ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第139話 episode・Den-O 幕間・来集

時の列車デンライナー、その先にあるのは過去か、未来か……。

 

 

 ♪♪♪♪♪

 

 

「白蟻怪人が討たれた……だと?」

 

 山の麓にある市に進軍を指揮するゴルゴムの老将軍は、配下の戦士の報告に流石に絶句する。

 自分たちが市を囲むまで潜伏せよ。そう命じたはずなのだが、寄生虫を見抜かれ先走ったらしい。寄生虫作戦が失敗しても、彼女が連れている白蟻兵士だけで十分な戦力になったものを。

 老将軍はため息をつくと当初思い描いていた作戦を思い返す。

 

 ジョアイが市に入った時点で進軍、包囲。救援は先に砦化した村で堰き止める。その上で先に潜伏した白蟻怪人が内部から破壊工作を行いジョアイを討つ。

 

 当初の計画は先走った怪人たちの手で灰塵に帰した。

 若造とはいえ剣聖の地位にいた男を倒したジョアイを最大の脅威と想定しての策であったが、3万歳程度の若い怪人たちには人間相手にまだるっこしい作戦と考えていたのだろう。

 ゴルゴムは強者となった。それ故の驕りである。自身が薫陶を授けた怪人ですらこうなのだ。平均的な個体は弱いとしても、神の寵愛を受けた人間という種は決して弱くは無いというのに。

 

「おじい様……いえ、将軍。計画が完全に破綻いたしましたが、いかがいたしましょう」

「ここで中止しても三神官に敗北の責任を取らされ粛清されるだけだ。進むしかあるまい」

 

 既に3人もの怪人が討たれ、トカゲ兵士も大勢が討ち取られている。

 ただでさえ老将軍は三神官と政治的に対立している。いや、それどころか創世王すら自身の数倍を生きるこの老将軍を持て余しているのだ。ここで退いたとしても自身は元より老将軍派の怪人や兵士は全て粛清される。

 しかし、まだ1万年に届かぬ時しか生きていない戦士には、老将軍が無理をしてまでジョアイ討伐を目指すのかがわからない。

 

「将軍、一つよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「将軍が奪還しようとしている、あの赤い剣とは一体? ここまでして取り戻さなければならないものなのでしょうか?」

 

 その問いかけに将軍は目を細める。

 ゴルゴムから奪われたので取り戻すという短絡的な傲慢さではなく、目的の物が何なのかをしっかりと考える。

 そして戦士があの剣の事を知らない事は仕方がない。神や悪魔と争っていた時代ならともかく、今は秘されるべき物だ。最低でも5万歳を超え先の世紀王の戦いを目撃していなければ赤い剣の意味など分かりはしないだろう。

 

「そうだな。昔話を聞くが良い」

「はっ」

「古の昔、我らゴルゴムの民は追い立てられ、狩られるだけの存在であった。傲慢なる神は我らを穢れた存在と蔑み、地に満ちた悪魔は我らを不要と断じ、天から来る脅威には成す術もなく逃げるより他ない。そんな弱き民こそがゴルゴムであった」

 

 ゴルゴムの民がいつから存在しているのか、どのような起源があるのかは老将軍にもわからない。だが古の昔、幼き日々は神の下僕や悪魔の先兵から逃げ続ける日々であった事を、父母や兄弟を見捨てて逃げるより他無かった事を老将軍は今でも昨日の事のように思い出す事が出来る。

 それから幾星霜、ゴルゴムの民は滅びずこの世界の闇に生き続けている。

 それというのも、彼らに救いをもたらす者が存在したからだ。

 

「初代の創世王様が何者なのか、儂にはわからん。ゴルゴムの民なのか、他所から来た存在なのか。だが、あの時確かに我らは救われた」

 

 当時散逸し、外敵に狩られるだけの存在だったゴルゴムの民をまとめ上げたのが創世王と二人の皇子であった。

 創世王の絶大な知恵と力が、弱き存在であったゴルゴムの民を怪人という価値ある存在へと押し上げた。創世王より与えられたサタンサーベルを振るう二人の皇子は神の下僕も、悪魔の先兵も、天より降り立った脅威すらも切り伏せゴルゴムの民を勝利に導いた。

