ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
永禄■年 信州緒形村
「殿、お客様が」
「来たか。茶室に通せ」
この地域を収める若き豪族、岡見忠吉の元にその人物がやってきたのはまだ春先の事だ。
いや、この表現は少々公平さに欠ける。岡見忠吉がその人物を、無理を言って呼び寄せたのだ。
正しい意味で、その人物は岡見忠吉の客人であった。
茶室に通されたその人物は、何とも落ち着かない様子だ。
無理もない。
普段は人里離れた山奥で鍛冶屋を営む男だ。それなりに金を掛けた茶室などとは、知識としては知っていても縁がない。京の流行りを真似た茶室を物珍しそうにキョロキョロと見渡している。
その姿を茶室の外から『変わらないな』などと思いつつ、忠吉は配下の者を下がらせ一人茶室の入り口をくぐった。
「忠吉! 立派になったな!」
その男は旧知の岡見忠吉の顔を見ると破顔する。
一方の忠吉も同じように笑顔を浮かべつつ、旧知の恩人の名前を口にした。
「お久しぶりです、響鬼さん。猛士さんはご一緒では無いのですか?」
「今回は村で留守番さ。ちょっとごたごたがあってな」
「それは残念だ。久々に会えるかと思っていたんですか」
家督を継ぐより前の話だ。当時は兄が存命だった事も有り、京の都に留学をしていた。また、帰りは直帰せず見聞を広めるために数か国をめぐっていた。その道中、深い山林の道で熊よりも巨大な妖、魔化魍と出会ったのだ。
偶々すれ違った行商人は何が起きたのかを理解する暇すら与えられず首を刎ねられた。忠吉が腰から抜いた刀は、枯れた小枝のようにあっさりと折れ曲がりへし折れた。誰もが絶望するだろう状況で現れたのが、魔化魍の調伏を生業とする男、響鬼だった。
その後、しばらく響鬼の下で魔化魍や術を学んだものの、兄の急死もあり家を継ぐため国に帰った。
しばらくは近況報告を兼ねた談笑を行っていたが、やがて忠吉は真剣な面持ちで響鬼に本題を切り出す。
「響鬼さん、貴方に見ていただきたいものがあります」
僅かな間とはいえ弟子であった若武者の話を朗らかに聞いていた響鬼であったが、その言葉を受け真剣な面持ちで彼の話を聞いた。
「長雨の後の事でした。お山の一角が崩れたと領民から報告があったのは」
それ自体は別に珍しい事ではない。村からはだいぶ離れているとはいえ、薪拾いなどで立ち入る人間もいる場所だ。
若い衆と共に危険が無いかを調べに行くのも、お役目の一環であった。
普段ならそこで危険な範囲を見定め、しばらく立ち入らないよう触れを出して終わる筈であった。
ただ、普段と違ったのは、崩れた場所には妙なものが埋まっていた点であった。
「こちらを」
響鬼を案内した地滑りの現場、その少し離れた場所に転がっていたのは腕であった。肘から断ち切られたそれの持ち主は、おそらくは見上げるほどの大男であり、筋骨隆々の力自慢であっただろう。
もっともそれは人ではない。赤銅色の儀とでは無い肌に鋭い爪。そもそも、人の腕が地中深くから出てくること自体がおかしい。
何らかの化け物の腕、しかも黒い靄を常に発し続けるそれが、忠吉が作った簡易結界の中央に転がっていた。
「最初は作り物か何かと思ったのですが、これに近づいた者が途端もがき苦しみまして……」
幸い響鬼から習った清めの技と京で学んだ医術で大事には至らなかったが、これは尋常な物ではない。
慌てて結界を張り隔離したものの、坊主を呼び出し聞いてみたものの、これが何かはさっぱりとわからなかった。
埋め直すか燃やしてしまおうという意見もあったが、毒を発している尋常ならぬ物である以上、下手な事をして毒が残ってしまっても困る。
そこで忠吉は知己であり、魔化魍を祓う事を生業とする響鬼を招いたのだ。
忠吉からの一通りの説明を来た響鬼は、結界越しに謎の腕を見る。
