ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第110話 prologue・Unenrolled 活動記録_0X

「先生! こちらに!」

 

 先導する護衛の言葉に、老人は返事をする事すらできない。

 齢80近い身だ。すでに足腰は弱っており、若い頃のように走る事はかなわない。だが、それでも走らねば死ぬ。

 

 遠くから聞こえてくる爆発音は先ほどまで自分が乗っていた自動車だ。

 知人の勧めもあり特注した対怪人用の強化車両を使用していたというのに、進路上に出現した男は蹴りの一発で車両を小石のように蹴り飛ばしてしまった。

 幸いシートベルトや各所に仕掛けられていた衝撃吸収装置や脱出用の仕掛けのおかげで一命をとりとめたが、ひっくり返った自動車では逃げる事などかなわない。護衛に先導され何とか車から抜け出し、大通りに続く路地に逃げ込んだのだ。

 

「慌てず急いで! 警察は呼んでいます! 今は遠くに!」

「ひぃ……ひぃ……」

 

 元警察官の護衛もつれており、彼らが足止めをしている。

 だが、銃器すら持っていない一般人が果たしてあの怪物……ショッカーの改造人間に勝てるものだろうか?

 答えは否であった。

 

 真正面、闇の奥で赤い双眸が光り輝く。

 走るのではない。あえて歩みを遅らせるわけでもない。ただ普通の速さでその怪物は歩み出る。

 身長は180センチ程だろうか。黒いボディスーツにさらに同色の胸部から腹部を守る特殊装甲。黄色の手袋とブーツ。そして血のように赤いマフラー。

 バッタと髑髏を掛け合わせたかのような異形のヘルメットに、赤い複眼が鈍い光を発する。

 

 それは仮面ライダーと呼ばれる戦士たちと瓜二つでありながら、正義の魂を宿さぬ心無き怪物。その名もショッカーライダー。

 

 その邪悪の徒は何も言わない、何も語らない。

 ただ標的の老人を確認の為に見つめるだけだ。

 

「くそっ、先生は……えっ!?」

 

 護衛の男が老人を逃がそうと動こうとして、目の前からショッカーライダーの姿が消える。

 まるで霞のごとく消えてしまった。その事に一瞬だけ呆然とするが、背後から聞こえてきた苦悶の声に慌てて振り向く。

 そこには、先ほどまで前方にいたはずのショッカーライダーが、老人の首を片手で吊り上げている場面だった。

 

 そして、護衛の男が振り向いた時は、もう終わる瞬間であった。

 

 ゴキリ。

 

 そんな音が護衛の耳に届いた。錯覚かもしれない、あるいは本当に聞こえたのかも知れない。

 ただ、男が振り向いた瞬間に苦しげに藻掻く老人の手足が力なく垂れさがる。

 

「き、貴様!」

 

 護衛の男がショッカーライダーに殴りかかる。

 だが、ショッカーライダーは振り向きすらせずに男を払いのける。それで終わりだ。

 圧倒的膂力により弾き飛ばされた護衛は壁まで飛ばされ、そこで意識を失う。

 

 示威行動として対怪人用車両の破壊。そしてこの老人の殺害。それだけがショッカーライダーが受けた命令だ。護衛にとどめを刺す必要は無い。

 ショッカーライダーは蘇生が出来ないように老人の心臓に拳を突き立てると、その場を後にした。

 老人の死体と、意識を失った護衛のみが夜の路地に残される。

 

 どれだけ時間がっただろうか。不意に建物の屋根を走ってきたそれが老人の死体を見つけ、路地裏に着地する。

 

「間に合わなかったか!」

 

 それは奇妙な姿の男であった。

 蜘蛛を模した金属製のボディースーツを着込んだ仮面の男。パイダスと呼ばれる対異星人用の特殊戦闘服、この世界にのみ存在する仮面ライダーであった。

 やってきた仮面ライダーは老人の死と護衛の無事を確認すると苦々しげに端末を操作する。

 

 しばらくすればこの場に警察が来るだろう。

 だが、凶行を行った存在は、おそらくはもう捕まらない。

 

「ショッカーめ……」

 

 手口から、おそらくは最近評判の黒衣の処刑人だろう。

 対超常現象を考える政治家が次々に消されていく。この状況は何とかしなければならない。

 パイダスはそのための一手を考え始めていた。

 

 

 

「何度も何を考えているんですか! アインロールドはまだ未完成なんですよ!」

 

 地底深くのショッカー基地に、ミカ・ウェストの抗議の声が響く。

 

 メンテナンス用のベッドに寝かせたアインロールドの周りで技術者たちがせわしなく動く。

 当然だ。肉体面の改造手術は完了し、ナノマシンも無事定着した。とはいえ被験者はまだ13歳の少年であり、この後どのような変化が発生するかわからない。

 さらに言えば現在は洗脳の為の人格の消去処理と戦闘技術やショッカー人格インストールの真っ最中だ。とりあえずデバッグモードで動くとは言え、今稼働させればまた作業が最初からやり直しになってしまう。

 