 追い立てられるだけだったゴルゴムの民は、何時しか恐れられる存在となっていた。

 

 だが、その繁栄も永遠には続かなかった。

 数万年、数十万年を生きるゴルゴムの怪人ではあったが、創世王はその絶大な力ゆえに5万年という僅かな時間しか生きる事が出来ない。だが、創世王が失われればゴルゴムの民は再び追い立てられるだけの存在となる。

 創世王の跡を継ぐ者が必要だ。

 そして後継候補として挙げられたのが二人の皇子であり、その時より皇子たちは世紀王となった。

 

「神と悪魔は、世界をいかようにでも作り変える事が出来る。そんな時代だ。当然、新たな創世王は最強である事を求められる」

 

 かつて背中を預けあい脅威と戦った二人の皇子は、世紀王として互いに刃を向けた。

 憎しみあった訳では無い。権力を欲していた訳でもない。ただ、民を守る為に最強となる必要があった。

 血を分けた兄弟であり、同じ時を生きた友である二人の世紀王は、血の涙を流しながら互いが持つサタンサーベルをもう一人の世紀王へと振るう。

 何時しか白銀の輝きを放っていたサタンサーベルは、互いが流す赤い血の色に染まっていた。

 

「そして、世紀王が兄弟にサタンサーベルを突き立て戦いは終わった」

 

 倒れた世紀王は友に、兄弟に全てを託し息を引き取る。

 世紀王の身体より抜け出したキングストーンが、生き残った世紀王に吸収され、彼の者は新たな創世王となった。

 ゴルゴムなら赤子でも知る、古の神話であり歴史的事実だ。

 

「本来なら、この時残された二振りのサタンサーベルは、次代の二人の世紀王へと受け継がれるはずであった……」

 

 だが、愛され尊敬された世紀王の死を前に、創世王すら悲しみに暮れる中でそれは起こった。

 唐突に現れた一陣の次元の嵐が、世紀王の手より零れ落ち地面に突き立ったままのサタンサーベルを運んでいく。

 友の、兄弟の形見を奪わんとするそれに創世王が嘆き叫びながら手を伸ばすが、その指先がサタンサーベルに届く事は無かった。

 

 それが神の仕業か悪魔の技かは誰にもわからない。

 ただ確かな事は、この時サタンサーベルの一振りがゴルゴムから失われた。ただ、それだけだ。

 

「お待ちください、おじい様!? それがあの、憎きジョアイが奪った赤き剣なのですか!?」

「そうだ」

 

 およそ10年ほど前だろうか。

 何の前触れもなく発生した次元の歪みから赤き剣が唐突に出現した。近づく怪人を消し飛ばすほどの力を秘めたその剣こそが、古の昔に失われたサタンサーベルの片割れであった。

 

「しかし、それならなぜゴルゴムは組織を挙げてあの剣を取り戻そうとしないのです? いや、なぜ剣聖ごときがあの剣を持ち出して!?」

「邪魔だったのだろう、三神官にはな……」

 

 そして、創世王にとって。老将軍は考えを言葉には出さない。

 だが、彼の推測は間違っていないだろう。サタンサーベルの力は絶大だ。それこそ二人の世紀王のどちらかが握れば、戦いの決着が容易につく程の力を秘めている。

 2000年後に迫った創世王継承の儀式。公平な戦いを求められる世紀王同士の戦いだが、周囲が必ずしもそれを歓迎しているとは限らない。いざという時、戦いをコントロールする手段が必要だと考える者も少なくは無い。

 その為の手段が絶大な力を持つゴルゴムの聖剣サタンサーベルだ。勝たせたい世紀王の手に渡せばよい。その為にはもう一本のサタンサーベルなど邪魔でしかない。

 

 とはいえ、初代の遺産である失われたサタンサーベルを自らの手で破壊するわけにはいかず、その手段も無かった。

 それゆえに、何も知らない剣聖に渡し、歴史の闇に失わせる事を企んだのだ。

 

「なんと……不敬な」

「半分は儂の推測だが、そう間違ってはおるまい。三神官にも言い分はあるだろうが、あれは初代の遺産。未来に渡すべきゴルゴムの宝だ」

 

 二振りのサタンサーベルが揃えば、神々や悪魔が力を失いし今ならゴルゴムがこの世界を手に入れる事も出来る。

 このまま行けば、神が去ったように、悪魔が眠りについたように、天からの脅威が封じられたかのように、傲慢に支配されたゴルゴムもいずれは消え去るのではないか?

