ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第137話 episode・Den-O ここに嘘つきがいます

時の列車デンライナー、その先にあるのは過去か、未来か……。

 

 

 ♪♪♪♪♪

 

 

 子供たちが苦しみだしたのを皮切りに、市を行く人々もまた苦しみ倒れだす。

 菓子に偽装した寄生生物が命令を受けて一斉に動き出したのだ。

 皆一様に腹を押さえ、もがき苦しんでいた。

 

「くそっ!」

 

 頭部のセンサーを通し、人々の胃がある場所で何か蠢く物が見える。おそらくは子供たちが吐き出した蟻もどきと同じ物だろう。

 生体を多く利用しているようだが、どうやらロボット……ドローンやラジコンに近いようだ。命令の元を断てば、動きを止めるな。

 

「ちょっと、しっかりしてください!」

「痛い、痛いよぉ……」

「苦しいぃ……」

 

 倒れた人を、無事な人が必死に介抱しているが、元がゴルゴムの生体兵器だ。

 薬草の行商人らしき若い男が薬湯のような物を飲ませているが、上手くは……ん?

 

「げぇぇぇぇぇぇ」

 

 何やら強力な薬だったのか、口から虫を吐き出した!?

 ギシギシいう白い蟻もどきが地面に落ち蠢くのを見て、俺は驚きながらも慌てて傍まで行くとその虫を踏み潰す。

 

「おい、あんた。その薬は?」

「子供の腹を叩いて虫を出したのを見て、この吐く薬が効くかと思って……」

 

 俺の問いかけに、薬の行商人が驚きと感動の表情で、俺の顔をまじまじと見ながら応える。きっと、彼も俺をリントの戦士と誤認しているのだろう。

 もっとも、勘違いはこの際どうでも良い。それよりも彼が持っていた虫を吐かせた薬の事だ。

 ゴルゴムの虫を吐かせる事が出来るなどすごい効き目だ。正直、俺が腹パンで虫を吐き出させるよりよほど効率が良い。身体へのダメージも少ないかもしれない。

 

「あんた、その薬はまだあるか?」

「売るつもりだったのでそれなりの量が」

 

 よし、それなら行けるか?

 とはいえ、実質ジョアイさんの所の居候である俺は持ち合わせなんて持っていない。

 時間あれば獣でも獲ってくるが、それも難しいだろう。ならば次善の策を講じるしかない。

 

 俺は子供たちを寝かしていたエスさんに振り向くと、声を掛ける。

 

「エスさん、お金を貸して」

 

 そして、自分で口にしておいて、この時代の日本ではまだ貨幣なんて存在していない事を思い出す。

 貨幣なんて概念があるのはローマや中国などの大陸の大国ぐらいか。

 だが、意外にもエスさんは俺の言いたい事をすぐに理解してしまった。

 

「お金? いや、この島にはまだ……あ、いや、わかった。俺の裁量で出せるものを出す」

 

 この人、貨幣という概念を知っている? 海を渡ってきた人間か?

 中国人か何かなのか。

 まぁ、今はエスさんの出自を推測している場合ではない。

 

「すまない、その薬で虫で苦しんでいる人を助けてあげてください。幸い、口から出た虫はさほど強くないので踏みつぶせば大丈夫です」

 

 もっとも、ゴルゴム製だ。腹の中に潜り込み人を苦しめるだけでは無い筈だ。

 間違いなくその次の段階がある。だが、幸い俺が見た範囲で今の段階では腹で暴れているだけだ。時間はまだ少しだけありそうだ。

 

「貴方はどうするつもりで?」

 

 薬売りの男性が訪ねてくる。

 俺は立ち上がると、苦痛の声があちらこちらから響く市を睨みながらこう答えた。

 

「頭を叩きます。少しでも時間を稼がないと」

 

 

 

 辛うじて会話が出来る人から聞いたのは、市の真ん中に露店を構えた老婆が飴を配っていた。それくらいだ。

 倒れた人の介抱を先ほどの薬売りと隊商の老夫婦に頼み、俺とエスさんは飴を配っていたという場所へと向かう。

 

「ついて来なくても良かったんですよ」

「そう言うわけにはいかないだろう」

 

