ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「一条さん、これは?」
捜査本部に呼ばれたユウスケが目にしたのは、紙に出力された一枚の地図だ。
その地図には赤い点と青い点、そして黄色い点がところどころに打たれており、点と線でつながれていた。
首をかしげるユウスケに対し、多少の疲れこそ見えるがまだまだ元気な一条は別の資料を見せながら応える。
「今回現れた連中、新造グロンギだった山道、森中、町場の3人の追跡データさ。いくら田舎でも、昨今ならそれなりに防犯カメラもある」
峠の道を狩場にした上で慎重に動いていた形跡のある山道はともかく、キャンプ場に現れた森中と県警本部前で暴れた町場に関しては街中を堂々と移動しており、かなりの精度で移動経路を割り出す事が出来た。
「すごいですね」
ライダーとしてはベテランであり事件調査もこなすユウスケだが、その捜査方法は古典的なアナログであり足を使ったものだ。
異世界の旅人という根無し草、しかも相方がちょっと謎のルートから情報を持ってくるために必要に迫られて身に着けた堅実な捜査スキルなのだが、その分どうしても最新の捜査技術に関しては疎くなる。
素直に感心するユウスケに遠い旅の空にいるだろう、実際は数キロ先にいる友人を思い出しつつ説明を続けた。
「まったくだ。それで、彼らの移動ルートで重なる点を追っていく」
指でルートを追っていく。
カメラの多い市街地は点が多く、郊外に行くにつれ点が減り線が伸びていく。
だが、別荘など観光地や保養地のあるエリアに入りまた点が増え、やがて3色の点は同じ地点を指し示す。
「ここで途切れていますね」
「ああ、この先にある建物に強制捜査をかける」
その屋敷はかつてこの地域を治めていた大名の子孫の屋敷であった。
一万石のギリギリの大名ではあったが、戦国時代より生き残り天下泰平の江戸時代を災禍無く過ごした名領主だった。廃藩置県が行われた明治時代以降も資産家一族として地域経済を支えていたという。
そんな家に不幸が起きたのは約10年前の話だ。当主が病死、その家族も交通事故で長男を除き全員亡くなるという痛ましい事故に見舞われた。
余程つらい経験だったのか、奇跡的に事故から生還した長男である岡見綾仁は家族との思い出もあっただろう家を改築、屋敷を洋風に立て替えたという。
「それって……」
「協力者と入れ替わり、どちらの可能性からも調査中だ」
岡見綾仁は崖から運転する車が落ちた事故ではあったが、奇跡的に軽傷であった。
だが、こうなるとこの軽症も相当怪しい。もっとも、当時の車はすでに廃棄されており調べる事は出来ない。
捜査員が当時の事故調査の記録や病院の診察結果を洗ってはいるが。結果がわかるのは先であろう。
「もっとも、状況が状況だ。悠長に調査を待ってはいられない」
殺人を娯楽としていた人間、それも複数がグロンギの力を得た。しかも従来のグロンギと違い、現代文明と現代の倫理観にも精通している。
警察署への襲撃とキャンプ場への襲撃は大きな被害が出る前にその場に居合わせた仮面ライダーが食い止めたが、事故に見せかけた峠の事件では数人の犠牲者が出ていた。
この第二のグロンギの出現は、警察としても到底見過ごす事の出来ない事態だ。
「本日、岡見邸に強制捜査をかける。ただ、連中は現代人だ……」
気遣う様に、一条はユウスケの顔を覗き込む。
グロンギという戦うしかない相手であっても心に深い傷を負い続けたこの世界のクウガの事を思い出す。
まして今度の相手はグロンギの力を持っていても人間だ。いまさらながらに果たしてクウガを戦わせて良いのか、一条は悩む。
そんな一条の気遣いを受け、ユウスケは微笑むとこう返す。
「俺の事なら気にしなくても大丈夫ですよ」
「小野寺君」
実は五代雄介の事をユウスケは知っていた。五代との面識は無いが、別の世界のクウガの顛末は聞いた事がある。
少なくとも士たちと出会い旅に出る前の自分などよりよほど立派な志を持った人間だ。
一条がきっと五代雄介の事を、今でも心に病んでいるだろう事もここ数日で何となくではあるが察した。
そんな彼らに尊敬の念と未熟だったころの悔恨を籠め、ユウスケは一条にこう話す。
