ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第122話 episode・KUUGA 泣血

 結局の所、古代の勇者の手掛かりは五代さんのなんかあるという感覚と遺跡の壁画だけだ。

 この手詰まり感がすごい状況を覆したのは、職業冒険野郎の五代さんであった。

 

「おし、ちょっとこれを見てくれ」

 

 お座敷で五代さんが広げたのはこの辺りの古地図のコピーだ。

 端に永禄って書いてあることは江戸時代あたりだろうか? 古い地図と俺の端末の壁画を見比べはじめる。

 川やら町やらが描かれているざっくばらんな地図だが、古代壁画と見比べてわかるのか? あの壁画の遺跡は2000年前の物だろう。江戸時代とは1000年以上離れているんだぞ。

 

「えっと、地質調査の資料は……、川の氾濫の記録……。あったあった」

 

 そう思ったら、今度は自分のスマホを取り出して何かを調べ出した。

 地図と壁画、そして何やら調査の記録を調べる事小一時間。

 何やら集中しているし、待っているのもアレなんで俺の分の食事を食べ終わり食器を下げたあたりで五代さんが現代の地図を取り出しペンで何かを書き込んでいく。

 

「あ、もう食べ終わったのか?」

「邪魔をしては悪いと思ってな」

 

 まぁ、実は端末を通さずでサイクロンヘルとやり取りはしていたのだが、そこまで話す気は無い。

 昼間のキャンプ場の一件は、とりあえず命に別状がある人間はいない。短期間に二体のグロンギが出た事も有り、警察は警備体制を強化か。

 どうやら一条氏も長野県警に残り警視庁と連絡を取りながら捜査を継続するらしいが、これは五代さんに伝えなくても良いか。日本に戻ってきても会いに行かないという事は、まだその時では無いと考えているのだろう。

 これに関しては部外者の俺がとやかく言う事ではない。

 

「サンキュウな、星太郎。だいたいの場所の目安はついた」

「え? あの壁画で?」

 

 俺には実際にあった事の一節、古代の絵にしか見えなかった。地理情報なんてとてもではないが読み取れない代物であったが、冒険野郎である五代さんには違うものが見えていたようだ。

 彼は現代の地図を取り出すと、いくつかの場所に丸を付けていく。

 

「壁画には川が描かれていただろう。それがヒントなんだ?」

「川の流れは変わるだろう?」

「変わる変わる。だけど、どう変わったかはおおよその予測はつくんだよ」

 

 そう言いながら五代さんはマジックペンでいくつかのラインを書き足していく。

 恐らくは壁画から得た情報と、古地図の情報、そして過去に行われたリント族やグロンギ族関連の調査結果を総合的に考え書き出しているのだ。

 そして、結論に達したのだろう。五代さんは一つの山に丸印を付ける。

 

「灯溶山。壁画の舞台はこの山の周辺だな、きっと」

 

 

 

 

 というやり取りが行われたのが3日前。

 俺と五代さんは仲良くハイキング……と言うにはかなりの荒行で灯溶山周辺の探索を行っていた。

 

 五代さんも『なんか求められている気がする』と言ってこの辺りの探索を行っていたらしいが、本当になんとなくであり明確な根拠がある訳では無かった。

 『毎晩マッチョなおっさんが枕元に立ってじっとこちらを見ながらため息をついている』という、なんとなくと言う割には具体的すぎる嫌な気配に導かれ、闇雲に遺跡周辺の山中を調べていたそうだ。もっとも、そんな雑な探索では何かが見つかる訳もなく、無駄にカブトムシの捕獲数が増えていた所でキャンプ場での戦いに出くわしたそうだ。

 

 タイミングよく現れたと思ったら偶然だったとは……。そういや小野寺さんも山の中から唐突に現れたな。

 現代のクウガは山の中から出てこなきゃいけない決まりでもあるのか?