なるほど、この場所からでも闇としか言いようのない靄があの腕からは立ち上っており、この世のものとは思えないありさまだ。
「なるほどな……」
「何かわかりましたか、響鬼さん?」
期待を込めた忠吉の声に、響鬼はあっけらかんとこう答える。
「いや、わからん」
「びびぎぃざぁん」
そう言えばこの人は常時こんな飄々とした感じであった。
情けない声で抗議の声を上げる忠吉であったが、響鬼としても別に冗談で言ったわけではない。
自分の知識の中にあるそれとの相違に首をかしげながら、説明を続ける。
「いや、まったくわからないってわけじゃないんだ。だが、俺の知っている物と違うんで、判断に困っているんだよ」
「え?」
「古い、古い時代の悪鬼の腕だとは思うんだ……。たまに埋まっていた死骸が見つかりはするんだ。ただ……あんな黒い靄は出ないんだよなぁ」
古来よりこの地を襲う怪異は何も魔化魍に限った話ではない。天から降ってきた怪物や、世界を超えて来た幽鬼、時を遡ってきた化け物など例を上げればきりがない。
古代の悪鬼もその一つだ。生きた悪鬼が見つかった事は無いが、人外の骨や、たまに肉が残った悪鬼の死体が見つかる事がある。あれもその一つだろうと響鬼はあたりを付けていた。
だが、彼もってしても毒を垂れ流し続ける悪鬼の腕と言う物は聞いた事が無い。彼が断言を避けたのも、仕方がない事であった。
「まっ、わからないなりに対処は何とかできそうだな」
響鬼はそう言うと、謎の腕と共に土砂崩れで地表に出たというそれを見る。
それは壊れかけた壁画の一部と、石でできた棺桶の残骸であった。
「多分だが、この赤目の武者が弧の腕の持主の悪鬼を討伐したんだろう。だけど、この毒を放つ腕だけが何故か残ってしまい、この石の棺に封じ込めた」
赤い目の武者が、狼の頭の鬼を討伐している姿の描かれた壁画をポンポンと叩きながら、今度は石の棺を手に取る。
医師製なので重いかと思ったが、案外と軽い。何やら見覚えの無い文様が所狭しと掘られているが、これが封印の文字なのだろう。
多少割れているが、これなら……。
「接げば直せそうだ。これに腕を封じちまえば、当面は大丈夫だろう」
「響鬼さんでどうにかできませんか?」
「無理だな。ちょっと気を飛ばしてみたが、力の質が違い過ぎる。百年ぐらい置いて毒を出し切った後ならともかく、今無理やりぶっ壊せば毒が広がりかねない。完全に封じるんじゃなくて徐々に毒を抜いていくよう、ちょいと工夫してみるさ」
結局の所、今できる事は対処療法だけだ。破壊は子孫に託すしかない。
そう、少しだけ悔しそうに答える響鬼であった。
■年前 長野県緒形市
「馬鹿者! 誰の許可を取ってここに入った」
土地の名士である岡見家の蔵で、男の怒声と誰かの頬を叩く音が響く。
もっとも、男も憎くて叩いたわけではない。無断で鍵を持ち出し蔵に入り込んでいた息子が、決して触れてはいけない石棺を開けていたのだ。
その中身の危険性を知るゆえの焦燥であり、息子を愛するゆえの衝動的な行動であった。
「何事だ?」
「と、父さん」
「綾仁が頬を晴らしているぞ? 一体どうしたんだ?」
普段は声を荒げない男の声に驚いた家人が呼んで来たのであろう。男の父である岡見家の現当主が蔵の入り口にいつの間にか立っていた。
基本的に父は孫である綾仁に甘い。この蔵に入った事も許してしまうだろう。
とはいえ、今回ばかりは息子の命を守る為にも引き下がれない。父親は気言葉を選びながら事情を話す。
「すいません。ですが綾仁が封じの棺を開けようと……」
「なるほどな」
息子の言葉に、祖父は小さくため息をつく。
予想はしていた。幼い子供が大人が絶対近づくなと言っている蔵に入る事は珍しくない。自分や息子はやらなかったが、入り込んだ子供は珍しくない。
もっとも、幾重にも鍵をかけ、子供には届かない仕掛けをしてあったこの場所まで入り込んだのは驚きだ。綾仁は優秀な子だとは思っていたが、どうやら相当観察眼があり頭が回るらしい。
