ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第120話 episode・KUUGA 同行

 五代雄介、またの名を仮面ライダークウガ。

 2000年の長き眠りから目覚めたグロンギを、たった一人で滅ぼした仮面ライダー。

 

 不幸だったのは時期だ。

 

 日本ではクライシス帝国が滅びつかの間の平和を取り戻していた時期……でもないか。ドラスが暴れたりフォッグがやってきていたりしてたらしいし。

 それはともかく、当時はゴルゴム残党とクライシス帝国残党、そしてショッカー残党とバダン残党が欧州各地で四つ巴の血で血を洗う抗争を繰り広げていた。当時を知る者に聞くと、ライダーに倒された人数より抗争で死んだ改造人間の数が上回っていたらしいので、とばっちりを受けた一般人の被害がどれほどだったかは言うまでも無いだろう。

 

 本郷さんたち仮面ライダーはそちらに手を取られており、日本には手が回らなかったらしい。

 直接そう言ったわけでは無いが、一文字さんはこの時日本に行かなかった事を相当後悔していた事だけは覚えている。

 

 話を戻そう。

 

 五代雄介は決して孤独だったわけではない。寄り添ってくれる仲間たちは大勢いた。

 人が無力だったわけではない。最終的に当時の人類でもグロンギを倒せる手段を見いだした。

 

 だが、真の意味でグロンギと戦えたのは彼だけだ。人々の笑顔を守る為、クウガは戦い続けた。

 

 戦いを好まない仮面ライダーは決して少なくはない。世界が優しければ、人並の人生を歩んでいた者は大勢いるだろう。

 だが、五代雄介が他のライダーたちと違ったのはただ一点、彼は殴る拳の痛さを切り捨てられなかった。

 他のライダーより心が弱いわけではない。ただ、よく言えば割り切る、悪く言えば擦り切れる暴力を忌避する感情を、五代雄介は最後まで持ち続ける事の出来た強い人だった。

 

 だが、心に負った深い傷と、増大し続ける闇の力に抗うため、最後の戦いを終えた五代雄介は一人仲間たちの前から姿を消し旅立った。

 これが仮面ライダークウガとグロンギに纏わる事の顛末だ。

 

 さて、ここからはショッカーライダーとしての知識だ。

 直接的にクウガと敵対したわけでは無いので攻撃対象にはならなかったが、それでも仮面ライダーの一人として五代さんは当然ショッカーの監視対象となった。いや、古代の神秘をその身に秘めた彼は、ショッカーのみならず様々な諜報機関が行方を追った。

 

 優秀な人間であっても、その点で彼は素人だ。当然あっさり捕捉されるのだが、なんでもうちのエージェントが彼を守るために色々骨を折ったらしい。どこぞの極秘諜報機関と一戦交えたりもしたそうだ。

 上からの指令だったそうだ。騒動に巻き込まれたり人助けをしたり冒険をしたりと本人は楽しそうに思い出を語るので、それなりに良い仕事だったのだろう。

 

 その後は五代さんがクウガへの変身能力を失っていた事と、日本でアギトとアンノウンの戦いが始まり、それに前後してライダーバトルが始まったり、魔化魍が活性化したりワームが活動を活発化したりと、それどころじゃねえと諜報機関の興味は五代さんから失われていった。

 

 各国エージェントが興味を失ったしばらくした後、ある事件に巻き込まれた彼が再びクウガの力を解放した事を知っている。ある霊峰に封じられていた怪異、それを何も知らない登山家が解放してしまった。村を襲う怪異を前に常人では成す術も無い。だが、縁も所縁もない村人たちの笑顔を守るために、貴方は戦う必要は無い、逃げるようにと訴える人を押し切り五代雄介は再びクウガになり戦ったと聞く。

 怪異はクウガの圧倒的な力の前に倒され、村人の笑顔は守られた。

 

 その後も、人の身でどうにもできない怪異が出現したとき、五代雄介という人はクウガの力をもって人々の笑顔を守り続けた。

 自らが流す血の涙を振り切って戦ってしまう。それがどれだけ辛くとも、彼は戦えてしまう。

 

 最もライダーにふさわしく、最もライダーになってはいけなかった人。それが五代雄介という人物だ。

 

 

 

 さて、その五代雄介だが……。なんか小料理屋でバイトをしていた。

 店の制服だろう作務衣が妙に板についている。

 

「いらっしゃーい!」

 

 夜は小料理屋にとって書き入れ時だ。

 それはこの田舎の地元の住民向けの店も大差はない。週の真ん中という事も有って客が多い訳では無いが、少ないとも言えない微妙な客入りだ。

 そんな中俺はと言うと、店の奥で店の主人の娘さんを相手に夏休みの宿題を見ていた。

 

「ほら、ここ間違っている」

「え? うそ!?」

「ほら、計算の初めからやり直し。こことここ、掛け算と足し算の順番が間違っているぞ」

「あっ!」

 

 一応は進学校に通う高校生だし、改造人間の能力なんぞを使わんでも小学生の宿題なんて余裕で見れるけど、なんでこんな事をやっているんだ、俺?

