ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
あと久しぶりに日間100位以内には入れました。応援ありがとうございます!
暗い地底の底、かつて悪意に満ちた悪鬼の巣窟であった場所をか細い懐中電灯の明かりを頼りに4人の男が進む。
その内先頭を歩いていた男が後に続く男たちの動きを手で制すると、もう片方の手に持った奇抜なデザインのゴーグルに目を通す。
赤いレンズが暗闇の先を射抜く。
「大丈夫だ、この先に罠や落盤がしそうな場所はねぇ。非常用の電源は……これか」
カチリという音が鳴り響き、岩肌に隠された照明が一斉に明かりを灯す。
俺と同時に4人の男の姿の姿が現れる。
先頭を歩いていたのは、変わった出で立ちの男であった。
夏らしい白のサマーベストと半袖のシャツだけなら普通だろうが、地底の奥深くだというのに白いソフト帽をかぶりっぱなしだ。
もっとも、そのソフト帽は彼のトレードマークと言って良い出で立ちであり、同行者は誰も何も言わない。
彼の名は左翔太郎。風都で探偵を営む青年であり、風都を守る二人で一人の仮面ライダーWであった。
ある事件の応援に出かけた際に出会った知り合いからの依頼で、今回の廃墟探索を手伝う事になったのだ。廃墟探索は専門では無いが、探偵稼業で培った経験を生かせない事も無い。
「すまないな、左。忙しい所を付き合わせて」
「いいっすよ、風見さん。俺たちもショッカーライダーの事を調べていた所でしたし」
「そうか」
その依頼主こそ風見志郎、またの名を仮面ライダーV3だ。
元々あるショッカーライダーの事を調べていた風見であったが、その際立ち寄った町で怪物が溢れる寸前の事態に陥り風見や翔太郎は被害を食い止めるべく応援に駆け付けていたのだ。
事件そのものは別のライダーの活躍により大きな被害が発生する前に食い止める事に成功した。それを見届けた風見は元の調査に戻ろうと考えたのだが、事件の応援に駆け付けた知人が何人もいる。
その中には問題のショッカーライダーとの交戦経験がある翔太郎もいたため、調査に協力を依頼したのだ。
幸い依頼が他に入っていない事や、風見が提示した金額を聞いた所長が『食い扶持が増えたんだから行ってこい(意訳)』と快く送り出してくれたこともあり調査に協力する事となった。
「しかし、風見さんもあいつと戦っていたんですか。それも噂のショッカーの移動要塞で」
「ああ、まんまと逃げられたがな」
ショッカーが残した機械類を調べながら苦い表情を浮かべる二人を見て、何とも言えない微妙な表情を浮かべているのが城戸真司と筑波洋。仮面ライダー龍騎とスカイライダーである。
風見から旧ショッカー基地の調査をする話を聞き参加したのだが、風見や翔太郎とはアインロールドの印象の違いに戸惑っているのだ。
無理もない。風見のアインロールドに対する印象は本郷の技を受け継ぎながら中途半端にふらついている半端者。翔太郎にいたっては自分たちを利用して任務を達成し、意味深な事を言って去って行った謎のショッカーライダーだ。あまり良い印象は無い。
逆に共闘する事になった筑波と城戸の印象は、事情があるだろう少年だ。彼の人々を守るための献身を直で見ている上に、筑波はある刑事より彼が誘拐された経緯を聞いており、城戸に至っては命を助けられている。過去の凶行を知っている二人であっても、彼に悪印象を持つ事は不可能であった。
知る必要があると思い同行はしてみたが、当代響鬼である桐矢のように『あの男には助けられた義理がある。申し訳ないが調査に同行は出来ない』と言って参加を断るのも一つの手段だったのかもしれない。
それはともかくとして、来てしまったものは仕方がない。
機器のほとんどはスーパー1が放った威力無限大キックの余波で壊れてはいたが、それでも丹念な探索と翔太郎と連絡を取り合ったフィリップの知恵でギリギリデータが吸い出せそうな記録媒体を発見する事が出来た。
「よし、これを端末につなげば見る事が出来るな」
風見は手早く持ってきたノートパソコンに記録媒体を繋いだ。
そして、4人の視線が一斉にモニターに集中する。
黄金色の髪の妙齢の女科学者、ミカ・ウェストの前に運ばれてきたのは薬品で眠らされた10代前半の子供であった。
特に予定も無い子供を連れてこられ、ミカが困惑したのも無理のない話だ。
「これは?」
「決まっている。改造素体よ」
「えっ!?」
その言葉に、ミカは少年をまじまじと見る。
丸坊主であるため判りにくいが、育ちの良い優し気な、整った顔立ちの少年だ。何かスポーツを真剣に取り組んでいるのだろう、歳の割に引き締まった体躯をしている。
とはいえ、子供は子供だ。改造人間の素体に適しているかと問われれば、専門家としては首を横に振るわざるを得ない。
「正気ですか、将軍?」
新型改造人間の開発研究を命じられていたのだが、自分とそう歳の変わらない子供を改造しろというのか?
