ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
時の列車デンライナー、その先にあるのは過去か、未来か……。
♪♪♪♪♪
「いくぜいくぜいくぜぇ!」
真っ先に突撃していったのは、当然だがモモタロスこと電王であった。
デンガッシャーを振り上げ怪人やトカゲ兵の隊列に威勢良く切り込んでいく。防御自慢のサイやゾウの怪人が電王を取り押さえようと電王の前に立ちふさがる。
見上げるほどの巨体を持つ怪人たちの、丸太のような剛腕が迫るくる。
「このこわっぱめ!」
「調子に乗るな!」
岩をも砕く剛腕を前にしても、電王は、モモタロスは引く事を知らない。
そのまま突き進み、拳の動きに合わせるように剣を振るう。敵は巨体も巨体だ。剣を持つ事による間合いの有利さは無い。いや、それどころか剣という道具を使う為に、その重量分だけ遅くなる。
そのはずだった。
「ば、ばかな‥…」
だが、ゴルゴム怪人の拳が電王に届く事は無い。
怪物どもは一様に切り裂かれ、己の胸から噴き出す体液に驚きながら崩れ落ちていく。
そう、拳より早い神速の斬撃を、電王は繰り出して見せたのだ。
「俺はな、今ノリにノッているんだよ! てめえらごときで止められると思うなよ!」
雄たけびを上げ、電王はゴルゴムの群れに飛び込んでいく。
大物狙い、怪人を狙い挑みかかっていく。
そんな電王を狙いトカゲ兵士たちが回りこみ包囲しようと動く。
もっとも、電王だけを狙おうとするのは、あまりにも迂闊な行為だった。
背後に回った彼らの背中に容赦なく弾丸の雨が降り注ぎ、次々に倒れていく。
弾丸の雨を降らせた相手、ギーツが持つマグナムシューター40Xと手甲に仕込まれた銃口から硝煙のようなものが立ち上る。
レールガンの筈だから、発砲時の熱で焼けた空気中の微粒子か何かか?
「まったく、フォローするのも大変だ」
「いいじゃねえか、雑魚は任せたぜ!」
それはともかく、自分でも怪人の相手をしながら電王のフォローを入れたギーツのボヤキを、次々とゴルゴム怪人を切り捨てている電王が威勢よく返す。
ある意味二人の性格を実によく表しているな。
それはそうと、確かに雑魚が多いのは事実だ。
だったら……。
「とぅっ!」
俺は襲ってきたトカゲ兵士をやり過ごすと大きく跳躍する。
月が輝く夜空を舞い重力制御で滞空時間を延ばしながら、敵の布陣を確認する。そして一番集中している場所を見定めると、そこに向かい一気に降下した。
唐突に真っただ中に飛び込んできた俺に、ゴルゴムの兵士や怪人たちが怒号を上げる。
「飛び込んでくるか!」
「なめるな! 下等生物!」
四方から迫りくるゴルゴム怪人やトカゲ兵士たちに、俺は仮面の下で口元をいびつに吊り上げる。
予想通りの動きをしてくれてありがとうよ。おかげで一網打尽に出来そうだ。
ベルトをフル回転させ、電気エネルギーを抽出する。舞い落ちる木の葉が俺の右腕に触れ、火花を飛び散らせ燃え上がる。
「い、いかん! お前達離れろ!」
敵の女指揮官が何かを叫ぶが、もう遅い。
俺は貯えたエネルギーを無造作に放出した。
「ライダースパーク!」
まぁ、恰好を付けた名前を言ったところでただの電気の垂れ流しだ。
とはいえ、単純ゆえに効果は絶大だ。
人類が電気などを手に入れていない時代だ。ゴルゴムには電気の概念がもうあっただろうが、使う相手がいない以上は特別な怪人でもない限り絶縁処理などしていないだろう。
いや、仮に処理をしていても、雷に等しい電撃を食らえば内部は無事でも表面は焼き払われる。
俺に襲い掛かろうとした兵士や怪人が次々に感電し、あるいは爆散し果てていく。
「こいつの相手は私がする!」
相当数の敵を削り、次の相手を探そうとしたところに、敵の女指揮官が襲い掛かってくる。
顔の右半分と右腕をおしろいのようなもので塗りたくり、体表なのか爬虫類的な鱗と表皮が身体を覆っており、腕から大きく湾曲した剣が生えてきている。
足がかなり発達している所を見ると、恐竜型の怪人であの剣は鈎爪が変化した物か?