 弓と小刀で武装したエスさんが俺に付いて来る。

 まぁ、狙いがジョアイさん一家ならついて来ない訳には行かないだろう。俺もそれ以上何も言わず彼とともに走る。

 市のあちこちで苦痛で苦しむ人が倒れていた。数にして大体通りを行く人の6割から7割か? 甘みというご馳走を前に、大人も子供もよく考えず受け取ってしまったのだろう。

 ふざけんなよ、ゴルゴム。

 

「あっちで薬を配っています! 動ける人は倒れている人に肩を貸してください!」

 

 俺に出来るのは、こう叫ぶぐらいだ。

 改造人間である俺は、当然だが電波を感知する機能が備わっている。普段サイクロンヘルと会話をしているのも、この機能を使っているのだ。それゆえに被害者の腹にいる虫の存在がわかり、更には微弱な電波を受信、発信する中継器があちこちに仕掛けられている事が分かる。

 すべて叩き潰してやりたいところだが、数が多すぎる事が何とも忌々しい。おかげで、中継地点が多く電波の出所が分かりやしない。

 結局の所、飴を配っていた場所にいるかもしれない親玉を探しに行くよりほかなかった。

 

 飴を配っていた場所はさほど遠くは無い。

 

「ここかっ!」

 

 たどり着いたのは一見すれば行商人のテントだ。

 善意を装い無差別に配ったのだろう。めったに口にする事が無い甘みに釣られた人たちが、老若男女を問わず腹を押さえうずくまり苦しんでいる。

 いつものゴルゴムの手だ。もっとも、ショッカーだってやっている事に大差はないので、俺に怒る資格など無いだろう。

 胸糞悪いから叩き潰すが。

 

「いたい、いたいよ……」

「ううう……」

「うげげげげげ。はっ、腹がいてぇ!」

「モ、モモタロス! しっかりして!」

 

 ただ、緊張感が消し飛ぶような真似は止めて欲しい。

 なんでお前まで苦しんでいるんだよ、モモタロス! いや、子供とじゃれていたから、その縁でここに案内されて食べたんだろうけどさぁ……。

 周囲の人々に混じって腹を押さえ七転八倒しているモモタロスに俺は思わず頭を抱え、ついてきていたエスさんもぽかんと口を開く。

 

「何やっているんだ」

「あ、エスに誠太郎? モモタロスがここで配っていた飴を食べたら、急に苦しみだして」

「は、腹が裂ける!」

 

 まぁ、良太郎さんが食べなかったのは良かったのかな?

 しかしさぁ、なんで人に取り憑くイマジンが寄生虫に憑りつかれているんだよ。

 片腕を天に向かい伸ばし小刻みに震えるという珍妙な仕草で苦しみ続けるモモタロスを見て、俺は深いため息をつきながらこう助言をした。

 

「一回実体化を解けばいいじゃないか。腹に妙なのが入ったんだから」

「あっ!?」

「あっ!?」

 

 野上さんや地面に寝転がりジタバタ暴れていたモモタロスの目が点になる。

 モモタロスの姿が一瞬だけ砂状になると、そのまま腹のあった部分から白い蟻もどきがポトリと地面に落ちた。蟻もどきは何が起きたのか分からなかったのか、キィと鳴き声を上げながら周囲を慌てて見回す。

 その虫をぐしゃりと踏みつぶす赤い足。もちろん再び実体化したモモタロスの足だ。

 

「卑劣な罠を使いやがって! だけど俺には通じねぇぜ!」

 

 嘘つけ。気が動転していて気が付かなかっただろう、お前。

 恥ずかしさを誤魔化すためか、派手な大見得を切って見せるモモタロスを白い目で見つめる。

 俺とエスさんの視線に勿論気が付いているのだろう、頬を一滴の汗が流れるがその点を指摘する事は止めておいた。

 

 丁度いい、飴玉を受け取ったという事は配っていた連中の顔を直接見たという事だ。

 

「それよりも、ここで飴玉を配っていた連中を見たんだろう。どんな奴だった!?」

「あっ、そうだ! あのババァ、ゆるせねぇ!」

 