 ゴルゴムを正すためにもあの剣の威光は必要では無いか?

 

 長い時を生きた老将軍は、この世界の危険さと焦燥ゆえに軍を進める。

 どれだけ力を秘めていようとも、たった一振りの剣に過大な期待を掛けている事の愚かさを自覚しないままに。

 

 

 

 

「デンライナーと常磐ソウゴが過去に向かったな」

 

 そう発言したのは、奇妙な男であった。

 かなりの長身を誇る男だ。美丈夫という言葉が似合うだろう涼やかな印象を受ける男であり、身に着けたタキシードも実に様になっている。

 ただ、それは男がいる場所が怪しげな機材が並べられた、薄暗い洞窟の奥底でなければだ。

 

 その男の発言を聞いた残りの二人の内、一人は何とも嫌そうな表情を浮かべる。

 嫌そうな表情を浮かべたのは門矢士、またの名を仮面ライダーディケイド。マゼンタの二眼レフを胸から下げた男は、タキシードの男の言葉にこう返す。

 

「デンライナー組は良いとして、ソウゴたちまで過去に向かったのか?」

「誠太郎と絆を結んだんだ。助けてやろうという気にもなるさ」

 

 古い古い、一番初めの自分の思い出を掘り返しつつ、タキシードの男は士とは正反対の笑みを浮かべ言葉を返す。

 底抜けのお人よし、悪ぶっているがまったく似合っていない男。共に旅をした時間はそう長くは無いが、それでも渡世誠太郎と野上良太郎、そしてモモタロスの3人は彼にとってとても印象深い連中であった。

 

「随分買っているんだな」

「いや、お前と同じで戦いには全く向かない奴だと思っているさ」

 

 誠太郎の戦闘センスは非常に高い。神となる前の自分が真正面から戦えば、必ず勝てるとは言えない。

 だが、その戦闘センスに反して戦いに向いている性格かと問われれば、男は肯定する事が難しいと答えるだろう。誠太郎は我が身と魂を刻むことに躊躇が無さすぎる。超人的な精神の持ち主というわけではない。あれではいずれ限界が来る。

 

「だが、あの子は戦う。押し付けてしまった宿命ゆえにな……」

 

 この薄暗い場所の主、巨大な骸骨の頭部を持つ虫の化け物、ブラックサタンが二人の会話に割り込む。

 その声は邪悪の化身とは思えぬほど疲れ果てた声であった。

 そんなブラックサタンに対し、男の声は少し厳しい。だが、それでもこれだけは聞かずにはいられない。

 

「ブラックサタン、一つ教えろ。いつから彼が誠太郎だと気が付いていた?」

 

 アインロールドの、誠太郎の存在に気が付いてすぐに男が思った疑問だ。

 ショッカーに魂を囚われているのは良い。誠太郎の願いをかなえるためには、まだショッカーにいる必要がある。

 だが、それならブラックサタンはいつから気が付いていた?

 

「報告を受けてすぐに気が付いた。それゆえに、特別なサタン虫を奴の頭に埋め込んだのだ」

 

 誠太郎を改造したミカ・ウエストの技術力は隔絶したものがある。その彼女が最大級の人類の脅威に立ち向かう事を想定して製造したのがアインロールドだ。

 洗脳手術は決して生易しい強度で行われたわけではなく、本来なら誠太郎の人格は完全に破壊されるはずであった。それを前世の人格と継接ぎをして、使命感で強引に回復させたのが今の彼らが知る誠太郎の人格だ。

