ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第12話 episode・000 閑話・その糸は法の網か逃げられぬ過去か

「失敗したか……」

 

 都内にある事務所にて、後藤田は部下の報告を静かに聞く。

 政界に入る以前より部下だった男は暗殺失敗の報告を上げながらも、どこか不満げな表情を隠しきれていない。

 

「不満そうだな……」

 

 静かに問いただす。後藤田に部下の態度を責めている様子はない。

 

「はい。やはり今からでも中止するべきかと……。あのような化け物どもを……」

 

 彼が今回の計画に不満を抱いていた事は知っている。いや、それどころか部下は何度も反対の進言をしていた。

 その事に不満などない。むしろ彼の考えこそが正しいと後藤田は考えている。

 だが……。

 

「もう何度も話したはずだ……。計画に変更は無い」

 

 声を荒げた訳ではない。だが、後藤田は有無を言わせず部下に退室をさせる。

 一人部屋に残った後藤田はしばらくの間無言で机の一点を睨む。だが、消えぬ気配にため息をつきながら、虚空に向かい語りかける。

 

「ご自慢のヤミーとやらも大した事が無かったな。オーズならまだしも、名も知らぬライダーに破壊されるとは」

「てめぇ……喧嘩を売っているのか!?」

 

 ずぶり……そんな擬音が聞こえてきそうな空間の歪みから、緑色のジャケットを羽織ったオールバックの青年が出現する。

 彼の名はウヴァ。復活したグリードの一体である。

 人を殺せそうな怒りの籠った視線を向けるが、老人と言って良い年齢の後藤田は意にも介さない。

 

「任務を果たせぬ身で猛るな。それよりセルメダルをよこせ。契約通り、俺の欲望をくれてやる……」

「ちっ。ほらよ」

「一枚では足りん……。戦力の逐次投入など愚策だ」

「どうなっても知らんぞ」

 

 ウヴァは半ば呆れながら、机の上に銀色のメダルを積み上げた。それと同時に後藤田の額にスロットが浮かびあがる。

 後藤田はそれに動じた様子も見せず、あろう事かメダルを鷲掴みにすると、自らに額にまとめて挿入した。

 

 後藤田の体から、白ヤミーと呼ばれるミイラ状の化け物が数体出現し、時を置かずして蜘蛛を模した怪人にその姿を変える。

 

「相変わらず、すごい欲望だな……」

 

 同じヤミーを複数出現させる男の欲望に、さすがのウヴァも感心する。

 

「我が大義が……俺の護国の意思がこの程度で食い尽くされるものかよ……。今度こそ、契約を果たせよ」

「わかっている! いちいち偉そうなんだよ!」

 

 その言葉と共に、ウヴァとクモヤミーは空間を歪め部屋から消えた。

 今度こそ部屋には後藤田一人が取り残される。

 

 後藤田は背もたれに体重を預けると、小さくため息をつく。

 

 

 古代の王を名乗る化け物どもと接触を持ったのはおよそ1年前の事。かの古代の王は護国を志す自分に目をつけ、その欲望の力を対価に力を貸そうというのだ。胸に秘めた大義を欲望呼ばわりされた事は不愉快ではあったが、当時の後藤田にとって利用できる化け物は便利な存在であり手を組むことになる。

 怪人が身近に出現すれば、人は恐怖し不安になる。超常犯罪防止法推進派を増やす事に連中は役に立った。

 後は……邪魔な東雲を何とかすれば、大勢はこちらに傾く。奴を目覚めさせてやらねばならない。

 

 無論、後藤田は古代の王一味の事など欠片も信じていない。あれも、これまで幾多も見てきた化け物の一つに過ぎず、こちらを利用する気なのは容易に想像できる。

 

 後藤田はそっとデスクの引き出しを開く。

 そこには虫を模した機械と、一枚の写真が収められていた。

 

「全てが終われば……刺し違えてでも滅ぼしてやる……」

 

 怪しく蠢く機械を一撫ですると、写真に目を向ける。

 色褪せた写真に写るのは、若かりし頃に所属していた組織の仲間たち……。

 

「化け物は全て滅ぼさなければならん……。加賀美さん、貴方の忍耐力は俺なんかじゃ想像ができないほど超人的だった……でも、それでも……まだ、手緩かったんだよ……」

 

