ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
物陰でサイクロンヘルがドローンを使い取ってきた服に手早く着替えていると、表の道路で待機していたサイクロンヘルとゴウラムが何やら面を突き合わせている。
なにやらぷかぷか浮かぶゴウラムが頷くように上下したり、サイクロンヘルがぶるぶる震えてたりしていた。
俺と五代さんが服を着て傍によると、何やらゴウラムとサイクロンヘルが真横に並ぶ。
そして、じりじりと平行移動をして近づいていく。水上走行用のホバーもあるから出来るだろうけど器用だな、サイクロンヘル……。
あっ!
「が、合体した―!?」
「えええええっ!?」
きらきらと目を輝かせ頬を紅潮させる優香ちゃんの歓喜溢れる叫びが響きわたる。
そう、ぺかーという光と共に、二体の超マシンが合体したのだ。
トライゴウラムやビートゴウラムを着込んだサイクロンヘルと言ったところか。特徴的なクワガタの鋏を連想させる角に、外周を強化し覆う装甲パーツ。
なぜかサイドカー仕様に代わっており、二人で乗って行けって事なのか?
なんか周囲の車とか標識とかの一部が抉れているが、足りない分の質量は周囲から取ったのか? いや、五代さんの足が無かったから丁度良いけどさ。
サイクロンヘルはショッカーのマシンだから仕方が無いが、人様の所の子に悪事を吹きこまないで欲しい。窃盗ですよ、これ。
「えっと、良いのかな、これ?」
「本人たちが良いなら良いんでしょう。それじゃ、岡見さんと優香ちゃんは避難を急いでください。俺と五代さんは行きます、ありがとうございます、お元気で」
若干の驚きと疲れを感じながら、俺たちは彼女たちに別れを告げる。
そして、戦場に乗り込んだわけだが……。
どこからミサイル取り出した、サイクロンヘル?
お前そんなもん積んでいないだろう。いや、オプション装備の中にミサイルポットとかレーザーキャノンもあったな。図面や操作プログラムも当然サイクロンヘルの中にある。
さてはゴウラムを誑かして再現させたな、てめぇ。
一度サイクロンヘルとはじっくり話したほうが良いかもしれない。いくらショッカーでも、人様のマシンに悪事を吹き込んだとか苦情が来ても困りますよ。
サイクロンヘルの悪行はさておき、ミサイル一斉掃射は効果的であった。
警官隊を襲っていたグロンギの半数が吹き飛ばされ、中には自分たちが放った火に巻き込まれ火だるまになった奴までいる。
丁度いい混乱だ。サイクロンヘルがミサイルの雨に隠して射出した探索用ドローンからのデータを受け取りつつ、俺は一度サイクロンヘルから降りる。
五代さんもサイドカーから降り、屋敷前の混乱を鋭い視線で見つめる。
ミサイルの雨に混乱したグロンギが後方に下がり戦列を立て直す一方で、G3部隊ともう一人のクウガは前線でグロンギを抑えている。もっとも、彼らの力をもってしても抑えるのが精いっぱいであり、支援に当たるべき他の警官隊は後方に下がり態勢を立て直していた。
俺達の乱入で、一時的に戦列が混乱、空白が出来たってところだろう。
そんな混乱の空白に、こちらに来る人影が2つ。
当然だが、五代さんの姿を見つけ思わず寄ってくる一条さんと夏目さんだ。
「何やってるんだ、五代」
呆然と、あるいは悔恨を滲ませながら一条さんは五代さんに問いかける。
懐かしい顔、戦える戦力、そして安堵感。だが、それ以上に絶対に来て欲しくなかったのだろう。
そんな複雑な感情を抱く一条さんに対し、五代さんはまるで昨日会った友人に話しかけるような、そんな口調で来た目的を告げる。
「久しぶりです、一条さん。もちろん、戦いに来ました」
「だが、お前が……」
おそらくこの世で一番戦場に似つかわしくない男が五代さんだ。そしてそれでも、誰かの笑顔を守るためにはここに来てしまうのが五代雄介という男でもある。
だが、そんな事など分かってはいても、一条さんの表情は暗い。
それはそうだろう。ここにいるグロンギは……。
「昔も言ったじゃないですか。中途半端には関わりませんって。たとえ相手が、元人間のグロンギだとしても、誰かの笑顔を奪おうとするなら俺は戦います」
「五代!? お前!?」
「彼から来る途中で聞きました」