「俺はね、最初この力を得た時、褒められたかったんですよ」
「褒められたかった?」
それは、目の前の正義感と優しさに溢れた青年には似つかわしくない、少しだけ俗な、でも誰もが思う感情の吐露であった。
「そそ。ある人にね。でも、色々あって思ったんです。この力は人の笑顔を守るために使うべきだって」
色々あった。その言葉をつぶやいた時のユウスケの顔に少しだけ影がよぎった事を、一条は見逃さない。
恐らくはきっと、五代にも負けない辛い経験があったのだろう。
だが、出会ったばかりの自分が聞くべき事では無いだろう。彼も話したくは無いのだろうと一条はあえて聞かず、彼の次の言葉を待つ。
「だから、俺は戦いますよ。それが元人間であっても、誰かの笑顔を奪うなら躊躇わない」
「そうか。頼む、力を貸してくれ」
「まいったなぁ。町場の奴のおかげで警察の動きが予想以上に早いや」
外と連絡を取っていた青年が老人の部屋にやってきたのは、日も落ちてからの事だ。
グロンギに改造を施した一人が、自身を逮捕した相手を恨みお礼参りの襲撃を行った。その結果、警察が本気になった……訳では無い。警察は最初から最後まで本気だ。
問題は、警察署の前で襲撃を行い、多くの記録と遺留品を残した。特に警察を起点に彼の行動を追跡できるようになった事が大きい。
「警察が動くか?」
「うん。明日には来るだろうね」
事件の発端であり、何も分からぬまま襲撃を受け多くの犠牲者を出す事となったグロンギは、県警にとってはトラウマであり宿敵と言ってもいい。
同僚や友人がグロンギの犠牲となった者も多く、警察の捜査は普段以上の熱意と速さで行われていた。
地元に根差した家の当主でなければ、警察の動きの速さに気が付かなかっただろう。それほどの異例の速さであった。
「もう少しゆっくりと研究をしたくはあったが、仕方あるまいて」
老人は小さくため息をつく。
グロンギの流儀を習得させなかった自身の落ち度だ。
そして、老人は現在のリントの力を見縊ってはいない。生身の性能こそ大きく劣るものの、技術で自分らと同等の力を身に着け始めているリントの能力だけは高く評価していた。
故に、ここの施設を守れないだろう事はすぐさま理解し、次の策をすぐさま導き出す。
「ここは今晩の間に放棄するとするかな。出来損ないを解き放てば時間稼ぎは出来よう」
「ゾンビを出すのか。完成させられなかったのはかわいそうだけど、仕方が無いか。新グロンギ族の礎になるなら彼らも本望だろうしね」
自分が呼び集めた者たちを切り捨てる老人の判断を、青年はあっさりと受け入れる。
どのみち、いくらでも補充が利く相手だ。人間社会で活動するための資本も既に別の場所に移している。住み慣れた土地ではあるが、ここを放棄する事に何ら躊躇いは無い。
だが、問題はそこではない。
「でも、闇の雫はどうしようか。源泉はまだ見つかって無いしなぁ……」
「それについては考えがある。完成した者を使い、ザギバスゲゲルを執り行おう」
「ザギバスゲゲル……? 王に捧げる聖なる儀式だよね」
「その通りじゃ。まぁ、王では無く源泉ではあるがの。以前調べたお主の一族に連なる血の末を捧げ、源泉を活性化させる」
青年の一族、岡見家は代々闇の腕を封じ、破壊する役割を担っていた。
一族は常日頃から闇に対抗するために清めの力を使っていたが、それでも闇の傍にいる事を余儀なくされた一族の血には闇の力がわずかながら流れている。
リントでありながら闇の力を宿す者を生贄に捧げれば、必ずや闇の力は活性するだろう
そして僅かでも活性すれば、技師でもある老人にとって源泉の発見は容易い事であった。
その日、県警は物々しい雰囲気に包まれていた。
元々地方の名士、東京の経済界は元より様々な方面に顔の利く家だ。
早すぎる強制捜査の決定には内部から反対意見や政治家からの圧力もあったが、県警本部長と知事が以前あった入れ替わり事件を例に押し切り、反対意見をねじ伏せた。
県警に配備された量産型G3の実に半分が強制捜査に投入され、残り半分となる隣県であった大事件に応援で狩りだされていたG3隊は急ぎ県に戻り、そのまま本部での待機を命じられる。
神経断裂弾を装備した狙撃部隊が屋敷を囲い、制服姿の警察官が近隣住民に避難を呼びかける中、捜査令状を持った県警の責任者が問題の屋敷前のインターホンを鳴らす。