 

 

 結局の所、いつまでも逃げる事などできはしない。

 学生ならば理由をつけて休むこともできるだろうが、特に国会議員である3人はスケジュールが詰まっている。根の部分が自由人である映司にしても、さすがに責務を放り投げる気は無い。

 とはいえ、狙われている東雲や園子を放り出す事が出来るほど映司や幻徳は薄情ではない。となると、自分たち以外の護衛を見繕う必要があった。

 

「氷室さんの知り合いは?」

 

 この場合、仮面ライダーやそれに類する力の持ち主の事だ。一般人の護衛は無駄に犠牲者を増やすことになりかねない。

 幻徳は3人知り合いの顔を思い浮かべる。筋肉バカとドルオタ農家なら呼べば来るだろう。天才物理学者もここしばらくは研究室にこもって妙な研究をしていたはずだ。

 

「暇を持て余している奴らが3人ほどいるな……ただ……、全員男だ。火野は?」

「力を貸してくれそうな知り合いは何人かいますが……。連絡を取ってみないと手が空いているかどうかまでは……」

 

 映司も何人かの顔を思い浮かべるが、流石に暇かどうかまではわからない。ただ、こういう時に真っ先に飛んできそうな男は、残念ながら現在は海外だ。

 

「その中に女性は?」

「いるにはいるんですけど……まだ高校生なんですよ」

「高校生でライダーか……、すごいな。さすがにそれは最後の手段だな……」

「ですよね」 

 

 二人が女性の護衛について言及しているのは、もちろん園子の事を気遣っての事だ。

 

「後は……彼の事か……」

「やっぱ、ここで帰ってもらったほうが良いですよね」

 

 二人が思い浮かべたのは、護衛を名乗る少年の事だ。誰もが逃げ惑う中、少女を戦闘員から守り切った勇敢な少年。

 純粋に彼の身を案じている映司に対し、アンクが嫌悪の感情を隠す様子もなく問いかける。

 

「帰して良いのか?」

「どういう意味だ、アンク?」

「そのままの意味だ……。あれは何なんだ?」

 

 アンクの言葉に、映司は答えに詰まる。

 

「派遣されてきた護衛……。ただの小僧ではないだろう」

 

 高校生で護衛として派遣されてきている……。普通に考えればおかしなことであり、何かを隠している程度の事は映司でもわかる。

 

「でも、悪い子じゃなさそうだし、大丈夫でしょう」

「そういう問題ではないが……。藪をつついて蛇を出す必要もないか」

 

 3人がそうやって今後について話していると、やってきたのは東雲議員だ。

 昨晩はとてもではないが何か話せるような状態では無く早々に休ませたのだが、顔色こそ悪いままだが一晩休んで何とか気力を取り戻したようだ。

 

「いやあ、すまなかったね。昨夜はみっともない所を見せた」

「いえ、あんな事が起これば当然ですので、お気になさらず」

 

 孫娘の命が狙われている。そう聞かされて平静を保てぬのも無理がない。

 もっとも、あの様子では彼は孫娘が狙われる理由に心当たりがあるのだろう。

 

「東雲先生、事件の……」

「ああ、今後の事だね」

 

 東雲は幻徳の言葉にかぶせるように発言する。露骨な話題逸らしだが……。

 こうなった以上はいずれは聞く必要があるだろうが、ここで無理に聞き出そうとしても時間が無駄に過ぎるだけだと3人は悟る。

 仕方なく、優先順位の高い順に話を進める。

 

「とりあえず、身を守る事を優先する必要があるでしょう。東雲先生、何か当ては?」

「さすがに長期間、怪人相手が出来る知り合いはいない。長期化するようなら……、君たちの力を借りなければならないと思う」

 

 一部例外はあるが、仮面ライダーは未確認情報であり都市伝説となっている。無論国は彼らの実在を把握してはいるが、様々な理由で公的には一貫して未確認で通している。

 東雲も仮面ライダーの実在を知る一人ではあるが、護衛として長期間ついてもらえるコネとなると表向きは流石に持ち合わせていない。

 東雲はそこまで言うと一旦言葉を切る。

 

「ただ、とりあえず警察には伝があるかな……」

「け、警察ですか?」

 

 