実のところ、県警レベルのセキュリティはショッカーにとってはザルのようなものだ。
サイクロンヘルのハッキングでも良いし、ショッカーやブラックサタンが潜り込ませていたスパイでも良い。ここに向かう途中、俺の元に今回のグロンギが人間を改造した新造グロンギであるという情報は届いていた。
この情報を聞いた時、正直五代さんをバイクから蹴り落とそうかと一瞬考えた。
俺からしてみれば力を求め堕ちてくる馬鹿どもは珍しくない。この間も自らワームになった奴を見たばかりだし、ガイアメモリのように堕ちるための道具もこの世界は事欠かなかった。
グロンギは人間と起源を同じとしている、いわば古代の改造人間だ。グロンギになろうとする人間も中にはいるだろう。駆除するのがめんどくさいな。
もう、その程度の感想しか湧かない程度にはこの世界にどっぷり浸かっている。
だが、それを五代さんのような人と戦わせていいかどうかは別問題だ。
闇の住民である俺は馬鹿の相手はうんざりするほど慣れているが、五代さんのような人に元人間の相手は負担が大きすぎるだろう。
もっとも、この悩みはすぐさま無意味になった。俺の様子から察した五代さんが、何かあったのか聞いてきたのだ。
ほんとムカつくぐらい勘が良いな、このおっさん。
俺が一条さんの気持ちを考えている横で、もう一つの再会が起こっていた。
「五代さん!」
「あ、実加ちゃん。久しぶり」
恩人を相手にどう言葉をかけて良いのか分からない夏目さんに対し、五代さんは本当に日常の延長としか言えない調子で片手を上げる。
呼び方も子供の頃のままなのだろう。成人女性に……と思わないでもないが、彼にとっては父親を失い泣いていた中学生の頃のイメージが強すぎるのかもしれない。
まぁ、人様の感動の再会はどうでも良いだろう。わざわざ知らない関係に飛び込むほど、悪趣味じゃない。
問題はこの混乱に乗じて灯溶山に向かっているだろう、人造グロンギの首魁だ。
あの山に何があるのは分からないが、そいつらを討たなければこの騒動は終わらない。
サイクロンヘルが放った探索用ドローンから送られてくるデータを素早く検索する。
灯溶山はそれほど大きな山では無いが、それでもやみくもに探して見つかるほど小さいわけでも無い。
まったく、面倒ばかり増えて嫌になる。
死にたきゃ雁首揃えてくれれば、順番に蹴り飛ばしてやるっていうのに、こそこそ悪事ばかりやりやがると来たもんだ。
そんなウンザリしている俺に話しかけてきたのは一条さんだ。
「君は、渡世誠太郎君だね」
「アインロールドだ。それはもうどこにも居ない男だ」
やっぱ警察で誠太郎の情報は共有されているなぁ、畜生。
気を利かせて消しておけよ、蟹。だから駄目なんだよ、蟹。というか、そういや筑波さんも本名を知っていたよな。さては、蟹経由か?
今度縛り上げて無理やりてっちりでも食わせた後に、ふぐ毒治療中ですと看板を立てて砂浜にでも埋めておくか。
「えっ、星太郎じゃないの?」
「俺の事はいい」
いや、文脈とか行間を読んでくれよ。態々偽名を聞き返さないで欲しいんだが……。
そんな五代さんの反応になれているのか、一条さんは五代さんのとぼけた反応を華麗にスルーをして俺に向かい尋ねてきた。
「わかった、アインロールド。ショッカーがなぜここに?」
「害虫駆除だよ。いずれ俺の物になる世界に、自分からグロンギになりたがるような害虫は不要だからな」
こういう正当で警戒心を解かない反応をしてくれるのは非常にありがたい。
最近は何故か妙に人を気遣う奴らばかりであった。こういうのがショッカーライダーに対しての普通の反応なのだ。
俺は一条さんに来た目的を告げながら、会話の間にもルートを絞っていく。
「このグロンギどもは囮だ。本命は別にいる」
ゴウラムと合体したからか、サイクロンヘルのセンサーがかなり拡張されている。
元からある程度は観測できたが、地脈とか龍脈とかそういった現代科学に喧嘩を売っているような謎エネルギーもある程度観測できいた。
ドローンの探索ルートとエネルギーの流れる先のデータを統合……。
あと少しだ、ならば、その前にやる事は一つだな。
「行きがけの駄賃だ。半分は消し飛ばしてやる。残りは貴様らで何とかするんだな」
言いたい事だけ伝えると一歩前に出る。
