ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第13話 episode・000 こっそり暗躍するのはオリ主のたしなみ

 さてと、そろそろかな……。

 サイクロンヘルに警察車両を追跡させていたのだが、だいぶ離れてもうクスクシエに戻って来ないだろう。

 そろそろ動かないと追いつくのも難しくなる。

 

 ちなみに知世子さんと残った女性警官は事情を聞く……という名目の話から完全に世間話モードへと移行している。女性がそういう生き物なのか、知世子さんの話術がすごいのか、女性警官さんの気遣いなのかは男の俺にはわからない。

 

「あー、すいません」

 

 話し込む二人に声をかける。二人して『あっ、忘れていた』みたいな顔をしてこちらを向かないでほしい。いや、別に良いけど……。

 

「ごめんね、放っておいて」

「ああ、良いです。謝るのは俺の方ですから……すみません、ちょっとだけ眠っていてください」

 

 瞬間、二人の視界から俺の姿は消えただろう。

 彼女らの死角に回り込んだ俺は、ミカ特性の催眠ガスを二人に吹きかける。さすがはショッカー謹製の催眠ガスは効果抜群で、二人は速やかに眠りの世界に誘われる。

 首をトンと叩いたり電気ショックでも良いのだが、あれだと後で障害が残る可能性があるんだよなぁ……。

 

 さてと、これで良し。黙って抜け出しても問題は無かったのだが、知世子さんに何らかの嫌疑がかかるってのは心苦しい。豹変した俺に何らかの薬物を吹きかけられた……ってのが一番良い。女性警官は多少貧乏くじを引いてもらう事になるが、それは勘弁してもらおう。

 どのみち潜り込んだ警備会社に提出された書類はでたらめ、ヘンリーのおっさんからの紹介も偽造という事になる手筈だ。俺という人物はこの世にはいない謎の男という事になるから、女性警官もさほど責任は追及されないだろう。

 

 後はと……。店のオフィスに設置してある防犯カメラの主機を見つける。

 何やら雑誌や人形に埋もれた主機は、俺が呆れるほどの旧式であった。サーバーに録画データが保管されるタイプじゃなくて、ビデオテープに保管されるタイプ……VHSなんて実物を見るのは何年ぶりだ?

 これでは電子戦が得意なサイクロンヘルといえども、小細工をするのは無理であった。

 俺は機械からテープを取り出すと、握りつぶそうとして……。

 

「そ、それ今は売ってないんで……、壊すのは勘弁してくれないかな……。どっちみち、もう何年も動かしてないから……何も映ってないわよ」

 

 唐突に背後からかけられた声にさすがの俺もびっくりする。

 催眠ガスを浴びせたよね、知世子さん!?

 慌てて振り向くと、そこには手のひらから血を流しながら、入り口に寄りかかり辛そうな知世子さんの姿があった。

 

「何をやってるんですか! 知世子さん!?」

 

 おぼつかない足取りで、壁に手をかけて何とか立っている様子だ。ガスが利いていない訳ではない。

 彼女はボールペンか何かで自分の手を刺して眠気を払ったらしい。なんとも無茶をする。

 俺は大慌てで腰の緊急用ツールを開け、彼女の手を掴むと絆創膏を張り包帯で固定する。

 この一見するとアニメキャラがプリントされた可愛らしい絆創膏、これもミカ特製で彼女が自ら開発したナノマシンにより傷を数倍の速度で修復するという優れモノだ。このくらいの傷なら明日の朝には消えてなくなってはいるだろう……。

 

「はははは、やっぱ君は優しい子なんだね……」

「ただの悪党ですよ。なんで気が付いたんですか?」

「本当の悪党は悪党なんて言わないわよ。気が付いたのは、なんとなく……かな。映司君やアンクちゃんと付き合っているとね……」

 

 これだからライダー関係者は覚悟が極まっていて困る。

 俺はため息を一つつくと、彼女を抱えて元の椅子に座らせる。

 

「んじゃ、俺は行きますので。知世子さんもそろそろ限界でしょう。もう会う事は無いと思いますが、お元気で」

「園子ちゃんを……助けに?」

「仮面ライダーが3人もいるのだから、俺の出る幕は無いですよ。ただ、けじめは付けないといけませんので……」

 