 俺の言葉に自分が毒を盛られた事に気が付き、憤慨したモモタロスが彼らが立ち去った方向に走りだす。

 止める暇もない、そんな勢いであった。

 

「あっ、ちょっと、モモタロス!?」

「いや、あっちはモモタロスに任せましょう。それより野上さん、ここの人たちを頼みます。ジョアイさんの店の所に薬屋さんがいて、その人の虫下しを飲めば虫を吐き出す事が出来ます」

 

 慌ててモモタロスを止めようとする野上さんを、俺は引き止める。

 飴を配っていた連中がいつまでいたのはわからないが、追うのなら早い方が良い。それに、ここで倒れている人を放置しておくことも出来ないだろう。

 俺の指示を聞き、野上さんが真剣な目で頷く。こう言ったところは流石に伝説の仮面ライダーの一人だ、すぐさま最適な行動をとってくれる。

 そして、やる事を承知した野上さんは最後にこう尋ねて来た。

 

「誠太郎とエスさんは?」

「俺たちは別にやる事があります。敵を、あぶり出します」

 

 

 野上さんが倒れた人に肩を貸し、あるいは道行く人に運ぶことを手伝う事を頼みながら被害者を運んでいく姿を下に見ながら、俺はエスさんを抱えてこの市で一番高い建物、おそらくは火の見櫓か何かの上までジャンプする。

 無論、遊んでいる訳では無い。モモタロスに飴を配っている連中の追撃を任せる事が出来たので、次の手を取る事が出来るようになったのだ。

 

「こんな所に登らせて何をさせるつもりだ?」

 

 エスさんが俺にそう問いかけてくる。もっとも、勘が良さそうなこの人は、俺が何をやらせたいのか分かっているのだろう。背中に背負っていた弓を手に持ち矢をつがえる準備をしていた。

 この場所から市の全容が見える。それほど高い建物は無く、電波の中継器も俺の目にははっきりと判別できる。

 後は……。

 

「ゴルゴムのトカゲ兵を射抜いたエスさんの腕を見込んでお願いがあります。俺の指示する場所にある装置……えっと」

「装置で分かる。続けてくれ」

「わかりました。装置を射抜いてください。あの蟻もどきを操っている機械を破壊します」

 

 俺が破壊して回った方が恐らくは弓で射るより効率が良いのだが、今回はエスさんの弓矢で破壊する事を選択する。

 当然だが別にさぼっての事ではない。ちゃんとした理由がある。

 

 モモタロスが追いかけていった飴を配っていた者たちは、おそらくはこの事件の黒幕ではない。

 理由は簡単だ。態々人の腹に虫を忍ばせるような奴なら、人前に出たりはしない可能性が高いのだ。大抵は手下を使い、自分はどこかに隠れほくそ笑んでいる。

 ただ、同時に電波の弱さからそう遠くにはいない事もわかる。

 

 だったらどうすれば良いか?

 

 中継器を破壊してやれば、怒って出てくるか、逃げるかの行動に出る。

 そして、同じような怪物が壊して回れば逃げる可能性を捨てきれないが、人間が弓矢などといった原始的な手段で中継器を破壊すれば、まず間違いなくプライドを傷つけられた怪人は姿を現す。

 生意気な人間を縊り殺すために。

 

「わかった。どこを狙えばいい?」

「それじゃ……」

 

 俺は木の上や家の屋根など、中継器がある場所を指で差し指示をする。

 エスさんは弓に矢をつがえ、ゆっくりと矢を放っていく。

 

 古代の市がある村はさほど広くないとはいえ、それでも端から端まで数百メートルの距離はある。

 弓矢が狙う事の出来る有効射程は最大で80メートル程度、矢を飛ばすだけなら最大射程は400メートル程度だ。普通に考えれば、俺の注文はかなり無茶な技を要求している。

 

 俺としては、近場の中継器を数個、挑発目的で壊せば良いと考えていた。

 

 だが、そんな俺の無茶な注文をエスさんは難なくこなしていく。

 近場の数個を射抜き、少し離れた場所の中継器も壊し、射程ギリギリの中継器も難なく当てて見せた。

 さらに射程を超える100メートル程度の場所の中継器も一発で命中させ沈黙させる。

 

