ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第108話 episode・RYUKI 追う者たち

 ミラーモンスターのスタンピード。

 現地で山梨県警との合同捜査を行っていた警視庁超常犯罪捜査一課の刑事からの要請を受け、この未曽有の大災害に対し近隣県からの応援も含めたG3機動部隊を配置。さらに警視庁からは捜査一課のみならず虎の子の超常現象対策課に所属するG6とG7も派遣される事となった。

 この大動員によりミラーモンスターによる被害は負傷者こそ出たものの、死者は無し、車両が数量、建物等の被害はテロリスト施設が火災で焼失したのみという軽微なもので終わった。

 

 なお、行方不明となった少年は公式に存在しない人間である為、表向きの記録に残る事は無い。

 

 

 超常現象対策課の管理官である小沢澄子の元に、捜査一課に所属する須藤からの紹介を受けた青年が来たのは、事件の翌日の事だ。

 撤収準備で忙しい中ではあったが、本事件で重要な役回りを担ったという事で特別に時間を割いた。

 

「ふうん。君がこれを制作したの……」

「はい」

 

 自称23歳。実際に若い頃から外見はさほど変わらない魔性の美人であるが、見た目の美しさに対し性格はきつく態度はデカい。

 対策課の専用車両に設けられた自身のデスクに腰を掛け、提出された資料に目を通す。

 

 正直に言えば、須藤の紹介という事で期待はしていなかった。

 だが、システムの完成度で言えばかなり高い。いや、素材がほぼ市販品で構成されていながらミラーワールドへの侵入能力まである点を考えれば、十分な有用性を持っていると言っていい。

 少なくとも警察で扱うならば、彼がもっとも手古摺っていた変身システムの問題は無視できる。

 

 もっとも、最大の問題はそこではない。この青年は須藤の紹介なのだ。

 

 小沢は須藤の事を一切信用していない。過去のケチな悪行の事もあるが、それ以上にあの男の性根が気に食わなかった。

 危険を楽しむ人間というのなら別の人物を知っているが、その人物の根底にあった正義感が須藤には無い。あるのはただスリルを楽しみたいという欲求だけだ。特に根拠は無いが、彼女はそう確信している。

 真面目な刑事をやっている限り須藤を泳がせておくという捜査一課上層部の方針に逆らう気は無いが、常に警戒を要する相手と目していた。

 

 その須藤の紹介だ。そう簡単に客員として採用できる相手ではない。

 

「それで、君はどうしたいわけ? この技術を売り込めば遊んで暮らせるくらいのお金にはなるわよ」

 

 考えを探るために、集夢の欲望を刺激するよう探りを入れた。

 

 一方、集夢は小沢の言葉に一瞬言葉に詰まる。

 この3年、周囲にばれないよう行動を繰り返した。仮面を被る事には慣れている。

 だが、きっと誤魔化してもこの女性は見抜き、それだけの付き合いになるだろう。根拠は無いがそんな気がする。

 そして、ここで誤魔化せば最後、きっと自分の胸の中にあるまだ言語化できていない感情を形にする事は出来ないだろう。

 

「分からないんです」

「分からない?」

「兄の仇が討ちたくて力を手に入れようと研究をしていたんです。だけど……」

 

 そう、動機は間違いなく復讐だ。唯一の肉親を無残に殺され、ショッカーライダーが許せなかった。

 この手で倒したかった。

 その為に、この3年間はずっと研究開発に明け暮れていた。

 

「だけど?」

「兄さんが生き返った」

 

 3年前にショッカーにより殺害された大学生、分木広夢が生き返って生還した事は小沢も聞き及んでいる。

 現在はオーディンに取り込まれた女性と共に病院に搬送され精密検査を受けているが、どちらも健康状態に問題は無いという。

 

「目的を失ったのかしら?」

 

 自分で言っていて意地の悪い質問だと小沢は思う。

 兄の敵討ちを目指していたら、死んだ兄が生き返ってしまった。ここまで壮大な肩透かしも早々無いであろう。

 人が目的を見失うには十分な出来事だ。

 

 実のところ、須藤の紹介無しでも分木兄弟の保護は決まっていた。なにせ元となるシステムがあったとはいえ、独自でライダーシステムを開発する天才兄弟だ。警察として放置しておけるはずがない。

 だが、小沢が自身の懐に取り込むかどうかは別だ。フラフラと定まらない、力だけある人間を下に付ける気は無かった。

 

 そんな彼女の考えに対して、集夢の回答は少しだけ違うものであった。

 

「いえ、肩透かしを食らった気分が無いと言えば嘘になりますが、違うんです」

「違う?」

「はい。自分は何と戦うべきだったのか、あれは何だったのか……」

 

 確かに兄が生き返った事により、目的意識を失った事を完全には否定できない。

 だが、それ以前から考えていた事がある。

 

 あれはいったい何なのか?

