ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第11話 episode・000 原作主人公のほうがオリ主よりも大抵は非常識

 高級ホテルを抜け出した園子さんと仮面ライダーオーズこと火野映司、そしてアンクとおまけの俺だが、どこに逃げれば良いのかという問題があった。

 まず、東雲さんの家は当然駄目だ。待ち伏せされている可能性が高い。

 次に火野さんの拠点……議員宿舎や事務所も駄目だ。職業柄、議員宿舎はもちろん事務所も一般に所在地が公開されており、こちらも先回りされている可能性を否定できない。

 

 で、結局どこに行くかというと……。火野さんがかつて世話になっていたクスクシエという店であった。

 

 店の前にバイクを止め、俺たちはぞろぞろと店に向かう。

 園子さんだけは躊躇する。まぁ、成り行きで俺のバイクに乗って逃げてきたのだが、連れてこられたのは知らない場所だ。逃げ辛くなる屋内に入る事を躊躇するのは当然の反応だろう。

 とはいえ、ここでもたついて仕方がない。

 

「え、えっと……」

「ヘンリーっておっさん知っている? アメリカ人の」

「えっ? おじ様?」

 

 家族ぐるみの付き合いがあると言っていたから、当然知っていた。

 先ほどまで不安に押しつぶされ消え入りそうだった少女の顔に、少しだけ元気が戻ってくる。

 

「そそ。あのおっさんから頼まれたんだ。最近物騒だから、護衛をしてやってくれってね」

 

 これに関しては嘘は一切混じっていない。言葉にしていない部分がひたすらやばいが。

 

「爺さんとはぐれて不安なのはわかるけど、ここは犬に噛まれたと思ってあきらめてくれ。あと、あっちのおっさんは国会議員だから多分大丈夫だろうし」

「何ですか、それは」

 

 慰めているのだか何だかわからない、故意に使った変な言い回しに園子さんが苦笑をする。

 苦笑でも笑みは笑みだ。少しは元気が出たのか、俺に向かい彼女は礼を言う。

 

「そういえば……あの時助けていただいたお礼をしていませんでした……。本当にありがとうございます」

「気にしなくていいよ。むしろ爺さんと離れ離れにしちまって、こちらが謝るべき状況だ」

 

 あっちには仮面ライダーローグがいるのだから、大丈夫だろうとは思う。とはいえこれは俺の失敗だ。

 いや、マジでやばそうなら変身してたけど、仮面ライダーがいたから止めておいたんだよね。いや、でも、オーズがいる事は知っていたけど……なんだってローグがこの世界に存在しているんだ?

 ビルド系の仮面ライダーは存在が確認できなかった仮面ライダーだ。マジで謎である。

 

 って謎と言えば、あのショッカー戦闘員ヤミーって何なのよ……。サイクロンヘルに千堂って男の事を調べさせておくか。

 

「おい、お前ら。いつまで外でくっちゃべっている。早く中に入れ!」

 

 おっと、入り口から顔をのぞかせたアンクに怒鳴られてしまった。

 驚いたのか、園子さんは俺の手を握ってくる。まぁ、この辺はミカで慣れているので、彼女をエスコートしてクスクシエの入り口をくぐる。

 

 店に入った瞬間感じたのは、エスニックな香辛料の香りだ。

 多国籍料理の店らしく、異国情緒……が溢れかえって渋滞をしている、もう雑多な各国のそれっぽい品物が所狭しと飾られている。

 

 時間的には夕刻。これから稼ぎ時だというのに、店主は店を閉じて……もとい、本日貸し切りとして俺たちを待っていてくれたらしい。……ちゃっかりしている。

 どうやらアルバイトは全て帰してしまったらしい、店にいたのは店主である女性……白石知世子さんだけであった。旅人だった火野映司が国会議員になるほどの時間が経過しているのだ。オーズの物語にいたメンバーはもうこの店を巣立っているのだろう、さもありなん。

 