 ジョアイさんやナスカさんもそうだが、古代人ってすげえな。改造人間の俺よりよほど人類の範疇を越えている。

 仮面の下で驚愕の表情を浮かべる俺に、同じく仮面を被ったエスさんは涼しい顔でこう尋ねてくる。

 

「次はどれを射ればいい?」

 

 神業を見せていてこれである。

 もっとも、俺のヘルメットのセンサーは、作戦の成功を捉えていた。俺は仮面の下で口の端を吊り上げながら、エスさんに次の指示を伝える。

 

「いや、もう十分です。よっと!」

 

 俺はエスさんの返事を待たず彼を抱えると、櫓を蹴って跳躍する。

 俺たちが天を舞うのと、地中から出現したそれが櫓を打ち壊すのはほぼ同時であった。

 

 音を立てて木製の櫓が粉々に砕けていく。

 そして、それを成し遂げた地中から現れた白い巨大な怪物は、生意気な人間がいないことに激怒し、八つ当たりに周囲の建物も破壊していく。

 

 巨大な白い怪人であった。頭は蟻と人間を掛け合わせた醜悪な面構えだ。上半身は割と細身で人間に近い。胸のあたりが盛り上がっている所を見ると、女性型怪人なのかもしれない。

 だが、それ以上に特徴的なのは腰から下だ。巨大に膨れ上がった像程のサイズのそれは人の形はしておらず、虫の腹を思わせる巨大なラグビーボールのような形状であった。

 そこから生える太い足は2対。蟻型怪人。いや、白蟻型怪人のクィーンと言ったところか。

 

「目的は達しました。後は隠れていてください。あれは俺が相手をします」

 

 俺は地面に降り立つと、エスさんを下ろし指示を出す。

 ここから先は怪物との戦いであり、俺の役目だ。人間が危険を冒す必要などない。

 

 一方、俺の言葉が聞こえていたのだろう。

 白蟻女王の視線が俺に向かう。

 

「貴様か! 妾の……ぶべらぁ!?」

 

 何か言おうとした白蟻女王の顔面に向かい、落ちていた櫓の残骸を投げつける。

 別にこんな奴と会話をする気など初めから無い。唐突な凶行に回避も出来ず攻撃を食らった女王に対し、俺は跳躍しパンチを叩き込む。

 

「ライダーパンチ!」

 

 赤いエネルギーの籠った拳は、女王の頭の一部を吹き飛ばし頭部の触覚を吹き飛ばす。

 それと同時に、奴の放つ指令電波が急激に弱まる。やはりあれが電波の発信源か。

 出来れば一発で吹き飛ばせれば良かったのだが、流石はゴルゴムの怪人。不意打ちの一発で仕留められる程に弱くは無い。

 

「貴様ごときが俺と会話をできるなどと思ったか、ゴルゴムの害虫」

「き、貴様ぁ! バダンの怪人かリントの戦士かは知らぬが、もう許さぬ! 殺す! 殺す! 殺す!」

「許さぬ? それは此方の台詞だ。良くもまぁ、好き勝手にしてくれたな」

 

 激高して叫ぶ白蟻女王に冷ややかな視線を向ける。

 そもそも、無差別に虫を飲まし人々を苦しめるような下衆を生かしておく気などない。

 

「やれぇ! 妾の兵隊たちよ!」

 

 その言葉と共に、地面が盛り上がると次々に人型の白蟻怪人たちが地面から姿を現す。

 武器こそ持っていないが、鉈のように分厚く鋭い爪と牙、そして全身に生える棘だけで十分な殺傷能力があるだろう。

 

「一つ教えろ。これは、あの腹の虫どものなれの果てか?」

「そうよ。妾の可愛い子にして最強の兵隊たちよ! ジョアイ抹殺の為、この地も妾の子で満たしてやろうというのに邪魔をしおって!」

 

 なるほど。

 白蟻女王はこの場所だけではなく、他の場所でも人々に虫を飲ませ苦しめたのか。そして、腹の虫が成長しきると、寄生した人間を食い破り白蟻兵士へと変わる訳か。

 こいつらは他の犠牲者のなれの果て。

 