あまりにも意味の分からない命令であったが、子供を攫ってきた暗闇将軍からしてみれば当然の判断であった。
「貴様に新型改造人間の開発を命じてからどれだけの時間が経っていると思っている!」
和風の甲冑に身を包み歌舞伎を模わせる妙な化粧を施した大男は、苛立ちを隠さずミカの質問に対して怒声を返す。
もっとも、ミカからすればその怒りは意味が分からないものだ。
それゆえに、素直に聞かれたことに対して進捗を伝える。
「1年程度でしょうか? すでにナノマシンの作成は完了しており、素体となる人間を選定する段階になっています。ですが……」
ミカの開発したナノマシンが成功すれば、従来を大きく上回る性能の改造人間が誕生する。その能力は1号や2号を遥かに超え、成長次第ではジオウにすら届きうるだろう。
それゆえに素体は誘拐でなく、組織生え抜きのエリートを使う事を要請していたはずだ。だが、選定された人物の改造をことごとく却下してきたのが、目の前にいる暗闇将軍であった。
自身で開発を止めておきながら、開発が進んでいない事を責めるのはいくら何でも意味が分からない。
「貴様こそ舐めているのか! ガキの実験に、ショッカーの生え抜きを使えると思っているのか!」
「ですが、そのように命じたのは将軍では? それに子供が素体では性能がどう変化するか予測できません!」
資料を見て、本部に見せつける為に最高の素材を使えと言ったのは将軍だ。
そもそも、子供に重改造を行うというのも無理がある。耐えられないというのもあるが、改造に耐えても不安定な子供ではどのような変化が起きるかわからない。
その為に各所との調整を行い、選抜試験まで行ったのだ。
「何を言う! キバ一族は子供にナノマシン処理手術を成功させたらしいぞ! 最高のナノマシンと言いながらその程度も出来ないのか!」
「その話は聞き及んでいますが、あれは重傷者の治療が目的と聞いています!」
組織内の情報共有として、そのような話があった事は聞いている。
だが、キバ一族が行ったのはあくまで瀕死の重傷であった少女を救うための処理であり、戦闘能力が定着する可能性は限りなく低い。
技術者としては当然の抵抗であったが、暗闇将軍は彼女の言い分など聞く気は無かった。
格下の小娘に口答えをされた事に怒りの表情を浮かべ怒鳴りつける。
「小賢しくも俺に口答えをするか、小娘! それとも、スクールのガキがどうなっても良いのか!」
その言葉に、ミカの表情が強張る。
ショッカーチルドレンスクール。次世代の幹部を養成するために日本支部で作られたデザインベイビーたちの事だ。その遺伝子は厳重に選抜され、中には大幹部の遺伝子を使って作り出された子供までいる。
だが、その次世代幹部というお題目に対し、その扱いは劣悪そのものだ。ショッカー内部にのみならず外部組織にすら実験動物として販売されている。
ミカ自身、そのファーストロットと呼ばれる最初に生産された子供の一人だ。
だが、ファーストロットで作成された100人の子供のうち、現在生存している子供はミカも含めて僅か5人だ。第二期生産分が6人、第三期生産分が9人。300人が製造され、生き残った子供は僅か20人しかいない。
その中で、ミカは天才的な頭脳が見出されスクールを離れ一人だけ研究開発室に配属された。だが、残り19人の子供は未だ暗い闇の底で、いつ連れ出され弄ばれ、殺されるか分からない環境の中にいる。
「了解いたしました。ですから、子供たちは」
「貴様の働き次第だと言ってあるはずだ。分かったらそのガキを連れて行け!」
言いたい事だけを言うと、暗闇将軍は乱暴にドアを開けその場を去って行く。
