ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「行ってしまったな……」
「彼は一体?」
一条薫と小野寺ユウスケと話している間に、謎の黒い仮面ライダーは立ち去って行った。
その去り際の姿はまさしく風だ。伝説の仮面ライダー1号と2号や、あるいは彼らにとって大切な仲間だった男を思い出させるには十分な仕草であった。
「可能性の世界の黒いライダーか……」
ユウスケが発した言葉の内、前半の意味は警察官である一条と夏目には通じなかった。平行異世界の存在を知る者だけに通じる言葉だ。
だが、言葉の後半、黒いライダーという言葉は一条の脳を刺激する。
自分が調べていた訳では無いが、同僚たちが熱心に調べていたライダー。
「黒いライダーか……あっ!」
「どうしました?」
唐突に大声に、残りの二人が驚いて一条に振り向く。
そんな二人にはお構いなしに、取り出した端末を操作し共有化された資料の一部を引っ張り出す。
そこは不鮮明ながら、巨大な黒いドラゴンと戦う仮面ライダーたちの姿が映っていた。
「これって京都でのネオショッカー大首領復活の時の?」
「えっ!? そんな物騒なのまで復活しているんですか、この世界!?」
「えっ!? あの大事件を知らないんですか!?」
「いや、つい最近来たばかりで……」
京都の一件はかなり遠方からでも巨大な黒いドラゴンの姿が確認され多くの映像記録が残ったため、だいぶ話題になった事件だ。
時間経過で風化しつつあるが、それでも大騒ぎになった事件をまるで知らないかのように振舞うユウスケの発言はかなり気になる。だが、彼はこの場にいる以上は、とりあえずは先ほどの仮面ライダーを調べて問題はないだろう。
いくつかの資料を当たっているうちに、その黒い仮面ライダーの姿がある程度わかる写真が見つかる。
伝説の1号や2号によく似た黒いフォルムと真紅のマフラー。そして、黒と黄色の特徴的なグローブとブーツ。
確かに先ほど自分たちの前にいた仮面ライダーと同じものであった
「あ、さっきの!」
「こいつだ。加賀美たちが調べていたショッカーライダー・アインロールドだ、やはり」
「ショッカー!?」
「ええっ!?」
ショッカーの名に二人の表情が自然と険しくなる。
それはそうだろう。世界征服を企み、世界各地で様々な怪奇事件を引き起こしているのがショッカーだ。最近でこそ大人しいが、連中の本質が変わった訳では無い。
県警の夏目はもちろん、仮面ライダーであるユウスケにとってもその名は無視できるものではなかった。
「追いつく手段はない、彼の事は一旦おいておこう。小野寺さん……でしったっけ。貴方の話も聞いてよろしいですか?」
東京に情報を送っておけば、アインロールドに関しては詳しい事がわかるだろう。端末を操作しながら、一条はユウスケを見る。
少し話した程度ではあるが、悪い人間には見えない。
だが、彼がどこかでクウガの力を手に入れたとするのなら、その地に封印されていたグロンギたちが解放されている可能性が高く、自分たちがこの地に再び来る事になった原因かもしれない。
どこで力を手に入れたか、聞く必要がある。
「俺の方も話を聞きたくて。えっと、一条さんと夏目さん、警察官なんですよね」
一条たちのその問いかけは、ユウスケにとっても渡りに船であった。
彼の拠点であり異次元旅行の移動施設がこの地に流れ着いたのは、旅の同行者である門矢士が勝手にふらりと姿を消してから数か月後、この地の時間にして数日前の事だ。
オーロラゲート習得後の士がふらりといなくなるのはよくある事なのでどうでも良いとして、流れ着いた以上は自分達にもやるべきことがある。
ご近所さんに蕎麦を配りつつこの地の事を調べた結果、複数の仮面ライダーが同時に活動している、いわば『可能性の世界』とも呼べる世界であった事が判明する。
さて、どうやって士を探したものか。そんな事を考えていたユウスケであったが、不意に腰に巻かれたアークル、その霊石から強い反応を感じた。
その導きに従い、この地にやってきて……山道で迷った。
そりゃ盛大に迷って山道を数日さまよい、なんかこの世界の鬼の人に出会って『あんら、迷子? 町はあっちよ……って、そっちじゃないわよ! 行っちゃったわ……』と出口を聞いて、ようやく道に出たところでグロンギがいたのでとりあえず蹴っ飛ばしたのだ。
なので、彼は基本的にこの世界で何が起きているのかほぼ無知である。
それゆえに、事情に詳しいだろう二人の警官からの情報収集は必要であった。
そうして出会った彼らが移動したのは、近くの駐在所であった。
近隣の警察署までは相当距離があり、かといってその辺の店で話せる内容でもない。なので駐在所の一室を借りる事にしたのだ。
狭い一室、数日まともな物を食べていないというユウスケの為に出前で取ったかつ丼が、照明を受けて美味しそうな湯気を立てていた。
「なんか取り調べみたいですね」
「確かにそれっぽいな」