 

 そんな失礼な感想はさておき、3日ほど灯溶山周辺を泊まり込みで踏査をしていた俺たちは、町に戻っていた。

 疲れはそれほどでもないが、情報収集という意味では山に籠りっぱなしというのは良くない。

 

 まぁ、俺は街に待機させておいたサイクロンヘルから逐一報告が来るんだが。

 

 グロンギはまた出たか。しかも今度は警察署を襲撃とは。現代人を獲物としてしか見ていないグロンギだとしても、うかつすぎる。

 小野寺さんと警察のG3に返り討ちにあったそうだが、こりゃ本格的にこの地域でゲゲルを開始したとみて間違いない。

 五代さんに雑事を片付けるなどと偉そうに宣言した手前、一回町に残って叩き潰しておくべきか。

 

 とはえ、グロンギ退治は面倒なんだよね。基本的に連中がやっているのはゲームであり、法則性は有っても一貫性は無い。

 事が起きて犠牲者が出るまで、連中が何処で何をしようとしているのか先読みが出来ないのだ。正直、まだ完全な外来種であるワームの行動の方がよほど読みやすい。

 

 そんな事を考えているうちに、五代さんがお世話になっている小料理屋にたどり着く。

 

「ただいまー」

「あら、五代さんお帰りなさい」

「おっちゃん、にいちゃんおかえりー」

「よ、お土産だ」

 

 いくらタンクトップ姿で真っ黒に日焼けをしているからって、女の子にカブトムシのお土産はどうかと思う。

 お母さんは苦笑いをし、カブトムシが満載された籠を手渡された本人も微妙な表情をしている。

 デリカシーに欠けるでしょう。俺がミカ相手や凜相手にこんなお土産を持ってきた日には数日くらい口を利いてもらえないぞ。つか、あんたも妹居るだろうにさぁ……。

 

「はいはい、それはこっちに置いておいて。バイクを停めさせてもらってすいません」

 

 なので、俺がこんなフォローをする事にする。

 カブトムシを取り上げてポイっとしておく。サイクロンヘルに預けておけば、ドローンを使って近所の男の子に配ってくれるだろう。

 いくらでもいるような場所なのでいらないかもしれないが、虫かごにカブトムシが一匹二匹増えても気が付かないだろう、多分。 

 

「あら、いいのよ星太郎くん。そんなこと気にしなくて」

「あ、それよりさ! 五代のおっちゃんプール行く約束!」

「あっ!? そういえば!」

 

 ああ、そういや山籠もり前にそんな約束していたな。身を乗り出してせがんでくる優香ちゃんに、五代さんは目を白黒させている。

 母子家庭なので父性に飢えているのかもしれない。

 まぁ、今日一日ぐらいは付き合ってやってもいいだろう。山に籠って現地調査ばかりでは気が滅入る。

 

 そんな事を真剣に考えていると、どたどたと部屋に戻っていた優香ちゃんが水着の入ったカバンを持ち出していた。

 ほんと子供らしい元気な子だ。

 

「ほら、五代のおっちゃんだけじゃなくて、にいちゃんも行くよ!」

 

 え、俺まで!?

 

 

 泣く子と地頭には勝てないというか、成り行きで俺も一緒にプールに引っ張られていった。

 サイクロンヘルを待機させており、何か起きたらすぐ動ける態勢は整えている。

 もっとも、警察と小野寺さんが対応できる範囲なら、俺がでしゃばる気はあまりない。ショッカーライダーが一々グロンギ退治に出しゃばるのもアレだし、表の人間が脅威に対抗できるならそれに越した事は無い。

 人類が脅威に対抗できる力を身に着ける事が一番良いのだ。

 

「五代のおっちゃん、くらえっ!」

「ぎゃー!」

 

 水鉄砲を食らいブクブクとプールに沈んでいく五代さんという平和な光景をプールサイドで眺めながら、俺はぼんやりと真面目な事を考えていた。

 そんな真面目な俺に、びゅーっと飛んで来たのは当然水鉄砲だ。もちろん撃ってきたのは優香ちゃんと、五代さん!?

 

「ほら、にいちゃんもくらえ!」

「そうだ、星太郎も!」

 

 おい、おっさん。あんたまで水を掛けてくるな! 後何処から取り出した、その大きな水鉄砲は?

 あ、いや、途中で水着を買った時にそう言えば大きな包みを持っていたな?

 

「うわ、こら、お前ら!」

「ちょっと、二人ともやめなさいって」

 

 ほら、お母さんも止めているぞ。今すぐ武器を捨てて止めるんだ。

 うわ、やめやしないぞ、こいつら!

 

 逃げる俺に向かい二人が調子に乗って水鉄砲を撃ってくる。

 くそ、びしょ濡れだぞ。

 こいつら、こうなったら、食らえ!

