ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
役人の屋敷は右に左にと大わらわだ。
無理もない。あと1日程度でゴルゴムの軍勢がやってくるのだ。大きな市とはいえ、そこまで軍備がある訳でもない。盗賊対策や野生動物を追い払う事が精々だろう。
応援を頼もうにも、ゴルゴムの出現した位置は市から近すぎだ。応援が来る頃には市は蹂躙され、無人の廃墟と化している事だろう。
普通に考えて、詰んでいる。
「戦えない者をリントの里の方角に逃がし、戦える者は援軍が来るまで市で耐えるしかあるまい」
市の管理を行う役人が、重苦しい雰囲気を隠さぬままこの場にいる全員に向かい己の考えを述べる。
その言葉に若い役人が反論した。
「この地を捨てて全員で逃げるのは?」
「無理だ。怪物どもの足は我らより早い。誰かが残り抑えなければ、全員が食われて終わりだ」
その役人の意見を、オブザーバーとして会議に参加していたジョアイさんが首を横に振り否定する。
怪人と簡易怪人であるトカゲ兵士で構成された軍勢だ。彼らの身体能力は人間より優れており、進軍速度も当然速い。
逃げたところで追いつかれる。そして、柵や堀の無い道の真ん中で遭遇すれば、身体能力で劣る人間など容易に蹂躙されるだろう。
それにしても、この時代の連中はゴルゴムに慣れてないか?
俺は疑問に思い、横にいるエスさん……いや、エースさんに率直に尋ねた。
「ここの連中、ゴルゴムと戦い慣れているみたいだが?」
「ああ。俺も人から聞いた話なんだが、10年ぐらい前にもこの島でゴルゴムの軍勢が暴れた事があったらしい」
なんでもゴルゴムの剣聖に率いられた軍勢が、各地の村を襲撃し焼いて回るという事件があったらしい。
各地の村の戦士が終結して反撃を行い、ジョアイさんが剣聖を討ち取り事件は一旦の収束をみた。
当時の経験から連中に降伏したところで皆殺しにされるだけというのが、彼らの共通認識だそうだ。
基本的に人間や人間の文明に価値を見出していないからな、ゴルゴム。
利用する事は有っても、維持する気なんてさらさら無いだろう。用が済めば消されるだけだ。
しかし、現代の政治家や経済人より脅威を直接感じていただけあってまともだ。
現代で仮面ライダーBLACKにゴルゴムは壊滅させられたって言うのに、政治家や経済人などの成功者の中には隠れゴルゴムシンパってのは非常に多い。
残党ショッカーなんかは政治への工作を強めているので、連中のシンパとはよくぶつかる。人類を裏切った政治家や経済人の護衛(という名の監視役、もしくは飼い主)の怪人と何度戦った事かわからない。
ゴルゴム怪人が持つ数万年に及ぶ寿命ってのは、あの手の連中には魅力的に映るようだ。
会議は白熱しており、戦う事、逃がす者の選定に進んでいる。
まぁ、俺がこの場にいても仕方がない。それに聞きたい事は聞いた。
俺は誰からも注目されていないのを良い事に、会議室をそっと抜け出した。
「誠太郎?」
「あれ? 誠太郎お兄様?」
外に出た俺は、炊き出しの手伝いをやっていたナスカさんとマイちゃんにあっさりと見つかる。
ちょいと腹ごしらえをしてからと思ったのは失敗だった。それと、まとわりついて来るな蟷螂に蜻蛉、頭が重い。
俺は飛びついて来た二匹の首根っこを掴み引き剥がすと、ナスカさんとマイちゃんにそれぞれ渡す。
「いや、会議で意見を求められてもわからないし、戦いになるなら今の内になんか腹に入れておこうかなって」
嘘は言っていないので、ヨシ!
