ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
夏休みのキャンプ場で起きた未確認生命体による事件は、警察が到着する前に一応の解決を見た。
急行した警察車両と救急車が目撃したのは、応急処置が施され寝かされた十数名の被害者たちだ。よほど素早く応急処置を施したのか、重傷者はいても命に別状がある者はいない。
「助かったな」
次々と救急車に搬送される被害者や、周辺の警戒を終え撤収準備を開始する県警のG3機動隊を見ながら一条は呟く。
未確認生命体、グロンギの引き起こす事件は、彼らの勝手なタイミングでゲームを開始するために先回りをして防ぐ事が難しく、キャンプ場の腐り果てた土壌や巨大な穴を見れば、このグロンギが全力で暴れた場合の被害は計り知れない。おそらく偶然現場に居合わせただろう存在がグロンギを撃破したのだ。
本当に助かったというのが、この場にいた人間たちの共通の思いであった。
「一条さん!」
キャンプ場の施設を確認していた夏目とユウスケが小走りにやってくる。
「どうした、二人とも?」
「まず、応急処置に使われていたツールなんですが、どうやらショッカーがよく使う緊急キットによく似たもののようです」
「そうか……」
ある程度は予想していた。
一応は特殊弾頭を使う事により生身でも倒せない事は無いが、基本的にグロンギと戦うにはG3ユニットのような特殊装備が不可欠だ。つまり仮面ライダーやいずこかの怪人、怪物がグロンギと戦い倒した可能性が高い。
なにより目撃証言ではバイクで飛び込んできた少年が黒い仮面の男に変身したとあり、彼らが峠で出会ったショッカーライダー、アインロールドがグロンギと戦った可能性が非常に高かった。
「それと、鑑識から。防犯カメラの映像が一部復元が出来たそうです」
「そうか、それは良かった」
キノコを操るグロンギの放った毒と電磁波で、キャンプ場に備え付けられていたカメラやドライブレコーダーのほとんどが破壊された。さらに管理棟の機器までおしゃかになっていたというのだから、相当強力なグロンギであったのだろう。
それでも残っている記録が無いのかと鑑識班が粘ったところ、管理棟にあった遠方から撮影されていた映像の一部が復元できそうな事が分かった。
報告を受けた一条は二人と共に県警の対超常犯罪指揮車両へと向かう。
昭和の頃よりショッカーなどの秘密結社の暗躍に苦しめられてきた日本であったが、未確認生命体事件を経て鬼才小沢澄子の指揮の元、改造人間や怪物と戦う事の出来る強化戦闘服、G3の開発、実戦配備に成功する。
もっとも、初期型のG3は十分な戦闘能力があるとは言えず、また装着者を選び運用には大型の施設が必要となるなど、当時の日本を取り巻く環境に必ずしも適した装備とは言い難かった。
ある歴史においてはアンノウンによる事件が終息後は長らく無用の長物と化すG3であったが、この世界においては未知の脅威から市民を守るためにG3の必要性は年々高まり続けた。
幾多の改良や他系統技術の導入、G5ユニットの苦い経験を経て、ついには高性能でありながら運用制限の軽微な量産型G3の開発に成功する。また、装着に大型の施設こそ必要としなくなったが、超常事件においての前線指揮と現場における装備変更の必要性から指揮系統の機能を強化した改良型Gトレーラーも併せて導入される事となった。
その後年月経て、量産型G3と強化型Gトレーラーは全国に配備され、市民の平和を守っている。
「すいません、解析した映像を見せてもらっても?」
「ああ、どうぞどうぞ」
県警とそれなりに縁のある一条のお願いを、鑑識の担当者は快く受け入れ機材の操作を始める。
同じ県警の刑事である夏目はともかく、一般人のユウスケも同席しているのだが、誰もその事は気にしない。超常事件に置いては何らかの素養のある一般人が捜査の現場に立ち会う事は良くある話だ。
特に一条のようなベテランが連れて来たのなら何か意味があるのだろうと、皆考えたのだ。
なお、一般人が混じる事はよくあるが、一般人が勝手に警視庁に入り込み捜査資料を堂々と読み込むことは普通は無い。しかも理事官の目の前で悪びれもせず質問を飛ばす男は天の道を往く男ぐらいだ。普通は皆それなりに遠慮する。なんでそんな堂々としているんだよ、天道! 遠慮などしていては重要な機会を逃すだけだからだ。 あ、天道ちゃん羊羹をもう一切れ頂くね。
そんな同僚の内心と、相方の回答と、ちゃっかりご相伴に預かっている狸な理事官はさておき、モニターに映像が映る。
