ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第116話 episode・KUUGA 面倒は向こうからやってくる件

 この世界、クウガと呼ばれた者は4人いる。

 

 まず、二千年前にグロンギを封印したリントの戦士。

 そして彼が使っていたアークルを受け継ぎ、現在に蘇ったグロンギを倒した仮面ライダークウガ。

 

 まず真っ先に思い付くのがこの二人だ。だが、二千年前の戦士の前に、もう一人のクウガがいた。

 

 プロトタイプ・アークルを装着したリントの戦士はグロンギを数体倒したが、セーフティの設けられていなかったプロトタイプ・クウガは暴走をしかけた為、リントの戦士は自害して最悪の事態を避けたという。

 だがプロトタイプ・アークルは消滅することなく、現在まで地中に眠っていた。そして現代、プロトタイプ・アークルもまた発掘され、ある女性が再び出現したグロンギと戦う為に装着する事になる。

 

 このプロトタイプ・アークルと再度蘇ったグロンギたちにより騒動が起きるのだが、当時はファントムなど別の怪人や侵略異種族が積極的に暴れていた時期であり、その騒動に紛れ何時しか噂を聞かなくなっていた。

 まぁ、この世界はだいたいそんな感じだ。

 

 さて、話を戻そう。

 この世界には古代に二人、現代に二人のクウガがいる。

 

 つまり、一条さんや夏目さんが言った3人目というのは、現代に現れたクウガが3人目という事を指す。

 その3人目認定されたクウガ、いきなり人違いをされて困惑しているお人よしオーラと苦労人オーラと、門矢士係オーラがブレンドされて滲み出ている青年、小野寺ユウスケさんだ。

 

 もっとも、この認識は半分正しく半分間違っている。

 一部の理不尽な連中がやっている変身や召喚技を除けば確かに彼はこの世界に現れた3人目のクウガである事は間違いない。半面、彼はこの世界の住民ではなく次元の旅人だ。

 

 彼は仮面ライダーディケイドこと門矢士が最初期に旅をした異世界の住民であり、その世界で仮面ライダークウガだった人物だ。自分がいた世界のグロンギの王を倒した彼は、門矢士の旅に同行する事を選択した。

 そんな経緯があるので、門矢士がこの世界に長期滞在している以上はいてもおかしくはない。

 

「いや、ホントすいません。期待させちゃったみたいで」

「いやいや、こちらこそ申し訳ない。早合点で勘違いを」

 

 何やらぺこぺこと互いに謝る小野寺さんと一条さんだ。

 士がショッカー首領代行だったか総司令をやっている事をチクってやろうかと思わないでもないが、それを話すと自分の事にも言及しなければならないので諦めた。それに、一応はリボルケインの借りもある。

 とりあえずグロンギは倒した。連中がやっているのはゲームである以上、この場は去っても大丈夫だろう。

 戻ってきたサイクロンヘルのハンドルを握り、この場から立ち去ろうとする。

 

「ちょっと、そこの君!」

 

 それを目ざとく見つけ声を掛けて来たのが女刑事の夏目さんだ。

 このまま無視をして立ち去っても良いのだが、何かあっても困るので一応は返しておくか。なにせ先ほど説明したプロトタイプ・アークルの現在の所有者がこの夏目さんなのだ。

 その後変身したという話は聞かないが、セーフティの無いアークル所持者を無駄に挑発しても危なっかしい。

 

 俺はエンジンをかけたままハンドルを握りしめ、用事は無い事を告げる。

 

「グロンギは倒したんだ、悪いが先を急ぐ旅なんでな」

 

 別に急いでいないが、こう言っとけば引き止めにくいだろう。

 そもそも引き留められるかという問題もある。如何にクウガが二人いようとも、本気を出したサイクロンヘルの速度には追い付けない。

 流石にライダーっぽい見た目の存在に先を急ぐと言われ、無理に引き止められないと考えたのだろう。

 

「じゃ、せめて名前を教えなさい!」

「単なる通りすがりだ、忘れてくれ」

 

 誰かの決め台詞を少々改変して口にする。

 あっちは態度がアレだが根っこは仮面ライダーだ。覚えておく意味はある。だが、ショッカーライダーなんぞさっさと忘れちまった方が良い。

 

「あっ、ちょっと!」

「まてっ!」

 

 サイクロンヘルのエンジン音で一条さんと小野寺さんも俺が立ち去ろうとしている事に気が付く。

 もっとも、流石にもう遅い。俺は一息にアクセルを吹かしこの場から立ち去っていく。

 

 グロンギ退治は通りすがりのついでだ。本来の目的は別にあるのだ。

 俺は先日のミラーワールド崩壊の際の、ブラックサタンとの会話を思い出していた。

 