 日本にとって、超常的存在は決して無視できる存在ではない。古くは超技術を持つ秘密結社から始まり、全日本を震撼させた未確認生命体の引き起こした一連の凄惨な事件。あるいは機械生命体の引き起こした全国規模のテロ活動。他にも隕石と共にやってきた怪物や突如湧いて出てくる化け物。異世界からの侵略と例を挙げればきりがない。

 治安を守る警察もそのような存在に対し手をこまねいて見ていたわけではない。対未確認生命体用特殊装備であったG3ユニットの開発をはじめ、様々な対抗手段を開発、配備している。

 一部の者からは警察が持つには過剰戦力ではないかという指摘もあるが、警察が持つ対超常犯罪装備は超常犯罪におびえる多くの人々には肯定的に受け止められてきた。

 

 

 彼らが連絡をすると、警察はすぐさま飛んできた。

 ホテルが襲撃を受け国会議員3名も行方不明となる大事件だ。当然と言えば当然の話だが、警察は必死に行方を探していた。

 

 数台の警察車両、そして特殊装甲服姿の警察官たちが操るオートバイがクスクシエの前に停車する。

 何事かと近所の住民が見守る中、大型のバンよりスーツ姿の警察官たちが下りてきた。

 

 警官が周囲を警戒する中、一人の男が代表して店の入り口をくぐる。

 

「失礼します」

 

 まだ若い真面目そうな男性だ。彼は身分証を提示しながら来店目的を告げた。

 

「警視庁超常犯罪捜査一課の加賀美と申します。皆様をお迎えに上がりました。大変申し訳ございませんが、お名前を確認……」

 

 孫娘の園子以外はメディアでよく見る顔ではあっても名前を確認しようと警官が話しを続けるが、その機先を制したのは東雲議員だ。

 

「君は……新君か。加賀美さんの所の。いやぁ、立派になったものだ」

 

 唐突に親しげに語りかけられ困惑する警官に、少々ばつが悪そうに東雲議員は頭をかく。

 

「ああ、すまないね。君と会ったのは君がまだ小さい頃の話だった。覚えていないのも無理はない。加賀美さんは息災で?」

「あ、はっ、はい」

 

 父の知り合いというのはわかったが、それはそれとして出端をくじかれて警察官は調子を崩しながらも、もう二人の国会議員に向き直り、再び固まる。

 まぁ、国民の代表たる国会議員が革ジャンの鬚とほんわかヒッピーに化けていれば、平静でいられないも仕方がない。

 

「あ、え、えっと……氷室先生と火野先生で間違い……ない……ですよね?」

「ええ、氷室です」

「火野です」

 

 変装でも、もうちょっと他に何かあるだろう……。さらに秘書という事になっている彼も、まるでビジュアルバンドマンを彷彿させる出で立ち。妙に似合っている堂の入った変装に若干引きながらも、警官は職務を遂行しようとする。

 後は…東雲議員の…孫の園子と……女性と少年。

 

「ああ、彼女らは火野君の知人で、匿ってもらったのだよ」

 

 あえて、少年が護衛として派遣されて来た事は言わない。いくら腕っぷしが強くとも、これ以上一般人の彼を巻き込むのは危ない……というのが大人たちの判断だ。

 

「よろしければ、人を置いていきますので、とりあえず事情をお伺いしても、よろしいでしょうか?」

 

 実際、かくまっただけで何かを知っている可能性は低い。とはいえ、形式上は事情を聞かないわけにもいかず、もしかすると後から襲撃を受ける可能性もあるので人を残さないわけにもいかなかった。

 警察官は少し考えた後、ついてきた私服婦人警官を一人残すことにする。

 

「ええ、私は良いけど……」

「わかりました」

 

 知世子と少年が特にごねる事もなく了承した事を内心安堵した警官は、議員たちの移動を開始するのだった。

 

 

 

 警察署に移動する大型のバンの中は意外と静か……という事は無かった。

 なにせ多忙を極める国会議員が3人も乗っているのだ。彼らの携帯電話はひっきりなしに鳴りっぱなしであり、その対応に追われることになる。

 

 一方、アンクは我関せず退屈そうに窓の外を眺めている。

 手持ち無沙汰なのは一人議員の孫娘である園子だが、彼女は昨晩のアンクや幻徳の言葉が気になり周囲を気にする余裕はなかった。

 

