ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
岩が砕け大地が割れる。
激しい戦いの比喩表現に使われる文言だが、実際にそうなると流石にシャレにならない。今は溶灯山の地形を大きく変える程度で済んでいるが、この戦いの舞台が広がり人里を巻き込めば大きな被害が出るだろう。
それほどまでに強力な力を秘めた二体の超グロンギだが、意外にもその攻撃の矛先は俺たちに向く事は無かった。
そう、連中が真っ先に狙ったのは、意外にも同じグロンギであった。
『うぉおおおおおおおっ!』
「がああああああああっ!」
アナザーアルティメットクウガの吐き出す闇の奔流とン・ガミオ・ゼダが腕から迸る雷が空中で衝突する。
超常の力で発生した超エネルギー同士は大地を砕き、大気を吹き飛ばす。数秒の遅れでエネルギー同士が大爆発を起こし、あたり一帯を吹き飛ばす。
その衝撃はすさまじく、俺やクウガたちですら立っているのが厳しい程だ。
先ほど直接狙われた時ほどではないが、闇や雷があたりをえぐり取っていく。自らの身を守るために防御に力を使い過ぎた俺たち3人は自然と変身が解けていく。
生身の姿となった俺と五代さん、小野寺さんが膝をつく中、溶灯山の様子はひどいありさまとなっていた。
残っていた樹木は根こそぎ吹き飛び山肌は無残に削り落とされ、あたり一帯は荒野と化している。少し離れたところを見てみれば、流れ弾や余波で溶灯山の山頂までもが大きく崩れていた。
ここが数分前までうっそうと茂った森の中の、ほんのわずかな草原だったと言われて信じる者はいないだろう。
この大破壊をもたらした二体の超グロンギだが、こんなものは序の口の小手調べに過ぎない。
「始まるぞ!」
そうつぶやいたのは五代さんであった。
超能力、モーフィングパワーが互角ならそれが決定打となる事は無い。強力な発火能力を持つこの世界のグロンギの首領ン・ダグバ・ゼバと黒いクウガの決着は、原始的な肉弾戦であったという。
アナザーアルティメットクウガとン・ガミオ・ゼダの戦いもそうなる。五代さんはそう見抜いたのだ。
そして、彼の予測はすぐさま目の前で実現する。
ふわりと宙に浮かび上がったン・ガミオ・ゼダが、アナザーアルティメットクウガの目前に移動した。
巨怪の赤い複眼と狼の漆黒の目が交差する。
先に動いたのはン・ガミオ・ゼダだった。赤銅色の怪人は剛腕を振るいアナザーアルティメットクウガの巨大な頭部に向かい突進をすると、その剛腕を振るう。
「おおおおおおおおおっ!!」
巨大な轟音が辺り周辺一帯に響きわたり、なんとアナザーアルティメットクウガの巨大な胴体がのけ反る。
更に追撃に振るわれた拳が突き刺さる。
あの巨体を吹き飛ばすパンチだと!?
確かに4人がかりでネオショッカー大首領を吹き飛ばした経験はあるが、それに匹敵する威力を単独で出すか、普通!?
余りに非現実的な威力に絶句しているが、それを受けるアナザーアルティメットクウガも並の存在では無かった。
「僕が王になるんだぁぁぁぁぁぁ!」
態勢を大きく崩した状態から、巨大な怪物は大木のような黒い腕を無造作に振るう。
拳圧で俺たちのいる位置まで衝撃が届く一撃は、ン・ガミオ・ゼダの小さな体を軽く吹き飛ばす。
弾丸のような勢いで弾き飛ばされたン・ガミオ・ゼダは一直線に崖にぶつかり、崩れ落ちる岩の下に姿を消す。
もっとも、消えていたのは一瞬だけだ。
すぐさま岩は粉微塵に砕け散り吹き飛び、その下からン・ガミオ・ゼダが姿を現す。
これほどのぶつかり合いだというのに、互いに大したダメージがある様子は無い。
まだ、小手調べなのだろう。
「このまま見ている……って訳には行かないよな」
思わずこうつぶやいたのは小野寺さんだ。
気持ちはわかる。正直このまま潰し合わせておいて良いならそうしたい。
もっとも、この場にいる誰もがそれは出来ないと悟っていた。
「そうしたいが、無理だな。勝者が決まれば、手が付けられなくなる」
五代さんがきっぱりと答える。
そう、二体のグロンギの超越したぶつかり合いはまだ一瞬だ。だが、その一瞬のぶつかり合いだけで奴らから感じる闇の波動が高まっていた。
ゲゲルがゲームであり儀式だとするのなら、これは真の闇である王者を決める儀式であり、敗者は王者に食われる生贄の儀式なのだろう。
