ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第114話 prologue・Unenrolled 最終報告_0X

 山中要塞に突入したアインロールドを取り囲むように、複数の複合怪人たちが現れる。

 従来のショッカー改造人間にドーパントの特徴を付与させた外見に、アインロールドは自身の経験や知識と照らし合わせて内心で小さくため息をつく。

 

 これならゲルショッカーの合成怪人かデストロンの機械合成怪人で良いんじゃね?

 

 仮面ライダーWのようにメモリの入れ替えに対応できるならまだしも、ここまで出て来た複合怪人たちはメモリチェンジを行った者はいない。さらに言えばメモリを自由に選択できないのか、明らかにバランスを欠いた者もいる始末だ。

 これならショッカーがすでに保有している他生物や無機物の特徴を付与する技術を使った怪人で十分事足りる。姉ヶ崎がそこまで発想が至っていないのか、それとも技術不足なのかはアインロールドが知る由も無い。

 だが、戦っている立場からしてみれば多少は見た目が分かりにくい程度で、そういった能力を持つ改造人間だと考えれば不意を打たれる事は無かった。

 

 迎撃に出てきた改造人間たちを蹴散らしながら進む。

 内部構造は突入前にサイクロンヘルが入手している。現在は入り口付近で情報の収集に当たっている。

 姉ヶ崎たちの車両に残されていた端末をサイクロンヘルに接続させ、すさまじい勢いで現在の基準に対応しつつある相棒に内心でドン引きしながら最初の扉を強引に引きちぎる。

 

 暗い室内の隅には同じデザインの貫頭衣を着た子供たちが固まっており、年嵩だろう子たちが小さな子供たちを守る様に小さな子供を抱きしめながらこちらを睨みつけている。

 警戒と嫌悪の視線を隠さない子供たちに、アインロールドはこう声を掛けた。

 

「大丈夫か? 助けに来たぞ」

 

 今まで一度たりとも言われた事の無い言葉に、警戒心を隠しきれていなかった子供たちも思わず目を丸くする。

 そんな子供たちの反応などお構いなしに、あるいは構う余裕もなくアインロールドは目の前の子供たちに確認を取った。

 

「18人、一人足りないな。もう一人いるって聞いているが?」

「あっ、えっと、その、ミク姉はあの女が別に連れて行ったんだ!」

 

 やはり別に一人連れて行ったか。

 まずはこの子供たちを表に逃がしてから探索するべきか。だが、一度出てからではそれだと逃げられてしまう恐れもある上に、表に出した子供たちにも危険が迫る可能性もある。

 移動は連中のトラックを使えばいいが、どうしたものか。

 

 もっとも、このアインロールドの悩みに関して言えばさほど悩む必要のある話では無かった。

 

 彼が攫われた子供たちと接触してしばらくすると、ホールの明かりが一斉に灯る。

 恐らくは何かの実験施設なのだろう。ちょっとしたホールほどのスペースには複数の頑丈そうな扉が設置されており、一段高い場所にはガラス張りの管制室が備え付けられていた。

 

「まったく、趣味の悪い部屋だな」

 

 前世の知識と今世の知識を合わせれば、この部屋の製造目的など容易に想像がつく。

 そしてなぜ子供たちがこんな部屋に放置されており、自分が誘導されたのかも実にわかりやすい。

 アインロールドは呆れ半分で上の管制室を見上げる。向こうもこちらが視線を向けた事に気が付いたのだろう。護衛らしい黒服と縛られた少女を連れた姉ヶ崎峰子が、こちらを憎々し気に睨んでいた。

 

「良くもまぁ、好き勝手してくれましたねぇ。ええ、とっても大損害ですよ、暴力馬鹿の秘密兵器さん」

「貴様のようにコソコソ隠れた事は無いのだが、イカレ女。その子を今すぐ返せば、見逃してやってもいいぞ」

 

 探す手間も、見つけた子供たちをどうするか考える手間も必要なくなった。

 正直あのイカレ女には興味はない。子供たちを助け出せればそれだけで良いのだ。

 