 

 いや、キャンプ場でグロンギを倒した後、協力して被害者の応急処置だけは済ませた。

 これはいい。

 山奥なのですぐに警察は来ないとはいえ、20人近い被害者の応急処置は相応に時間がかかる。幸い早々にグロンギを倒したのが良かったのか、重傷と呼べるような人はいなかった。後遺症などは流石に医者ではないのでわからなかったが、そこはプロに任せるべき話だ。

 応急処置を終えた俺は、早々にその場を退散しようとした。当然だ、警察に事の次第を証言してやる義理は無いし、クウガとも積極的に争う理由も無い。

 さっさと立ち去ろうとした俺を呼び留めたのは、クウガこと五代さんであった。

 

 

「ちょっと、ちょっと待って。どこ行こうって言うんだよ」

「掃除と後始末は終わった。仮面ライダーとなれ合う気は無い」

 

 

 さっさと変身を解いた五代さんと、変身を解いていない俺は確かこんな会話をした記憶はある。

 そこからあれよあれよとなんとなく言いくるめられて、引っ張られてこられてこうなっているのだ。

 なぜこうなったのかはよくわからない。きっと2000の特技の一つだろう。

 

「兄ちゃん弱いなぁ」

「うっせー……。あっ」

「うわ、五代のおっちゃんより弱い人初めて見た……」

 

 今日の分の宿題を終え、ついでに数日分の宿題もやらせ、時間が余ったのでテレビゲームに付き合い、あれよあれよという間にペンキまみれのぼろ負けした。

 

 くそ、しかし、ここまで手強いとは。

 こうなったらミカに付き合わされて鍛え抜いた本気と書いてマジな実力を見せるしかない。

 

「手を抜いていただけだ。ここからは本気を出すぞ」

「ほんとー? ほらっ!」

 

 いくぞ、俺の本気を見せてやる。

 あっ、だめです、それは駄目です。あーっ!?

 

 そんなこんなで子供は寝る時間になったので、興奮した子供を寝室に叩き込み、しばらく端末でサイクロンヘルが抜いて来た情報を確認していると、五代さんがやってきた。

 

「いや、待たせて悪いね」

「待たせ過ぎですよ」

 

 子供に付き合ってだいぶ体力と気力を消費したので、この程度の嫌味は許されて良いと思う。決して一勝も出来なかった腹いせではない。

 実際俺の嫌味も暖簾の腕押し、五代さんは笑いながら店の奥の座席に俺を案内する。

 

 程なくして、お店の主人だろう女性が簡単な食事をもってきてくれた。

 年齢的には30を超えて40手前ぐらいだろうか。若い頃は美人だろう、今でも美人である長身の女性であった。

 

 彼女は夕飯というか夜食を配りながら、俺と五代さんに申し訳なさそうに話しかける。

 

「ごめんなさいね、急にアルバイトの子が休んじゃって」

「良いんですよ、岡見さん。困った時はお互いさまってね」

「君も御免なさいね。優香を見てもらって」

 

 どうやら昼間の騒動にバイトの子の家族が巻き込まれたらしい。幸いキノコ人間にされたわけでは無いらしいが、バイオ攻撃だけにあのキャンプ場にいた人は全員検査で今日は泊まりだそうだ。

 経験則で言えばもう本体のグロンギを倒したので、何かが起きる事は無いだろう。本体不在でも効果が続くパターンもあるが、キノコの効果が速攻で強力であった事を考えると、持続力に乏しいパターンだ。

 とはいえ、予想外の事が起きるのがこの業界なので、用心に越した事は無い。

 

 そんな事情は分かっているので、五代さんはともかくお店の主人に嫌味を言う気は無かった。

 

「いいえ、気にしないでください。そこのおっさんが悪いんですから」

「おっさんじゃない、お兄さんだ」

「あらあら。それじゃ、五代さん食器は水につけておいてくれればいいから」

 