『理由は俺にもわからないが……あいつらの狙いは爺、お前じゃない。そっちの小娘だ』

 

 祖父が政治家でありそれなりに裕福な家庭の娘だという自覚はあるが、それ以外は特に特徴のない人間だ。

 狙われていたのは自分……。アンクが言っていたのは、どういう意味なのか……。自分が理由で大勢の人を巻き込んだのか……

 ただの少女が狙われた原因を考えたところで思いつくはずもなく、思いつめた思考のみが積み重なっていく。

 

 どれぐらい時間が過ぎただろうか。

 

「危ない!」

 

 運転していた警察官が叫びをあげる。

 何事だ。そう園子が顔を上げると同時に、急ブレーキの衝撃が車内を激しく揺らす。それと同時に、轟音が周囲に響き渡る。

 

「きゃああ!」

「ど、どうしたんですか」

「前の車が、突然転倒して……」

 

 その言葉の通り、前方では大型のコンテナ車が信号を無視して突っ込んできており、運転席を道路沿いのビルにめり込ませ車道を塞いでいる。

 人が巻き込まれなかったのは、純粋に運が良かっただけだ。

 

「事故か?」

 

 警察官の常識的な言葉は、後方を見ていた幻徳の言葉であっさりと否定される。

 

「いや、招かざる客がおいでなさったようだぞ」

 

 見てみれば、後方からは複数の大型車両が停車。前後の車両内からショッカー戦闘員が次々に降りてくる。

 

「また派手な手を……」

 

 呆れ半分にアンクが呟く。確かにその言葉通り、派手極まりない手であった。音に驚いた周辺の住民が何事かと出てきて遠巻きに眺める。

 もっとも、当然だが近づいてくる人間は誰もいない。警察と思しきG3部隊とショッカー戦闘員が戦っているのだ。

 

 能力という意味ではG3部隊がショッカー戦闘員を上回っている。事実、近づいてきた戦闘員はG3のパワーの前に倒され、銀色のメダルに姿を変えている。

 だが、街中だというのにもかかわらず重火器を持ち出すショッカー戦闘員に対し、G3部隊は火器の制限を受けており苦戦を強いられていた。

 

「キャアアア!」

 

 流れ弾が車両の側に着弾し車内を大きく揺らす。

 対超常事件用の特注車両ではあるが、このまま直撃弾を受けたら……。

 そう判断した警察官の行動は速かった。耳のインカムを通じ、G3隊員たちに指示を出す。

 

「すいません、車両を捨てて徒歩でこの場から離脱します」

『……大丈夫なのか?』

 

 G3部隊の隊長と思しき人物からの声に、警察官は切羽詰まった表情で答える。

 

「無尽蔵に出てくる相手……。しかも重火器を持っている相手に車内に籠城は出来ません。すいませんが……」

『わかった。殿は俺達で引き受ける。ぬかるなよ、加賀美さん』

「わかってます……。すいません、皆さん。俺たちは車を捨て、路地を抜けてこの場を脱出します」

「え。でも……俺達も出ないと」

 

 護衛対象の一人、映司の言葉に警察官は驚くが、彼が反論の言葉を述べるより先にアンクが映司をたしなめる。

 

「いや、今はそいつの言う事を聞くべきだ」

「でも、アンク!」

「こいつらは足止めと囮だ……、本命は後からくるぞ」

 

 それは映司も薄々ではあるが気が付いていた。だからと言って……。

 

「G3隊を信じてください。この場に議員たちがいたら彼らも全力を出せない!」

 

 こう説得されれば、引き下がらずを得ない。

 警察官に先導されるまま、彼らは車両から降りる。

 

「頭を低くして、ゆっくりと慌てず、急いでこちらに!」

 

 警察官に先導に従い彼らはこの場を後にする。

 だが……、路地裏の先にいたのはクワガタの顎を模した頭部と緑の複眼を持つ、昆虫型の怪人……。いや、グリードであった。

 

「な、なんだこいつは……」

 

 東雲が孫娘をかばうように抱き寄せながら、グリードを見て声を上げる。

 もっとも、グリードは人間の事など眼中にないようだ。

 

「ったくよぉ……。こういうまどろっこしいのは好みじゃねえんだが……」

 