「長野県警の警察官です。捜索差押許可状が出ています」
彼らの背後に控えた捜査員たちの中に、警視庁から派遣された一条、県警の刑事である夏目、そして民間協力者である小野寺ユウスケの姿も当然あった。
それぞれが真剣な面持ちで見つめる中、ふと夏目が隣のユウスケにこう問いかける。
「小野寺さん、だいぶ慣れた様子ですね」
「世界を旅する途中で警察官をやった事もあるので。G3を着た事も有りますよ」
緊張をほぐすための軽口であったが、予想外の返答であった。
異世界旅行もいろいろあるのだなと隣の会話を聞きながら思っていた一条だったが、屋敷よりの返答がない事に強行突入を行う事が決定され二人の雑談を止める。
「おしゃべりはそこまでだ。強行突入だ。夏目君、君はギリギリまで力を使うなよ」
「はい、わかっています」
プロトタイプ・アークル。クウガとなる為のアイテムのプロトタイプが、夏目の身体には宿っている。
それは五代や小野寺に勝るとも劣らないクウガの力を彼女に与えるが、セーフティの無い彼女のアークルは常に闇に傾く危険を孕んでいた。
かつての暴走はこの場にいない人物の尽力で止められたが、今度も同じ幸運が訪れるとは限らない。使わない事に越した事は無いのだ。
「突入!」
どうやら県警は量産型G3の武装で屋敷の入り口を破壊する事にしたようだ。
矢面に立ち武器を構えるG3であったが、屋敷の主も放棄するとはいえ、自分たちの拠点にすんなり警察を入れる気は無かった。
仕掛けられていた爆薬で、金属製の屋敷の門が吹き飛ぶ。
その程度でどうにかなるG3では無いが、それでも音と衝撃で一瞬ではあるが動きが止まった。
僅かに出来た隙に、門近くに隠されていた地下通路の入り口を通って、二体のグロンギがG3たちに襲い掛かる。
「なっ!?」
「うわあっ!?」
下位のグロンギなら単独で倒せるだけの力はある量産型G3ではあるが、それでも無敵の装甲を持つわけではない。
勢いよく飛び出してきたグロンギに押し倒され、殴打され苦戦を余儀なくされる。
そして、変化はそれだけでは無かった。
屋敷外周に隠されていた秘密の出入り口が一斉に開き、次々とグロンギたちが飛び出し警察隊に襲い掛かる。
咄嗟に量産型G3が対処したものや、狙撃班の狙撃が間に合ったケースもあったが、それはほんの一部だ。
100を超えるグロンギが一斉に飛び出し警察官を薙ぎ払う。
余りの数の暴力に、現場は混乱に包まれる。
そして、混乱をもたらす存在はそれだけでは無かった。
「み、見てください! 屋敷が!」
誰かが叫ぶ。
そう、強制捜査をする筈であった岡見邸の各所から、唐突に火の手が上がる。
いや、おそらくは事前に油や火薬を仕込んでいたのだろう。屋敷だけではなく庭やフェンスも勢いよく燃え上がり、爆音を響かせる。
飛び散った粘度の高い油を浴びた警察官が転げまわり、慌てて同僚が助け起こそうとするが、それを狙ったグロンギが襲い掛かかろうとする。
「させるか! 変身!」
だが、その警官たちは幸運であった。
民間協力者という事も有り後ろで控えていたユウスケの目に留まったのだ。
ユウスケは考えるより先に腰の両脇に手を当てアークルを呼び出すと、クウガの姿に変身をする。
そのまま超人的脚力で間合いを詰めると、襲い掛かってきたグロンギをパンチで弾き飛ばし警察官たちの前にたつ。
「怪我をした人は下がって! ここは俺が引き受けます!」
赤い瞳のクウガに促され、警察官は負傷した同僚に肩を貸し後ろに下がる。
クウガの力は絶大だ。
赤いマイティフォームのままであっても、グロンギたちを寄せ付けない。
だが、混乱を引き起こす物はそれだけではない。
警察車両に搭載されていた警察無線が音を立てる。本部から警察車両の全てに通達が来る。
「町にもグロンギが!? 複数体のグロンギが人を攫っている!?」
無線を受け取った警察官が叫びにしか聞こえない報告を上げる。
ちょうど同じ時間、長野県の各所に出現したグロンギが道行く人を攫うという事件が発生していた。
後の捜査でこの屋敷の主の遠縁の人間が狙われた事がわかるが、それはこの時点の彼らにはわからない事だ。
報告を聞いたクウガの動きが一瞬だけ止まる。
炸裂弾を装填した拳銃でグロンギを撃ちながら、一条が大きな声で叫ぶ。
