に柄が生まれ、赤い風車が激しく回転を始める。刀身となる銀色のロットに青白い光が宿り刃を形成する。

 

 そう、ディケイドが撤退したのにも拘わらず、俺の中にリボルケインが残っていた。

 人類を蹂躙する邪悪を前に、伝説のライダーの武器に向かい俺はエネルギーを注ぎ込む。

 

「いくぞ!」

 

 真正面に突き出したリボルケインと、ハイドラグーンエクスプレスの先端が衝突する。

 超巨大質量とか細い光の束。

 

 勝ったのは、当然光であった。

 

 当然だ。ディケイドの力で再現された複製品とはいえ、世界を蹂躙しようとする邪悪に王者の力が負けるはずがない。

 まるで若竹を割くように、ハイドラグーンエクスプレスの身は割け砕けて行く。

 俺とサイクロンヘルの速度が、長大な怪物の身体を蹂躙していく。

 

 そして、怪物の肉体の最奥に俺たちはそれを見つける。

 それは巨大な鏡であった。

 鏡の奥からは、次々とハイドラグーンの身を構成する肉と機械が吐き出され続けている。あれがハイドラグーンを生み出していたコアミラーか!

 

「とどめだ!」

 

 心臓部を守らんと押し寄せる肉壁の津波を、その速度で俺たちは潜り抜ける。

 そして、ついには鏡に光の先端が突き刺さり、その全てが砕け散る。コアミラーは元より、ハイドラグーンエクスプレスを構成していた肉も、機械も鏡のように粉々に砕け散り風の中に消えて行く。

 背後から聞こえてくる爆発音は、長かった夜の事件が終わりを告げるゲートを破壊した爆発音だ。

 

 世界が唐突に揺れ出す。

 この悪夢のような鏡の世界もまた、崩壊を始めたのだ。

 

 ようやく終わった。だが、俺にはもう一仕事ある。

 俺は手の中のリボルケインを見つめた。

 

「ったく、今回は借りばかり作ったな」

 

 恐らくはこの事態も士は想定していたのであろう。だから、よりにもよってこの武器を俺に貸したわけだ。

 リボルケインを使い次元の壁を壊し、この世界から脱出する。

 多分不思議な事が起こって出れるだろう。

 

「さぁ、あとひと踏ん張りだ」

 

 

 

 

 

「それはやめてもらおう。また妙な所に落ちられては拾い上げるのも骨なのでな」

 

 次元を破壊しようとリボルケインを振りかぶった俺の耳に、こんな声が聞こえてくる。

 聞きなれた親しげではあるが不気味な声に、俺は慌てて振り向く。

 そこに浮かんでいたのは巨大な骸骨と、紫の肉体を持つ蟲であった。

 

「その声は!? ブラックサタン閣下!?」

 

 唐突に出現したのはショッカー大首領が率いる8つが軍団が一つ、ブラックサタンを統べる大幹部であった。

 崩壊を続ける世界の中、俺の前に現れたブラックサタンはいつものように感情が読みにくい声で淡々と語る。

 

「久しい……というほど時間は経っていないが久しいな。此度のライダーどもを使ったミラーモンスターの駆除、見事であったぞ。流石は我らが勇者よ」

「あ、ありがたき……ではなく、なぜ貴方がここに!?」

「くくくくく、貴様ならミラーワールド崩壊程度なら難なく切り抜けるだろうが、無駄に体力と時間を使う必要もあるまい。此度の活躍を讃え、迎えに来たのだ」

 

 巨大な骸骨でしかないブラックサタンの表情は読めず、閣下の意図も読むことはできない。

 だが、どうやらミラーワールドからの脱出は容易にできそうだ。それだけは確かであった。

 




ブラックサタン「ところで、リボルケインを使うブラックサタンが子なら、それはもうブラックサンではないか?」
アインロールド「やめてください、ゴルゴムから訴えられます」


会話と残り時間が合っていない問題はザ・ワールドとスタープラチナの法則で説明が出来ます(強弁
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