ユウスケの軽口に一条は苦笑いを浮かべる。確かに彼の言う通り、ドラマにありそうなシーンだ。
そう言えば店で巨大かつ丼を食べていた子がいたなーなどと、顔も思い出せない相席をした人物の事を思い出しつつ一条はお茶をすする。
ユウスケの前に置かれていたかつ丼が胃袋の中に消えたタイミングで、一条は道すがら軽く聞いた内容を確認の為もう一度聞く。
「つまり、君はこの世界のクウガではなく、別世界のクウガなのか」
「はい」
はきはきと質問に答えるユウスケに、五代に似た所と違う部分を自然と探している自分に一条は内心で苦笑いする。
彼が語った異世界での話は、普通に考えれば妄想の類だ。だが、警察としてこの世の不思議と戦ってきた一条はそれが嘘ではないと考える。
なにせ実際に宇宙人や異世界人がいる事は証明されているし、近年は攻撃してくる怪異も多い。自分たちと因縁の深いクウガであった事にこそ驚いたが、世界を渡るライダーがいてもおかしくは無い。
だが、そうすると別に気になる点もある。
「こう言っては何だが、君の世界は良いのか? またグロンギが出たりは……」
「俺の世界では王を倒して以降、グロンギはもう出てこないみたいなんですよ」
ユウスケも自分が生まれ育った世界の事が気にならない訳では無い。なので、ちょくちょく様子を窺ってはいたのだが、グロンギの王を倒して以降はあの世界でグロンギが出現する事は無かった。
念のため旅の途中で知り合った未来を見通せる存在に何度か確認してもらった事も有るが、少なくとも彼らがわかる範囲であの世界ではグロンギはもう出ないそうだ。
ユウスケの説明に一条は背もたれに身を預けると、若干疲れたかのようにこう返す。
「それはうらやましいよ……」
「グロンギが出るんですか?」
「グロンギだけじゃないさ。ショッカーにデストロン、ゴルゴムにクライシス帝国。アンノウンだミラーモンスターだ、最近は錬金術やグラニュートか……。公安もブラックケースを追っている連中がいたな」
この世界で起きる超常事件を一々上げていたらきりがない。それに何度叩き潰しても復活して出てくるのだからたまらない。
今の所、再出現をしなくなった慎み深い超常存在はアンノウンぐらいだ。他の存在は全滅が確認されても数年もすれば再出現しており、まさにイタチごっこという状態であった。
「た、大変ですね。この世界も」
疲労と苦悩をにじませる一条に、ユウスケもかける言葉が無い。
異世界を旅し色々な物を見て来たユウスケだが、彼の経験をもってしても単独世界でここまで別種の脅威が頻発する世界はそう多くはなかった。
仮に脅威が頻発するとしても、それは運悪く大ショッカーのような異世界の複合存在が来る時や、世界融合が起きた時ぐらいだ。
単独世界でありながら危機の頻発するこの世界は、まさしく『可能性の世界』であった。
「そっちは横に置こう。考えても疲れるだけだ。今はグロンギと、あのショッカーライダーの事だ」
東京に問い合わせているショッカーライダーの情報は、もうすぐ端末に届くだろう。
その前に、ユウスケとグロンギに関する現状を共有しておく必要があった。
「君は、何かに呼ばれているような気がしてこの地に来たと言っていたね?」
「はい。なんか助けを呼ばれているような、いや、それともなんか違うな……。なんていうか、とにかく呼ばれている気がして」
ただのグロンギ事件ではないのか。
そう思いつつも、ユウスケに見せるよう4枚の写真を広げて置く。そこに映っていたのは、当然グロンギだ。
うち一体は峠の道でユウスケが倒した峠を走る人間を狙っていた存在だ。
「こいつらがこの辺りに?」
「そうだ。今の所被害が出ていたのは峠の道だけだが」
防犯カメラか何かだろう。グロンギの姿を1枚1枚手に取って確認しながら、ユウスケはある事に気が付く。
一条もユウスケの様子が変わった事に気が付いたのか、深刻な、それでいて困惑した雰囲気を醸し出す。その気配に一瞬気取られるが、それでも確認しなければならない。
ユウスケは意を決すると、一条にこう尋ねた。
「何でこいつら、揃いも揃ってカメラ目線なんですか?」
「俺が聞きたいぐらいだ」
そう、写っていたグロンギたちは全員がカメラ目線であり、ひどい者になると警備カメラに向かってVサインをしている始末だ。
彼らが困惑するのも無理のない話であった。
避暑地の中でも一等地とも呼べる利便性と静寂さを兼ね備えた一角に建築された洋館の廊下を、その青年はゆっくりと進む。
特に特徴の無い淡い色の半そでシャツに淡い色のスラックスという、夏場であれば特に目立つ事の無い服装だ。だが、見るものが見ればその服の上下とも高級な海外ブランド品である事に気が付く。
とはいえ、その青年は服装の価格など気にしないかのような自然な着こなしをしており、日常的に高価な品に触れている事が伺える。
髪を短くまとめた柔和な雰囲気の青年は、屋敷の一角となるゲストルームの扉をノックする。
さほど待たずして、部屋の中の滞在者からの返事が来た。
「開いているぞ」