 甥がいる年齢なのでおじさんで良いだろう。

 もっとも、本人としてはまだまだお兄さんらしい。という冗談を飛ばしつつも、岡見さんは店の片付けに戻っていく。

 さて、ここからはショッカーライダーと仮面ライダーの時間だ。俺は意識を切り替え……。

 

「おっ、とりあえず食べろよ星太郎」

「いや、あんたね……。ショッカーライダーを引き込んでおいて余裕だな」

 

 とりあえず伝えておいた偽名で呼びかけながら、唐揚げが山盛りの皿を差し出してくる五代さんに、俺は内心で溜息をつきながら少しだけ凄んで見せた。

 別に何かをする気など無いが、あまりにも無警戒すぎてこちらが心配になる。

 匙が諦めて勝手に月の向こうまで吹っ飛んでいきそうな如月さんや城戸さんや、匙を力任せに縛り上げそうな常磐さんじゃないのだ。もう少し何というか、ちゃんとして欲しいと思ってしまうのは間違っていないと思う。

 

「ショッカーの仮面ライダーだろ?」

「なんだ、その矛盾の塊みたいな存在は」

 

 ショッカーの仮面ライダーって何だよ。

 この世界のショッカーは人類存続も目的に入っている分だけ、他世界のショッカーよりは若干マシだが、基本的には平和と自由の敵であるろくでなし集団だ。仮に人類を襲う悪意と戦うにしても、一般人の犠牲上等な奴が大半であり、少なくとも平和と自由を守る者である仮面ライダーとは相容れぬ存在であった。

 そして俺も現在追放中とはいえ、ショッカーはショッカーだ。特に今の俺はブラックサタンの命で動いているわけだから、間違いなく地獄の悪鬼である。

 

「いや、そう言われても……」

 

 俺の言葉に、五代さんは頭を搔きながらこう返してきた

 

「まず、少し自分の行動を客観視しよう。被害者を助けるため機転を利かせた上に、応急処置まで施して去っていく行動のどこがショッカーなんだ?」

「敵を倒したついでだ。効率的にグロンギの能力を封じただけで、助かったのは運が良かっただけだ」

「応急処置は?」

「無駄死にを出す必要はあるまい。ついでだ」

 

 無駄に一般人の犠牲者が出る事を好まないだけで、別に人命第一というわけではない。一般人でなければ躊躇わないし、必要なら容赦なく見捨てる。

 石にかじりついても助けようとする仮面ライダーとは根本的に違う。間違いなく俺はショッカーだ。

 そう断言する俺を、五代さんは心底呆れた表情で見る。

 

「そこまで意地を張る必要は無いんじゃない? あと、俺もショッカーの悪事は知っているけど、人それぞれだって事は知っているから。そういえばサチさん元気?」

「さてな。粛清はされていないから生きているんじゃないか?」

 

 諜報部で日々溜まり続ける書類の山に潰されて死んでなきゃ生きているだろう。改造人間だから書類の山程度では死なないか。精神的に死ぬけど。

 俺の投げやりな回答に五代さんは再び苦笑いを受け、こう返してきた。

 

「そりゃ安心した。ところで、君はなんでここに? やっぱりグロンギを追いかけて?」

 

 本題に入ったか。

 五代さんとしては一番気になる点か。

 ショッカーが自分たち以外の超常的な力を持つ存在を狩っている事は割と有名な話だ。そして、その過程でやりすぎる事も少なくない。

 彼が警戒するのも仕方がない事だ。

 もっとも、今回俺が来た目的はグロンギ退治ではないので、ここは素直に教える事にした。

 

「いや。あれは道すがら暴れてたので、目障りだから駆除しただけだ」

 

 本当にそれだけだから困る。

 行く先々で事件が起きるのはそう言う時世だから仕方ないとして、毎度毎度有名どころの仮面ライダーが湧いて出てくるのは勘弁してほしかった。

 あと、俺の回答に微笑で返すのは止めて欲しい。

 

 若干のばつの悪さを誤魔化すため、俺は逆に質問で返す事にした。

 

「あんたはなんで日本に? 海外を放浪していたと聞くが」

 

 元々冒険野郎で世界を飛び回っていた人物だ。グロンギを討伐後は世界を巡って旅を続けていた事は俺も知っている。

 そんな彼が日本に立ち寄ったのは一度だけだ。それほど避けている日本、しかも彼にとって転機となったこの地に再び現れたというのは、意味があるだろう。

 俺の問いかけに、五代さんがなんともあやふやな回答を返してきた。

 