「我が名は聖騎士ヴェザーラ、いざ尋常に勝負!」
左右の腕から生えた剣の速度は確かに早く鋭い。
また、ただ力任せに振るっているのではなく、効率よく使うよう技として鍛えたのだろう。
俺は剣の腹を拳で弾き刃の軌道を反らしながら一歩後ろに下がる。
「ああああっ! 誠太郎、てめぇ! 一番面白そうな奴を!」
怪人たちの集団と戦いながら、電王が何やら叫ぶがとりあえずは無視をする。
「早い者勝ちだ。俺の知り合いの女騎士に比べれば、まだまだ甘いな!」
「ふざけているのか! お前たち!」
「ふざけているのは貴様らだ!」
女騎士が激高しながら剣を振るう。
岩程度なら軽くサイコロステーキにしそうな鋭さだが、剣自体に付随効果も無さそうだ。
テオドラなんぞ下手に剣を弾こうものならそこから腕を凍らせてくるからな。
左右から襲い来る刃を躱しつつ、俺は相手の隙を窺う。
両腕が伸び切り、剣がすぐに戻せないタイミングを見つけ、俺は踏み込み拳に力を入れる。
そんな俺を見て、女騎士はニヤリと口元を歪めた。
「かかったな! 死ねぇ!」
叫びと共に、女騎士の気持ち悪い表皮ががばりと開く。
表皮と思っていたのはマントのような部品を纏っていただけで、防具であり武器だったか。
鋭い刃と化した鱗のマントが俺の視界いっぱいに広がる。俺の身を拘束しようと、前後左右から襲い掛かる。
なるほど、棘付きマントで拘束し、剣でとどめを刺すのがこいつの必勝法か。
何かを包んだマントに、女騎士が二本の剣を突き立てる。
剣は大した抵抗も無く包んだ何かを真っ二つにし、マントは再生して女騎士の身体を包んでいく。
ただ、それだけだ。
「それで?」
唐突に聞こえた声に、ゴルゴムの女騎士は驚きの表情で足元を見る。
そこには寝転び、余裕を持ってマントと剣の不意打ちを回避した俺の姿があった。
加速して真後ろに回っても良かったのだが、まだどれだけ軍勢が控えているのか分からない以上はエネルギーの消耗は避けたい。
ならばとがら空きだった下に逃げたのだが、どうやらこの回避の仕方は予想外だったようだ。
俺は女騎士が驚愕して固まったのを良い事に、片腕で体を持ち上げ回し蹴りで足を払う。
驚き身を固めていた女騎士がこの攻撃を避ける事など出来ない。そのまま体勢を崩し宙に浮かぶ。
素早く立ち上がった俺は、追撃の回し蹴りを女騎士に叩き込む。
「がぁっ!?」
血反吐を吐きながら地面をバウンドして倒れる女騎士を冷ややかに見つめる。
身体能力的には決して侮れる相手では無かったが、いかんせん戦い方が素直すぎだ。これなら俺の敵ではない。
倒れた女騎士にとどめを刺すべく足に力を籠め跳躍した。
「ライダーキック!」
赤い軌跡を残し俺は女騎士に向かい急降下をする。女騎士は先ほどのダメージが抜けきっておらず、回避行動をとる事が出来ない。このままキックが決まれば、女騎士は確実に倒せる……筈であった。
唐突に横から割り込んできた存在が、軌道に割りこんでくる。
まるで壁を蹴ったかのような感触、まるでびくともしない。このままエネルギーを注ぎ込んでも無駄か。すぐさま再度の跳躍をして相手から離れる
そして、俺が離れた一瞬後に割り込んだ存在の剛腕が、一瞬前まで俺がいた空間を抉った。
あぶねぇ……。
内心ひやひやしながらも、割り込んできた相手を確認する。
見た目の年齢は老人と言っていい、白髭を蓄えた男だ。だが、そのサイズが凄まじい。2mを遥かに超える長身に、それにふさわしい分厚い筋肉の塊。
表皮は先ほどの女騎士と同様の爬虫類を思わせる仕様だが、こちらは小細工抜きに分厚い装甲のようだ。
「お、おじい様!?」
「ヴェザーラよ、下がれ。こ奴らはお前が敵う相手ではない」
女騎士より立場が上か、この爺さん。
純粋なパワーファイターと言った雰囲気だが……おそらくその力は大幹部クラスと見て間違いない。
構えを取り間合いを測る俺を見て、老戦士は不敵な笑みを浮かべる。
「神と悪魔が眠りにつき、グロンギどもも消えたこの世界に貴様らの様な戦士がまだ居ようとはな」
「別に珍しくないと思うがな」
「恐ろしい事を言う。ならば、ゴルゴムが力を取り戻すためにも、是が非でも聖剣を取り戻し世紀王に捧げなければならぬ!」
まて、今このジジイなんて言った?