 そんなライダーもどきが発する侮蔑の言葉を受けても、姉ヶ崎は余裕の態度を崩さない。もっとも、こめかみ当たりの青筋がぴくついているあたり、はらわたは煮えくり返っているのだろう。

 コンソールの操作にも、無駄に力が籠っていた。 

 

「これを見て同じことが言えますか!?」

 

 抑えきれない怒りの発露か、最後のボタンを押す仕草は叩くようであった。

 仰々しい歯車がきしむ音が響きわたり奥の扉が一つ開く。全身を鋼鉄の鎧で固めた巨大な怪物が奥から姿を現した。

 

「バイオレンスアルマジロング! そのライダーもどきを始末しなさい!」

「はっ! お任せを!」

「やれやれ、今までよりはマシそうだな」

 

 バイオレンスという怪力を齎すメモリの力で、防御力に優れた改造人間を強化する。なるほど、単純ではあるが極めて有効な強化だ。最後に出してきたという事は、あれが彼女の切り札なのだろう。

 

 アインロールドの予想は正鵠を射ていた。

 逃げ出すだけなら19人の子供を囮に逃げれば良い。迎撃に当たるだけなら最初から他の複合怪人と同時にバイオレンスアルマジロングを出しておけばいい。

 

 だが、それでは科学者としての自分のプライドが許さない。自身の先進的なアイデアで作られた改造人間が、あんな面白みのない暴力馬鹿に媚びる小娘が作った改造人間に劣っていたなどと有ってはならないのだ。

 だから子供を囮におびき寄せ、自身の最高傑作と1対1で戦う舞台を用意した。

 そして、あのライダーもどきが無残にもばらばらに引き裂かれる様を、態々見物に来たのだ。

 

 その成果を救援に来たショッカーの応援に見せ、助けなど必要なかったと言えればいい。

 間に合わなくとも、バイオレンスアルマジロングと応援であのライダーもどきを倒し、反乱を起こした小娘を血祭りにあげれば自身の地位は安泰である。

 

 プライドと地位を守るため、態々この舞台を用意したのだ。

 

 そんな姉ヶ崎の意図など、アインロールドにとってはどうでも良い事であった。

 問題は戦場に子供がいる事だけだ。巻き込む恐れがある為、自分から打って出なければならない。そう判断したアインロールドは一気に怪物に向かい駆け出す。

 

 向かってくるライダータイプに、バイオレンスアルマジロングが鉄球となった腕を振り上げ応戦する。

 

「はぁっ!」

「ガァァァッ!」

 

 拳と鉄球がぶつかり、室内に甲高い音が響く。

 引いたのはウェイトで劣るアインロールドだ。パワーは互角でも重量差はいかんともしがたい。

 ならば速度でかく乱すると飛び上がり、相手の頭部に回し蹴りを叩き込む。

 

「ぐおっ!? この程度!」

 

 素早い動きで繰り出された踵をバイオレンスアルマジロングは避ける事が出来ず、体勢を崩す。

 だが、元からの防御力に加えてその巨体だ。よろめきながらも右手でアインロールドの足を掴むと力任せに床に向かい叩き付ける。

 

「チビスケめ! これでも食らえ!」

「うわっ!?」

 

 いかに強靭な防御力を持つアインロールドと言えども、力の逃がしようの無い投げ技を食らえば無事では済まない。

 投げられた衝撃に思わず動きを止め、体勢を立て直す事も出来ず無様に数回バウンドを繰り返し、動きを止める。

 

 そこに向かいバイオレンスアルマジロングは左腕の鉄球を飛ばす。

 もっとも、瞬時に起き上がったアインロールドは鉄球を回避すると、床を蹴って改造人間の懐に入り込む。

 

 速度で勝るアインロールドと、パワーで圧倒するバイオレンスアルマジロングが再び激突し、拳の応酬が始まる。

 激しい打撃音が部屋に響き続け、ほぼ同じタイミングで二人の改造人間は後方に飛ぶ。

 

 このまま殴り合っても、らちが明かない。

 どう相手を崩すか、そう思考するアインロールドに対し、バイオレンスアルマジロングは非常に短気であった。

 