 オーズ、ローグ、ガタック。どいつもこいつも歴戦の勇士で、戦力的には十分だ。

 ただ、下らない奸計にショッカーを巻き込んでくれたことに関しては、きっちり礼をしないと気が済まない。

 

「もう……、素直に……なりなさいよ……。最後に……君の本当の名前は……?」

 

 既に意識の半分以上は微睡の中にいるのだろう。それでも強い意志を見せている彼女に敬意を払い、俺は自らの名を口にする。

 

「本当の名前など疾うの昔に捨て去りました。俺を呼ぶなら……アインロールドと呼んでください」

 

 最後の言葉は聞こえたのか、聞こえていないのか……。知世子さんはもう静かな寝息を立てている。

 彼女から俺の情報が漏れる事は無いだろう。それだけは何故か俺は確信した。

 

 

 警察車両を追跡しながら俺は色々と今回の件を考える。

 

 まず最初に思い浮かぶのはヘンリーのおっさんの事。あのクソジジイ、今回の黒幕の計画を知っていて俺を巻き込みやがったな。

 ショッカーが察知していなかった計画を、個人の頼みという形でショッカーのメンツを潰す事なく俺に解決させるつもりだったのだろう。どう考えても、あのおっさん個人に借りを作った事になる。

 GOD機関を率いるだけあって、さすがの狸っぷりだ。

 

 次に考えたのは、東雲議員が口にした黒幕……後藤田の事。こっちは俺たちの世界では有名人だ。

 

 レンジャー資格持ちの元自衛官。早期に退職して主に海外で農業支援等のボランティア活動を行う。日本に帰国後は政界に乗り出し頭角を現す……。これが世間一般に公開されている表向きの経歴。

 だが、事実は少し違う。後藤田は未だ謎に包まれているZECT創設メンバーの一人と目されている。もっとも、早期にZECTと袂を分かったようで自衛隊を辞してから単身で海外に渡り、ボランティア活動を隠れ蓑にしながら裏ではデーモンハンター……、怪人や怪物を狩る傭兵団を率いていた。

 特に日本国外に渡ったワームを多く討伐しており、猟犬後藤田の名は要注意人物としてショッカーのデータベースにも乗っている。

 

 そんな男がなぜ園子さんを狙うかは……、提出された法案と絡めればそういう事なのだろう。

 ……俺には関係のない話なので正直どうでも良い。

 

 そんなことを考えていると、何やら轟音が周囲に響く。

 お、始まったか‥…。んじゃ……。

 

「変身」

 

 腰にベルトが出現すると同時に、中央の風車が激しく回転を始める。

 空中に生成された強化戦闘服が俺の身体を覆い、活性化したナノマシンが俺の肉体を作り変えていく。

 頭部には赤い複眼のヘルメットが装着され、暗く赤い色のマフラーが風に翻る。

 

「さてと……まずは様子見だな」

 

 俺は跳躍を繰り返し、現場を見渡せるビルの屋上に陣取る。

 しかしコンテナ車を使っての道路閉鎖をした上での戦闘員ヤミーの投入か……。仮面ライダーや警察の力を舐めているのか、随分と雑な手だ。それとも、短期決戦を行える算段があるのか?

 個々の能力は戦闘員ヤミーをG3が上回っており、倒れるのは戦闘員ヤミーのみだ。とはいえ、戦いにおいて数は侮れない。特に今回のような護衛ミッションにおいて数で攻められればいずれは守りを突破される。 

 そんなことを考えていると、G3隊の動きが変わった。戦闘員ヤミーの数を減らす動きから、近づけさせないようにフォーメーションを組み直す。それと同時に議員を乗せた車のドアが開き、彼らは脇の路地へと避難していく。

 

「あのまま車に残るわけにもいかなかったか。ちょうどいい……」

 

 車の中の厄介なライダーは路地に消え、G3隊も路地に戦闘員ヤミーを接近させないことに注力している。動くなら今が良いだろう。

 俺はビルから飛び降りると、最初に道を閉鎖したコンテナ車の裏に着地する。こちら側の野次馬は戦闘員が追い散らしていたようで人影は無い。

 どうやら一発で正解を引けたようだ。

 

「イッー!」

 

 入り口付近で屯していた戦闘員ヤミーどもが俺の姿を見つけて鳴き声を上げる。

 

「五月蠅い」

 