最初に映ったのはごく平凡な休日のキャンプ場だ。
家族連れや友人グループなどが思い思いの場所に陣取り、テントを立てあるいはバーベキューなどを楽しんでいる特に珍しくも無い光景だ。
異変が起こるのはそこからだ。
年齢は20歳前後だろうか。毒々しい赤い髪の女が一人でキャンプ場に入ってくる。
それ自体は不思議な光景ではない。先に来ている仲間がいるのかもしれないと、誰も気にも留めなかった。
女はニヤニヤとした表情を浮かべ、人の間を縫うように歩く。一部のキャンプ客が近くを通る女を迷惑そうに見るが、別段声を掛けたりもしない。女はそのまま進むと、奥にあったちょっとした丘の上の、キャンプ場を一望できるベンチに腰を掛けた。
そしてそれが合図であった。
「はれ? なんだ?」
酒に酔った男が、顔の一部に違和感を覚え手を触れる。何かもこりとしたものに触れ首を傾げ、仲間に顔を向ける。
「おまっ、な、何だその顔!? キ、キノコ!?」
男の顔を見た会社の同僚が男の顔を見て悲鳴を上げる。そう、男の顔の一部から毒々しいキノコが凄まじい勢いで生えてきていた。
酒に酔った男は驚き、反射的にキノコを取ろうと引っ張る。だが、身体に癒着したキノコを外そうとした瞬間、耐え難い激痛を男に与えた。
凄まじい絶叫と共に、男の意識が吹き飛ぶ。
同じ光景が、毒々しい赤い髪の女が見つめるキャンプ場のいたるところで発生していた。
そして、事件は終わらない。
意識を奪われた犠牲者たちは、そのまま緩慢な動きで動き出す。
「お、おい。大丈夫か?」
キノコに寄生された人間を心配し、仲間たちが慌てて傍による。
だが、それはキノコに寄生された人間に餌をやる行為に等しい。そばに寄ってきた相手を掴むと、キノコ人間は口を大きく上げその歯を新たな被害者に突き立てる。
再びキャンプ場に悲鳴が上がる。
噛みつかれ血を流す犠牲者の身にもキノコが生え、新たな獲物を探すキノコ人間となる。
人々はこの状況に何もできず、悲鳴を上げ逃げ纏う。
そんな時だった。
「させるかよ! ふざけるな!」
バイクの爆音と共に、キャンプ場の門の一部が吹き飛び。
同時に、白い車体に跨った男が飛び込んでくると、新たな犠牲者を求め彷徨っていたキノコ人間たちを、車体にぶつけて吹き飛ばした。
「ここから先は?」
「データの破損が激しくて再現できませんね。グロンギが強い電磁波を発していたのか、キャンプ場の機材はほとんど使い物にならない状態になってました」
「そうか……」
採取された土壌から、かなり強力な毒が検出されている。グロンギならそう言う事も出来るだろうと、一条は苦々しげに考える。
分かったのは、グロンギと戦ったのは峠にいた仮面ライダーと同一人物だったという事の確証を得たことぐらいか。
そう溜息をつく一条であったが、一緒にいた夏目はそうでは無かった。
食い入るように映像を見ていた夏目であったが、映像が途切れるのを待って鑑識の人間にこう確認する。
「すいません、画像、最初の所をもう一度お願いできます? そう、女が入ってきたところ、出来ればアップで」
「えっ? ああ、はい。できますよ」
夏目のお願いに、鑑識の人間が映像を操作する。
すぐにグロンギと思われる赤い髪の女が、荒い画像ではあるがアップで映し出される。髪の色を除けば、TAKESHIブランドのアウトドアグッズに身を包んでいる事ぐらいしか特徴は無い。
特に美人というわけでもなく、特に不細工というわけでもない。どこにでも居そうな若い女でしかないが……。
「ああっ。やっぱり。すいません、パソコン借ります!」
「おっ、おい!?」
女の顔を確認した夏目は、返事も待たずデータベースにつながるパソコンを操作する。
周囲がぎょっとし見つめる中、すぐさま自身が求めていたデータを見つけ、自分の記憶が間違っていなかった事を確認した。
「見てください、これ!」
そう、そこに映っていたのは先ほどのグロンギと思われる女の姿だ。
髪の色こそごく普通の色ではある。また、どこか異様に陽気だったキャンプ場の映像と違い、暗く沈んだ地味な雰囲気を漂わせている。
だが、ほくろの位置や目つきなど同一人物な事には間違いない。
「おい、何でグロンギが警察のデータベースに!? いや、この女じゃなくて峠の奴まで!?」
一条が驚くのも無理はない。夏目がパソコンをさらに操作をすると、今度は峠に出てきたグロンギの人間体まで出てきたのだ。
古代人であるグロンギたちが、現代の記録に残っているという異常事態なのだ。