聖剣? ゴルゴムの聖剣って……ジョアイさんが持っている赤い剣はサタンサーベルだと!? 考えうる限り最悪の武器の一つじゃねえか!?
とはいえ、仮面ライダーBLACKとシャドームーンの戦いにサタンサーベルはちゃんと使用されている。ジョアイさんが持つ剣は2000年近く地面に埋まっていた事を考えると、サタンサーベルはもう一振りあったという事か?
この世界の歴史は、なんかの拍子に変わる事は良くある。変わる歴史ってなんだよとは思うが、実際に変わってしまうのだから仕方がない。
ここでゴルゴムに剣が奪われ歴史が変わり、サタンサーベル二刀流のシャドームーンが誕生なんて考えたくないぞ。BLACKと言えども敗北しかねない。
BLACKなら平気な気がしないでも無いが、万が一の可能性も潰しておく必要がある。
「そうか、それは良い事を聞いたな。聖剣なら、貴様らに渡す事など出来ん!」
その言葉を合図に、ゴルゴムの爺と俺はぶつかり合う。
先ほど不発となったライダーキックの時もそうだったが、当たった拳の感触が異様に重い。少なくとも人間大の存在を殴っている感じではない。
大地を砕く爺の攻撃をかわしながら反撃を繰り返していると、横合いから赤い影が割り込んでくる。怪人を倒し終わった電王が、こちらに割り込んで来たのだ。
「おいおい、こんな面白そうな奴を相手にするのに、俺をのけ者にするのかよ」
「小童が! 吠えおる!」
「小童じゃねえ、電王だジジイ! それともボケ老人か!」
叫び声をあげ、デンガッシャーの赤い刃が老戦士の肉体を切り裂く。
もっとも、切っ先は火花を散らすものの、斬り裂けたのは表皮一枚と言ったところだ。まったく効いていない訳では無いようだが、異様に重いようだ。
俺と同じことを感じたのだろう。電王が怒鳴り声を上げた。
「くそっ! 何喰ってりゃこんな重くなるんだ!? 腕がしびれそうだ!」
強がりなモモタロスがここまで言うのは相当の事だ。
老戦士は防御を顧みない攻撃を繰り返す。一見隙だらけなので俺と電王の攻撃は面白いように当たるが、本当に効いている様子が無い。
どれだけ殴ろうとも、切り裂こうとも、攻撃が表面で止まっている。特殊な防御フィールドを出している様子も無いのは、どういう事だろうか?
この重さを攻略しないと、倒す事は難しいか?
もっとも、攻略前にこの老人の攻撃がすさまじい。
一見無造作に拳を振るっているようだが、一発一発が重く攻撃範囲が広い。衝撃の余波だけで体力を削られ、紙一重の回避が出来ない。
特にごり押し攻撃を得意の戦法とするモモタロスとは相性が悪い。電王の体力が徐々に削られていく。
「隙あり!」
やがて攻撃を回避し損ねた電王が後退り、それを好機と見た老戦士の拳が電王を捉える。
「させん!」
電王をかばうべく咄嗟に割り込み拳を止めようとするが、ガードに入る前に発生した衝撃派で弾き飛ばされる。
このまま電王にクリーンヒットしてしまう、そう思われたその時だった。
「おっと、まだハイライト前だ」
割り込んで来たのは当然ギーツであった。
トカゲ兵士を蹴散らした彼は電王の隣に降り立つと、体のと持ってた銃を乱射する。
ほとんどの攻撃は拳や剣と同じく体表で止まり大したダメージになった様子は無かったが、それでも頭部に集中した弾丸だけは別だったようだ。
感覚器である目を守ろうと動きが鈍る。
その隙にギーツは電王を抱え、その場から離れた。
「あの程度ちゃんと! それからハイライトじゃねえ! 俺は最初からク……」
「モモタロス、助けてもらったのならお礼を言わないとだめだよ」
「悪いな、早とちりで」
照れ隠しに思わず叫ぶモモタロスとそれを窘める野上さん。そしてギーツがさらりとモモタロスの戯言を流す。
俺は彼らが無事な事をほっとする。そして、俺とは別の反応をするものがもう一人いた。