 

「キック! キック! キック!」

 

 改造人間パワーで蹴っ飛ばす水の力を食らうがいい。

 ちょっとした波飛沫となった水が、プールの中から水鉄砲を撃ってくる無法者二人を襲う。

 

「きゃー!」

「うわー!」

 

 俺が蹴っ飛ばした水の流れに飲まれ、優香ちゃんと五代さんは楽しそうな歓声を残しプールの中に消えて行く。

 よし、悪は去った。第三部完。

 と、そんなこんなで少々はしゃぎ過ぎたか。隣を通る集団が不機嫌そうに俺を見る。

 

「あ、すいま……」

「ジャマダ」

 

 余りにも日常だったためか、油断しすぎていた。

 通り過ぎる二人組の一人が腕で俺を払う。無論並の人間に払われた程度で俺をつき飛ばせる筈など無いが、あまりにも予想外に強い力で俺の身体がプールサイドから宙に浮く。

 瞬時に精神が日常から切り替わる。

 

「貴様ら!?」

 

 変身前でもある程度人外の動きは出来る。

 どこかの子供が掴んでいたビーチ板を足場に、軽く足を添えると子供に衝撃が行かない微妙な力加減でプールサイドにジャンプで戻る。

 目の前の曲芸じみた動きに何が起きたのか分からない子供が目を丸くしているが、申し訳ないがそちらにかまう暇はない。

 

 なにせ今の力、こいつら人間じゃない。

 

 一方、ちょっとした曲芸を見せた俺の事など視界に入らなかったように、連中は目標となる人物を見つける。

 視線の先にいたのは……水面から顔を出した優香ちゃんだと?

 入れ墨はないが、こいつらもしかして!?

 

「ミツケタ!」

「えっ!?」

 

 連中の動きは速かった。

 二人組が駆けだすと同時にその姿が変わる。肌が赤銅色に染まり、腕と脇の間に被膜が出現する。口は耳元まで裂け、牙が生えそろい耳も巨大化し大きく尖る。

 もう片方は背中からマントのような翼が生え、全身に黒い羽毛が生えそろいその身を包んでいく。

 コウモリと鳥のグロンギと言ったところか!?

 

 連中の動きは素早かった。

 

 プールから顔を出した瞬間の五代さんでは反応などできない速度で優香ちゃんを掴むと、一気に空に飛び立つ。

 二体のグロンギは子供の小さな体を掴むと、近場に立つ高層マンションに向かい一直線に飛んでいく。

 

「優香!」

 

 唐突な事態に何もできなかった岡見さんが、悲鳴を上げて娘の名を叫ぶ。

 

「くそっ、サイクロンヘル!」

 

 俺の叫びに駐車場で控えていたサイクロンヘルがフェンスを突き破りやってくる。すでに偽装は解除しており、こいつも状況を分かっていたのだろう。

 やってきた相棒に飛び乗ると、グロンギを追う為に再度フェンスを飛び越える。

 

 そうか、グロンギ……。潰す。

 

 俺の姿が変わる。

 膨れ上がったエネルギーが全身を巡り、ナノマシンを活性化させる。

 闇のように膨れ上がった強化戦闘服が俺の身を縛り上げ、赤い閃光の軌跡を残し、ヘルメットが俺の頭部へとすり替わる。

 血の色をしたマフラーをたなびかせ、町を疾走しながら空を飛ぶグロンギどもを追いかける。

 

 幸い、優香ちゃんのバイタルに変化はない。

 グロンギは俺たち現行人類には理解しがたい思考で動くが、反面で奴らの行動はゲームであり、奴らなりに理にかなった行動をしている。

 ゲームである以上は有効な行動を行わなければ意味はない。

 

 恐らくは今向かっている高層マンションがゴールなのだ。

 

 その前に優香ちゃんを奪還しなければならない。

 

「星太郎!」

 

 不意に俺の隣に赤い鎧の戦士が並ぶ。

 黒と金色の金属で作られた巨大なクワガタ、ゴウラムに捕まり空を飛ぶクウガであった。

 並走するクウガを横目に見て、俺は出来る限り普段の調子でこう話す。

 

「丁度いい」

 

 クロックブースト。

 ベルトに蓄えたエネルギーを開放すると同時に、俺以外の全ての時間が停止する。

 何もかもが凍った世界。それは宙に浮かぶグロンギたちも例外ではない。

 俺はサイクロンヘルから跳躍すると、宙を舞う鳥のグロンギの背中に飛び乗る。そして、隣を飛ぶ蝙蝠のグロンギの足に捕まれた優香ちゃんをそっと取り返す。

 

 予想通り、この場でうっかり殺さないようある程度力を抜いて運んでいた。

 俺がグロンギの足を軽く払うと、あっさりと彼女の身体は俺の腕の中に納まる。

 