だが、そんな一条の勘違いを、夏目は正す。
「違います、一条さん。覚えていませんか? 殺人遊戯サイト事件の事!」
「あっ!」
夏目の言葉に一条が当時の事を思い出し、声を上げ絶句する。
一方、この世界の住民ではないユウスケは、二人が何に驚いているのかさっぱりわからない。
「あの、何ですか。その殺人遊戯サイトって? いや、言葉の響きからすごく物騒というか、聞くと後悔しそうな内容だってのはわかるんですが……」
「そっか。小野寺さんは知りませんよね。えっとですね……」
それは五代雄介がン・ダグバ・ゼバを倒し、世界につかの間の平和が訪れしばらくたった頃の話であった。
最初は犬や猫の死骸が増えた。そんな噂話だ。
だが、新聞に殺人と思われる事件が少しずつ増え始めた。物取りでもなく、怨恨でもない。通り魔的に、人が殺される。しかも当初は刺されたなど常識的な犯行であったが、徐々に鎖による殴打や毒殺など特殊な状況で殺された死体が増えてくる。
いつしか、巷では未確認生物が蘇ったという噂が流れ始めた。
「グロンギが蘇っていたんですか?」
「いえ、違うんです」
グロンギが再び蘇るのはもう少し後になってからの話だ。
だが、それに近い回答がこの世界では用意されてしまった。そう、アンノウンの活動が活発化したのだ。
グロンギと同じく、人を不可解な手段で殺害するアンノウン。増え続ける目的不明の殺人事件も、アンノウンによる犯行と当時は考えられた。
殺害手段に共通点は無く、また殺害方法もアクロバティックな物ばかりであったのだ。
これが不幸の始まりであり、多くの犠牲者を出す結果につながった。
「警察も、当時は未確認生物という先入観に囚われていたんだよ」
夏目の言葉を引き継いだのは、その事件の捜査に当たっていた一条だ。
当時の事を思い出し、苦々しげな表情で話を続ける。
事が発覚したのは、アギトと呼ばれるライダーの戦いに一区切りついた後の話だ。
ある会社の社長が自宅の一室で窒息死するという不可解事件が発生する。
外傷、薬物反応なし。一連の不可解事件の一つであり、アンノウンの仕業かと当初は思われた。だが、事態は別方面から予想外の急展開を迎える。
その社長が愛用していた高級ブランド腕時計が修理に出されるという事態が発生、さらに調べてみるといくばくかの現金が持ち去られた形跡も発見される。
グロンギは強盗等の事件も起こす事はあったが、それはゲゲルの得物を得るためのいわば下準備だ。アンノウンに至っては強盗を襲った記録はあっても自ら強盗を行う事は考えにくい。
ショッカー等の秘密結社の犯罪も考えられたが、当時彼らは活動を極端に低下させていた上に、そこまで慎み深く隠れるような性質ではない。
これは不可解事件に見せかけた強盗殺人事件では無いのか、警察の捜査が振出しに戻った瞬間であった。
「ちょっ、ちょっと待ってください!? 犯人は怪人でも怪物でもなく、ただの人間だったって事!?」
「その通りだ」
そこからの展開は非常に早かった。
警察の捜査により時計を強奪したメンバーがすぐさま捕まり、芋づる式に殺人グループが検挙される。
何のことはない。たまたま金に困ったメンバーが一人いて、その人物が仲間に無断で金目の物を持ち出していたのだ。これまでアンノウンの陰に隠れ殺人事件を繰り返していたグループに、盗品売買や資金洗浄のノウハウなど無く、その男の雑な行動で事件が発覚しただけであった。
だが、問題は此処からだ。
彼らが不可解な殺人を繰り返していた理由。それが殺人遊戯という名のダークサイトであった。
表向きは不可解犯罪や秘密結社の改造人間とされる存在の犠牲者の映像を集める会員制のホームページだ。現在でも探せば似たようなサイトはいくらでもあるだろう。
だが、この殺人遊戯が他と違ったところは、一部の上級会員たちが怪人の仕業に見せかけた殺人を報告し、互いに点数をつけあうゲームを行っていた点であった。
「な、なんでそうなるんですか!?」
「グロンギのゲゲル。それを模倣していたんだよ、連中は」
グロンギは極めて危険な殺人種族ではあるが、独自の価値観を持つだけで意思疎通の取れない種族ではない。また、ゲゲルのターゲットでなければむやみやたらに殺さない事が多い。
そう言った性質から、見逃した人間にゲゲルの事を説明した変わり者のグロンギもおり、そこからディープなマニアの間でゲゲルの事は広まっており、それを模倣しようと考えた者たちが作ったサイトが、殺人遊戯であった。
「なんだよ、それ……」