 口ではそういいながらも、そのグリードは見事に術中に嵌った事に対する喜びが口調や態度の端々から漏れ出している。

 もし人間の顔を持っていたら、ニヤニヤとした笑みを浮かべていたであろう。

 

「ウヴァか……」

 

 アンクが憎しみの感情を一切隠さず、相手の名前を口にする。

 因縁の宿敵を見てもウヴァは策がうまくいった喜びからか、上機嫌のままであった。

 

「はっはっは、丁度いい。てめえら、往年の恨み晴らさせてもらうぜ」

 

 その言葉と共に、ビルの壁を下り、複数の蜘蛛怪人が路地に降り立つ。

 狭い路地で完全に挟み撃ちにされた形だ。

 

 だが……。

 

「舐められたものだ……貴様が火野やアンクとどのような因縁があるかわからないが、完全に無視とは」

「はっ! 雑魚が割り込んでくるんじゃねえよ」

「雑魚かどうか……その身で試してみるがいい」

 

 一歩前に出た幻徳が腰にスクラッシュドライバーをセットする。

 

【デンジャー! クロコダイル!】

「変身!」

 

 ベルトのレバーが下げられると同時に、幻徳の身体を紫の溶液に満たされた巨大なビーカーが包み込む。

 そのビーカーが砕けるとともに、彼の姿は仮面ライダーローグへと変わる。

 

「氷室さん! アンク!」

「わかってる! これを使え!」

 

【タカ! トラ! バッタ!】

 

 一方、映司も幾度となく死闘を繰り返した宿敵を前に、その姿を変える。

 腰のベルトに装填されたメダルを右手に持ったスキャナーで読み込むと同時に、彼の周りで巨大なメダルが飛び交い吸い込まれていく。

 そしてその身を仮面ライダーオーズへと変えた。

 

 そしてもう一人……。

 彼らを先導していた警察官が腕を天に向けて伸ばす。

 いずこからともなく飛来したクワガタを模したメカが彼の手に収まる。彼はそのメカを腰のベルトに装着した。

 

「変身!」

【HENSHIN!】

 

 ベルトから変身を告げる電子音性が響く。

 彼の姿を追い隠すヘクスが加速度的に増えていく。そこに出現したのは、青き鋼の戦いの神……。

 

「君も……仮面ライダーか……」

 

 ローグが隣に立つ青い仮面ライダー……仮面ライダーガタックに感嘆の声を上げる。

 

「いや、むしろ国会議員が仮面ライダーであったという事実に驚きましたが……」

 

 警察官が知る限り、自分以外にも複数の仮面ライダーが警察にはいる。

 国会議員が仮面ライダーをやっているよりも、よほど常識的だろうと考える。

 

「ま、いいじゃん。こんな時代だし、仮面ライダーがあちこちにいても」

 

 どこか嬉しそうに話すのはオーズだ。

 別系統の仮面ライダーが3人も並び立つその姿に、ウヴァが呆れ交じりにごねる。

 

「ったく、仮面ライダーのバーゲンセールかよ……。ほんとポコポコ増殖しやがって……。だがなぁ!」

 

 それと同時に、ウヴァの触覚から雷が走る。それを寸前で3人の仮面ライダーが避ける。

 それが戦いの合図であった。

 

「はあっ!」

 

 ガタックの両肩に装着されたバルカンが火を噴く。

 上から襲い掛かろうとしていたクモヤミーが次々に叩き落とされる。

 

 前方にいるウヴァにはオーズが、

 後方にいるクモヤミーの群れにはローグが向かう。

 

 粘着質の糸を吐くクモヤミーは、ローグにとってそこまで相性の良い相手ではない。

 次々に吐き出される糸をスチームブレードで受け止めながら進む。身体を拘束されるよりはマシという判断だ。

 何発かを受けブレードを糸まみれにしながら、クモヤミーの一体に肉薄する。

 

【CRACK UP FINISH!】

 

 ベルトのレバーが一回下げられると同時に、ローグの拳に紫の輝きが灯る。

 莫大なエネルギーを込められた拳がクモヤミーの胴体を貫く。

 

「ぎゃあああ!」

 

 胴体を貫かれたクモヤミーがメダルをまき散らしながら爆散する。

 だが、その余韻に浸る間もなく、ローグは横に転がりその場を離れる。

 それと同時に、彼がいた場所には複数のクモヤミーから放たれた糸が地面に積み重なる。

 