「ギーツか。散々ローマで我らの邪魔をした貴様がこの極東の島にいるとは思わなかったぞ!」
「ゴルゴムの大将軍……こんな東の果てでお前の顔を見るとは思わなかったよ」
何やら互いに顔を知っていそうなやり取りに、俺は仮面の下で嫌そうな顔をする。
あんまり聞きたくは無いのだが、こればかりは確認しなければならないだろう。
俺は体勢を立て直した電王とギーツの傍まで移動しながら、こう声を掛ける。
「知っているのか?」
「散々ローマで暴れまわったからな」
そっか、紀元前のローマでゴルゴム暴れてたのか。あいつら他文明全否定だから、ローマぐらい文明が発展したらやるだろうなぁ……。
良く退けたな、ローマ。
俺は古代の超帝国の底力に感心していると、宿敵を見つけた老戦士改めゴルゴムの大将軍はニヤリと凶暴な笑みを浮かべこう宣言した。
「ちょうどいい。我らゴルゴムの邪魔者、この地でまとめて葬り去ってくれる! あの地では見せなかった、古の世紀王より授かった我が力、見せてやろう!」
その言葉と共に、ゴルゴム大将軍の姿が変わる。
そう、すでに怪人の姿だと思っていた奴の姿は、怪人体では無かったのだ。
腕が、足が、身体が、ティラノサウルスを思わせる恐竜の姿へと変わっていく。
それにあわせ、身体も当然巨大化する。だが、奴の変化はそれで終わりではない。奴の巨大化はティラノサウルスと同レベルでは終わらず、更なる巨大化を繰り返す。
10メートルや20メートルでは終わらない。30メートル、40メートルと巨大化を繰り返し、更に奴の足は地面を離れ宙に浮く。
人類が生み出した最大級の空母が全長332メートル。ゴルゴム大将軍はそれの倍以上となる恐竜型浮遊戦艦へと変貌を遂げたのだ。
「な、なんだありゃ?」
電王が呆然と声を上げたのも、仕方のない事だ。
俺だって同じ気分だ。まさか怪人が巨大戦艦に変身するなんて誰が思うのか?
いや、殴った時の重さの理由は、これが原因か? この肉体が人間サイズに変貌していたと考えると、あの重さも頷けると言うものだ。
「これぞ我が真の姿。異世界の帝国との決戦を考えて生み出された世紀王の居城、ゴルゴム大戦艦よ!」
流石に驚きで固まる俺たちの頭上から、ゴルゴム大将軍の叫びが響いて来る。
これまでもでかい化け物はさんざん見て来たが、これはその中でも最大だ。噂に聞くクライシスの大戦艦にも引けを取らないサイズだろう。
つか、ゴルゴムこんなもん用意していたのか? 現代に残っていなくて安心するべきなのか?
「我が真の姿を冥途の土産に、死ぬが良い!」
宣言と共に、ゴルゴム大将軍の全身がスパークして謎の怪光線があたり一帯に降り注ぐ。
森の木々が、岩が、大地が爆発し消し飛んでいく。
その怪光線は当然俺たちの元にも降り注ぎ、回避する場所の無い全方位攻撃に俺たちもまたバラバラに吹きとばされた。
「うわあああっ!」
巻きあがった炎と煙に視界が歪む中、巨大艦と化した大将軍の腹から何かが降下してくる姿が映る。
外観が簡略された上に表面が金属のような光沢を放っている為にロボットのような姿にはなっていたが、それは先ほどまで俺たちが戦っていた女騎士の姿であった。
降下してくる敵の数は10や20では利かない。100を優に超えるだろう。
「あんなにたくさん……」
「そうか、生産工場も内蔵しているのか……」
次々に降り立ち、進軍してくる敵を前に俺たちは呆然と呟く。
そう、絶体絶命の危機とはこの事であった。
おまけ
老将軍「そう、ローマが衰退したのは異民族の流入が原因ではない! 我らゴルゴムが暴れまわったからだ!」
誠太郎「なんだ、その珍説?」
おまけ2
神英寿(俺を上書きをした結果、バタフライエフェクトが発生してゴルゴムがローマで暴れ出した!?)
ブラックサタン「エース、貴様何をした? 怒らないから正直に言ってみなさい」