そんな軽い調子の俺の目を、ナスカさんがじっと見つめる。
そういう目で見られると、なんともやりにくいなぁ……。
「危ない事をする気ですか?」
「ここは戦場になるんだ。危なくない所なんて無いよ」
誤魔化す気がある訳では無いが、それでも核心から話をそらす。
そして、彼女が配っていた米を固めたものと肉の入ったスープをひょいととる。
一口口に含む。調味料が貧弱だけど、美味しいな。
「誠太郎は残って戦う……」
「ん~」
ナスカさんの言葉を遮り、周囲を見渡す。
虫の被害にあって弱っている人、戦う準備をしている人々、そして不安そうに身を寄せ合う人々。
まっ、ほっとけないな。
「誠太郎お兄様!」
俺の様子がおかしいとでも思ったのか、マイちゃんが何か叫ぶ。
しゃがみ込み、彼女と同じ位置まで視線を下げ、そして頭をガシガシと撫でる。
ふと思い出す苦い記憶の数々を無理やり飲み込み、俺は彼女に向かいこう話す。
「大丈夫だ。俺が何とかしてやるよ」
そう言うと、俺は立ち上がりもう一口だけナスカさんが作った料理を口にすると、彼女たちに背を向ける。
「!!」
「んじゃな、御馳走様」
ナスカさんが何かを叫んだが、俺はその言葉を耳にする事なく背中を向け掌をひらひらと左右に振りこの場を後にした。
そして……、俺はその場を後にする。
目的地に到着したころには日は完全に落ち、あたりは夜の闇が支配する時間となっていた。
もっとも、俺の両眼は闇などものともしない、目的の相手はすぐに見つける事が出来る。
暗い森の中で、トカゲの身体を持つ兵士たちが焚火を囲んでいた。
彼らが口にしているのは酒に当たる液体と、少し前まで生きていた物の手足を焼いたものだ
心が冷めていくのがわかる。
俺は静かに歩みを進め森を抜け、そのトカゲ兵士たちのすぐ傍まで近寄る。
「あんだぁ? どこの怪人さまだぁ?」
酒に酔っているのか、それともまともに話す機能が無いのか。トカゲ兵士は呂律の回らない口調で俺に声を掛けてくる。
ちょうどいい、まずはこいつらからだ。
俺は手近にいたトカゲ兵士に狙いを定め、こう答えた。
「ショッカーの怪人だ」
そして拳を振るう。
酔っていた上に完全に油断していたトカゲ兵士に俺の拳を避ける手段などない。頭部を拳で撃ち抜かれたトカゲ兵士はゴムまりのように軽々飛んでいき、地面に数回バウンドした後に爆発を起こして消滅する。
「なっ!? 貴様!?」
「何をする!」
仲間が殴り飛ばされ爆発した事に、酒盛りをしていたトカゲ兵士たちが慌てて手元にあった武器を握る。
だが、その動きはあまりにも遅い。
俺は殴り飛ばした体勢から拳を開き、手刀を作るとあたりの兵士を纏めて薙ぎ払う。
「ライダーチョップ!」
赤い閃光が夜の闇を切り裂く。
その輝きに触れたトカゲ兵士たちが次々に砕け散り、爆発して果てていく。
ここに来て、ようやく何が起きているのかを気が付いた兵士の一体が大声で叫ぶ。
「て、敵襲だ! 敵襲!」
「ノロマめ」
騒がれた方が都合が良い。
そうでなければ、態々一人でゴルゴムの軍勢がいる場所まで走ってやって来た意味が無い。
いくら俺とて、一人で千を超える軍勢を仕留めるのは骨だ。こいつらが俺の所に死にに来てくれれば楽と言うものだ。
そう考えゆっくりと歩みを進めながら散発的に襲ってくるトカゲ兵士や怪人を始末していく。
怪人を5体ほど始末したところだろうか。おっとり刀で動き出したゴルゴムの軍勢が囲みを完成させる。
前方で半円状に陣を組むゴルゴムの兵士と怪人たちが、月明かりを受け不気味な姿を現す。
そんな悪夢のような軍勢を割り、指揮官らしき女怪人が姿を現す。
ゴルゴムの連中の年齢を考えても仕方ないのだが、顔形だけなら若い女だ、多分。ピエロというかチンドン屋というか、俺たちまともな人類には理解しがたい顔と右腕を白い塗料で塗り固めた化粧と、どこか生物じみた怪人鎧のせいで正直年恰好より生物的な嫌悪感が先行する。
ゴルゴムの怪人は大体あんなもんなので、いい加減に慣れたが。