「小野寺君! 今はこの場を切り抜ける事を考えるんだ! この数のグロンギが町に行ったら、それこそ大変な事になる! 今は、G3隊を信じるんだ」
「くっ!」
一条とて不本意な言葉だ。
だが、100を超えるグロンギの波に警察官は飲まれつつあり、さらに避難を促していたとはいえ町はすぐそこだ。まだ逃げていない人間はすぐそこにいる。
そしてこのグロンギは、殺人を遊戯として楽しんだ前歴のある人間たちのなれの果てだ。
ここで抑え込まなければ、惨劇は何処までも拡大する。
それが分からぬ小野寺ユウスケではない。
悔しそうに、苦しそうに舌打ちをするとグロンギの群れに立ち向かっていく。
何体のグロンギをクウガ一人で倒しただろうか。
正門付近は、彼の活躍で警官が態勢を立て直すだけの時間は作れた。
だが、それが限界だ。
小野寺ユウスケの力が低い訳では無い。だが、グロンギの数が多すぎるのだ。
最初の100体だけではない。その後もグロンギは次々に通路から出現を続けていた。
元々のスペックが人類とグロンギでは違う。
数の暴力の前には、クウガやG3、炸裂弾を装備した警察隊と言えどもじりじりと後退を余儀なくされている。
「一条さん、やっぱり私も!」
炸裂弾を撃ち尽くしたのだろう。
拳銃を投げ捨てながら、夏目が一条にそう伝えた。
長年使っていなかった体の奥底に眠るそれを呼び起こそうと集中を開始する。
「駄目だ!」
「でも、そんな事を言っている場合じゃありません!」
反射的に夏目を止めるが、確かに彼女の言う通りであった。
警察隊の被害も甚大だ。これ以上、戦える人間を遊ばせていられる余裕はない。
「くそっ! こんなんじゃ……」
五代にどう伝えれば良いのだ。
この人の悪意を……。
一条が、この国にはいないだろう人物を思い描き、悔しさを覚えたその時であった。
遥か彼方から、大気を揺るがす爆音が響く。
普通なら耳障りな音の筈なのに、その音に誰もが耳を傾ける。
それは一台のバイクであった。
巨大な純白のボディに、黒と黄金色のライン。
左右に大きく張り出しがあり、サイドカーのように人が乗れる形状となっている。
フロント部分はクワガタを思わせる巨大な鋏状の部品が付いている
その不可思議なバイクは一人の少年が操っており、その横のサイドに一人の男が乗っている。
そして、バイクの装甲の一部が音を立てて開く。
そこからさらに向かって打ち上げられたのは、無数のミサイルであった。
弧を描き飛び交うミサイルは正確にグロンギたちを打ち抜き、命だった物を撃ち砕いていく。
倒せたグロンギは一部であったが、それでも彼らは確かに救いの主であった。
一条の視線が男に吸い込まれる。
いつの間にか消え、一度再会して、また消えた男。
「ちょっ!? なんでミサイルなんて出るんだよ!? どうなっているんですか!?」
「いや、俺こんなの知らないよ。 サイクロンヘルの機能じゃないの!?」
「どうなっているんだよ、お前ら!?」
あの時代、あの場所で、あの戦いで間違いなく中心にいた男。
頼もしいけど、不安にさせる。誰もが目を離せなくなる男。
その男の名は……。
「何やっているんだ、五代!」
一条は喜びと悲しみがごちゃ混ぜになった感情のまま、喉が裂けんとばかりに名を叫ぶ。
そう、男の名こそ五代雄介、この世界の仮面ライダークウガであった。
実はずっと一条さんの近くには居た五代さん。
NEXT KAMEN RIDER?
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俺、参上!(電王)
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僕に釣られてみる?(電王)
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俺の強さにお前が泣いた(電王)
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答えは聞いてない(電王)
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ちょっとみんな大人しくしなよ!(電王)