どちらが勝つのかは知らないし興味も無いが、勝者は手を付けられない化け物になる。
「この場だけで奴らの戦い終わる保証も無いしな。そこの二人は物陰にでも隠れていろ。サイクロンヘル、面倒を見てやれ」
あの超グロンギどもは戦いながらもクウガと俺にだけは注意を払っているが、一条さんや夏目さんは眼中にない。
この頂上決戦において人間などどうでも良いのだろう。とはいえ、流れ弾や余波だけで普通の人間がどうなるか分かったものではないので、サイクロンヘルを付けてやることにする。
にらみ合う二体の化け物を前に俺と五代さん、そして小野寺さんは横に並ぶ。
まったくもって、毎回こんな調子で嫌になる。こんなもん仮面ライダーの仕事だろう、俺はショッカーライダーだぞ。
「いくぞ!」
五代さんの言葉に、俺と小野寺さんは無言で頷く。
二人の腰に再び古代リント族が命を守るために総力を結集したアークルが出現し、俺の腰には地獄の軍団が生み出した邪悪なる命のベルトが出現する。
二つのアークルが甲高い音を響かせ、命のベルトが周囲のエネルギーを貪欲に食い散らかす。
「変身!」
「変身!」
「ライダー変身!」
五代さんの、小野寺さんの肉体が変わる。
アークルの中央に納められた霊石アマダムが全身に力を注ぎこみ、彼らの肉体を変えていく。
赤い胸甲が彼らの身を包み、腕が、足が戦う姿をとる。
俺の肉体が変わる。全身のナノマシンが命のベルトからもたらされたエネルギーを吸収し、俺の肉体を強化していく。
空中に出現した黒い強化戦闘服が俺の身を拘束し、戦装束を形成する。
二人の頭部から金色の角が生え、その下の目が赤い複眼へと変わる。
俺の頭部に戦闘用ヘルメットが装着され、赤い複眼が不気味な光を灯す。最後に首に巻かれた血と同じ色のマフラーが風を受け背後にたなびく。
そして、俺たちの姿が変わる。
二人の仮面ライダークウガと、ショッカーライダーがこの地に再び姿を現した。
「はあああっ!」
だが、変化はそれだけではない
小野寺さんのクウガが変身を終えたポーズのまま、力を籠める。彼の周囲に青白いスパークが走る。
雷光とほのかな闇の霧が彼の周りを漂い、小野寺さんのクウガが宙に浮かびその姿を変えていく。
小野寺さんのクウガは、黒が基調であった。
その胸を覆う金色の胸鎧、手足を覆う金色のガントレットとブーツ、そしてどのクウガより巨大で禍々しい金色の角。
それはかつて、五代さんがたった一回だけ変身した究極の力とどこか似ていて、まったく似ても似つかぬ姿。クウガとン・ダグバ・ゼバを掛け合わせたかのような、禍々しくもどこか神々しい戦士の姿。
ライジングアルティメットクウガ。異世界を渡り続ける小野寺ユウスケのみが持つクウガの究極の姿の一つ。
「そ、それは!?」
五代さんが珍しく狼狽えた声を上げる。
それはそうであろう。一つ間違えれば究極の闇に落ちる、それが黒いクウガだ。まして小野寺さんの姿は、ある世界の邪悪からもたらされたその力は、果てしなく禍々しすぎる。
自身が必至に封じ込めようとしていたものを前に動じないほど五代さんも超人ではない。
そんな五代さんに対して、彼とは違う道を歩んで来たクウガは聖なる心を示す赤い目をこちらに向けこう答える。
「俺は大丈夫ですよ。あいつらを止めます」
拳を握りしめ、ン・ガミオ・ゼダとアルティメットクウガを睨みつける。
その姿に五代さんが何を思ったのかは俺にはわからない。ただ、僅かな沈黙の後こう返す。
「そうだな、止めよう」
こうして、ライジングアルティメットクウガを先頭に俺たち3人は走りだす。
その動きに俺たちそっちのけで争っていた超グロンギたちが反応した。
真っ先に動いたのは・ガミオ・ゼダだ。腕にためた雷を無造作にこちらに向かい投げ飛ばす。
拡散した雷が大地に突き刺さり、いたるところで大爆発を引き起こす。爆発の威力もさることながら、衝撃による揺れだけで足場を取られそうだ。
爆発の回避に拡散を余儀なくされた俺たちを狙ってきたのはアナザーアルティメットクウガだ。
その四本の巨腕を無造作に振るう。
長すぎる腕は、俺やクウガたちを個別に狙ってくる。
「邪魔だ! 黒衣の処刑人!」
「ああ、邪魔をしに来た!」
鋭いかぎ爪が轟音を立てて大地に突き刺さり、あるいは空を切る。