 瞬時に拳を叩き込み連中の頭を砕く。

 音を立てて銀色のメダルが地面に転がる。

 

「数を優先したからか? 脆いな」

 

 攻勢には使えても、守勢に回るとこの脆さは致命的だ。パンチ一発で死ぬような戦闘員は使い物にならない。

 もっとも、初めからヤミーなどを使う気は無いが……。

 俺はコンテナ車の入り口を強引に引きちぎり中に入る。薄暗いコンテナの奥では、固定された椅子に一人の男が拘束されていた。

 

「らぁああああああいだああああああ! らぁぁぁぁぁぁぁいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 VRゴーグルらしき物を被らされた男が、何やら怨嗟の叫びをあげている。

 しかし……。

 

「市販品のゲーム機だろう、あれ……。ミカの部屋で見たぞ」

 

 余りにも情けない光景に、思わず素に戻ったぞ。

 いや、縛られているのは良いよ。でもさ、市販のVRゴーグルに映し出された映像……多分仮面ライダーの戦闘映像なのだろうけど、ゲーム機の映像で怨嗟を深めるってちょっと戦闘員として情けなくない?

 

 まあ良いや。さっさとこの迷惑なおっさんを回収しておくか。

 

 俺はVRゴーグルをはぎ取る。

 素顔をさらしたおっさんは焦点の定まらぬ目で俺の顔を見ると、ひときわ甲高い声で喚き散らした。

 

「らあああああいだああああああああ!」

「黙れ」

 

 もうウザいので、問答無用でパンチを顔面に叩き込んでおく。

 メダルにならないから本物だな、ヨシ!

 

「え? は? ええっ!? ちょ、ちょっと、らっ、ライダアアアアアアアアアッ!?」

「五月蠅い」

 

 くそ、一発じゃ洗脳は解けなかったか。

 洗脳されているのだろうけど、こうも叫ばれたら五月蠅くてたまったものじゃない。黙らせるべくもう一発顔面にパンチを叩き込む。

 二発目のパンチはかなり良いのが入ったらしく、千堂はガクリと白目を剥いて気を失った。

 

 これで静かになった。

 俺は手足を縛っていた鎖を引きちぎると、戦闘員を抱えてコンテナの外に出る。

 

 どうやら千堂が意識を失った途端に戦闘員ヤミーは全て消えたようだ。戦いの喧騒は嘘のように消え、道路には銀色のメダルが散らばっている。耳をすませば此方に向かうパトカーのサイレンの音も聞こえてくる。

 G3部隊の連中は退避した議員たちを追いかけて、路地裏に突入していくようだ。

 これで大勢は決まったな。後は……。

 

「サイクロンヘル、来い」

 

 俺の呼び声に、すうっと静かに白い改造バイクがやってくる。

 こいつの名前はサイクロンヘル。自立思考のできるAIを搭載し、様々な状況に対応できるオプションと2門のレーザーバルカンを搭載する、俺の相棒たるモンスターマシンである。

 

 ……俺はステゴロなのに、なんでこいつは火器を搭載しているのだろうね。

 

 ちょっと泣きたくなる事実はともかく、俺は回収した戦闘員をサイクロンヘルに乗っける。

 サイクロンヘルのエンジンがブルルンと震える。

 嫌がるなよ。鼻血をたらして白目を剥いているおっさんを乗せるのが嫌なのはわからんでもないけど、一応は歴戦のベテラン戦闘員だぞ。

 千堂の手足を固定、頭にヘルメットをかぶせる。前から見たら偉くシュールな姿だろうな……。

 

「こいつを適当なアジトに連れて行ってくれ。俺は……」

 

 路地の方向を見ると、赤い翼をはためかせたオーズが宙に舞い、小柄な人間を抱えビルを飛び移る人物を追っていた。

 あれは、園子さんか……ったく。

 

「やれやれ……。もう少しサービスが必要だな……」

 

 俺はそうつぶやくと、足に力を籠める。あの少女がどうなろうと知った事ではない……が、ショッカーの名前を利用されるのは気に食わない。

 そう考え跳躍をする。

 急がねば、間に合わないだろうから。

 




幕間より本編が短くなるという不具合。
これも映司の主人公適性が高すぎるのがいけない。

そろそろタイトルを

  • 流石にタイトル詐欺なので変更しよう
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