「これだけ数がいると、厄介だな」

 

 ローグのつぶやきが、この状況を端的に表していただろう。

 それは前方で戦うオーズにとっても同じこと。強敵であるウヴァにプラスしてクモヤミーが襲い掛かってくるのだ。

 特に粘着質の糸が厄介で攻撃力そのものは無いが、当たれば動きを拘束される。

 常にクモヤミーの動きを意識しなければならないのだ。

 

「場所が狭すぎるな……。ウヴァの野郎、無駄な知恵を使いやがって……」

 

 アンクが戦況を見て呟く。数の不利を覆すべく何かしらの逆転コンボを使おうにも、場所の狭さがネックとなる。

 動きが阻害されたり、守るべき東雲と園子を巻き込む恐れがあった。

 さらには、ウヴァとの戦いに集中しようにも、クモヤミーの吐き出す糸が本当に厄介だ。あの粘着質の糸に絡めとられればオーズのパワーでも抜け出すことは容易ではない。

 

 背後から襲い掛かってきたクモヤミーを殴りとばしながら、アンクが毒づく。

 

「くそっ! こいつを使え!」

「わかった!」

 

 アンクが投げたメダルをベルトにセットする。

 

【タカ! カマキリ! バッタ!】

 

 オーズの腕にブレードが装着される。

 糸を切り裂き、クモヤミーの一体を一刀両断にする。

 

「隙だらけだぜ!」

 

 だが、体勢が崩れたところに、ウヴァが殴り掛かってくる。

 ウヴァの拳がオーズの胴体にめり込む。オーズが苦悶のうめきを漏らしながら、一歩後退する。

 それを好機と見たウヴァがさらに追撃をしようと踏み込んでくる。

 

【CAST OFF! CHANGE STAG BEETLE!】

 

 後方で援護射撃に徹していたガタックが、マスクドフォームを脱ぎ捨てオーズのフォローに回る。

 渾身のパンチを受け止められ、さらには態勢を立て直したオーズのキックがウヴァを吹き飛ばす。

 

「助かりました……加賀美さん!」

「議員こそ、無茶をしないで!」

 

 並び立つ二人のライダー。だが、ウヴァの余裕は崩れない。

 クモヤミーはまだ数がいる。このまま攻め続ければ、押し切れる自信がウヴァにはあった。

 

「このままじゃジリ貧だな……」

「わ、私が狙いなら」

「黙ってろ、小娘! くそっ、もう一手あれば……」

 

 それはアンクも同じ判断を下していた。

 仮面ライダーだけなら強引な撤退も可能だろうが、仮面ライダーをやるような物好きがそれを選ばないだろう事はアンクも重々承知をしている。

 何とか一手、もう一手あれば……。そのアンクの思いは意外なところから叶えられる。

 

 唐突に後方でローグと戦っていたクモヤミーが轟音を立てて吹き飛ぶ。

 何事か、そう思い後ろを振り向いてみると、表で戦闘員ヤミーと戦っていたはずのG3部隊が火器を撃ちながらこちらに駆けてきているではないか?

 

「なっ!?」

「どういうわけだか、戦闘員が一斉に消えてな! 加賀美さん、大丈夫か!?」

 

 4人のG3から放たれる弾丸は正確にクモヤミーを狙い続ける。

 流石のクモヤミーもライダーたちに対する圧力を弱めた。

 

 この好機を見逃すアンクとオーズではない。

 

「メダルチェンジだ! こいつで決めてやれ!」

 

 投げられたメダルは瞬時にベルトに納められ、スキャニングされる。

 

【サイ! ゴリラ! チーター!】

 

 白い頭部と上半身、さらには黄色い脚。

 速度とパワーを兼ね備えたオーズの亜種形態。アンクの作戦を瞬時に把握したオーズが、高速で走り出す。

 

「そういう事か!」

 

 青い仮面ライダーが彼らの行動を理解し、自らのその早さに追従する。

 

「クロックアップ!」

【CLOCK UP!】

 

 二体の高速ライダーが戦場を駆け抜ける。

 何が起きたか、誰かが把握するより先に、複数のクモヤミーがメダルをまき散らしながら宙に飛ぶ。

 

