ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
時の列車デンライナー、その先にあるのは過去か、未来か……。
♪♪♪♪♪
2000年前の世界。無論始まりの仮面ライダーである1号とはかすりもしない時代ではある。
だが、それがこの時代に仮面ライダーがいない事とイコールではない。
未来人たちが仮面ライダー同士を争わせるクソみたいな娯楽であるデザイアグランプリは様々な時代で開催されており、当然この2000年前の時代でも行われていた。
古代ローマで開催されたデザイアグランプリの勝者が、俺たちの時代に浮世英寿として転生してくる目の前の男であった。
確かにこの男がこの時代に存在している点は不思議でも何でもない。
でもさ、ここ日本だよね? ユーラシア大陸の西にいる筈の人間が、まして東の果ての先にある島にいるのよ?
俺の驚きをよそに、時代は進む。
新たに現れた敵を見て、白蟻女王は憎しみの籠った唸り声を上げる。
「貴様! ギーツ!? よもやこの島に、ジョアイの元におったか!?」
「色々と縁があってな。東の果てまで来て、お前らの顔を拝むとは思ってもみなかったが」
ゴルゴムはそれこそ数十万年、下手すりゃ百万年を超えて活動しているような連中だし、ローマでも活動しているだろう。
ゴルゴムがデザイアグランプリに突っ込んだのか、未来人がゴルゴムにちょっかいを掛けたのかは知らないが、周囲がえらく迷惑を被った事だけは間違いない。
この時代で対消滅して滅んでくれればよかったのだが、どっこいどっちも現代で活動中だ。
いや、BLACKの手でゴルゴムは壊滅したし、デザイアグランプリ運営も目の前の男が倒したんだが。
「丁度良い! ゴルゴムに逆らう愚か者を、まとめて始末してくれる!」
その言葉と共に、白蟻兵士どもが一斉に動き出す。
狙いは当然ギーツと、俺だ。
鈎爪を振りかざす白蟻兵士の腕を掴み取り、投げ飛ばしながら、俺はギーツに声を掛ける。
「その姿、デザイアグランプリの参加者か?」
「知っているか?」
「一応」
姿どころか名前も知っているのだが、そこまでは知らないふりを通す事にする。
こんな世界だ。別に物語通りとかそんな悠長な事を考える気は無い。なんなら、他のライダーの活躍だって俺の知る話とは違う部分が多い。
なんでスーパー1がライダー部の面々に修行を付けているんですかねぇ。ライダー部名誉顧問沖一也って、あんた宇宙開発においては世界的有名人だろう。卒業ライダーキックの前に梅花の型による花束贈呈ってなんだよ!
まぁ、他にもいろいろ調べてみると顛末が違っている事も多いので俺がギーツに干渉しても問題無いだろう。とはいえ、下手な手を打ってこれ以上疑われると害虫退治に支障をきたす恐れがある。
俺は自分勝手なショッカーライダーなのだ。
「とりあえずは味方で良いのか?」
「少なくともこの場ではな」
返答と同時にギーツが握る白い銃、マグナムシューター40Xが火を噴き、火花を飛び散らせながら白蟻兵士の体が砕け散る。
銃というオーバーテクノロジーによりギーツは圧倒的な火力と弾幕を持つが、それでも潜り抜ける白蟻兵士の数も数無くは無い。だが、数を減らしたこいつらなど俺の敵ではない。瞬く間に、白蟻兵隊を拳で砕き吹き飛ばす。
俺とギーツ、二人が倒した兵士たちが次々に爆発四散する。圧倒的な力を見せる俺たちに、白蟻女王が怒りの声を上げる。
「おのれ! おのれ! おのれぇ!」
その叫びに応じ、更に地中から白蟻兵士たちが地下から姿を現す。
もっとも、武器を持たなかったこれまでの兵士たちと違い、剣と盾で身を固め体格も一回り大きい所を見るとあれが白蟻女王の切り札なのかもしれない。
名前を付けるなら、白蟻近衛と言ったところか?