「映司くん、アンクちゃん、久しぶり! すっかりスーツ姿が板についちゃって……」

「知世子さんもお久しぶりです。俺としてはあんまり変わった気はしないんですけど……」

「まぁ、中身は変わってないな」

 

 大人三人が旧交を温めあっている横で、俺はというと心細そうな園子さんに話しかける。

 

「大丈夫かい?」

「は、はい……」

 

 大丈夫なわけがないが、口だけでも大丈夫と言わせておかないとどんどん不安に押しつぶされるだけだ。

 年齢も近いし、この辺は俺が気を使うべきだろう。

 ただ……。

 

「で、悪いんだけど……、そろそろ手を放してもらえると嬉しいかなって」

「えっ! あっ! ご、ごめんなさい……」

 

 店に入ってからも俺の服の手をずっと掴みっぱなしだった事にやっと気が付いたのか、園子さんは顔を真っ赤にしてうつむく。

 うーん、実に大和なでしこ。同じ中学生でも心臓に毛が生えているうちのミカとは大違いだ。まぁ、心臓だけではなく外側から見える厚みも大違いだが。

 

「おっとっと、ごめんね。えっと東雲園子ちゃんに……」

 

 あ、名乗ってなかったか。

 とりあえず今回の依頼用に用意した偽名を名乗っておく。

 

「えっ? 高校生なのに護衛のアルバイト?」

 

 ちなみにこの世界、怪人やら悪の秘密結社やらがごまんといる為、民間の警備会社の護衛のニーズがとても高い。

 俺から言わせると一般人をいくら並べても怪人を止める事なんて不可能なのだが、それでも安心が欲しい人間は少なくないのだ。

 

「知り合いのおっさんに人生経験だって叩き込まれまして……。ただ、俺よりも……」

 

 本名を名乗っていない以外は嘘など一切言っていない。ただ、知り合いのおっさん=GOD機関の暫定指導者という激やば情報が隠されているだけである。

 

「ああ、そうだね。とりあえず何かお腹に入れる? お腹が減っていると力が出ないでしょう。あっ、映司くんは上に昔の服が残っているから着替えておきなよ」

「取っておいてくれたんですか。ありがとうございます」

 

 そう言うと火野さんは勝手知ったるとばかり奥に消えていく。まぁ、スーツのままじゃ大変だろう。主に費用的な話で。

 一方の園子さんはというと、俺の手を離すと何やら意を決したかのように白石さんに話しかけた。

 

「あ、あの……。それなら私にもお手伝いさせてください。得意なんです」

「えっ、でも……」

「ごめんなさい。でも、何かしていないと不安で……」

 

 うつむき答える園子さんに、白石さんは少しだけ考えるそぶりを見せるが、年長者らしくにっこりと笑い彼女をキッチンに招き入れた。

 

「んじゃ、手伝ってもらおうかな……って、アンクちゃん勝手に冷凍庫を開けない」

「疲れているんだ、別に構わないだろう」

 

 んで、アンクはというと勝手に冷凍庫を開けてアイスキャンディを食べ始めていた。

 流石のふてぶてしさである。

 

 園子さんは得意と言うだけあって、手際よく白石さんを手伝う。中学生とは思えない手際に「高校生になったらうちでアルバイトしない?」なんて勧誘されていたりもする。

 俺はというと手伝っても邪魔になるだけだろうからその辺の椅子に腰を掛けると、サイクロンヘルから電波で送られてきた千堂って男のプロフィールを読み上げていた。

 

 ……って、すごい経歴だな。仮面ライダー一号と戦って生き延びている古参中の古参戦闘員かよ……。

 この間のショッカー壊滅時には本部にいたらしいが……やっぱり生き延びていたようだ。ただ、情報面はからきしなのか、残党には合流できずにいたらしい。

 あー、一度ヤミーにされたってデータにはあるな。またグリードに狙われたのか。

 ま、終わって接触できたら回収しておくか……。残党ショッカーは慢性的な人手不足だし。 

 