「すまない、油断をしていた」

 

 聞こえないだろう少女に謝罪の言葉を入れる。

 そして、彼女の腕に化け物に捕まれた痣が残っている事を確認した俺は、腹立たしさを込めて二体のグロンギを蹴り飛ばす。

 二体のグロンギがそれぞれ脇のビルの壁にぶつかった事を確認し、サイクロンヘルの元に戻る。

 

 そして時は動き出す。

 

「五代さん、優香ちゃんを預かってくれ」

 

 俺は並走するゴウラムとクウガに、優香ちゃんを手渡す。

 グロンギに吊り下げられていたと思ったら、唐突に今度は黒い怪物だ。彼女は驚き目を白黒させている。

 

「え、おにいちゃんにおっちゃん!? な、何その姿!? 仮面ライダー!?」

「星太郎ってそんな事も出来たの?」

 

 クウガには見えていたか。

 物質を原子レベルで操るクウガなら、タキオン粒子の逆行現象が観測可能でも不思議は無いか。

 俺はクウガの能力の高さに内心で驚きつつも、サイクロンヘルを静かに停止させる。

 

 町ゆく人々が驚き、悲鳴を上げ一斉に逃げていく。

 車が急ブレーキかけ、中から乗っていた人々が逃げて行く。

 

 そんな中、先ほど蹴り飛ばしたグロンギどもが身を起こし、こちらを睨みつけてくる。

 連中は何が起きたのかは分かっていないだろう。だが、攫った獲物を奪還された事だけは理解しているようだ。

 憎しみと怒りの怒声を上げてこちらを睨みつけてくる。

 

「キサマ!」

「ソイツヲカエセ!」

 

 何か鳴いているな。

 まったく、不愉快な鳴き声もあったものだ。

 俺は連中の叫びなど無視をして、蝙蝠のグロンギに向かい一気に間合いを詰める。

 

「ナッ!?」

「黙れ」

 

 弾丸すら通じないグロンギの表皮や筋肉であったが、赤いエネルギーを込めた拳は容易にグロンギの腹をぶち抜く。

 やはり、エネルギーの収束効率と威力が上がっている。

 

 俺はグロンギから腕を抜き、奴を蹴り飛ばす。

 もっとも、流石はグロンギだ。腹に風穴が開いてもまだ戦う気のようだ。

 腹を抑えながらも、ファイティングポーズを崩さない。

 

「オ、オノレ! コロス!」

「それはこちらの台詞だ。この地にいるグロンギは、総て潰す」

 

 答えてやる義理など無いが、あえて宣戦布告の言葉を叩きつける。

 

 その言葉に激高したのか、二体のグロンギが殴りかかってきた。

 蝙蝠のグロンギは皮膜を刃に変え斬りかかり、鳥のグロンギは口から何やら生体弾丸を吐き出してくる。

 

 遠巻きに見ている野次馬や建物の中に隠れている人もそれなりにいる。こうなると流れ弾が怖いな。

 俺はあえて弾丸を身で受けながら前に進む。強化戦闘服の一部が抉れ多少のダメージは入るが、この程度は何ともない。

 

 回避行動を捨てた俺に蝙蝠のグロンギが斬りかかってくる。あまりにも無造作だ、回避できないとでも思ったか?

 俺は掌にエネルギーを集中させ刃を受け止める。そのまま刃となった蝙蝠の被膜を無造作に引き裂いた。

 

「ギャアアアアアア!」

 

 見苦しい。耳障りだ。

 俺は目の前で苦しむグロンギの顔面を鷲掴みにすると、ワンハンドで振り回し鳥のグロンギに向かって投げ飛ばす。

 味方が飛んでくるとは思わなかったのか、衝突した二体のグロンギが倒れた。

 

 先に立ち上がったのは鳥のグロンギだ。硬質化させた羽根で身をくるみ、かぎ爪を振り上げ襲い掛かってくる。

 

「させない!」

 

 その動きを阻止したのはクウガであった。

 ゴウラムに優香ちゃんを預けたクウガは間合いを詰めると鳥のグロンギに拳を振るう。

 俺に襲い掛かろうとしていた鳥のグロンギは回避する事が出来ず、上半身をのけ反らせる。

 

「雑事は俺がやると言った。こいつらは俺の獲物だ。あんたは後ろで見ていろ」

「見ていられるはずないだろ!」

 