跳躍で奴の攻撃を回避した俺と五代さんは、そのまま奴の左右の腕を足場に駆け上り、二の腕を越えたあたりでほぼ同時に跳躍した。
狙うのは当然、すべての生物の弱点となる頭部だ。
「でやあああああ!」
「はああああっ!」
裂帛の気合の声とともに、俺とクウガのキックが奴の頭に突き刺さる。
だが、それだけだ。
アナザーアルティメットクウガは頭を振るう。その技とも言えぬ動きだけで俺たちはあっさりと弾き飛ばされる。
トン単位の威力がある必殺のキックを食らっても、このありさまだ。
大きいというのはそれだけで脅威だが、溜め無しじゃまるで威力が足りない。
空中で姿勢を制御しながら着陸を果たす俺と五代さんに、アナザーアルティメットクウガとなった青年の笑い声が向けられる。
「闇を肯定する仮面ライダー、そしてダグバを倒したクウガ! ただの人間に過ぎなかった僕が君たちと戦えるとは光栄だよ!」
「そんな事の為に!」
「節穴め! こっちは迷惑だよ!」
「嫌われたものだ! つれないなぁ!」
そう言うと、奴は四本の腕を竜巻の如く振り回す。
一見すれば技も何もない動作だ。だが、あのサイズの物が使う武術などこの世に存在せず、シンプルな動きこそが最適解になる事もある。
アナザーアルティメットクウガの動きは正しくそれだ。力む事なく振るわれる鉤爪は、大地を抉り空気を引き裂く。
その猛攻を前にして、俺と五代さんは後退をしながらの防御を余儀なくされる。
そして、後退を余儀なくされたのは、もう一人のクウガである小野寺さんもであった。
アナザーアルティメットクウガの猛攻を潜り抜けたライジングアルティメットクウガは、ン・ガミオ・ゼダに肉薄をする。
あのガミオが小野寺さんと同じ世界から呼び寄せられた可能性は限りなく低い。だが、それでもガミオは小野寺さんにとって因縁の相手であり、一度はディケイドと共に下した相手だ。しかも、今のクウガはあの頃よりはるかに強い。
二体の超グロンギが暴れる状況だ。一度倒した事のある相手を真っ先に狙ったのは合理的な判断だ。
「はぁっ!」
気合の叫びと共に小野寺さんは拳を繰り出す。
並のグロンギなら、その一撃で粉みじんになりそうな力強い一撃だ。
だが、まっすぐに伸びてきた拳を、ガミオは手のひらで容易く止める。
肉と肉がぶつかり合う音があたり一帯に響き渡るなか、小野寺さんの驚きの声が小さく響く。
「なっ!?」
技も知恵も無く暴れまわるだけのロボット。それが先ほどまでのン・ガミオ・ゼダであった。
だが、今の受け止め方は、明らかに意思のある技では無いか?
そう考えガミオの顔を見るが、奴の目に理性の輝きは無い。ただただ、何も映さないうつろな黒い目をするのみだ。
だが、もしかすると、奴は少しづつ、自分を取り戻しつつある?
俺の背筋に冷たいものが走る。
それは、戦っている小野寺さんも同じだった。
ライジングアルティメットクウガは牽制のキックを繰り出しながら後方に下がる。
クウガの究極の力をもってしても勝てるかどうかわからない。そんな凶悪な怪物をたった3人で攻略しなければならない。
その事実に、誰しもが冷や汗を流すのであった。
※※※※※
闇と闇が大地を揺るがしぶつかり合う。
一つは古代より蘇った異界の王、ン・ガミオ・ゼダ。全身より闇を迸らせ、その赤銅色の剛腕は巨石すら一撃で砕く。
大柄ではあるが人と変わらぬ大きさで、果敢に戦いに挑む。
一つは現代にグロンギを再興を目指すリントから生まれたグロンギ、アナザーアルティメットクウガ。天を突く巨体を持つ怪物だ。
黒い二本角の巨人は巨木に等しい大きさの腕を振るい、闇の奔流を吐き出し全てを粉砕する。
二人の王に挟まれるのは3人のリントの戦士。この時代では仮面ライダーと呼ばれる一騎当千の兵たち。
とくに五代雄介が姿を変えるこの世界のクウガは、白き闇、究極の闇をもたらす者を討ち取った過去を持つ。
王無きグロンギが新たなる王を迎えるのにあたり、これ以上の贄は無い。
「これがあなたの考えるザギバスゲゲルですか?」
山の頂に退避し闇の戦いを眺める老人の背後に、いつの間にか女が出現していた。
何の予兆も無く、唐突に現れたというのに、老人は欠片も驚きもしない。ただ眼下の戦いを見守りながら女の問いかけに声だけで答える。
「変則的じゃがな。あれほどの闇を秘めているの者たちならば、資質としては十分じゃろう」