 

 アインロールドが自分と葵、人々を守る為に隠していた正体を露にし、ミラーモンスターに立ち向かった事など筑波に指摘されるまでもなく気が付いていた。

 感情的に、認めたくなかっただけだ。兄の仇が、そんな事をするなどと認められなかった。

 だが、ほんの数時間ではあるが、言葉ではない黒いライダーの戦いを見た。

 誰かを守るために駆け出すその勇気を、傷つき倒れても必ず立ち上がる闘志を、無辜の犠牲者を取り戻そうとするその優しさを、犠牲者を減らそうとする知恵を、邪悪を許さぬ怒りの心を、そしてなにより……。

 

『その素人どもを連れてさっさと消えろ。そして、貴様ら旧式と俺の格の違いを思い知れ!』

 

 傲慢なショッカーの使徒が吐きそうな言葉だ。

 だが、あの城戸が、あの筑波が一瞬の虚を突かれ動き出す前に、誰よりも早く光のごとく飛び出し、我が身を犠牲にしようとした広夢と葵を連れ戻した。

 そして目の前に迫る巨大な怪物に臆することなく一人死地に残り、ついには世界を救ってしまった。

 

 あの背中は、筑波と同じだ。

 幼き日に見上げた仮面ライダーの背中だった。

 

「俺は本当に怒りを向けなければならない先を知らないといけない。それが奴に怒りを叩きつけた人間としての義務だ。だけど、俺はまだスタートラインにすら立っていない」

 

 あいつと再び戦うにせよ、戦わないにせよ、まずはスタートラインに立たなければどうにもならない。

 色々と世話になった須藤の紹介という事でここに真っ先に来たが、断られても行動を変える気は無かった。

 

 自分を見ているようで見ていない、若者の言葉に小沢は小さくため息をつく。

 あれは自分の問いかけを出汁に自分の気持ちを整理しただけだ。その、どこまでも真っ直ぐで不器用な若さをうらやましいとは思わない。自分も若いし。

 少なくとも自分の下につくギリギリの合格ラインはやっても良いだろう。

 

 小沢はチェアを回転させると

 

「仮採用」

「え?」

「仮採用よ。うちに客員としての席を用意してあげる。でも、駄目そうなら放り出すからね」

 

 なお、後に小沢は述懐する。

 ここで弟だけでも確保しておいてよかったと。

 

 なにせこの後、表に籍のある対超常現象組織間で『ドキッ! 変人だらけの分木兄弟争奪戦』が始まるのだ。

 あの連中の集いに巻き込まれなかったのは、幸いである。

 

 

 

 

 

 大型レジャー施設、その正体はネオショッカーの秘密基地だった場所は警察により厳重な封鎖が行われていた。

 火災と爆破により完全に廃墟と化したその地に設置した巨大な鏡を通り、鏡面世界の調査から帰ってきた須藤を出迎えたのはコネを使い入り込んでいた筑波であった。

 

 バトルフィールドであるミラーワールドは消滅しても、鏡面世界そのものは存続し落ち延びたミラーモンスターが居座る危険性があるのだ。あまり楽しい任務では無いが、この辺りをちゃんとやっておけば組織内で融通が利きやすい事を須藤は知っていた。

 幸い午前中の調査ではミラーモンスターの影は無く、須藤は行動を共にしたG3機動隊を連れて現実世界に戻ってきたのだ。

 

「須藤さん」

「ああ、筑波さん。すいません、少し彼と話があるので席を離れます」

 

 筑波の正体を知る者は須藤以外にはいないが、相応の重要人物である事を察した機動隊員たちは疑う事なく須藤を送り出す。

 人目の付かない場所まで移動した須藤は、筑波に頼まれていた一件の結果を話す。

 