その返答を待ち、青年は扉を開く。
高価な家具が配置された明るい部屋だ。その部屋の床には何かの金属で作られた部品の数々と、テーブルに広げられた図面。
そしてその図面と格闘する痩せた老人の姿がそこにはあった。
青年は老人を見つけると破顔し、つい先ほど受け取った情報を口にする。
「ズ・ダヅヅ・ダグギンザジョグザジョ(ズ・バツー・バが死んだようだよ)」
流暢な現代の人類ではありえぬ体系の言葉に、老人は描き続ける図面から目を離さずにこう返す。
「リントの言葉で良い。そうか、山道が死んだか」
「グロンギ語、好きなんだけどなぁ」
青年はそう言うと、断りもなく椅子に腰を掛ける。老人もそれを無礼と咎める事なく、青年の次の言葉を無言で待った。
青年は興味深く老人が描き続ける図面を眺めながら、流れてきた情報を言葉にする。
「んで、山道を倒したのだけど、クウガだってさ」
「なに!? リントの戦士だと?」
青年の言葉に老人は初めて顔を上げる。
老人の鋭い目と若者の笑みが交差した。
「そ。いつ日本に帰ってきたのかは知らないけど、確かにクウガだったよ。ほら」
遠方からの撮影なのだろう。かなり不鮮明な映像ではあるが、そこに映る赤いボディの戦士は確かにリントの戦士、仮面ライダークウガの姿であった。
その姿に老人は顔を歓喜に歪めると、再び図面に向き直る。
先ほどよりも筆に籠る力が強いさまを見て、青年は何ともいえない笑顔を浮かべた。
「おっ、やる気出た?」
「ああ、もちろんな」
「やる気が出たじっちゃんに追加情報。ショッカーの黒衣の処刑人も出現したってさ」
表の世界では謎の仮面ライダー、もしくはショッカーライダーでしかないアインロールドであるが、闇の世界ではそれなりに名の通った存在だ。
無論正体等は謎に包まれているが、その実績と姿のみは知れ渡っている。
大幹部のほとんどが討ち取られた現在のショッカーに置いて、最強の一角と言われている存在が黒衣の処刑人、ショッカーライダーアインロールドであった。
「ほう、あのライダーもどきも来ているのか。ふむ、クウガもいるというのに3人では荷が重いか」
「どうするのさ?」
「どうもせんよ。失敗したなら、それまであったという話だ。我らの仲間になる段階には達しなかった、それだけだ」
「うわー、きびしー」
おどけて見せる青年に一瞬だけ苦笑いを見せ、老人は再び図面に集中する。
筆を動かす老人の腕の裾から、複数の触手を持つ海洋生物のタトゥが覗いた。
「ごめんなさいね」
数年前に開店した女性が経営する小料理屋に、その人物が訪れたのはそれほど前の話ではない。
野宿で過ごしていたその旅人を見るに見かねて、食事を世話したのだ。
「いいんですよ、困った時はお互い様ですよ」
それが縁で何かと店に尋ねてくるようになった青年を見て、妙齢の女将とそういう関係なのかと考える者も続出したが、どうもそういう関係ではないらしい。
数日山にこもり、町に物を買いに降りてきた際に立ち寄り食事をとる、期間限定の常連といった関係だと二人は言う。
そんな男がこの日は偶々早い時間に降りてきたため、ビールの搬入を手伝っていた。
旅を続けているという髭を蓄えたワイルドではあるがどこか優し気で人を引き付ける青年の力は強い。女性なら運ぶのも大変そうなケースを軽々と運んでしまった。
店を開けるにはまだ若干早い。
だが、片田舎の個人商店だ。多少早くても問題はない。
「運び終わりましたし、ちょっと早いけど店を開けようかしら」
女将の言葉に、青年は腕を上げる。
柔らかい笑みを浮かべ、親指を立てる。その仕草に、女将は自然と微笑を返した。
東○丹三○郎「髭を生やした青年……。つまり俺だな(がたっ」
違います(無慈悲)
①別動隊が来る
②勝手に蘇る
③財団Xが復活させる。
だいたいこの3パターンで怪物が復活する本作世界。
3行以下の解説
リ・イマジネーション(出典 仮面ライダーディケイド)
仮面ライダーのそっくりさんがいるパラレルワールド。ディケイドはこの世界を巡る旅をした。
グロンギ(出典 仮面ライダークウガ)
仮面ライダークウガの敵怪人。ゲゲルという殺人ゲームを行う凶暴な古代種族。人間体を持つ。
リント(出典 仮面ライダークウガ)
古代に存在した平和種族。この種族の戦士がグロンギ族を封印した。
門矢士(出典 仮面ライダーディケイド)
異世界を旅する仮面ライダーディケイドの変身者。クールぶっている上に態度がデカく好き勝手動くのでとっつきにくく勘違いされがちだが、根は仮面ライダーらしい正義感にあふれる青年。
世界ごとに役割が変わり、本作世界ではショッカーの大首領代行兼総指揮官をやっている。ただし、勝手にほっつき歩いておりあまり指揮はやっていない。
プチ原作キャラ解説は……
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いる
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いらない