そんな俺の隣に並ぶ男が一人。無論、それは五代さんだ。
「一人じゃきついだろう、俺も付き合うよ」
「邪魔だ。後ろから大人しくついて来い」
俺の憎まれ口に、五代さんは苦笑いだけを返す。
まったくやりにくいったらありゃしない。
それぞれの戦う意思に反応して双方の腰にベルトが出現する。
腕を大きく振り上げながら、キーワードを口にする。
「ライダー変身!」
「変身!」
腰のベルトが激しく回転を始め、周囲のエネルギーをどん欲に食らい始める。
全身のナノマシンが活性化し、俺の力を無限に高め始める。
出現した黒い強化戦闘服が俺の身を包み、赤い複眼と触角の生えた髑髏とバッタを模したヘルメットが頭部を覆い、最後に真紅のマフラーが風になびいた。
俺は俺となる。
そして、同じように五代さんの肉体も変貌を遂げる。
赤い胸甲が身を覆い、赤い目と金色の角の奇怪な頭部へとすげ変わる。
仮面ライダークウガ。かつてグロンギと戦い、ついには闇を打ち砕いた仮面ライダーがその姿を現す。
2人の仮面ライダーと1体の怪人が放つ無限のエネルギーに気が付いたのか、新造グロンギどもの視線が一斉に集まる。
そして、視線を向けてきたのは新造グロンギだけでは無かった。それはこの地で戦っていた警察たちの目であり、この男の目であった。
五代さんのクウガとうり二つ。だけど、どこか微妙に違う姿の赤いクウガが跳躍し、俺たちの横に降り立った。
「この世界のクウガの人ですか?」
「君は、話に聞いた異世界のクウガか? あっ、初めまして五代雄介です。あ、すいません、今、名刺を切らしていて」
「俺は名刺を持っていないから、気にしないでください。俺は小野寺ユウスケっていいます」
なんだこのやり取り?
クウガが二人並ぶという頼もしい光景と、ツッコミ不在の間抜けなやり取りが同時に進行しているぞ?
いや、それよりも小野寺さんのクウガの視線がこちらに向かう。
「君は……?」
「アインロールドだ。そんな事はどうでも良い。俺の邪魔だけはするなよ」
ショッカーライダーを何だと思っているのだ。全くどいつもこいつも……。警戒心を解かない一条さんを見習え。
これ以上何か言われる前に、俺はグロンギの群れに向かい駆けだす。真っ先に突進してきた巨大なグロンギに狙いを定め、拳を振るう。
2mを超える巨大な体躯のグロンギは、ニヤリと笑うと腕を交差し防御の姿勢を取る。
怪人となって気が大きくなったか。力量差を見極められない素人め。貴様程度が俺のパンチを受け止められると考えたのか?
「ライダーパンチ!」
別にこの程度のガードの隙間を縫う事は難しくなかったが、あえて防御の上から拳を叩きこむ。
その一発で丸太のような腕はあっさりと弾き飛ばされ、拳は胴体深くに突き刺さる。
赤く輝く拳をまともに受けたグロンギは、驚愕の表情を浮かべ複数のグロンギを巻き込み後方に吹き飛ぶ。
その過程で俺が叩き込んだ破壊エネルギーが魔石に回ったのか、壁にめり込み複数のグロンギを巻き込んで大爆発した。
「あれがこの世界のライダーか」
そう呟きながら、小野寺さんのクウガも銀と紫の鎧を纏う、タイタンフォームへと姿を変える。
複数体のグロンギが慌てて小野寺さんのクウガに向かい砲弾や火炎を浴びせるが、硬さに定評のあるタイタンフォームは傷一つ負う事が無い。
逆に攻撃を物ともせずに進むクウガのタイタンソードの一振りごとに、グロンギは切り伏せられ倒れて行く。
「口では色々と言っているけど、誰よりも早く先陣を切るのは本郷さんを思い出すよ」
転がっていた警察の警杖を手に取った五代さんが青い瞳のクウガ、ドラゴンフォームに姿を変えグロンギの群れに突っ込んでいく。
大金星を取ろうとグロンギの群れが一斉にクウガに襲い掛かる。その腕に、足に、肩に食らいつこうとする。
だが、青いクウガは機動力と速度の怪物だ。グロンギの群れが組み付こうとする程度の早さでは、歩みは止まらない。
「これ以上させるか!」
グロンギの攻撃を僅かな身のこなしですべて避けるとドラゴンロッドの一振りで、グロンギの群れをまとめて弾き飛ばす。
地に倒れた新造グロンギはその数を減らしていく。
戦況が逆転する。
クウガたちの力は圧倒的だ。
新造グロンギの戦列は熱したナイフを当てられたバターが溶けるように崩壊していく。