 位置取りも良い。ならばと自身が放つ最大威力の攻撃の姿勢を取る。

 

「くらぇ、ライダーもどき! バイオレンススクリューボール!」

 

 空中に飛び上がったバイオレンスアルマジロングはその身を丸め、鋼鉄の球体へと姿を変えた。

 そのまま地面に一度だけバウンドすると凄まじい速度でアインロールドに向かい迫りくる。

 

「その程度、俺が回避できないと!」

「避けてもいいぞ! その場合はガキどもがどうなるかなぁ!?」

 

 そう、その言葉の通りにアインロールドの背後には怯えたスクールの子供たちがいた。

 アインロールドが躱せば、バイオレンスアルマジロングは容赦なく子供たちを轢き殺すであろう。それが出来るのがショッカーの改造人間だ。

 だが、あれを食らえばどうなるか。

 

 アルマジロングの弾丸スクリューボールは仮面ライダーを倒した事も有る強力な攻撃だ。まして、今回はバイオレンスメモリによる強化もなされている。

 いかに頑強なアインロールドと言えども、まともに食らえば木っ端みじんだろう。

 

 とはいえ、後ろに子供がいる以上、彼に後退は無い。

 アインロールドは腰を落とし、拳を深く構える。

 赤いエネルギーを一点に集中しながら、背後の子供たちに向かい静かに語りかける。

 

「大丈夫だ、安心して見ていな。なぁに、球の扱いには、こう見えても自信がある」

 

 一直線に迫りくる巨大鉄球を前に、軽口を叩く。

 投球ほど得意ではない。使うのはバットではなく拳だ。それでも球は球だ。ずっとボールに触り続けて来た自分に出来ない理由などある物か。

 

「ライダァァァァァァッ! パァァァァァッンチ!」

 

 アインロールドを押しつぶさんとバイオレンスアルマジロングの回転が最高潮になる瞬間、ライダーの複眼に強い光が灯る。振り上げた真紅の拳を、迫りくる鋼鉄の塊に叩き込む。

 

 普通であれば、拳が、アインロールドが砕け散る筈であった。

 だが、本来ならば数年後には甲子園のマウンドに立っていたはずの少年は、正確に球体をはじき返すポイントを見出していた。

 

 床を削りながら僅かに後退するアインロールドに対して、圧倒的質量を持つ球体は拳を起点に反動で浮き上がる。

 

「なっ!? なんだとぉぉぉぉぉ!?」

 

 そう、弾き飛ばされたのはバイオレンスアルマジロングであった。

 その衝撃で変形が自然とほどけていき、その巨体は迫ってきた速度を超えるスピードで後方に飛んでいく。

 そして、彼が飛ばされた後方にあったのは高みの見物を決め込んでいた姉ヶ崎たちがいる一室であった。

 

「なっ!? ちょ!? なんで? きゃあああああああっ!?」

 

 唐突な事態に姉ヶ崎は悲鳴を上げ逃げようとするが、それよりも改造人間の巨体の衝突が早い。

 弾丸どころかミサイルの直撃にすら耐える強化ガラスをぶち破り、バイオレンスアルマジロングが管制室に飛び込んできた。

 

 ガラスが飛び散り、姉ヶ崎をかばった護衛の男たちが改造人間の巨体に潰される阿鼻叫喚の地獄絵図の中、飛び込んできた影はバイオレンスアルマジロングだけでは無かった。

 その飛び込んできた影は囚われていた少女の傍に降り立つと、彼女に向かい迫りくるガラス片を拳の一振りで全て弾き飛ばす。

 

「よっ、ミクちゃんだっけ? 悪かったな、怖かったろう?」

 

 アインロールドは、呆然と事の次第を見ていた少女に語り掛ける。もっとも、少女は口をパクパクと動かすだけで声が出ないようだ。

 驚いているのだから反応が無いのも仕方がない。アインロールドは少女を無断で抱きかかえると、管制室から飛び出し他の子供たちの傍に降り立った。

 彼女を床に降ろし、縛る縄を素手で引きちぎる。

 

「ミク姉!」

「ミクちゃん!」

 