 だが、そんなあやふやで不確かなものがいつまでも持つわけがない。ミカを始めとした子供たちには隠し通していたが、誠太郎は再洗脳が行われるまでの間は常時耐えがたい苦痛に苛まれており、サタン虫による調整を施さなければ再度の人格崩壊もあり得る状態であった。

 忠誠の刷り込みより修復や治療に手間取ったと、ブラックサタンは付け加える。

 

 感情を交えず淡々と話すブラックサタンの雰囲気に、流石の士も普段の毒舌を出す事が出来ずにいる。

 一方、そんなブラックサタンも目の前の男に聞きたい事があった。

 

「何故、あの時代の貴様がライダーの力を持っている?」

 

 あの時代のデザイアグランプリは現代で行われたゲームとは違い、生身による戦いを行っていた。デザイアグランプリの運営が参加者にライダーの力を与え派手な興行に移行したのは近年の出来事だったはず。

 だが、あの時のこの男は確かにライダーの力を以て戦っており、そのことに矛盾を感じている様子も無かった。

 ブラックサタンの問いかけに、男は苦々し気に答えた。

 

「本来なら、俺があの時代に飛んでケリをつけるつもりだったんだがな」

 

 神として、あの時代に発生した脅威は見逃す事など出来ない。

 人として、戦友たちの結末を覚えているゆえに過去に遡ろうとした。

 幸い、未来からやって来た自分を知っている。それを真似て過去に飛び、自らの手でケリをつける気でいた。

 だが……。

 

「俺はあの時代に弾かれたよ。おかげで、到達してしまった力の一部が過去の俺を少し上書きしてしまった」

 

 端的に言えば純粋な事故だ。時間移動に失敗したあげく、力の一部が分離して過去の自分を上書きしてしまったのだから笑えない。

 おそらくは過去のエースは何故ライダーの力を使えるかなど疑問を抱いていないだろう。エースとしての人生の間はデザイアグランプリも変身して戦っていたと思っている筈だ。

 なんなら、デザイアグランプリがライダーバトルに移行したのは、自分の力に運営が巻き込まれた結果かもしれない。

 

「貴様ほどの神があの子たちのいるあの時代を起点に歴史改変を企てれば、弾かれて当然だ」

 

 もしブラックサタンの髑髏の顔に肉と皮があったのなら、冷めた目で男を見つめていただろう。

 この怪異にしては珍しく、悪意抜きの呆れが声に籠っていた。

 

 もっとも、神をやっている男の面の皮は案外厚い。狐の神なのだから、口だけは回る。

 深々と溜息をつくと肩をすくめこう返す。

 

「厄介だな。観測者の力って奴は」

「そうだ。それゆえに我も過去を知るゆえに見に徹するより他なかった」

 

 改変に対して高い抵抗力を持つのが観測者の特徴の一つだ。

 かつてあるイマジンがアインロールドの歴史を改変してしまったが、あれは観測者に関する知識が無い上に起点が別の人間であった事による偶然の産物に過ぎない。

 観測者の事を知る神が観測者を起点に歴史改変を企てれば、弾かれてしまう事も当然であった。

 

「さて、どうする? 我はこの場で待ち続ける気だが?」

「古い馴染みの顔を見に来ただけだ。俺は自分の社に帰るさ。じゃあな」

「そうか。さらばだエース……いや、浮世英寿よ」

 

 ブラックサタンはその男、創世の神であり仮面ライダーギーツとなった男、浮世英寿に決別の別れを告げる。

 

 これまで矛を交えた事が無いのは単なる偶然だ。かつての友情も、2000年という月日の間にもはや相容れぬものとなっていた。

 ここを出れば、仮面ライダーとブラックサタン大首領という本来の関係に戻る。ただそれだけの事だ。

 

 英寿の気配が完全に消えると、ブラックサタンはこの場に残った士へと声を掛ける。

 

「それで、大首領代行殿は如何する? 我を処するか? それとも、郎党が向かった過去に飛ぶか?」

「どっちも無しだ。別にお前がショッカーに不利益となる行動をとった訳でもないし、過去に飛ぶには少々力を使い過ぎた。あの馬鹿に付き合うとまた疲れそうだしな」

 