「数を増やしたところで何とかなると思ったのか?」
「これは妾の切り札よ。他の怪人どもにも引けを取らぬ妾が精鋭! 者ども、かかれ!」
白蟻女王の号令に、白蟻近衛たちが一斉に襲い掛かってきた。
なるほど、動きは早く、振るわれる剣の威力も鋭い。僅か一振りで、かすった家の柱を両断し吹き飛ばしている。
さらに、防御力も従来の白蟻兵士より高いらしい。跳躍し白蟻兵士の剣を回避したギーツが、宙返りをしながらマグナムシューター40Xを発砲する。
弾丸は正確に白蟻近衛に命中するものの、甲殻が火花を散らすだけに終わり砕ける事は無い。
怪人並みの戦闘能力。その表現に誇張は無いようだ。
「逃がすか! 者どもいけぇ!」
どうやらそれだけではなく、こいつらも酸の体液を吐き出せるようだ。
ギーツの着地点に向かい数匹が酸を吐き出す。このまま落下すれば、ギーツと言えども酸を浴び無事では済まないだろう。
もっとも、デザイアグランプリの王者、戦巧者のギーツにその心配は無用であった。
『REVOLVE ON』
ギーツがベルトのバックルを操作すると同時に、ギーツが一瞬だけ空中に停止し、彼の周りに円形のギアが出現する。
まるで磔のような構造だが、これは違う。なにせギーツはそのまま横に回転し逆様になったかと思うと、両腕が脚に、足が両腕に変化し、頭が胴体に引っ込み、股間だった場所から首を生やして見せたのだ。
リボルブオン。デザイアグランプリ系のライダーが行う上下のバックルを入れ替える特殊動作だが、全ライダーの中でもWの真っ二つやディケイドのファイナルフォームライドに並ぶ人体の構造を無視した不可思議な変形だろう。
それはともかくとして、銃火器を下半身に集中させたギーツは、そのまま空中で足の銃を発砲する。
怪人を一撃で撃破する銃だ。普段はライダーの力で反動を抑えているのだが、この時のギーツはあえて反動を打ち消さない。そう、反動を利用して空中で軌道を変えて見せたのだ。
「お返しだ。これでも喰らいな」
酸の雨を躱したギーツは白い鎧を再び上半身に纏うと、銃を立て続けに発砲する。
先ほど甲殻により弾かれた攻撃だが、今度の狙いは敵の胴体では無くたった今酸を吐き出し開いた白蟻近衛たちの口の中であった。
体内に入り込んだ弾丸は何度も跳弾し、白蟻近衛の肉体をボロボロにしていく。
そして、ついに限界を迎えた白蟻近衛が数匹爆発した。
一方、俺はと言えばギーツほど華麗な技は無い。
俺に群がり酸を浴びせようとした虫たちを見て、小声でこう呟く。
「ブースト」
通常の加速だが、それで十分だ。
俺は白蟻近衛の間をすり抜けながら、馬鹿のように口を開けた虫どもの顎を殴り飛ばし口を閉じさせる。
「汚い液体を吐き出すな」
俺のアッパーで、奴らの顎と口内に致命的な罅が入ったのだろう。
そこに、自分らが吐き出そうとした酸が染み込み、自らの頭部を溶かしていく。
そして、ダメージが限界値を超えたのか、白蟻近衛は次々に頭を失い倒れていった。
結局の所、白蟻女王が自信満々に出してきた白蟻近衛もものの数分で俺とギーツの前に全て駆逐される。
兵士も打ち止めなのか、もう数は出てこない。
「残ったのはお前だけだ、覚悟しろ」
「ふ、ふざけるな! 妾は、妾はこんなところで死にはせん! こうなればっ!」
追い詰められた白蟻女王は突如、醜く膨れ上がった下半身を切り離す。
いや、違うか?