「肩入れしすぎでは?」
「否定はせん。じゃが、あのリントとして生まれてしまったグロンギの熱意に押されての」
顎髭を撫でながら、老人はどこか面白そうに語る。
老人が考えるザギバスゲゲルには程遠い図式だ。平時であればこれをゲゲルと呼ぶのもおこがましい。
だが、あの軽薄に見えるリントの若者のグロンギの復活にかける情熱だけは本物であった。
自らの手で清めの調べを解析し、闇を抽出する方法を独自に開発した。人間をグロンギに改造する手段も、候補者を探し出したのも彼は一人で行った。技師として老人が行ったのは効率化と成功率の上昇であり、基礎はほぼ全て彼が単独で作り上げたと言って良い。
一度何故このような事をするのかと問い掛けた事がある。
それなりにこの時代とリントの風俗を学んだ老人は、彼の所業がリントの倫理観からみて大きく外れている事は理解していた。そもそも、会いに来ること自体がゲゲル中のグロンギに殺される可能性がある危険な行為だ。
老人が疑問に思うのも無理はない。
そんな老人の問いかけに、若者はこう答えた。
『わかんね。別にご先祖様の悲願も理解できない訳じゃなかったし、家族も好きだったしね』
『ほう?』
『でもさ、あの腕を見た時こう思ったんよ。消すわけにはいかない、人間にとっちゃ害悪でも、じゃあ何だったんだよって』
長い年月で身体にしみ込んだ闇の力の影響か、それとも生まれついてなのかはわからないが、あの青年の思考はもはやリントの物では無い。
そして、あの青年は言動の軽薄さに対してグロンギの再興に関しては真摯であった。それゆえに、グロンギの行く末を憂いていた老人は青年に共感を覚え、協力する事にしたのだ。
「偉大なる戦士の闘争により、これまでになく闇が高まっておる。他の地に封じられた同胞たちも時期に目覚める事になるだろうよ」
短い会話は、これで終わった。
どこか楽しそうに、嬉しそうに、そして懐かしそうに戦を見つめ続ける老人に背を向け、女はこの地を後にする。
後に残ったのはグロンギの老人と、薔薇の残り香だけであった。
『残っていた樹木は根こそぎ吹き飛び山肌は無残に削り落とされ、あたり一帯は荒野と化している』
つまり?
溶灯山はいつもの採石場と化した!(なんだってー
流石にクライマックスなので自重した展開
「俺は大丈夫ですよ。あいつらを止めます」
拳を握りしめ、ン・ガミオ・ゼダとアルティメットクウガを睨みつける。
その姿に五代さんが何を思ったのかは俺にはわからない。ただ、僅かな沈黙で小野寺さんの背中を見つめる。
そんな五代さんの視線を受け、小野寺さんは駆けだし跳躍する。
そして腕を引っ込め足を引っ込めなんか鋏が出てきて背中が金と黒の甲殻になって……、ちょっとまて! 何やってるの、あんた!?
「うおおおおおおお!」
なんかゴウラムの姿になった小野寺さんのクウガが雄たけびを上げながら、俺たちを置き去りにもうすごい速度ですっ飛んでいく。
先ほどとは違う沈黙が、五代さんと後ろで見ていた一条さん、夏目さんの間で流れる。ちらっと振り向くと、後ろの二人が目を丸くして口をぽかんと開けている。
どうするんだよ、門矢士! どうしてくれるんだよ、門矢士!
知識として知っていたけどさぁ……。
唐突に目の前で変形されるとWの必殺技以上に心臓に悪いぞ、あれ……。
「異世界のクウガってすごいんだな……」
「いや、あれは門矢士って奴のせいです。全部ディケイドが悪いんです。おのれディケイド! シリアスな空気が破壊されたぞ!」
五代さんが何とか絞り出したセリフを、おれは真っ向から否定する。もとい、誰が悪いのかを明言する。
全異世界のクウガの名誉のため言っておくが、あんな人体の構造を無視したトンチキ変形を成し遂げるのはたぶん小野寺ユウスケさんだけだ。
どれもこれも、全部門矢士って奴のせいなんです。
ほんと、どうしてくれるんだよ、門矢士!
「よし、奴らを止めよう!」
五代さんはそう気合を入れなおすと、二体の超グロンギに向かい駆けだした。
俺もその後をついていく。
好きなんですよ、ファイナルフォームライド。
でも、見慣れた連中以外の目の前で披露すると、『おのれディケイド! クウガ編のシリアスも破壊された!』になるので自重しました。
あのトンチキ変形でシリアスな展開に持っていけるディケイドの脚本ってすごいと思いました。