 1回なら上官のくだらない遊びも我慢できようが、こう度々勝手に持ち出されては堪ったものではない。相手が支部長でなければ開発部所属の改造人間が一人や二人暴れていてもおかしくない暴挙だ。

 この暗闇将軍の悪癖に対する抗議は、ミカのみならず開発部全体の総意と言ってもいい。

 

「最新機をテストして何が悪い」

「テストって……」

 

 そもそも、アインロールド計画の本筋は未知の脅威に対するカウンターだ。従来の改造人間を圧倒するフィジカルと高い防御性能、そして極めて高い学習能力を持つ。

 一般人を殺害する事に使うには非効率かつ過剰な能力であり、牛刀で鶏を捌くような物であった。

 だが、そんな技術者たちの発言を、暗闇将軍は一笑に付す。

 

「人も殺せず何が最強兵器だ! 何が殺人拳だ! 丁度いい経験よ!」

 

 暗闇将軍は元は赤心少林拳の師範だった男だ。だが、力と冨を求め道を踏み外し、赤心少林拳を追われショッカーに流れ着いた過去を持つ。力の信奉者であり、虚栄心の強い男である。

 

 そんな男が数ある計画の中から、ミカが開発した新型のナノマシンに目を付けたのが一年前。未知の脅威に対するカウンターとして、最強の改造人間を開発するという文言がいたく気に入ったようだ。

 ミカとしても実績を上げスクールの子供たちの境遇を改善するまたとない機会であり、精力的に開発に取り組むことになる。その際、改造素体として組織の生え抜きのエリート……と言えば聞こえはいいが、実際は暗闇将軍の門弟をねじ込まれたのは些細な話で合った。

 

 ただ、ここで不幸が二つ。

 

 一つは暗闇将軍が日本支部長として赴任してからそれなりの時間が経つが、増え続ける仮面ライダーたちへの対策はどれも上手くいかず、日本支部の再建が全く進まず彼の虚栄心が猜疑心へと変化していった事。

 そしてもう一つは、選ばれた野心溢れる門弟が開発責任者であるミカに接近していた事であろう。失敗続きの将軍が猜疑心を深め、門弟が自身の地位を脅かすのではないかと考えるのにはそう時間はかからなかった。

 結果的に将軍は理由をつけて改造手術を引き延ばし続け、果ては抗議を行った門弟を反逆者として粛清してしまう。

 

 その後、暗闇将軍の勘気に触れる事を恐れ候補者が見つからない状態が続き、先日唐突に誘拐してきた子供を改造しろと命じて来たのだ。

 キバ一族が子供に対してナノマシン定着を成功させたと聞いて、ならば日本支部もと虚栄心を満たすために思いついたのだろう。開発者としては迷惑極まりない話であった。

 

 

 

──遠くで誰かが言い争う声が聞こえる。

──でも、それが争っていると分かっていても、意味を感じない。

──だけど、手に感触だけは残っている。首を折る感触が、肉を貫く感触が。

──父さん

──父さんの姿が消える……。あれ、でもこっちの父さんはどっちの……

──考えると消える。考えちゃだめだ、でも……。

──帰りたい

──どこに……。

 

 

 

 ミカの抗議も空しく、アインロールドが再び出撃を命じられたのは数日後のことだ。

 実戦経験を積むなどと言ったお題目で命じられたのは、ある資産家一家の抹殺だ。

 

 横浜市郊外の大豪邸にショッカーライダーが到着したのは、深夜に近い時間であった。

 人気の無い屋敷を、アインロールドは音も立てずに進んでいく。

 

 もし、このショッカーライダーが現在のアインロールドであったのなら、あまりの人気の無さに違和感を覚え、作戦を中断していた事であろう。

 だが、ただ命じられた事をこなすだけの未完成品は、ただ都合が良い状態としか認識せず先に進んでいく。

 

 警備や使用人どころか、家族すらいない屋敷を怪物は進んでいく。

 やはて、標的の寝室の前に到着すると、音もたてず音を開け丸まった布団を見つけた。

 

 後はアレを踏みつぶし、命を刈り取れば今晩の任務も終わりだ。

 そのはずであった。

 

 振り上げた足が布団を踏み抜く。

 だが、伝わってきた感触は肉のそれではない。とてつもなく硬い何かであった。

 踏み抜いた衝撃で、被っていた布で出来た布団が粉々に千切れ吹き飛ぶ。

 

 繊維が舞い散る中、怪物は布団に寝ていた人物と視線を合わせる。

 それは、この屋敷を所有する資産家の男では無かった。

 

 黒いボディースーツにシルバーの二本のライン。緑色の強化装甲。銀の手袋とブーツ。赤いマフラー。

 そして、赤い双眸を備えた明るい緑のヘルメット……。腰に巻かれた伝説のベルト。

 

 この特徴を持つ者は、世界広しと言えども一人しかいない。

 

「待っていたぞ、ショッカー!」

「なっ!? 仮面ライダー1号!?」

 

 考える事なき心無き怪物に、初めて感情のような驚きが混じる。

 その一瞬の隙を見逃す1号ではない。

 踏み抜こうと振り下ろした脚、その黄色いブーツに納められた足首を掴むと起き上がる動作と同時に力任せに振り回し窓に向かって叩きつける。

 ライダーのパワーで投擲されたショッカーライダーの身体は強化ガラスを易々と突き破り、日本庭園に投げ出される。

 