 先日山梨で起きたネオショッカーによるミラーモンスターのスタンピード事件。その際士は一人で数十人のライダーの姿を取るという無茶を行った。

 流石のディケイドと言えどもその消耗は無視が出来る物ではなく、身体はそれなりに休養を欲していた。

 

「まっ、ジオウにゲイツ、それにクウガが二人も行くんだ。サボっても問題は無いだろう」

 

 その言葉を最後に、門矢士もまたオーロラカーテンの向こう側に姿を消す。

 休養を欲しているのは本当だろう。だが、何かあれば過去に向かうのだろうとブラックサタンは推測したが、その事を口にする気は無かった。

 ブラックサタンはただ懐かしき過去に思いを馳せ、静かに時を待つのみであった。

 

 

 そして……。

 

 

 

 

 

 ほんの少し前まで白蟻怪人が起こした寄生虫テロで大騒ぎであった市は、今度は迫りくるゴルゴムの軍勢に対する備えで大わらわであった。

 一応は国より役人が派遣されている大きな村ではあっても、そこまで軍の備えがある訳では無い。精々、夜盗や野犬対策が関の山だ。

 

 そんな村を高台から一人の男が切り株に腰を掛け見つめている。

 彼はほんの少し前まで、村で平凡な薬売りに化けていた男だ。

 

 細身の、ごく平凡な彼はこの時代なら特に珍しくない衣服を身に着け、髪を適当に伸ばしている。

 ひげを蓄えない顔は意外に童顔で、まだ二十代半場程度だろうか? 優し気な整った風貌の男は、村を静かに、悲しそうに見つめていた。

 

「探しましたよ。こちらにおられましたか?」

「ああ、灰ウォズか」

 

 男の背後から、長身の奇妙な出で立ちの男が姿を現す。

 この時代ではまず見ない風俗だ。身体の上下を隠す意匠など大陸に渡らなければまず無い。首から下げた布切れに何の意味があるのか。

 もしこの場に未来の人間がいれば、スーツ姿の男が古代にいる事に首をかしげたであろう。

 

 男の名は灰ウォズ。

 未来に於いて、アインロールドが追い求める宿敵となる男だ。

 

 灰ウォズは男の傍によると臣下の礼を取ろうとするが、男は片手でその動作を止める。

 王宮では無いのだ。こんな所で畏まった仕草など堅苦しすぎて息が詰まる。

 

「王よ、なぜこのような所に? それに先ほどは薬を配るなど?」

 

 臣下の礼を止めた灰ウォズは男に向かいそう問いかける。

 あの村はゴルゴムの軍勢により滅びる、それはもはや決定事項だろう。

 そんな村で虫下しを配るなど、道楽が過ぎるのではないか?

 

 そんな配下の疑問に、男は苦笑いを浮かべながらこう答える。

 

「村や国は滅んでも、人まで無駄に死ぬ必要は無いと思っただけさ」

「それは……何ともお優しい」

 

 皮肉抜きに、灰ウォズはそう考えている。

 彼が仕える王は、心優しい王だ。自らが治める国のみならず、周辺諸国の民の事まで考え惜しみなく支援を送る。そんな王だ。

 先進的な知識と絶大な力を持つ王の手により、彼らの周辺諸国から尊敬される大国へとのし上がった。

 

 そして、滅んだ。

 

 この世界は人の繁栄をよきことと思わぬ怪異が数多くいる。

 その一体との死闘の末に退ける事にこそ成功したが、田畑は焼かれ河川は干上がり、国は不毛な砂漠の奥底に沈んだ。

 

 その悲劇を経験しても、彼らの王は諦めていない。

 人を救う事を、世界を救う事を諦めていない。

 

 同じ悲劇を繰り返さぬために、怪異に負けぬ世界を作る為に王は戦い続ける。

 

「ジョアイという男に会いたかったんだけどね、不在で会えなかったよ。代わりに変な存在を見かけたが」

「変な存在?」

「未来における怪異の一つさ。ショッカーライダーがこの時代にいるとは思わなかったよ」

「いずれ現れる人類の敵でしたか?」

 

 かつて王から聞いた、未来に現れるという伝説の戦士たちの話。

 仮面ライダーなる存在の主敵となるのが、ショッカーなる集団であったと灰ウォズは思い出す。

 しかし、王の予言が確かなら、ショッカーの出現は2000年後の筈では?