「いや、よく分からないんだけど」

「分からない?」

「ああ、なんて言うか……求められた気がしたんだ?」

「求められた?」

「なんかぎゅわーっと引っ張られて、ぐわっときて、くっ! となって、うぉー! って感じで求められたんだ」

「いや、そんな擬音交じりで言われても分からないですよ」

「そう? 分かりやすく話したつもりなんだけど……」

 

 五代さんの擬音交じりの表現に、流石の俺も分からないと音を上げる。

 これでわかるのは常磐さんか城戸さんか如月さんぐらいだろう。少なくとも俺は分からないし、他のライダーもきっと分からない。

 

 とはいえ、超古代の技術の極みであるアークルの装着者である五代さんが言う以上、何か意味があるのだろう。

 擬音なのは、きっと五代さん独特の感性だ。

 

 少し考える。

 

 今回の目的は古代の勇者の封印を解く事だ。その勇者が何者かは知らない。『行けばわかる』の一点張りで教えてくれなかった。

 秘密主義すぎるんだよ、ブラックサタン。

 

 あの人の秘密主義はさておき、今のタイミングで封印を解くように命じた事と、海外を放浪していた五代さんがこの地に『呼ばれた』事は無関係では無いだろう。

 なにせサタン虫を駆使するブラックサタンの諜報能力はショッカーを上回っており、また再生ブラックサタンは多種多様な超能力を駆使する。あの方が五代雄介がいる事に気が付いていない訳がない。

 

 さらに言えば二体目のグロンギに、異世界のクウガである小野寺さんの存在。すべてに何らかの関係があると考えて行動を起こすべきだ。

 流石に目的を共有は出来ないが、彼の言う『呼ばれた』が俺の目的に関係がある可能性が高い以上、この地で得た情報は伝えるべきだな。

 

 俺は懐から取り出した端末を操作すると、遺跡で撮った映像を表示し五代さんに端末を手渡す。

 

「俺の目的はこの地の再調査だ。これを見て欲しい」

「なに? んんっ!? これって!?」

「九郎ヶ岳遺跡に隠されていた壁画だ」

 

 俺の言葉に五代さんは目を白黒させ、こう尋ねて来た。

 

「待って、あそこは今は厳重に封印されている筈じゃ?」

「あの程度の封印は俺には有っても無いようなものだ。それより、あんたも知らないのか……」

「どういう意味?」

「経験則だから断言は出来ないが、何者かが俺より前に入った形跡があった」

 

 まぁ、これに関しては俺の直感だ。

 だが、何者かがこの壁画を見たかどうかは不明だが、俺より前にあの遺跡を探索していた事だけは間違いない。

 俺は小さくため息をつくと、一方的にこう宣言した。

 

「悪いがしばらくはあんたの周りをウロチョロさせてもらうぞ。心配するな、迷惑料代わりに面倒事は俺が引き受けてやる」

 

 何が起きるかわからない以上、クウガの周囲で何かが起きる可能性が高い。

 手がかりが何もない状態だ。悪いが精々利用させてもらう事にしよう。

 




【悲報】主人公、人命重視ではないと宣言する【やはり悪党!?】

なお、五代さんの生温かい視線。
こいつ、いつも生温かい視線を受けているな……。



独断と偏見による用語解説

長野県九郎ヶ岳遺跡(出典:仮面ライダークウガ)
 長野県中央アルプスに発見された遺跡であり、リントの戦士が眠り、グロンギの王が封印されていた場所。
 グロンギの王ン・ダグバ・ゼバが目覚めグロンギが現代に復活して、五代雄介のクウガの物語は始まる。
 仮面ライダーシリーズの再出発という事もあり、序盤の大型セットには相当力が入っている。今ならたぶんCGを使う。

アークル(出典:仮面ライダークウガ)
 クウガの変身ベルト。バックルに霊石アマダムが収められている。
 これだけ聞くと装着型のようだが、実はベルトの装着者と神経が接続されており、肉体を徐々に作り替えていく。また、死ぬまで外せない(隠す事は出来る)。
 ちなみにこの頃のベルトはうるさくない。二代後あたりから喋り出す。お前のせいか、神崎ぃ!

ブラックサタン大首領(出典:仮面ライダーストロンガー)
 仮面ライダーストロンガー前半の敵であるブラックサタンのボス。紫の胴体と髑髏の頭、虫の足を持った巨大なサタン虫。
 人に寄生するサタン虫を操り洗脳を行う外、テレポートなどの超能力を持つ。
 抱き枕怪人とか、簀巻き怪人とか、布団カバー怪人とか言ってはいけない。
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