 

 

 

 再生ショッカーがライダーたちの一斉攻撃で壊滅し、大幹部のほとんどが討ち取られたことは何度も言ったと思う。だが、その中でも生き延びた大幹部が二人いる。

 一人は当時は表の宗教行事に参加するという名目でショッカーを離れていた二代目ツバサ大僧正。

 そしてもう一人が情報収集に専念という名目で自身の拠点に籠っていたブラックサタンだ。

 

 用心深く権謀術数に長けた二人だ。さすがに自身の利益の為に組織を謀ったと言う者はいないが、おそらくは何らかの予兆があったのであろう。

 警告していたかどうかは知らないが、仮に警告があったとしても大幹部連中は嬉々としてライダーと戦いに行きそうだしな。というか、うちの元上司は実際に嬉々として因縁のあるライダーの所に行ったし。直接見た訳じゃないが、他の連中もきっと同じだったことだろう。

 

 地獄に飽きたら勝手に帰ってきそうな大幹部連中は置いておいて、二人残った大幹部であるブラックサタンと二代目ツバサ大僧正の対立が激化、組織を割った主導権争いがおこる。そんな大方の予想に反して二人の対立は発生しなかった。

 大首領が組織分割を決定したというのもあるが、大僧正は後進育成を名目に自身は後見人となりまだ若いテオドラをデストロンの代表に立て、ブラックサタンもまた諜報力強化を謡い裏方に回った。二人の思惑が何処にあるのかは前線指揮官に過ぎなかった俺にはうかがい知る事は出来ないが、おそらくは大きな考えと陰謀があるのだろう。

 

 そんな猜疑心と警戒心が強いブラックサタンに、何故か俺は目をかけられている。大首領が直々に俺とミカをショッカーに据えなければ、ミカ共々ブラックサタンに編入させられていただろう。今回救助に来たのもその延長だろう。

 どう考えてもバグっている我が子扱いはともかく、ほんと何故ここまで目をかけられているか謎である。

 

 

 

「付いて来るが良い、アインロールドよ」

 

 唐突に現れたブラックサタンは、空間をこじ開けると有無を言わさずついてくるよう命じた。

 

「はっ」

 

 別に断る理由を疑う理由も無い俺は、サイクロンヘルを押して素直にゲートを通る。

 潜り抜けたゲートの先は、薄暗い通路となっていた。

 ブラックサタンの力なら一瞬で俺を現実世界に送る事も出来るだろう。なので、この通路は何か伝えたい事がある為に態々通路という形でこしらえた事になる。

 

「さて、此度の働き見事であった。我らの物となる世界をミラーモンスターごとき害虫に荒らされるわけにはいかなかったのでな」

「有難き幸せ」

 

 世界は欲しい、ミラーワールドも欲しいが、ミラーモンスターなんぞはいらないはブラックサタンの本音だろう。

 凶暴で繁殖能力の高い肉食獣であるミラーモンスターなんぞは、統治においては負債でしかない。

 

「一つ、お尋ねしてよろしいでしょうか」

 

 ブラックサタンが生み出した道を歩きながら、俺は隣を歩く虫とドクロの怪物に尋ねる。

 恐らくはそのために、態々回りくどい事をしているのだ。

 

「答えられる事ならな」

「では。ウォズニセイバーとの戦いで次元の狭間に落ちた私を救い上げたのは閣下でしょうか?」

「その通りだ」

 

 俺はウォズニセイバーとの戦いで、転移して逃げようとした奴を追いかけ次元の狭間に吹き飛ばされた。その後、何故か実の妹である凜と再会した。

 次元の狭間に落ちたあげく、元の空間に瞬時に戻り凜と再会するのは出来過ぎだ。何者かの干渉があった事は推測していたが、まさかそれがブラックサタンであったとは思わなかった。

 いや、それが出来る能力の持ち主を消去法で考えれば、大首領かブラックサタン、そしてデルザー軍団の誰かになるのだが……。

 

「妙な異世界に落ちかけていたのでな。貴様を真似たワームが貴様の血族の元で蠢いていたのでそちらに送ったのよ」

「では、閣下は誰が俺のコピーを作ったか知っておいでで!?」

 

 俺の再洗脳を行ったのはこのブラックサタンだ。その気になればリアルタイムで監視する事など朝飯前だろう。だが、渡世一家の事や擬態誠太郎の事まで見ていたとなると話が違ってくる。

 その骸骨の顔から表情をうかがい知ることは不可能だ。感情が読めない相手に緊張する俺に、ブラックサタンは淡々とした口調で答える。

 