この世界の警察はその隙を見逃すほど間抜けではない。
態勢を立て直した警官隊の支援を受けたG3部隊が前面に出て戦列を押し上げる。なんとかG3の壁を超えても、警官隊が一斉に放つ炸裂弾がグロンギを仕留める。
戦いは徐々に掃討戦へと移行していく。
俺やクウガが抜けても、この流れはもう変わらないだろう。
そう確信する中、ついには待っていた情報がサイクロンヘルからもたらされた。
送られてきた映像データは、山道を走る一台のSUV車だ。
国産の大きな車両を上機嫌な様子で運転者をしているのは、この屋敷の主である岡見綾仁だ。
そういえば、この家は確か裏では割と有名な魔を祓う家系だったんだけどな。以前は猛士を始めとした各組織にも少なくない金額を出資し、支援を続けていた筈。
末がこれでは人々を守り続けてきた先祖たちも浮かばれまい。速やかに汚点は潰してやるべきか。
「クウガ! 首魁を見つけたぞ! サイクロンヘル! ゴウラムと分離して来い!」
ゴウラムと合体し、好き勝手ミサイルやビームをぶっ放してグロンギを吹き飛ばしていたサイクロンヘルが分離をして俺の元にやってくる。
そのままサイクロンヘルに飛び乗ると、エネルギーとセンサーをサイクロンヘルと同期させた。
ゴウラムと合体したままでも良かったのだが、やはり慣れた形状のほうが良い。
エネルギーフィールドが車体を包み、サイクロンヘルと俺は一つの砲弾と化す。
「ヘルブレイク! 行くぞ!」
俺の命に従い、サイクロンヘルが唸りを上げる。
タイヤが猛回転を開始し、爆発的な速度で新造グロンギどもの群れの一番厚い場所に突進する。
抵抗など無駄であった。
触れた傍から新造グロンギは吹き飛び、次々に弾き飛ばされ、焼き払われていく。
そしてそのまま屋敷の一角を吹き飛ばす。
そこは地下の秘密ガレージであり、別の場所に通じる隠し通路であった。
連中は屋敷に火を付けグロンギどもを解き放った後、その混乱に乗じこの通路を通り屋敷を脱出し、灯溶山に向かったのだ。
「ああっ! 誠太郎、勝手に行くなって! 一条さん、バイクを借ります!」
「あ、まて! 俺も乗せていけ!」
「俺も行きます! バイク借ります」
「小野寺さん! 私も連れて行って!」
何やら後方で五代さんと一条さん、そして小野寺さんや夏目さんのやり取りが聞こえてくる。
まったく、俺に押し付けても誰も文句を言わないだろうに、物好きな。
まぁ、これだからこそ仮面ライダーなのかもしれないが。
俺は誰にも聞こえないよう仮面の奥底で小さくため息をつくと、サイクロンヘルのアクセルを全開に吹かした。
一条さん(あっ、これ下手に気を使うより、ショッカーライダーとして扱って上げたほうが良いな)
地味にエピソードクウガも11話。
Wの頃から比べると、1ライダー当たりの話がどんどん伸びて行くなぁ……。
注意書き
本作において昭和ライダー勢は村枝成分注入により若い頃の姿を維持しているという設定ですが、
平成以降は明確な時間経過描写がある場合(学生から教師になった弦ちゃんとか)を除き、基本的に年齢や時間経過はぼかして描写しておりご想像にお任せするスタイルとなっております。
ご了承ください。
『オンドゥルルラギッタンディスカー!!』やってた頃(2004年放送)、『エージェントを夢見る普通の好青年』役をやっている今井竜太郎さん生まれていないんですよ(2005年生まれ)……。
NEXT KAMEN RIDER?
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俺、参上!(電王)
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僕に釣られてみる?(電王)
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俺の強さにお前が泣いた(電王)
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答えは聞いてない(電王)
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ちょっとみんな大人しくしなよ!(電王)