 子供たちがミクに駆け寄る声を聞く。

 子供は取り戻した。あとは、脱出の障害を破壊するだけだ。

 

「お兄ちゃん……」

 

 助け出されたミクがようやく、絞り出すように感極まった声を背に、アインロールドは深く腰を落とす。

 そして天井近くまで跳躍をすると、弱点である腹をさらけ出しているバイオレンスアルマジロングに狙いを定めた。

 子供たちの36の瞳が、一斉にアインロールドを見つめる。

 

「仕上げだ! ライダーキック!」

 

 赤いエネルギーの軌跡を残し、アインロールドのキックが改造人間の腹を打ち抜いた。

 その威力は背後の壁すらも砕き、改造人間は屋外に転がり落ちながら巨大な爆発を起こし消滅した。

 

 そして、再び子供たちの傍にアインロールドは着地をすると、子供たちが一斉に歓声を上げる。

 初めての救い主に、抱き着こうとする子供までいた。

 

 だが、アインロールドはそれを手で制すると、運よく外への落下を免れ、瓦礫に隠れはいつくばって逃げようとしていた存在に目を向ける。

 化粧がはがれ、髪は乱れ、ひび割れた眼鏡がずり落ちている姉ヶ崎峰子であった。

 

「子供たちの前だ。逃がしてやりたい所だが……」

 

 静かに歩み寄る。

 

 開発者としては3流以下だが、他者を手玉に取る術と政治力に長けた技術スパイ。それが洗脳下で聞き及んでいた姉ヶ崎峰子という人物に対する評価だ。

 恨みがある訳では無いが、生かしておけば禍根を残す。そういう相手だ。

 

「ひっ、ひいいいいい!」

 

 這って逃げようとする女を静かに歩き追いつめる。

 殺すべきか、生かすべきか。ゆっくりとした歩みはその悩みの表れだった。

 

 そしてあと一息で追いつく。その瞬間であった。

 

「そこまでだ」

 

 不意に、後方から迫りくる何かが左手に巻き付き拘束する。

 新手か!?

 そう考え振り向くアインロールドは動きを止める。

 

「まさか、貴様は、いや、貴方は……地獄大使!?」

 

 そう、そこにいたのは黒い強化服に身を包み三葉虫あるいは古代エジプトを思わせる独特な兜をかぶった壮年の男であった。

 彼の名は地獄大使。かつて仮面ライダーたちと死闘を繰り広げた伝説のショッカー大幹部であり、近年地獄より舞い戻ってきた男だ。

 

 驚くアインロールドであったが、彼の驚きは此処で止まる事は無い。

 

 油断はしていなかった。確かに地獄大使の登場に驚き片腕を拘束された状態ではあったが、すぐさま振りほどき動けるよう準備はしていた。

 だが、未熟なアインロールドをあざ笑うかのように、横合いから首に突きつけられた刃が日の光を受けギラリと輝く。

 

「投降して頂けませんかね。事の次第を調べたいのでね」

 

 横にいたのは、太陽を連想させる帆のような飾りを付けた真紅の兜を装着した男であった。

 拳と銃が合体した特殊武装アポロマグナムと、刃を備えた攻防一体の盾ガイストダブルカッターを持つ。かつてはGOD秘密警察第一室長であり、現在は再生ショッカーの大幹部の一人。Xライダーとの死闘の末に死んでいたはずだが、地獄帰りの男。その名をアポロガイストといった。

 

「そんなっ!? 今度はアポロガイスト!?」

 

 こんな末端同士の小競り合いに大幹部が二人目だ。仮に姉ヶ崎が応援を呼んだとしても、出てくるのは本部の下の連中だとばかり思っていた。

 

「え? あれ?」

「力が……」

「おにい……ちゃん」

 

 だが、やってきた大幹部は二人だけではない。事の成り行きを見守っていた子供たちの身体から力が抜け、バタバタと倒れていく。

 苦しんでいる様子はない。だが、抗う事の出来ない強力な思念波が子供たちを夢の世界へといざなっていく。

 そんな子供たちの中央に、いつの間にかそれは出現していた。

 