祖父はもう一度溜息をつくと、踵を解す。
「綾仁、ついて来なさい」
「父さん!?」
「もう綾仁も来月で10歳だ。お役目を話しても良い頃だろう。達樹、お前は蔵を再封印しておきなさい」
確かに自分がお役目を当時の当主から聞いたのも同じ頃だ。
戦国時代に発掘された人を狂わせ死に至らしめる毒を垂れ流す闇の腕、それを封じ破壊する手段を見つける事が岡見家の悲願であり、お役目であった。
猛士や秘密諜報機関などと言った組織と協力して破壊手段を求めているものの、逆にこの腕は一種の呪物であり下手な手段で破壊すると呪いが広まってしまう事が判明しただけで根本的な解決策は見つかっていない。
いつか来る日が来るのはわかっていた。一見すれば人を守る正しいお役目だ。だが、その裏に人の世の悪意と陰謀が渦巻く闇の世界が待っている。
自身の代でも腕の破壊が出来なかった事を悔やみ、父親と祖父は憂鬱な気分となった。
彼らは正常だ。
悪を疎み、正義を尊ぶ善人である。地方の名士として活動し、猛士や秘密諜報機関に支援をする傍ら、ご先祖様が見つけてしまった危険物を処理する事を使命と考え手を尽くす人々だ。
当然息子、あるいは孫も同じような人間になると、そう信じていた。
だから、気が付かなかった。
父に叩かれ泣きはらした息子の、孫の目をこする手の甲の奥の目が鋭く熱く、封印の石棺に注がれている事を。
長きにわたる正しきお役目の歯車が、致命的に狂い始めた。
■年前 長野県山中
「ははははははははははは! 死んだ! 死んだよ!」
崖から転落し、ひしゃげた車。
僅かに燃える油の匂いを嗅ぎながら、少年は天を仰ぎ哄笑する。
煩わしかった祖父は数年前に病死をした。残った古臭いお役目に固執する当主の父も、それを支える母も邪魔であった。
だが、死んだ。
車の落下事故に見せかけ殺した。きっちりと殺した。二人の亡骸は目を見開いたままだ。何が起きたのか、どうして自分たちが死んだのか分かっていないだろう。
それほど一瞬の出来事であり、完璧な計画だ。
なんせ自分も同じ車に同乗したのだ。
警察も疑わないだろう。なにせこちらからしてみれば、無関係な連中の暴走に巻き込まれた事故なのだ。
態々無関係なアホどもの動きをつぶさに観察し、やらかす時間に誘導したのだ。
ああ、これで、これで家は自分のものだ。
あの、闇の腕は自分のものだ。
「はははははははははははははははは!」
■年前 東京都新宿区
雑居ビルの屋上に腰を掛ける小柄な老人は、眼下の光景に小さくため息をつく。
都市の片隅で、その戦いは終わっていた。
ゲゲルに挑んだグロンギの男は、リントの戦士の必殺の一撃を受け魔石に致命的なエネルギーを流し込まれ爆散して果てる。
別に珍しい光景ではない。
「ロラダロジャリントボソガセダバ(またもやリントに殺されたか)」
王は老人が目覚めるよりはるか前にクウガに討たれたと聞く。その時共に目覚めた200人のグロンギも滅んだ。
遠方に封じられたために封印が解けていないグロンギもいるが、その数は決して多くはないだろう。
「ジョボゾロゾバギンドパパンビンゾゾボソギダザベゼゴパダダバ。バガベバギ(女子供を十人ほど殺しただけで終わったか。情けない)」
逆に地に満ちたリントはその力を増している。
古代では概念すら持っていなかった殺す力を手にし、戦うための組織を整え、さらには仮面ライダーなる一騎当千の強者までいる始末だ。
いや、伝え聞く都市を一瞬で消し飛ばす兵器などを考えれば、肉体こそ脆弱なままだが、殺す意思はグロンギを超えていると言っていいのかもしれない。
「ロザジャグロンギボセラゼバボバ(もはやグロンギはこれまでなのか)」
王も居なければ、空位のままの王に届きうる偉大なムセギジャジャも生まれない。
残ったのはゲゲルを達成も出来ず、リントに討たれる弱兵ばかりだ。
自分たちはただ討たれるだけの存在に成り下がってしまったというのか?