ユウスケはいくつもの世界を渡り歩いた歴戦の仮面ライダーだ。当然仮面ライダーとの交戦経験もあり、倒した事もある。
確かに戦いを楽しむ奴や殺しを楽しむ奴もいたが、それが集団となり点数をつけあうゲームを行っていたと聞けば絶句をするより他なかった。
「森中に山道。どちらもサイト利用者で中級会員。直接殺人ゲームには参加していなかったようですが、殺人サイトの閲覧者として事情聴取を受けていますね」
「逮捕されなかったんですか?」
「殺人ゲームに参加した連中は当然全員逮捕。サイト運営者たちも実刑判決を受けている。だが、見ていただけの連中はな……」
閲覧者の大半は重要参考人として調べられはしたが、検挙には至らなかった。
直接殺人を行っていたわけでは無い、ただ見ていただけ。また閲覧者も本当に殺人を行っているとは思っていなかった者も少なくない。結果的に、逮捕に至ったのは殺人者と運営に携わっていた者の他、殺人の手助けを行っていた一部の者にとどまった。
夏目は刑事になった当初に、父を殺したグロンギを真似た連中の記録を閲覧した。その中に若い女が一人だけいたため、印象に残っていたのだ。
「だが、年齢が合わないな。二人とももう40代の筈だぞ?」
防犯カメラの映像や峠であったグロンギはどう見ても20前後の見た目だ。
確かに同一人物と考えるには無理がある。
「そこは分かりません。グロンギがなぜ模倣者の姿を奪ったのか……」
一条と夏目はグロンギがサイト利用者の姿を奪ったと考えた。
実際、過去にグロンギは人間社会に紛れ込むために相手を殺しそっくりに整形するといった事を行っている。今回も同じ事をしたと考えたのだ。
だが、異世界から来た小野寺ユウスケは違う可能性を思いついていた。
それは彼の始まりともいえる事件だ。
振り切ったつもりではあるが、それでも心の奥底で今でもジクジクと痛む悲しい思い出。
自分がこの地に呼ばれたのは、この可能性を伝える為かもしれない。
「いや、きっとそいつらはグロンギが入れ替わったんじゃない。グロンギになったんだ」
「えっ!?」
「ユウスケ君、何を?」
「俺の世界でグロンギの王が目覚めた時に起きた事です。奴が放つ黒い霧は人々を死に至らしめ、グロンギに変えて行ったんです」
クウガの世界と呼ばれた小野寺ユウスケの故郷。その世界においてグロンギの王であったン・ガミオ・ゼダ。
奴の放つ黒い霧に飲まれた人々は次々に命を落とし、グロンギに変貌する者が続出した。
ユウスケの説明はわかりやすいという訳では無い。だが、彼らが思っていた以上に深刻な事態が進んでいる可能性に、二人の刑事は顔を青くする。
「もちろん俺の世界での出来事とはだいぶ違います。でも……」
「ああ、人がグロンギに変わる可能性がある。それだけで大変な事態だ」
この世界でも同じことが起きているかどうかは分からない。そもそも、あの時グロンギになってしまった人々にまともな自我が残っている雰囲気は無かった。
この大きな差異にはきっと理由と陰謀がある。
それを解明し、事態を止めるのが自分の使命だろう。
「この事件は俺が止めます。止めて見せます」
決意を新たに、異世界のクウガはそう宣言した。
大丈夫だよ、姐さん。
皆の笑顔の為に、悲劇は俺が止めるよ。
(故)キノコグロンギ「えっ!? 電磁波って何!?」
サイクロンヘル「(ニヤリ)計画通り」
ライダー界隈の警察は、割と融通が利く事が多い。
最近始めた解説。
G3(出典:仮面ライダーアギト)
警察が開発した強化服仮面ライダー。後継機種が色々開発される。
量産が効きやすいポジだからか、ディケイドやジオウにも出てきた。
ン・ダグバ・ゼバ(出典:仮面ライダークウガ)
グロンギの首領にしてすべての元凶。他のグロンギ同様に殺しや破壊を遊びとしてしか認識していない。強い敵と戦いたいという欲求に忠実な、どこぞの戦闘民族のような奴。
ン・ガミオ・ゼダ(出典:仮面ライダーディケイド)
ディケイドの『クウガの世界』におけるグロンギの王。封印から目覚める気は無かったが、目覚めたからには王の使命を果たすべく人類をグロンギにしようとする。
最終的にディケイドとクウガに倒され、闇が晴れた事を宣言し果てる事となった。
プチ原作キャラ解説は……
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いる
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いらない