「おっ、良い匂い」

 

 少々時間が経過し園子さんがテーブルにできた料理を並べ始めた頃、着替え終わった火野さんが上から降りてくる。

 ヒッピー風というか、ゆったりとした服を着た火野さんはその姿が板についており、とても国会議員の先生には見えない。というか、こっちが地だろうしなぁ……。

 彼は手に持ったスマートフォンをひらひらと見せると、園子さんに向かって話しかける。

 

「あ、園子さん。氷室さんと連絡が取れたけど、お爺さんは無事だ。怪我一つ無いって」

「本当ですか!?」

「ホントホント。こっちに来るって言ってたよ」

 

 不安が一つ解消されて気が抜けたのだろうか、彼女の目から自然と涙がこぼれる。

 

「あ、えっと、ごめんなさい……」

 

 これが自然な反応だろう。アンクですら彼女の涙に何も言わない。

 ただ、俺はちょっと言いたい。

 

 なんで俺にしがみついて泣くんだよ。いや、可愛い子にしがみ付かれるのは役得だけどさー……。

 たまたま近くにいたのは俺って事なんだろうけど、こういうのは同性の白石さんの役目でしょう。

 

 

「ご馳走様、旨かった」

「いえ、お粗末様です」

 

 そんなこんなで名前を知らない異国メシで腹を膨らませていると、店の外で人の気配がする。

 当然俺以外にもアンクと火野さんも気が付いたようで緊張する。

 まぁ、俺の場合は外に停めているサイクロンヘルから逐一情報が入るので誰が来たのかは丸わかりなのだが……。

 

「園子!」

 

 店のドアが勢いよく開き、恰幅の良い老人が勢いよく飛び込んでくる。

 そのまま座って休憩をしていた園子さんを見つけると、強く抱きしめる。

 

「お、おじい様‥…」

「よかった、本当に無事でよかった……。お前に何かあったら、三郎太や光江さんに申し訳が立たない……」

 

 そういってボロボロ泣き出す東雲議員。護衛という事で彼のデータもヘンリーのおっさんから聞いている。確か、事故で亡くなった園子さんの両親の名前だ。

 亡き末っ子の忘れ形見がこんな事で傷ついたら、そりゃたまらないだろう。

 

 一方、議員に遅れて入ってきたのは革ジャンを着たチョイ悪風味の髭の男だった。こいつの名前は氷室幻徳。仮面ライダーローグの変身者である。

 

「無事合流出来たな」

 

 テレビで見かける丁寧で柔和なしゃべり方とは違う尖った口調。彼もこれが地なのだろう。

 こっちもこの服装でいるととてもではないが国会議員には見えない。

 

「氷室さんも無事でよかった。でも、驚きましたよ、氷室さんも仮面ライダーだったなんて」

「それはこっちのセリフだ。しかも、火野があのオーズだったとは……」

 

 ほんとに驚いたよ。マジでなんでこの髭が仮面ライダーになれるんだ? いや、何故かネビュラガスは存在しているからビルド系のライダーシステムが開発されていた可能性はあるが……。こいつの経歴は真っ当なもので荒事に踏み込む要素は無いはずだ。

 いや……一つだけ可能性があるか……。あるっちゃあるが、うわぁ、うわぁ、うわぁ……。もしかして、この世界って一度書き換えられた新世界? いや、ありえない訳じゃないが……。というか、世界を書き換えたエンドの話って結構あるよな……。うわぁ、うわぁ、うわぁ……。

 くそ、何も知らない一般人なら気が付かない可能性に気が付いてしまった……。よし、これ以上この件は考えないようにしておこう。

 

「俺はあなたの事は……」

「いや、知らなくて当然だ。活動はしていないからな……」

 

 それよりも護衛対象だ。東雲議員と園子さんは互いに無事を確認しあい安心したようで、ようやくこちらに向き直る。

 