「一応は探してみましたが、それらしい反応はありません」

「そうですか……大首領スイッチは残っていませんでしたか」

 

 筑波が須藤に頼んでいたのは、リュウガが持っていたネオショッカー大首領の力を宿したスイッチが鏡面世界に残っていないかどうかの確認であった。

 京都の事件にてフォーゼに撃破され宇宙の彼方に消えたと思われていたスイッチがこの地にあったのだ。念の為、鏡面世界に残っていないかどうかの確認を須藤に頼んだのだ。

 まだ半日程度の確認ではあるが、それらしい反応は無かった。

 

「物が物なので数日は調査を継続します。でも、これは刑事としての勘ですが、ここを探してももう無いでしょうね」

「俺も同じ考えです。だけど、消滅した訳では無い」

 

 何者かが持ち去ったのか、それとも自力でいずこかに消えたのかはわからない。

 だが、あの邪悪な魂を秘めたアイテムはこの世界のいずこかに存在し、復活の時を待ち続けている。それだけは確信をもって言える。

 強い使命感を漂わせる筑波に、結果は分かり切っていても須藤は言葉にして確認を取る。

 

「やはり追いますか、大首領スイッチ」

「ええ。ネオショッカーの動きも活発になってきている。それらも含めて追わない訳にはいきません」

 

 再生ショッカーの壊滅から1年と半年。ショッカーという巨大な重石に抑えられてきた闇の組織たちが次々と活発な活動を見せ始めている。

 そう遠くない未来、再び大きな戦いが起こる。それは善悪に関わらずこの世界を知る者たちにとって共通の認識であった。

 

「その件ですが……」

 

 使命感を見せるライダーを見ながら、自身の最大の利益であるスリルを求める男はある情報を伝えようと口を開く。

 だが、彼が伝えるべきことを伝えるより早く、騒がしい珍客がこの場に現れる事になる。

 彼はこちらを見て大きな声を上げながら、次の瞬間固まり失礼極まりない声を上げた。

 

「あっ、筑波さんいたいた……。って、須藤!?」

 

 やって来たのは城戸真司こと、仮面ライダー龍騎だ。

 警察が立ち入り禁止にしている区域だが、彼もまた捜査一課に属する知り合いに頼み込み入り込んできたのである。

 

「人の顔を見るなり失礼ですね。確かに君らとは親しくする間柄でもありませんが。とはいえ、この世界では初めまして。そしてお久しぶりですね、城戸さん」

 

 顔を見るなり固まり、あるいは警戒を隠そうとしない城戸に対し、須藤はにこやかに余裕をもって対応する。

 当然だ。今の世界で対立する要因など須藤には無い。無駄に警戒する事や敵意を出す必要が無いのだ。

 逆に以前の世界の悪行と最後を知る城戸は警戒や嫌悪を解く事が出来ないでいた。

 

「どうしたんだ、城戸さん? 知り合いではあるのは分かっていたが……」

 

 あまりにも態度が対照的な2人に、事情を一切知らない筑波は困惑する。

 筑波にとって須藤は誠実な刑事でしかない。あまり他人を悪く見ない城戸がここまで警戒する理由がまるで分らないのだ。

 

 その事を悟り、先に動いたのは須藤だ。

 精神的に余裕があった分、自分にとって一番有利な一手を講じる。

 

「大した話ではありませんよ。書き換えられる前の世界、そこで私は人殺しを平然と行う悪党であった。彼らはそれを倒した仮面ライダーだった。それだけです」

「なっ!? 須藤」

 

 普通なら隠すだろう過去を須藤はあっさりと暴露する。

 なにせ前の世界での話だ。この世界の自分の話ではない。別に持っていかれても誰も証明できない、泡沫の夢の話だ。

 城戸が暴露するとは考えにくいが、下手に隠して後で何かの拍子に知られれば今回築いた信頼関係が破綻しかねない。ならば裁けない罪など自分から話してしまっても何ら問題はない。

 そういう計算と立ち回りだけは上手いのが、須藤という男であった。

 

「失望なされましたか?」

「いえ、少々驚いただけです」

 

 実際、筑波が驚いたことは事実だ。だが、同時に鏡像の城戸真司に対して『今の私は善良で真面目な刑事なのでね』と返した意味が理解できるというものだ。

 なるほど、過去がそれほどの悪党であるならば、今の刑事である須藤との落差に驚くのも道理だ。

 もしかすると彼が誠太郎を逮捕して少年院に入れたい、やり直しの機会を与えたいというのは自身の経験から来ているのかもしれない。闇に引きずり込まれ苦しむ少年を助けたいという意思の表れなのではないだろうか?