「くくくくく、騒がれてはかなわんからな。こやつらは寝ているだけよアインロールド」

「ぶ、ブラックサタン……」

 

 いつの間にかこの場にいたのは巨大な骸骨を胸の中央に埋め込んだ、巨大な紫の虫であった。

 その名はブラックサタン。かつて仮面ライダーストロンガーに滅ぼされた筈の邪悪な存在。そして、ショッカーの技術力で再生された怪物。

 

 3人目だ。再生ショッカーが誇る指導者である大幹部が3人もこの地に現れたのだ。

 あり得ないほどの大物の登場に絶句をするアインロールドに対して、姉ヶ崎はこの状態に歓喜していた。

 

 絶体絶命の危機にやってきた大幹部だ。彼らがライダーもどきを破壊してしまえばそこで終わりだ。いや、そこまでいかなくてもこの場さえ切り抜けてしまえば後は口八丁手八丁で何とでもなる。少なくともここまでの人生はそうだった。

 その為なら何でもする。まずは大幹部に取り入って……。

 そう考えアポロガイストに縋らんと近寄ろうとした姉ヶ崎であったが、彼女の機先を制するようにアポロマグナムの銃口が火を噴く。

 

 幸い彼女を直接狙ったものでは無かった。だが、彼女の足元の床にははっきりと着弾の跡が残っていた。

 

「ああ、お前も動かないように。双方拘束する」

 

 ほぼ証拠は出そろっている状況ではあるが、一応は秘密警察第一室長としては調査を行わなければならず当然の処置である。

 恐怖の表情を張り付かせ、へたり込み動かなくなる姉ヶ崎を横目で見ながら、アインロールドはこの場をどう切り抜けるかを必死に考えていた。

 

 いや、逃げるだけなら自分一人なら何とかなる。だが、残された子供たちはどうなる?

 下手な動きを見せれば、ブラックサタンは枯れ枝を折る様に簡単に子供たちを消すだろう。

 

 大幹部3人。倒せるのか?

 

 一人なら倒せるかもしれない。二人なら相打ちには持ち込めるかもしれない。だが、三人だ。

 必死に考えるアインロールドであったが、更なる絶望が彼を襲う。

 

「おやおや、物見高いのは我らだけでは無かったようだ」

 

 そう言って、アポロガイストは崩れた壁の向こうに視線を向ける。アインロールドはアポロガイストの視線を追い同じ方向を向き、仮面の下で目を見開き、何度目か数えるのも馬鹿らしい絶句の末に硬直した。

 

 そこにいたのは白髪の科学者であった。あるいは古い様式の軍服の男だった。あるいは巨大な岩の下半身に悪人の顔が張り付いた怪物であり、空を飛ぶ怪僧であった。

 他にも幾人もの男や怪物が、崩れた建物の向こうからこちらを覗き込んでいた。

 

 前世の知識と今生のデータベースの二つが、彼らの正体が何かを指し示している。

 あれは全てショッカーが誇る至高の戦力、大幹部達であった。

 

 

 

 

 

 

「記録は此処までだな」

 

 風見はパソコンの操作を終え、最後に記された文面を見つめる。

 最後に記されていたのは『捕縛』『本部への移送』という文字による顛末だけだ。

 

 姉ヶ崎一派を倒したアインロールドは、ショッカーの大幹部たちに囲まれ再び捕まり、ショッカー本部へと連れていかれた。

 それがこの事件の結末であった。

 

「まったく、何をやっているんだあの小僧」

「かざ……みさん」

 

 自分達だって無事に切り抜ける事はほぼ不可能な状況だ。まして20人近い子供たちと日本支部に置いて来たミカの事も有る。

 その状況を見ても憎まれ口をたたく風見を諫めようとした筑波であったが、すぐに風見の握られたままの拳から赤い血が滲んでいる事に気が付き叱咤を止めた。

 

「どうした?」

「いえ、なんでもありません。彼は此処で再びショッカーに捕まったんですね」

 

 自分の手に気が付いていないのかキョトンとした表情でこちらを見る風見に、流石の筑波も何も言えず言葉を濁す。

 内心怒りで煮えたぎっている風見も筑波の様子がおかしなことに気が付かず、そのまま話を続ける。

 