 1号は叩き出したショッカーライダーを追い、自身も庭園へと降り立った。

 

「お前が最近噂となっているショッカーライダーか!」

 

 1号の問いかけに対する返答は、起き上がりざまに繰り出されたパンチであった。

 仮面ライダー1号を上回るスピードとパワーで繰り出された拳であったが、1号は何なくそれを受け流すとショッカーライダーの懐に入り込む。

 

「話す気は無いか、その機能が無いのか……。ならば!」

 

 1号が繰り出したのは腹に向かったパンチだ。

 ショッカーライダーの装甲なら十分受け止める事の出来る程度の威力のパンチ。だが、その一発でショッカーライダーは腹を抑え、よろめき、無意識に後ろに下がる。

 

「でやぁっ!」

 

 続いて繰り出されたのはチョップだ。

 ショッカーライダーの耐久力なら耐える事の出来るはずの鋭さしかないはず。だが、その一撃は装甲を抉り胸に一文字の傷を残す。

 

「はあっ!」

 

 1号の攻撃は止まらない。続いて繰り出された回し蹴りについにはショッカーライダーは吹き飛ばされ、石灯篭にぶつかり崩れ落ちる。

 たった3発の攻撃でしかない。しかも、スペック的には自身をはるかに下回る旧式の1号の攻撃だ。

 だが、そのはずなのにショッカーラダーは崩れ落ち、動きを止めた。

 

「いくぞ、とぅっ!」

 

 それを確認した1号は天高く跳躍する。

 星と突きが輝く夜空に跳躍した1号は天の頂点に達し身を翻す。片足を突き出し、腕を締める。

 それは、幾多の人類の敵を葬ってきた仮面ライダー1号の必殺の型。

 

 その名も!

 

「ライダーキック!」

 

 夜空を切り裂き、風を纏い、悪を滅ぼすべく必殺のキックが解き放たれる。

 風を超える速度の蹴りが、ようやく立ち上がろうとしていたショッカーライダーの胸に突き刺さり、先ほどの比では無い距離をショッカーライダーが弾き飛ばされた。

 

 その一撃は、改造人間と言えども体組織の大半を破壊される、無事では済まない一撃だ。

 事実、ショッカーライダーは苦悶の呻きを上げながら身をよじる。苦しみから、痛みから逃れようと無駄に足掻く。

 そして。

 

「なっ!?」

 

 驚きの声を上げたのは、今度は一号であった。

 ショッカーライダーの姿が変わる。

 180センチ近い大人の体躯が見る見るうちに縮み、150程度の小柄な姿へと萎んでいく。

 ナノマシンで規制された強化戦闘服がボロボロと崩れていき、鍛えてはいるようだが細い子供の手足が姿を現す。

 

 そして、ついにはヘルメットにひびが入り剥がれ落ちた。

 

「子供……だと!?」

 

 そう、その素顔はまだあどけなさの残る子供の物だ。

 苦悶の表情を浮かべる少年の視線が、仮面ライダー1号と交差する。

 感情の光は無い。でも、助けを求める声すらも上げれぬ、無感情な目。

 

 少年の姿を見た瞬間に見せた、1号の隙。

 

 再び子供の体躯が大人の物へと膨れ上がり、強化戦闘服がその身を拘束していく。

 そして、強化戦闘服の再生を待たずして、ショッカーライダーは天高く跳躍する。

 

「まっ、待て!」

 

 1号はショッカーライダーを追おうとするが、単純なフィジカルスペックはショッカーライダーが上である。

 彼の姿は闇の奥底に消え、追う事は出来なかった。

 

 仮面ライダー1号がそのショッカーライダーに追いつくのは、1年以上後のことであった。




3話で終わると言ったな! それは嘘だ。
5話ぐらいになりそう(フラグ


Q.パイダスって誰?
A.episode・000に登場するオリジナルライダーです。


Q.アインロールドってオーマジオウに届くの?
A.本来は未知の脅威に対応するための量産型アインロールド部隊の1号機であり指揮官機。
  『RIDER TIME 仮面ライダージオウ VS ディケイド 7人のジオウ!』に出てきた状態のオーマジオウ相手なら、理論上の最高性能に達した状態で下位個体と連携を取れば0.1%ぐらいの勝率あり。テレビ版のオーマジオウは手をかざしただけでまとめて消し飛ばされるのでどうやっても勝てない。
  なお、アインロールド(主人公)は完全オリチャーに入っているのでどういう進化をするか不明。色々あってナノマシンは製造が出来なくなった。

 
Q.ライダー通信はどうなっているの?
A.結城丈二が中継衛星を打ち上げており、通常の環境なら地球上のどこからでもリアルタイム通信が可能。ただし過去に衛星を乗っ取られ罠に嵌められた経験から、衛星隠匿の為に世界の危機レベルの緊急時以外は自主的な通信封鎖を行っている。


Q.ところで、なんでこの晩来ると本郷さんはわかったの?
A.俺が知るか!(城茂) 
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