あのやたらデカい下半身は外付けの追加パーツか? 抜け出した上半身の下には、人と同じサイズの下半身がきちんとついていた。
切り離された下半身がこちらに向かい突進してくる。
そして、俺の頭部センサーが下半身に異様なエネルギーの高まりを感知した。
「爆弾か!?」
「妾の切り札よ! 兵士を育てる機能は一時失われるが、新たな命を生み出す力を爆発に変えれば、辺り一帯は跡形もなく消し飛ぶ!」
恐怖をあおる為か、それとも切り離した下半身に俺たちを集中させるためか、白蟻女王はご丁寧に下半身の能力を説明して来た。
そして、あいつの目指すところは……兵士たちが出て来た穴の一つか。
下半身を爆発させ、その隙に逃げる気なのだろう。
「下らん手だ」
俺は白蟻女王の奥の手を一言で吐き捨てると、突進してくる下半身に向かい駆け出す。
そして、横にいるギーツにこう伝える事も忘れない。
「あの木偶は俺が処分する。あれの処分は頼む」
「分かった」
俺の言葉にギーツは頷くと、彼は逃げ出した白蟻女王に向かい駆け出す。
それを確認した俺は下半身に組み付くと、ベルトが蓄えたエネルギーを一気に放出した。
「パワーブースト!」
攻撃力や腕力を増強する肉体強化を発動。さらに重力軽減まで利用し巨大な下半身を持ち上げる。
だが、それだけでは終わらない。
抱え上げた下半身をそのまま横に回転させる。その勢いに業風が周囲に吹き荒れ、竜巻が天に向かい伸びていく。
行くぞ!
「ライダーきりもみシュート!」
巨大な重量を持つ女王の下半身が、俺の引き起こした竜巻に巻き込まれ天高く上がっていく。
それだけではない。ぶよぶよの体組成は真空の刃でズタズタとなり、あるいは遠心力で引き裂かれ、体液が周囲に飛び散り砕けていく。
そして天高く舞い上がり、限界を迎えはるか上空で爆発し消えて行った。
「ば、ばかな!? あれを投げ飛ばすじゃと!?」
「つまらない奥の手だったな。それと、よそ見をしていて良いのか?」
よほど自信があったのだろう。思わず足を止め空中の爆発を見上げる白蟻女王を嘲るように挑発する。
もっとも、不要なおせっかいではあった。すでに奴のいる位置はギーツの間合いであった。
「まったくだ。ハイライトはこれからだっていうのに」
瞬時に白蟻女王の進行方向に回り込んだギーツが飛び上がり回し蹴りを決める。
あの巨大な下半身に頼りきりで本体の足腰は強くなかったのか、あっさりと蹴りは決まり白蟻女王は宙に向かって弾き飛ばされる。
そして宙を舞う白蟻女王を見据えると、腰のベルトからバックルを取り外し、マグナムシューター40Xの下部に装着した。
『MAGNUM』
バックルから音声が響く。
銃の先端にこれまでとは比べ物にならないエネルギーが迸り、銃を囲うように出現したサークルが力を収束させる。
ギーツの黄色い目が輝き、白蟻女王を射抜く。
「とどめだ!」
解き放たれた光の奔流が、空中で身動きの取れない白蟻女王を射抜く。
桁外れの衝撃に着弾した腹を境に白蟻女王の上半身と下半身が真っ二つになり、さらには末端から砕けていく。
「そ、そんな!? わらわ……が……。わらわこそが……しんかんに……」
何が起きたのか信じる事が出来ない。驚愕の表情を顔にこびりつかせたまま、ゴルゴムの怪人は爆発四散する。
市を自らの巣に変えようと画策した白蟻怪人の終わりは、こんなあっけない物であった。
無論、これで終わりではない。
配られた飴を食べた人間を探し出し、虫を取り出さなければこの事件の終わりとは到底言えない。
とはいえ、一段落ついた事だけは事実。俺とギーツがどちらかともなく互いに視線を合わせた。
多分、ギーツは俺に聞きたい事があったのだろう。彼が変身を解かぬまま何かを俺に問いかけようとする。
何を言い出すか。俺はそれを待つ。
「誠太郎。お前は……」
俺はギーツの2000年の旅路の顛末を知っている。
歴史を守るとかそんな意識は全くない俺だ。ギーツに彼が知りたい事を尋ねられたら正直に話していたかもしれない。
だが、状況がそれを許さない。
まず最初にギーツの問いかけを止めたのは、こんな気の抜ける声であった。
「あー! お前ら何やってやがる! 俺のちょーカッコイイ活躍の機会を奪いやがって!」
うん、誰だか説明する必要は無いだろうけど、一応名前を言うとモモタロスだ。
飴を配っていた連中を追いかけていたモモタロスだ。おそらくは追いついてとっちめたのだろうが、その最中に巨大な白蟻女王が地中から出てきたのを見てこっちにやって来たのだ。
とはいえ、到着したタイミングは、ギーツが白蟻女王を倒した後だった。
喧嘩が三度の飯より好きなモモタロスだ。思わず叫んだのは仕方が無い事なのかもしれない。
「いや、そう言われてもな」
ポリポリと仮面の後頭部を掻きながらギーツ……いやさ、エスさんがなんとも困ったような仕草をする。
まぁ、気持ちは分かる。あの状況でモモタロスを待っている余裕なんて無いし。
俺は変身を解き、そんなエスさんに向かってこう言う。
「気にしなくていいですよ。分かってない訳じゃなくて、素直に『よくやったな』って誉める事の出来ないひねくれものの八つ当たりですから」
「誠太郎! てめぇ、人をツンデレみたいに言いやがって!」
「違うのか?」
「違うわぁ!」
なんとなく、ウラタロスがモモタロスに絡む理由が分かるなー。などと失礼な事を考えつつも、とりあえずの一段落に誰もが弛緩した空気を見せる。
だが、後になってよくよく考えてみればおかしかった。
目的はジョアイさんだろうが、何故白蟻女王はこの地を自らの巣にしようなどと、回りくどい作戦を実行しようとしたのか?