「貴様も当時の日本支部の惨状は覚えておろう、鼠が入り込んでおったのだ。そいつらが作り出したのがあの貴様の模造品よ」

 

 支部長のずさんな管理や副官以下の横領など、荒れていたのが当時の日本支部だ。

 

 俺が大暴れした一件で日本支部の惨状が本部の大幹部たちに知れ渡る事になり大粛清が行われたのだが、そんなガタガタな組織であるからスパイも入りたい放題であった。当時の支部長が俺をこき使っていたのも、自分直属の戦闘マシンであった俺以外に何かさせようとしても、情報がすぐ外部に漏れてしまっていたという理由が大きい。

 スパイは相当根深く潜り込んでいたようで、摘発も大変だった。たとえば俺に使われているナノマシンはもう作れないのだが、その原因はこの時逃げたスパイが最後っ屁にナノマシンの原料となるレアマテリアルとデータを完全に破壊しやがったせいだ。

 

 多岐にわたる調査は長引き、支部長は処分される前に外法拳士としてスーパー1に討たれた。その死に顔はどこか満足げであり、自身の虚栄心に振り回された男にとってある意味救いのある結末だったのだろう。

 

 それはともかくとして、俺の事だ。

 当時潜り込んでいたスパイ研究者が擬態誠太郎を作り出したのは良い。ここまでは俺も予想していた。

 だが、なぜ俺を作ったのかが問題なのだ。

 

 そんな俺の問を予測していたのか、ブラックサタンはこう続ける。

 

「言っておくが、あれだけではないぞ」

「え?」

「貴様の複製は複数の手段で作られておる。アインロールドナノマシンのテストの為にな。発覚前に処分されたようだが、その時運良く逃げおおせたのがあのワームよ」

 

 すっごく、すっごく、すごく聞きたくない情報を聞いた気がする。

 

 なんでもショッカーの金と資材を使って、ショッカー最新型ナノマシンのテスト用に適応体である俺の複製が作られていたらしい。

 発覚直前にやばいと思ったのか秘密裏に処理されていたらしいのだが、あのワームはその包囲網を突破し逃げおおせたそうだ。

 

 仮面ライダーならともかくショッカーライダーまで複製されるって世も末だな、ほんと。

 

「安心しろ、我が子アインロールド。お前がオリジナルだ」

「は、はぁ……」

 

 安心して良いのか、罪もない俺の複製が消されていた事実を悲しむべきか悩むが、俺がオリジナルという保証だけは頂いた。

 ただ、俺がオリジナルかどうかは正直どうでも良い。どうせ転生者なんて妙な属性があるのだ。自分がオリジナルでも複製でも俺は俺でしかない。

 

 この話は多分本当だろう。嘘をつく意味があまりない。

 だが、ブラックサタンは全てを話してはいない。

 

 俺に使われているナノマシンは本来であれば改造人間のベースナノマシンであり、アインロールドタイプ改造人間として複数体作られるはずであった。バッタ男タイプ、ライダータイプなのは俺の潜在意識とミカのショッカーに対する当てつけであり、その気になればクモ男やコウモリ男も作れる汎用性のあるナノマシンなのだ。

 スパイがテストの為に誰かに投与するにしても、態々俺を複製する意味はあまりない。

 

 やはり、俺を狙って複製したのは間違いない。

 

「俺を複製した阿呆どもは何処の手の者で?」

 

 俺を複製した相手に対する多少の不快感をにじませ、俺はブラックサタンに尋ねる。

 狙って作った連中がいるのなら、そいつらを叩きのめして直接聞くのが一番早い。幸い、そういうのは得意中の得意だ。

 だが、俺の問いかけにブラックサタンはこう答える。

 

「相変わらずの闘志よ。だが、調査中だ。今の貴様に知る資格は無い」

 

 はぐらかしに来たか。だいぶ昔の事なので、調査はもう終わっているだろう。

 

 だが、知る資格は無いという事は、いずれ伝えるつもりでもあるのだろう。問いただしても今は答えが出る事は無い。

 やはり自分で調べるしか無いのだが、この様子だと基地跡に行っても何も出てこないな。あったとしてもブラックサタンが回収済みだろう。

 

 いきなり手詰まりになった俺に、ブラックサタンは露骨に話題を変えてくる。

 

「伝える事がある。まず、貴様の兵であるショッカー及びミカ・ウェストは我が保護下に置いた。手を加えぬ事を約束しよう」

「よろしいので?」

「我が子アインロールドよ、大首領も賛同した。問題はない」

 

 俺の兵じゃないとか、トップはミカだとか、我が子ロールはまだ継続中ですかとツッコミどころはさておき、これは俺に対する飴と鞭、そして楔だろう。

 