ラ・バルバ・デが復活させたゴ・ライオ・ダ以降はめぼしい者は復活していない。
いや、そのゴ・ライオ・ダとて、油断と慢心の末にクウガではなくただのリントに殺されるなどと言った無様な最期を遂げた。
元はグロンギの技師であり、またラ集団の指導役を務めた事もある老人は若人たちが技を競い合った、かつての栄光のゲゲルを思い描き悲しみに暮れる。
もっとも、グロンギという種族の行く末を悲しみはせよ、敗北したグロンギには興味など無い。
老人はこの場を立ち去ろうとした、その時であった。
「あー、やっと見つけた。おじいちゃん、グロンギだろう?」
老人の背後、雑居ビルの入り口が音を立てて開き、一人の青年が姿を現す。
老人は軽く振り向き、若者の顔を見る。
整った顔立ちのリントだ。背はこの時代のリントとしてもかなり高く、細身ではあるが体を鍛えた跡が見て取れる。
硬化だろう装束に身を包んだリントは、細い目をさらに細めようやくグロンギと巡り合えたことに喜ぶ。
「何の用だ、リントの若者よ」
周囲の敬拝を探ってみたが、あの青年以外が潜んでいる様子はない。
そう考えた老人が次に浮かんだのは、好奇心だ。
リントの目を盗み姿を消すのは容易く、見つかったからと言って殺す必要は無い。
それよりも、戦いに来た様子の無いリントが何の要件だ?
目的を聞くのもいい暇つぶしか気分転換になるだろう。
「うん、実はグロンギの事を、ゲゲルの事を教えてもらいたいと思って」
情報収集か何かか?
リントが戦うためにグロンギの情報を得ようとしているのか?
そう老人は考えたが、さらに続いた青年の言葉は老人にとってもあまりにも予想外の言葉であった。
「俺はさ、現代に新たなグロンギ族を作りたいと思っているんだ。だからさ、グロンギの事を教えてもらいたいと思って探していたのさ」
「はぁ?」
あまりにも突拍子の無い発言に、流石の老人も二の句が続かない。
にこやかな表情を崩さず手を差し伸べるリントの若者を見て、老人はリントの若者に対して強烈な好奇心を抱く。
「言っちゃっていいかな? うん、実はさ……」
そして、若者の口からグロンギの老人すら驚く計画が語られる事となる。
邪悪な共犯関係が成立したのは、この瞬間であった。
アンケート中間発表
現在電王が50%を超える得票数でリード、それを追う電王。
かなり引き離されて電王と電王が3位争い。大きく引き離された電王が5位。
このままでは電王が独走をするか? それとも電王が巻き返すのか!?
独断に満ちた簡単解説コーナー
響鬼(出典:劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼)
映画の主人公である、戦国時代の響鬼。現代のヒビキさんのそっくりさん。
飄々とした性格は現代のヒビキと同じだが、弟子を失ったことを気にするなどナイーブな一面を持つ。
鬼を引退し山奥で隠遁していたが……。
ラ・バルバ・デ(出典:仮面ライダークウガ)
ゲゲルを管理するラ集団のグロンギ、薔薇の能力を持つ。
冷酷なゲームマスターであり、観察眼に優れる。
「ここではリントの言葉で話せ」といネットミームにもなった有名なセリフは彼女の発言。
ゴ・ライオ・ダ(出典:小説 仮面ライダークウガ)
小説版に出てくるグロンギ。
ネタバレになるので活躍は伏せるが、炎の力を持つ強力なライオンのグロンギ。
……マグマドーパントかな?(マテ
NEXT KAMEN RIDER?
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俺、参上!(電王)
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僕に釣られてみる?(電王)
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俺の強さにお前が泣いた(電王)
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答えは聞いてない(電王)
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ちょっとみんな大人しくしなよ!(電王)