なぜ、少し離れただけの村を拠点化しようとしたのか?
怪人故の慢心と手柄目当ての余計な行動がノイズとなり、この時は分からなかった。
だが、一連の動きを一つとして捉えた時、市という防衛しなければならいない拠点に対する二方向からの攻撃、そして内部に対する破壊工作として考えれば実に理に適った戦術であった。
まぁ、人類を見下す怪人が余計な事をしすぎていて、計画は破綻しているのだが。
それはさておき、エスさんが俺に質問をするより早く、事態が動いた。
それは巨大な白蟻女王を見て軍を動かしたこの町の役人であり、同行したジョアイさんであった。
兵士を引き連れたジョアイさんは、変身したままのエスさんと変身を解いている俺を見て開口一番こう叫ぶ。
「無事か、誠太郎! エス、あとモモタロス! いや、今はギーツか?」
「ああ、変身しない訳にはいかなかったからな」
「いや、それはいい。それよりも、ここにいたのは……」
俺達の無事を安堵するジョアイさんの言葉を引き継いだのは、役人らしき男だ。その姿は、剣を佩き鎧を纏う、完全なる戦支度だ
ギーツの姿やこの場の惨状に動じる事の無い役人は、人間の姿に戻った俺にこう問いかける。
「そこの若者……セイタロウか? ここで暴れていた巨怪は、ゴルゴムを名乗ったのか?」
「ああ、蟻の化け物はそう名乗ったよ」
嘘を言う意味はない。俺は素直にそう答えると、役人は深いため息をつく。
その尋常では無い仕草に嫌な予感を覚えた俺は、失礼とは思いながらもこう尋ねるより他なかった。
「すいません、ここの騒動以外に何かあったんですか? ゴルゴムが何かやったんですか?」
この問いかけに、役人の男は深刻な表情を崩さず、実際に極めて深刻な事態を俺に対して説明した。
「ああ、ゴルゴムの軍勢らしき一団が、この市に向かい進軍していると報告が入った」
邪悪なる軍勢の接近と共に、過去の世界で事件は終焉に向けて加速する。
それは俺の運命を変える、あるいは俺の宿命と使命を知る事になる重大な出来事であった。
Q,2000年ぶりに自分の社を尋ねてきた戦友(第4話参照)が、まだ自分を知る前だった時の創生の神の心情を述べよ(10点)
知ったかぶりの解説
仮面ライダーギーツ(出典:仮面ライダーギーツ)
令和ライダー4作目となる仮面ライダーギーツの主人公ライダー。外見は狐を模したマスクのライダー。
浮世英寿(後述)が変身する。
なお、上半身は白い甲冑と下半身は赤い鎧姿がキービジュアルとして描かれ基本フォーム面をしているが、実は劇中で数回しか出ていないレアフォームである。
浮世英寿(出典:仮面ライダーギーツ)
仮面ライダーギーツの主役の青年。表の世界では「スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ」と呼ばれる世界的大スターであり、デザイアグランプリにおいては不敗を誇る最強のチャンピョン。
その正体は、2000年の時を転生し生き続ける、いわゆる転生者。本人曰く『人が味わう喜びと苦しみ、総てを味わった』
なお、本章登場のエス(エース/浮世英寿)は2000年前の始まりの時と言う設定である。