「貴様を滅ぼす理由がまた一つ増えたな」

「滅びるのは貴様だ!」

 

 その言葉を皮切りに、白蟻兵士たちが一斉に襲い掛かってくる。

 動きが思ったより早く鋭い。この間のトカゲ兵士やうちの戦闘員よりよほど上等な動きをしてくる。

 鈎爪を振るい襲い掛かってくる白蟻兵士を迎え撃つ。

 

 強い事は強いが、とはいえ数で攻められた程度で負けるような手合いでもない。

 一体一体を拳で砕きながら、数を減らしていく。

 

 しかし。

 

「中々の性能! だが兵隊はまだまだいるぞ!」

 

 白蟻女王の呼びかけに、先発隊が通った穴を通り白蟻兵士たちが次々に姿を現す。

 無尽蔵お代わりとは、倒せない訳では無いが面倒な。

 そして、白蟻女王の攻撃はそれだけではない。白蟻女王の人間の上半身の腹が唐突に縦に裂けたかと思うと、その奥から何やら液体が噴出する。

 

「くらぇ!」

「受けるか!」

 

 組み付いて来た白蟻兵士を蹴り飛ばし、液体から身をかわす。

 俺の代わりに液体を頭からかぶった白蟻兵士は、音を立てながらその身が泡へと変わっていく。

 

「強酸か!? 汚らしい液体を!」

「終わりではないぞ!」

 

 連続して強酸を吐き出し続ける白蟻女王に、自らが溶ける事もいとわず襲い掛かってくる無限湧きの白蟻兵士。

 ピンチと言うほどではないが、なんともめんどくさい相手だ。兵士を始末しながら、白蟻女王の隙を伺う。この程度の相手なら、いくらでも耐久勝負は出来た。

 

 だが、予想外の出来事というのは常に発生する。

 

 暴れまわる白蟻兵士の一撃で、竪穴式住居の壁が吹き飛ぶ。

 それだけなら、良かった。問題は、その奥に腰を抜かし震えるこの家の住民がいた事だ。

 恐らくは安全だと思った家に籠り、逃げ遅れたのだろう。赤子を抱いた母親とその旦那が、身を寄せ合い恐怖に震えている。

 

「邪魔だ! 人間!」

 

 いつまでも俺を倒せぬことにイラついた白蟻女王が、無意味に逃げ遅れた人に対し強酸を吹きかける。

 いかん! あんなものを食らえば生身の人間などひとたまりもない。

 俺は立ちふさがる白蟻兵士を押しのけると、大慌てで彼らの前に立つ。

 

 幸い、強酸は俺の装甲やエネルギーフィールドを完全に突破するほどの威力は無かった。

 とはいえ、全身に酸を浴び、全身から煙を上げながら俺は片膝をつく。

 

「ひっ!? あ、あんた!?」

「お前ら、無事か? 無事なら早くこの場から逃げろ」

「わ、わかりました!」

 

 肩で息をしながら、何とか立ち上がると後ろの一家にそう伝える。

 エネルギーは無事回復しており、ナノマシンが肉体の修復を開始している。きついと言えばきついが、倒れるほどではない。

 俺の苦しそうな声に、震えていた夫婦はなんとか正気を取り戻し、立ち上がると全速力で走っていった。

 

「ほほう、案外つまらない終わり方よの」

 

 苦しそうな俺を、白蟻女王が超そう混じりに揶揄し、兵隊たちが俺を囲む。

 逃げた人間など眼中にない。俺がダメージを受けた今こそがチャンスと考えたのだろう。

 

「ははっ! この程度のダメージで良い気になるなよ」

「肩で息をしながら粋がるな。念入りに殺してしまいたくなる」

「初めからそのつもりだろうよ。かかってこい、ゴルゴムの害虫ども」

 

 俺の挑発を合図に、白蟻兵士たちが一斉に襲い掛かってくる。

 酸によるダメージで機動性がだいぶダウンした。もう完全な回避は難しいが、装甲と回復力には自信がある。なあに、問題は無い。

 俺は完全に立ち上がると拳を構える。

 