「氷室君、火野君。本当に、本当にありがとう……。君たちがいなければどうなっていた事か……。あと……」

 

 まずは知っている人間に礼を。続いて俺に何か言おうとして反応が止まる。

 まぁ、そりゃそうだ。どう見ても高校生の知らない顔がいればこの反応になる。まぁ、あの時俺が園子さんを助けたのは見ていたようだが。

 

「あー、俺は気にしなくていいですよ。ヘンリーのおっさんに頼まれた護衛ですから。むしろ、ヘマして引き離す事になって申し訳ない」

「えっ? ヘンリーの奴の?」

「心配していましたよ。妙な連中に狙われているって」

「そうか、ヘンリーの奴が……。そうだな……散々忠告してくれていた」

 

 旧友の意外な気遣い、手回しに驚き、なにやら会話を思い出しているようだ。

 一方、俺たちの会話を横で聞いていた氷室さんがここで口を挟んでくる。

 

「一つ疑問なのだが……。東雲先生、法案反対派の貴方が、何故ショッカーに狙われたんだ?」

 

 ひどい冤罪である。謝罪と賠償を申し出たい気分でいっぱいになった。

 

「いや、アレはショッカー戦闘員ヤミーで……」

「ショッカーがヤミーを操っているのでは?」

 

 それは無い。むしろヤミーは欲望のまま動いて制御が効きにくいので、出てきたら即時駆除対象の一つです……。

 とはいえ、そう説明する事もできない俺だったが、この冤罪は意外なところから晴らされることになる。

 

「それは無いな。以前ならいざ知らず、今はあのクソ王がいる。利用するために潜り込む事はあっても、あいつの命令で動いているグリードやヤミーが誰かの下につくものかよ」

 

 そう断言したのはアンクであった。

 確か古代の王はオーズとガッチャードに倒されたけど、何故かまた復活してきたんだっけ……。随分と弱体化しているらしく、表には出てこないが……。

 

「アンク君だったね。君は今回の件をどう見る?」

 

 詳しいとみて、氷室さんがアンクに問いかける。

 問われたアンクは、つまらなそうに自分の推論を口にする。

 

「ショッカー……そいつらが爺を殺せば超常犯罪防止法が通しやすくなる。そんなところだろう」

 

 言外に超常犯罪防止法の推進派が黒幕……いや、王に利用されているとアンクは言う。

 

「古代の王は何を企んでいる?」

「わかっていて聞いているだろう、髭。……確か化け物退治をしやすくする法だったな。その化け物とやらに、お前たち仮面ライダーも入れるつもりなのさ。人間同士で争わせ邪魔者を消し去る。あのクソ王の考えそうな事だ」

「すまない、俺も考えをまとめたかったものでな」

 

 呆れながらも律儀に説明するアンクに、氷室さんは静かに聞き入る。

 一方、話を聞いていた東雲議員はどんどんと顔を真っ青にしていく。

 

「ば、馬鹿な! 確かに考え方は違うが、後藤田君が私を殺そうだなんて!」

 

 後藤田……。確か法案推進派の首魁だったか。

 立ち上がりながら叫ぶ議員に、アンクは冷たく言い放つ。

 

 ん? でも何で、議員は真っ先に首魁の名前を?

 

「ふん。俺も映司についていって国会とやらを何度か見たが、どいつもこいつも欲望がギラギラしていやがる。グリードにほんの少し囁かれれば、身を持ち崩す奴も出るさ……。ああ、ただ一つ違っていた部分はあるな」

 

 アンクはそこまで言うと言葉を切り、視線を議員から逸らす。

 彼が次に見たのは園子さんであった。

 

 

「理由は俺にもわからないが……あいつらの狙いは爺、お前じゃない。そっちの小娘だ」

 

 

 その言葉に議員は押し黙り、真っ青な顔で椅子にへたり込んだ。




主人公、気がついてはいけない事に気が付くの巻。

それはそれとして、長くなってしまったので一回切り。
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