「なっ!? 何が!?」

 

 ウヴァが驚きの声を上げるが、彼の感知能力では理解できなかったのも無理が無い。

 粘着質の糸が飛び交う戦場では触れてしまった場合のリスクが高すぎて使えなかった高速機動による殲滅。それがG3部隊の乱入による一瞬の隙で可能になったのだ。

 

 超高速の世界で、オーズの拳が、ガタックのキックがクモヤミーに次々と突き刺さる。クモヤミーが爆発するより先に、別のヤミーが二人のライダーの獲物となり致命傷を負う。

 

 およそ半数のクモヤミーに攻撃をしただろうか。それと同時にオーズとガタックが姿を現す。

 それと同時に、複数のクモヤミーがメダルを吐きながら大爆発をした。

 

 完全に形勢逆転をした瞬間であった。

 

 まず、ウヴァの中で焦りが生じる。

 奴らの言葉が本当なら、どういうわけか、戦闘員ヤミーはすべて消滅したことになる。

 数の有利が消え、このままではクモヤミーもすべて討ち取られるのも時間の問題だろう。

 

 こうなったら、ウヴァの行動は一つだった。

 

「おい、てめえら、壁になれ!」

 

 数を減らしたとはいえ、クモヤミーはまだ多い。

 こいつらを壁にすれば、自分が逃げる時間は稼げる。

 

「ま、まて、ウヴァ!」

「逃がすか!」

 

 不利になるや否やあっさりと逃亡を選択するウヴァを追おうとオーズとガタックが慌てるが、オーズとウヴァの間にクモヤミーが立ちふさがり一斉に糸を吐き出す。

 粘着質の糸に捕まれば高速移動も何もない。慌てて後方に下がり回避するが、その隙にウヴァの姿は路地から消える。

 

「相変わらずの逃げ足だな」

 

 宿敵の相変わらずの逃げっぷりにアンクが呆れ声を上げる。

 強敵のあわれな姿に一瞬だけ、ほんの一瞬だけだが空気が弛緩する。

 

 その瞬間だった。

 

 

「やはり化け物は化け物か……」

 

 

 唐突に誰でもない人間の声が路地裏に響く。

 それと同時に、ビルの屋上から放たれた糸が園子の身に巻き付く。

 

「えっ!?」

 

 瞬時に吊り上げられる少女の姿に、誰もが一瞬動けない。

 

「キャアアアアアアアアッ!」

 

 何者かが園子を連れ去ろうとしている。

 それを理解した瞬間、アンクがオーズに向かい次のメダルを投げる。

 

「ちっ! まだ伏兵がいたか! 映司、こいつで追うんだ!」

「わかった!」

 

【タカ! クジャク! コンドル!】

 

 赤き翼をもつ仮面ライダーにオーズの姿が変わる。

 飛行能力を持つこの姿なら、ビルの屋上に連れ去られた園子を取り戻す事が出来る。

 

「俺は園子ちゃんを追います! この場はお願いします!」

「わかった!」

「ま、まってくれ、私も連れて行ってくれ!」

 

 飛び立とうとするオーズに、老人とは思えない素早い動作で東雲が掴まる。

 

「ちょっ!? 東雲先生!?」

 

 流石にどうするべきか、振り落とすべきか……。一瞬悩むものも、視界の隅に映る敵の伏兵はビルの陰に消えそうだ。

 もう、躊躇している暇はないし、老人一人抱えたところで追いつくのに問題はない。

 

「屋上で降ろしますよ!」

 

 そうして、オーズは飛び立つ。

 この事件の終わりに向けて……。

 

 

 そして……。

 

「やれやれ……。もう少しサービスが必要だな……」

 

 黒いショッカーの使者も、同じ場所へと向かおうとしていた。




警官はモブかがみんです(強弁)
ちょっと変身しましたが、きっとモブガタックです(強弁)

モブと言っておけば今回は活躍が少なくてもきっと許される(詭弁)

いや、最初はモブ筋肉バカとモブカシラの予定だったんだけど、途中まで書いて考えてみたら、まず呼ぶのは警察だよなって……。
おかげで、ほぼ全部書き直す羽目になりました。


次回、この話の裏での主人公の暗躍。

そろそろタイトルを

  • 流石にタイトル詐欺なので変更しよう
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