 だが、グロンギとて並の生物ではない。のけ反った姿勢のまま、高質化した背中の羽根を動かし横に振るう。

 その攻撃は回避できたが、羽根が振れた標識板のポールが斜めに斬れ、倒れてくる。

 クウガはそれを掴むと、彼の姿が変化を始める。

 複眼と体色が青に変化し、肩を守っていた鎧が吸い込まれ消えて行く。手に持ったポールは古代文字の装飾が施された金色と青の棍、ドラゴンロッドへと姿を変えた。

 

 速度と機動力に特化した姿へと変わったクウガは、ドラゴンロッドを巧みに操り刃となった羽毛を捌くと同時に本体に打撃を蓄積させていく。

 その攻防一体の体捌きに、グロンギの動きが徐々に鈍り、攻撃の回数が減っていく。

 

 そう、見事としか言いようのない戦いを見せていたクウガは、五代さんは俺に向かいこう言った。

 

「泣きながら! 拳を振るっている奴を! 見ているだけなんていられるか!」

「何を言っている?」

「戦い方が、全然違う!」

 

 本当に意味が分からない。仮面に覆われた俺を見て、何を泣いているなどと言うのだ?

 俺は爪を振るう蝙蝠のグロンギに、カウンターなどとは到底呼べない力任せの拳を上から叩き込み攻撃ごと叩き潰す。地面に大の地で倒れたグロンギの残った反対の皮膜も足にエネルギーを籠め焼き払う。

 グロンギが再び悲鳴を上げるが、知った事ではない。

 

 そう悪党らしく、気に食わない奴を力づくで叩き潰すのは俺のライフワークだ。

 それを見て何を言うのだ?

 

「余裕が無いんだよ! そんな乱暴な戦い方はしていなかっただろう!」

 

 いつの間にか紫の姿、タイタンフォームに変わったクウガがグロンギの翼を斬り飛ばしながら俺にこう叫んだ。

 

「何があったなんか知らない! でも、よく見るんだ! 優香ちゃんは無事だ! 星太郎、君が助けたんだ!」

 

 五代さんの言葉を切っ掛けに、視界の隅に優香ちゃんと、プールから駆けつけてきたのだろう岡見さんの姿が映る。

 二人の目は怯えていた。戦う姿に怯えていた。

 当たり前だ。ショッカーの悪魔を見て怯えぬ人間はいない。恐れられ、憎まれる。それが正しいショッカーの在り方だ。

 だが、そんな事よりも、俺は二人の目に驚く。

 

 そう、二人は目をそらしていない。

 俺と五代さんの戦いを、その両目でしっかりと見ていた。

 

 少しだけ息を吸い、深く吐く。

 大丈夫だ、身に沁みついている。

 イメージはいつも頭の中にある。

 理想とする、あの人の戦い方は覚えている。

 

 起き上がってきたグロンギが再び爪を振るう。俺はその腕をかいくぐり、拳に赤く輝くエネルギーを籠めた。

 気合の叫びと共に、拳を繰り出す。

 

「ライダーパンチ!」

 

 グロンギが突っ込んで来た勢いを、そのまま威力に変える。

 カウンターとして入った一撃に、グロンギは大きく吹き飛び、再び鳥のグロンギを巻き込み街路樹に激突した。

 

「落ち着いた?」

「何の事だ? 下がっていろ、仕留める!」

「そういうわけにはいかないさ、中途半端に人に背負わせはしないさ」

「物好きな」

 

 クウガの姿が赤いマイティフォームへと変わる。

 腰を落とし、腕を広げる独特の姿勢を取る。

 

 腰を落とし、足に力を込める。

 天に向かい跳躍し狙いを二体のグロンギに定める。

 

「はああああっ!」

「ライダーキック!」

 

 俺とクウガの必殺のキックが立ち上がろうとした二体のグロンギを同時に貫く。

 封印エネルギーと、俺の放つエナジーフィールドがグロンギたちの肉体を駆け巡り、ついには連中の力の源である魔石に到達する。

 グロンギたちが同時に爆発する中、俺とクウガは同時に地面に足をつき、連中の消滅を確認して変身を解いた。

 

 ん? やべ、水着のままだ。

 まぁ、プールはすぐそこだから良いだろう。服取りに戻れば。

 

「五代さん、星太郎君」

「おっちゃん、にいちゃん、すげー!」

 

 岡見さんと優香ちゃんが笑顔でやってくる。

 優香ちゃんはともかく岡見さんが変身の事を聞かないとは、五代さんがクウガだって知っていたのかな?