 

 壮大な誤解である。そんな殊勝な心構えのあるような男ではない。

 

「それよりも、筑波さんに何か用事があったのではないんですか?」

「あっ、そうそう。風見さんが筑波さんの事を探してたから」

「俺の事を?」

 

 今回の事件で街の防衛を担っていた先輩ライダーが探していると聞いて筑波は首をひねる。

 特に用事らしい用事は無いと思うが……。

 

「すいません、須藤さん」

「はい。あっ、その前に一つ伝えたい事が」

「伝えたい事?」

 

 筑波が足を止め、城戸が胡散臭そうな目で見る中、須藤は苦笑いを浮かべながら今朝方メールできた連絡を思い出しながらこう告げる。

 

「ああ、気にしているかもしれないのでお伝えしておきますね、誠太郎ですが、無事ですよ」

「えっ!?」

「今回の一件でネオショッカーと関わりの合った企業のリスト付きで、今朝方連絡がありましたよ」

 

 ある程度付き合いの長い須藤からしてみれば、あれはミラーワールド崩壊程度で死ぬような奴ではない。

 どうせひょっこり出てきて、無理難題を押し付けてくる事ぐらいわかっていた。

 とはいえ、朝っぱらから面倒事を押し付けてきたのは予想外であり、思わず飲んでいたコーヒーを噴き出す羽目になるとは思っていなかった。

 

「どうです、大首領スイッチを探すなら一枚噛みませんか?」

 

 意地の悪い笑みを浮かべ、筑波と城戸にそう問いかける。

 

 色々と顎で使われ腹は立つが、それはそれとしてあの少年は実に人の使い方を心得ているというものだ。

 今回押し付けられた難題も、なかなかスリリングな事が起こりそうであった。

 

 

 

※※※※※

 

 

 

「やれやれ、これで良し」

 

 朝もやが残る街を一望できる高台で、俺は操作を終えた端末を荷物の中に放りこむ。

 何をやったかというとネオショッカー基地の建造に関わった企業のリストを送り付けたのだ。警察の配備をさぼらずやって人命被害を0にした蟹に対する報酬って奴だ。

 これを捜査本部に持って行って自分の手柄とするもよし、自分で調査をしてネオショッカーとドンパチを楽しんでよし。あいつの好きにすればいい。

 

 まぁ、十中八九自分で捜査をしてネオショッカーを探るだろう。

 

 なんだかんだ優秀な奴ではあるので、ネオショッカーのフロント企業は大打撃を受けるはずだ。

 これで連中が大人しくなってくれればいいが、これはあまり期待できない。

 

 ミラーワールド系の情報はすべてショッカー、シノビバチに投げておいた。

 ショッカーにこう言った情報を流すのも世の為にならない気はするが、個人的に協力をしてくれている彼女に対して何もしない訳にはいかない。

 悪の組織も人付き合いが大切なのだ。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

 止めておいたサイクロンヘルに跨ると、俺はエンジンに火を入れる。

 

 ここから見える町は未だに警察車両が行き交っていた。死者数は0だが、建物等の被害はそれなりに出ている。

 だが、ここから先はもう、俺が関わる話ではない。

 超常の災害が去った以上、ここからは人の力で何とかするべきだ。

 

 それに、俺は次に行く場所があった。

 

「長野県九郎ヶ岳か……」

 

 ブラックサタンにより示された、俺が次に向かうべき土地。

 俺はそこに向かうべく、再び走り出した。

 この地で出会った人々の幸せを願いながら。




というわけで、龍騎編は此処で一時終了。
終わってみたら、なんかスカイライダーと蟹が終始いい空気を吸い続けていた気がします。
龍騎こと城戸は半分ぐらいピーチ姫だったので、龍騎編リベンジもいつかしてみたいところ。


というわけで、3話ぐらいの番外編を挟んだ後にクウガ編となります。

自分が読みたい仮面ライダーの話を書いてみたいと始めた創作ですが、此処まで100話を超えて応援ありがとうございます。心よりお礼を申し上げます。
また、完走できるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
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