 ミカがブラックサタンの保護下である以上、俺はブラックサタンを裏切れない。ディケイドがいるので一応は子供相手に早々妙な真似は出来ないだろうが、何かあったらと考えさせるだけで十分だ。

 半面で手を加えないと言うのも本当だろう。つまりやらかさない限りショッカーの粛清等はしないという事だ。

 ショッカーの連中なんてどうでも良い……と言い切るには、少し長く組織に居すぎた。俺のとばっちりで粛清なんて事になれば、やはり気にならない訳はない。それなりに絆され情が湧いている事を否定するのは、俺には無理だった。

 現在ショッカーに属していても役割としか考えていない士と違い、悪の秘密結社に心を置いている俺に仮面ライダーはやはり無理だ。

 

 自嘲気味に考えつつも、ブラックサタンの次の言葉を待つ。飴と楔はわかった。次に来るのは鞭、つまり何らかの任務だ。

 身構える俺に、ブラックサタンは淡々と言葉を続ける。

 

「ところで、長野県九郎ヶ岳は知っておるな」

「はい。あそこは色々と特別な土地ですので」

 

 前世の記憶によればクウガの物語の始まり地、ライダー伝説の第二幕が生まれた場所。現在の知識でもリントの戦士とグロンギが封じられていた土地だ。

 こっちの業界において、あの土地を特別視しない人間はいないだろう。

 だが、特別視はしていてもショッカーと関わりがある土地かと問われると、そこまで関わりがある場所ではない。少なくとも今世の俺の知識においてはそうだ。

 

 もっとも、俺よりも多くの知識を蓄えているブラックサタンにとってはそうではなかった。

 

「あの地は多くのグロンギを封じたリントの戦士が眠っていた地だ。だが、奴が封じたのはグロンギどもだけではない」

「初耳です」

「そうであろうな、この事を知る者は大幹部の中でも少ない。だが二千年前、多くの戦いがあったあの時代、我らが古代の勇者がリントの戦士により封じられたのだ」

 

 初耳ではあるが、ありえない話ではない。

 ショッカーの設立は第二次大戦後、ナチス残党が中心となり設立された。だが、あくまでも呼び掛け人にすぎず、元となる組織の大半はそれ以前から各地で活動をしており第二次大戦を契機にショッカーという形にまとまったに過ぎない。

 なんなら今ではショッカーと対立していたり、ライダーの支援をしている組織すら当時はショッカーと関わりがあったレベルだ。第二次大戦中はどさくさにまぎれて異世界や宇宙からの侵略が活発化していた影響らしい。

 そんな経緯があるのでショッカーの祖となる存在の一つが日本で封じられていても不思議ではなかった。

 

 グロンギでも無いのに古代クウガに封じ込められるって何やってたんだという話は別にあるが、それは今更気にしても仕方ないだろう。だってショッカーだし。

 

「私にその封印を解けと?」

「その通り。アインロールドよ、貴様は勇者の力を我が物とするのだ!」

 

 俺に封印を解けという事は物理的に壊せる封印という事なのか、それとも封印を解いた途端暴れる恐れがあるという事なのか。

 前者であって欲しい、切実に。いい加減に封印が解けた途端暴れるような化け物の相手は、こりごりなのだ。

 

 そう願っていても、そうはならないのが世の常だ

 かくして、俺の旅の目的地が長野県九郎ヶ岳へと変わり、新たなる事件に巻き込まれる事となるのであった。

 

 




アインロールド「ところで、落ちそうになった妙な世界とは?」
ブラックサタン「その世界の神が戦士の力を込めた指輪をばら撒き、願いを駆けたバトルロイヤルを開催している世界であった」
アインロールド(ライダーバトルかデザグラかな?)

某神「そちらの世界のバトルと同列扱いは、訴訟をしたら勝てると思うのだが……」


クウガは小説の事件も起きています。
ただ、フレーバーなのでそこまで本作には絡まない予定です。


超絶簡単な原作キャラ紹介

一条薫(出典 仮面ライダークウガ)
みんな大好き一条さん。五代さんのバディの刑事。五代の相方だけあって、能力が色々とバグっている。

夏目実加(出典 仮面ライダークウガ)
グロンギの発掘者の娘、テレビでは中学生。13年後を描いた小説では刑事になる。再び出現したグロンギに対抗するため発掘したプロトタイプ・アークルを装着した。

小野寺ユウスケ(出典 仮面ライダーディケイド)
仮面ライダーディケイドにおけるリ・イマジネーション(パラレルワールド)である『クウガの世界』のクウガだった青年。お人よしで門矢士の旅に同行する。

プチ原作キャラ解説は……

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