 娘が攫われたのだから仕方ないが、この人も水着にパーカーを羽織ったまま来たのか。

 

「ごめんな、怖い思いさせちまった」

「ううん、また五代さんに助けてもらって……」

 

 そんな二人に手を合わせぺこぺこと謝る五代さんに、岡見さんは娘を助けてもらった事の感謝の言葉を伝える。

 どうやら五代さんと岡見さんは過去に何かあったようだ。もっともこれは五代さんに限らず、仮面ライダーをやっている人間にはそういう縁が世界中にあるのだ。

 

 そんな彼らの会話を横で聞いていた俺だったが、サイクロンヘルが上げて来た報告でそれどころではなくなった。

 自分でも顔色が青くなっていくのが分かる。だが、急いで対処しないと世界が滅びる。

 

「にいちゃん? どうかしたの?」

 

 俺の顔色の変化に最初に気が付いたのは優香ちゃんであった。

 俺は声を掛けられたことを切っ掛けに、小さく深呼吸をする。

 

「悪い、行かなければならない事が出来た。岡見さんと優香ちゃんは服を取ったら安全な所……いや、急いで避難の準備をしてください。多分警察もすぐに動き始めます」

「え? ちょっと? どういう事?」

 

 俺の言葉に全員が困惑する中、五代さんが聞いて来る。

 この人に伝えて良いかどうか一瞬だけ悩んだが、問答をする時間も惜しい。そして黙っていってもどうせ気が付いたら来てしまうので話してしまうべきだと思い直した。

 

「警察がグロンギの本拠地と思われる場所を見つけ出し踏み込みましたが、連中の動きはそれより早かった」

「グロンギの本拠地? あいつらそんなものを」

「いいから! 優香ちゃんを襲った連中と同じように、グロンギたちが人を襲っているようです。多分これは儀式だ……」

 

 サイクロンヘルから送られてきたマップに記された五か所のポイント。そしてその中央にあるのは俺たちが調べていた灯溶山だ。

 この状況を俺は知っている。グロンギどもが何をしようとしているか、警察に協力している小野寺さんも気が付いている事だろう。士も……気がついてはいるが動けないかもしれない。少し前にかなり無理をしていたしな。

 

「ほとんどは警戒を強めていた警察により阻止されています。でも、一つだけ成功してしまった」

 

 拳を握り締める。グロンギの行動は唐突であり初動を防ぐことは難しい。

 だが、それでも犠牲者が出てしまったという事実に心が乱される。

 急がなければ、手遅れになる。

 

「おそらくもうグロンギは来ません。連中に弾は無いし、何よりも目的は達成している。でも、この地は危険になりますので急いで避難してください。それじゃ、俺は行きます。グロンギの計画を止めに行きます。五代さんは二人を安全な場所に……」

「いや、俺も行く。半端な事は出来ないからな」

 

 五代さんの目は、決意に満ちていた。

 傷だらけになりながらもたった一人で戦い続けた仮面ライダークウガ。

 分かっている。泣く人がいる限り、この人は自らがどれだけ傷を負おうとも立ち向かう。

 

 伝説の仮面ライダークウガを戦場に送る事に、俺は内心で歯噛みする。

 だけど、きっと誰にも止められない。それが五代雄介という人であった。

 




ミカ「なんか夏休みの妹的立場を取られている気がする」
凜 「いや、お前は妹を名乗る不審者でしょ。まったく、どいつもこいつもクソ兄貴のどこが良いんだ?」

アインロールド(コードネーム)/誠太郎(本名)/星太郎(偽名)
主人公の名前が多すぎてややこしいなり……(自業自得

永禄は安土桃山時代です!
五代さんの推測は作者が適当をぶっこいています。なので、真に受けないでください。



解説
ゴウラム(出典:仮面ライダークウガ)
 リント族が生み出したクウガのサポートマシン、黒と金の金属で出来たクワガタロボ。
 霊石の力によりその姿を変え古代では馬の鎧に、現代ではクウガのバイクと合体し戦いをサポートするほか、飛行能力を持ちクウガを吊り下げて運ぶ事も出来る。
 人が見ていない所でこっそり動いたり姿勢を変えたりするお茶目さん。

NEXT KAMEN RIDER?

  • 俺、参上!(電王)
  • 僕に釣られてみる?(電王)
  • 俺の強さにお前が泣いた(電王)
  • 答えは聞いてない(電王)
  • ちょっとみんな大人しくしなよ!(電王)
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