それを確認したミカは力なく椅子に腰を掛けしばらく無言で天を仰ぐと、おもむろに自らの端末に目を通す。
そこには誘拐された哀れな犠牲者のデータが書き記されていた。
「渡世誠太郎か……。地獄へようこそ、そしてさようなら」
どのみち、この少年の名前も過去も、この地に運び込まれた時点で何の意味も無いジャンクデータへと変わる。
彼の運命は決まっている。自らの手で改造され、化け物になる。ただそれだけだ。
その事を哀れに思う程度の人間性はミカに残ってはいるが、罪悪感を感じるような神経はとうの昔に摩耗し消え去っていた。
手元の端末を再度操作を行い、基地内部の施設の空き状況を調べる。
「手術室は開いている? これから改造手術を行うわ」
「この女が誠太郎君を改造したのか……」
誠太郎のパーソナルデータ。そして金髪の女性が少年に改造手術を施す映像を見ながら筑波が怒りの感情を滲ませ呟く。
手術を行っている人物はミカ・ウェスト、名前は聞かないがショッカーの科学者の一人であろう。
不明瞭な映像ではあるが、手術を行う大人の女性を見ながら風見が小さく呟く。
「俺はこの女、ミカ・ウェストにショッカーの移動要塞で出会っている」
「えっ!?」
「ただ、その時のミカ・ウェストは小学生ぐらいの子供だったな」
『お兄ちゃん!』
腑抜けていた小僧に活を入れた、少女の叫びを風見は思い出す。
動き方や話し方などから、以前風見が会ったミカが本来の姿だ。
何か事情があるのは察してはいたが、いよいよもって胸糞悪い事情が埋もれていそうだ。
誘拐された者と改造をした者。少なくとも、二人の関係はそれだけではないだろう。少なくとも少女は小僧を支えにし、小僧は少女を戦う理由の一つにしている。
この後、二人の間に何かあったのだ。怪人と科学者としてではなく、ライダーと少女の経緯が。
「13歳で誘拐、改造されたのかよ……」
「ひでぇな……」
同じ映像を見ていた翔太郎と城戸が、怒りと悲しみが混じりあった呟きを漏らす。
だが、本当にひどい映像はこの先にある。
改造は、地獄へと続く第一歩に過ぎないのだ。
同じ改造人間である風見と筑波はその事をよく知っていた。
だが、ここで見る事を止める訳にはいかない。風見は端末を操作し、アインロールドの活動記録を再生するのであった。
良い印象が無いのは風見と翔太朗、スパナぐらいしかいない模様。
本作における昭和ライダーの携帯事情
本郷猛 長期間同じものを持ち続けると悪党が探知をして襲ってくるので、短期間で持ち替えているため非常時の発信専用。
一文字隼人 同上。ただし、フリーのカメラマンの仕事をやっているので連絡はマメにチェックをしている。
風見志郎 本郷と同じだが、自分からかける事もほぼ無い。連絡が取りにくいライダー筆頭。
結城丈二 自作超高性能端末を使用。探知の恐れが無いので風見にも同じ物を持たせようとはしたが、困っていないのでと断られた。こっちが連絡が取れなくて困るんだからお前も使え(オコ
神敬介 普通に市販品を使っている。普通すぎて書く事が無い。
山本大介 本人は持ちたくないのだが、ガイドの仕事に必要だからと衛星通信対応のごついのを仲介業者が押し付けた。
城茂 体質的にすぐ壊れてしまうので部屋に置きっぱなし……と、言い張っている。単に扱いが雑なだけ。
筑波洋 身だしなみの一環として最新機種を使っている。
沖一也 頑丈で高性能な特注品を愛用。ただし地上にいない事も多いので連絡が取れるとは限らない。
村雨良 普通に市販品を持っているがよく落とす。そしてそのまま数日は気が付かない。