「だろうな。だが、さらに謎が増えたな」

「謎?」

「この子供たちは何処に行った? 俺はミカ・ウェストにしか会っていない」

 

 流石に移動要塞に連れてきたりはしないだろうが、あの小僧が一瞬だけ見せた腑抜け具合はミカ以外に守るべき子供がいたとは思えなかった。

 深い悔恨と諦観、そして罪悪感に苛まれ足を止めかねない。そんな危うさを、あの一戦で風見はアインロールドに見出していた。

 そして、彼の感情の奥にある最悪な結末を、風見志郎は予測していた。

 

「本郷さんに直接会って問い詰めなければならない事が増えたな」

 

 若かりし頃は学生として先輩後輩の仲であり、仮面ライダーとなってからも戦友として風見は本郷猛との付き合いは長い。あの人のふわ付いているようで頑固な性格を理解している。

 恐らくはアインロールドに関する事の全てを知っているのだろう。

 だが、通信機越しにアインロールドの事を訊ねてもはぐらかされるだけだと風見は考えていた。

 

「俺の方でも本郷さんと、渡世誠太郎って奴の事は調べてみます」

「あっ、俺も俺も」

「すまないな。ただ、無理はしなくてもいいぞ」

 

 探偵と記者だ。調べるという事に関して言えばスペシャリストと言って良い職業の二人だ。

 彼らの協力の約束は、風見にとってはありがたい話ではあった。

 

「とりあえず、フィリップにここで見つけた物を持っていくか……」

 

 翔太郎が力なく呟く。

 体力を使ったわけではないが、精神的な疲労が酷い。それに緊急というわけでもないのだから、フィリップにも直にこの記録を見てもらった方が自分たちが気が付かなかった事にも気が付くだろう。

 四人の男たちは、その言葉を合図に撤収の準備を始める。

 

 精神的な疲労と怒りのせいか、彼らはサルベージしきれなかった情報の奥底に刻まれていた、その一文を見逃していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

や っ と   や っ と   み い つ け た  わ た し の お に い ち ゃ ん

 




大幹部達(しまった!? 出遅れた!?)


というわけでプロローグ・アインロールド「覚醒編」は終幕。
ここから先のお話となる「候補生編」や「再起編」の予定は未定。

次回からはクウガ編となります。


ここまでで補足のこぼれ話。

姉ヶ崎峰子
 技術スパイとしては優秀。この後もドレッドライバーを始め幾つもの(自分が興味を持った)技術を他所から盗み出している。デストロン大元帥も彼女が開発した。
 ただし、盗んだ技術を生かせるとは言っていない。

アームズコウモリ男
 巨大なシールドソードを背負って翼の先に銃が出るというスタイルで飛行不能だったので、武装位置を肩にずらして飛行可能にした。もう少し深く考えていれば……。

ゾーン地獄サンダー
 ゾーン・ドーパントがサポート系としては破格に優秀なので、飛行が出来なくなる上に相手を見失う可能性がある地獄サンダー要素が正直邪魔。

バイオレンスアルマジロング
 一見すると成功例に見えるが、バイオレンスメモリは格闘系なら誰が使っても強くなる。



ライダーの皆さんのアインロールド(渡世誠太郎)に関する知識

ガヴ勢 本名と家族構成、兄弟同然の子供が殺された事を知っている。
魔王軍、カグヤ様 兄弟同然の子供が殺された事と、3人の妹同然の少女が謎の組織に属している事を知っている。
桐矢(響鬼) 通っている学校を知っている。携帯で連絡が取りあえる。
風見、筑波、翔太郎、城戸 今回の内容

警察系 本名、家族構成。必要な時に情報として共有できる。

火野、幻徳、侑斗、スパナ ほとんど知らない。
沖 本郷猛と関係が深い事に気が付いているが、あえて追及はしない姿勢

弦ちゃん 過去の事は良く知らねえが、あいつは俺のダチだ!
流星 弦太朗のダチだろう?

本郷、一文字 全て知っている。
門矢 だいたい分かった。
天道 天道
結城 ライダーマン
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