 

「イマジンと共にいたから、タイムスリップしたんだろう。それにしても、頭の打ちどころでも悪かったのか、人助けをしていたよ」

 

 ショッカーの怪人は誘拐、改造され、洗脳により邪悪な精神を得る。もしかすると。あのショッカーライダーは、洗脳を打ち破ってみせた彼の知らない物語の善良な個体なのかも知れない。

 自身が万能ではない事は重々承知だ。そもそも闇のテオスに創造され、ゴルゴムやバダン、グロンギやギフなどが同時に存在する世界だ。彼の持つ知識が何処まで役に立つかなど分かったものではない。

 とはいえ、それはそうと困った事態になったことは否めない。それゆえに潜入を中断し、この場所に戻ってきたのだ。

 いや、潜入していてよかったと思うべきか。知らなかった場合は対応できなくなっていたかもしれない。

 

「電王にギーツ、それにショッカーライダーか。ちょっと過剰戦力すぎるな」

 

 男はそう言うと苦笑する。

 あのままゴルゴムの軍勢が市になだれ込めば、そのどさくさでもう一本のサタンサーベルを永遠に消し去る事が出来る筈であった。

 だが、二人のライダーとショッカーの改造人間がいるなら話は別だ。ゴルゴムの老将軍は極めて優秀な指揮官で戦士だが、それでもライダーという存在がいるだけに防衛を成功させる可能性が限りなく高くなる。

 

「しかし、電王はともかく何故ギーツが? この時代には存在しない筈なのに」

 

 見た感じでは、電王と共にタイムスリップしてきたという様子では無い。

 もっとも、考えても仕方がないとその思考をすぐに中断する。考えすぎる事は、自分の悪い癖だ。やるべき事とは直接は関係ない。

 彼は意識を切り替え、背後に控える灰ウォズに向かい、準備の進捗を訊ねた。 

 

「こちらの準備は?」

「騎士たちはすでに配置についております。他の準備も滞りなく完了し、後は王の到着を待つだけです」

「そうか。我らが出ないで済めばいいのだが……」

 

 理想で言えば乱戦の最中、あの赤い剣が失われるのが一番良い。

 だが、そうは上手くいかないだろうと男は考えていた。

 

 男は切り株から立ち上がる。

 それと同時に、男の纏う装束もその姿を変えた。

 

 華麗な装飾の程された威風堂々とした金属製の鎧に、青きマント。

 腰に佩くのは自らの手で打ち、作り上げた聖剣アメノトツカリバー。

 その姿は、正しく戦場の王であった。

 

「もう一振りのサタンサーベルを消す。そして、残っていてはならぬリントの国を亡ぼす」

 

 救済の為、未来の為、王は立ち上がる。

 彼の名は白夜王。

 

 歪み果てた救済の志を胸に戦う、古代の英雄であった。

 




ゴルゴムA「そうじゃ、そうじゃ。ワシの親父も神の魔の手に……!!」
ゴルゴムB「親父もロード怪人に殺された!! 人間の女子供を10人ぽっち拷問しただけで……。血も涙もねえ!」
ゴルゴムC「救いは……ゴルゴムに救いはねえのか!? オレらこのまま死……死んで……ッ」

闇のテオス「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」
初代創世王「まって! まって! ちゃんと教育するから、よそ様に迷惑かけないように躾けるから!(なお」





ちょっと言い訳。

転生者複数を匂わせた時、かなりの反発を受けました。
正直かなりショックでしたが、それでも私としてはこの要素は外せませんでした。
何故ならこの話が仮面ライダーであり主人公を転生者に設定した以上、その敵も『同じ力を持つ』必要があったからです。
ここからの話、この要素も絡んでくることになるかと思いますが、ご了承ください。
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