さて、やって来た女指揮官は俺が暴れた結果を見ながら驚きと感嘆の声を上げる。
「まさか我らが怪人を倒すとはなかなかの腕前。だが、貴様のような戦士は見た事が無い! 何が目的だ! 貴様何者だ!」
まったく、ぴーちくぱーちく五月蠅いったらありゃしない。さっさと片付けたいというのに、無駄な前口上を上げやがる。
とはいえ、挑発し俺に連中の軍を集める必要がある。
ふと、思いつく。この世界だとあのおっさんが実際に言ったかどうかは知らないが、問われたからにはこう答えてやろう。
「殲滅。ショッカーライダーアインロールド」
こいつらが市に攻め込む前に殲滅する。それが俺の目的だ。
その為には挑発し、俺に引き付ける必要があった。ならば下らない前口上に付き合うのも一興。一体残らず殲滅する事をここに宣言した。
俺の言葉にゴルゴムの連中の殺気が膨れ上がる。怪人である事を驕り、人類を見下すゴルゴムだ。見ず知らずの戦士に殲滅するなどと言われ、引き下がれるような連中ではない。
恐らくは一番短気だっただろう怪人が、腕の刃を振り上げ隊列から飛び出してくる。
「生意気な! くたばれ!」
その動きに対応しようと構えたところで、俺は思わず動きを止める。
なぜなら構える必要など無かったからだ。
闇を切り裂き飛来した赤い刃が、その怪人の胴体を両断する。
刃はそのままUターンしてもと来た場所に戻ると、音を立てて再び一つの剣に戻った。
おのれの獲物が元に戻った事を確認したそいつは、剣を肩に担ぎながらゆっくりと森から姿を現す。
「なら、俺の目的は大喧嘩だな。仮面ライダー電王だ、覚えておけ!」
そう、森の中から出てきたのは赤い巨大な複眼の仮面ライダー電王であった。
何も言わずに出て来たのに、何故?
驚く俺に電王の中から二つの声が響いてきた。
「黙って行くなんて、驚いたよ」
心配そうに語りかけてきたのは野上さんだ。
「全く水クセエじゃねえか。こんな大喧嘩に俺を誘わないなんてよ」
そして、軽い調子で好戦的な笑みを浮かべているだろう声の主が、イマジンのモモタロスである。
まったく、相談したらついて来るだろうから一人で出て来たというのに、何だって来るかな、こいつら。
「俺一人で十分だというのに」
俺のこの言葉に答えたのは、電王では無かった。
唐突に森に銃声が連続で響きわたり、今にも飛び出しそうだったトカゲ兵士たちが次々に倒れる。
電王以外がその事に驚く中、木々を超えその男が俺の横に降り立つ。
「悪いな、一人じゃなくて四人だ。おっと、目的は怪物退治。仮面ライダーギーツ」
白いキツネの仮面に白い胸鎧。そしてこの時代ではオーパーツの白い銃。
現れたのは、仮面ライダーギーツであった。
「姫さんが俺たちの所に飛び込んで来たよ」
ああ、なるほど。マイちゃんが野上さんやエースに俺の様子がおかしい事を伝えたのか。
まったく、勘が良い子はこれだから困る。
さらに言えば、千を超える怪物の軍勢がいるのに、わざわざ来るとは何とも馬鹿な連中だ。
「良いのか?」
「別にいつもの事だしよ」
「そう言う事だ」
俺の短い呼びかけに、仮面ライダーたちはそう答える。
ほんと、仮面ライダーという生き物はこれだから困る。絶望しない。絶望からもすぐ立ち上がる。だから俺たちは勝てないのだ。
もっとも、彼らが味方に付くと本当に頼もしい。
「たった三人で我らと戦うとは、命知らずな!」
敵の指揮官が叫ぶが、その言葉は俺にとって聞き飽きた台詞だ。
それゆえに、奴の言葉をそのまま返す。
「命知らずはどっちかな? 貴様らの薄汚い魂、ショッカーに捧げてもらう」
迫りくるゴルゴム怪人を俺の拳が砕き、電王の剣が切り裂き、ギーツの銃弾が撃ち抜く。
夜の森で、2人の仮面ライダーと怪物、そしてゴルゴムの軍勢の戦いの火蓋が切られたのだった。
エース(ショッカーって何?)
モモタロス(えっ? ショッカー? あいつジョークが下手すぎるだろう?)
良太郎(え? 何でショッカー名乗っているの、あの子?)