 そんな俺に向かい、白蟻兵士たちが一斉に襲い掛かろうとし……。

 

 

 先頭の一体の頭部を、一本の矢が貫く。

 

 

 白蟻兵士が痙攣しながら倒れた。

 まるでスローモーションに見えるその光景を、不思議とこの場にいたすべての物が呆然と見つめる。

 矢を放ったのは、仮面の男であった。

 

 エスさんはたった今矢を放った弓をその場に投げ捨てると、顔を覆う仮面に手を当てる。

 

「逃げろって言ったろう」

「流石に怪しいってだけで、これ以上見ているだけとは行かないからな。それに……」

 

 彼は仮面とフードを投げ捨てる。

 フードがブラインドとなり、彼の姿を覆い隠す。

 投げ捨てられたフードが風に流され地面に落ち、その奥からまだ若い青年が姿を現す。

 

 彼の腰には、この時代ではありえない機械的なベルトが巻かれている。そして、ベルトの中央には獣が描かれたコアがはめ込まれていた。

 そのベルトに、彼は白いでんでん太鼓のような、あるいはリボルバー拳銃の弾倉のような不思議な形状の白いバックルを装着する。

 それと同時に、何も無いはずの空中にこの時代にはまだ存在しない未来の文字と不思議な図が浮かぶ。

 

『SET!』

 

 この国の人々とは微妙に人種的な特徴が違う、どこか超然とした雰囲気の長身で黒髪の男。

 その手を影絵で言うところの狐の形、人差し指と小指を立て中指と薬指を合わせ、そして指を弾く。

 

「変身!」

 

 青年はバックルのダイヤルを一つだけ回す。

 アクセルを吹かす。

 

『MAGNUM』

 

 未来的な機械音が響き、男の身体を黒いスーツが覆っていく。赤い縁取りの白いキツネを模した仮面を被る。

 何も無いはずの空間に、男の右隣に上半身を守る白い甲冑が出現する。

 甲冑はそのまま横に向かいスライドし、男の上半身に装着される。

 

 白い鎧、白い黄色い目のマスク、風にたなびく白いマフラー。

 それは正しく、狐の仮面ライダーであった。

 

「さあ、ここからがハイライトだ」

 

 その名は、仮面ライダーギーツ。

 2000年後、現代において最も新しい神となった仮面ライダーが、彼の名前であった。




仮面ライダーBLACK「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」
仮面ライダーBLACKRX「こうなれば! リボルケインの反応を追って」
ロボライダー「時を駆けて!」
バイオライダー「助けに行くぞ!」

ディケイド「お前ら大概にしろよ」



暫定歴史年表 未来編  

夢の世界で人々を守っていた無職の好青年が、家族と仲間が待つ現実世界に帰還を遂げた。
この未来は必ず達成される。

2030年、2010年に大量に生成されたセルメダルがタイムスリップで飛来。
それを吸収した未来のコアメダルに自我が生まれる。

2042年、野上幸太郎が誕生。

2043年になると錬金術師グリオンの軍勢により世界は滅びの瀬戸際に瀕していた。
ただし、この未来はパラレルワールドとなり、現在の世界とはつながっていない。

2068年、世界を支配したオーマジオウは人々を苦しめ希望の無い世界を作り出していた。実際は滅亡を待つだけの世界を、仮面ライダーオーマジオウが時を固定して一人で支えている。
だが、時計の針は動き出した。もう未来を止める事など誰にも出来やしない。

2071年になると地上は悪魔に支配される。
ただし、その未来はディアブロの撃破と共に消え去った。

地上は変異植物であるジャマトに支配され人類は住めない環境となる。
ただし、現代のジャマトは人類の隣人としてすくすくと良い子に育っている。

未来では地球に住めなくなった人類は肉体を捨てデータ体となりメタバース空間に生活の場を移す。
ただし、この世界の人類が同じ選択をするとは限らない。

データ未来人の世界が破壊神ゴッドジャマトにより滅ぼされる。
ただし、ゴッドジャマトになる筈だった少年は人を憎む未来では無くライダーと共に生きる事を選択した。
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