ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
時の列車デンライナー、その先にあるのは過去か、未来か……。
♪♪♪♪♪
「いくぜぇ! 野郎ども!」
電王を中心に3人のクウガとジオウとゲイツ、それと改造人間と切り結べる超人とおまけの化け物が一体。現代の世で相対したら絶望感しか感じないメンツだ。
この豪華な布陣にテンションが上がりに上がった電王が、デンガッシャーを振り上げ景気良く叫ぶ。
「お前が仕切るな!」
「まぁ、まぁ、苦労したみたいだし」
そんなモモタロスに対して律儀にツッコミを入れてしまうのがゲイツであり、やっぱり律儀にゲイツをなだめているのがジオウであった。
現金なものだ。モモタロスでは無いが、戦力が充実してくると心に余裕が生まれる。
それに、あれを退治する方法も自然と見えてくると言うものだ。
「ジオウ、それとゲイツ。空のあいつを抑えられるか?」
ジオウがふと俺に視線を向ける。
察しの良い常磐さんの事だ。俺が何を頼んでいるのか、すぐに気が付いただろう。
割と面倒な事をお願いしているのだが、ジオウの返答は二つ返事だった。
「うん、わかった。任せるよ」
「おい、ソウゴ?」
「空を飛べるのは僕たちだけだしね」
さて、王様を働かせて申し訳ないが、今回は抑えてもらった方が都合が良い。
俺が彼らに頼みをしている間にも、ゴルゴムの軍勢は抑えきれなかったようだ。ロボット兵士たちが一斉に進軍を開始し、空に浮かぶ大将軍が破壊光線をまき散らす。
まったく面倒な攻撃だな。そう思っていた俺だが、それ以上の出来事が目の前で凝る。
「馬鹿の一つ覚えか。これなら俺が!」
前に出たのは先代クウガのリクさんだ。
封印エネルギーを拳に込めて、大きく振りかぶり怪光線に叩き込む。
そして次の瞬間、怪光線が何も起こす事無く霧散した。
え? マジ?
「ば、馬鹿な……」
「別に、グロンギどもに比べればどうという事は無い」
大将軍も驚いているが、これは俺も同じであった。
いや、古代においてグロンギどもを全て封印したのだから強いのはわかっていたのだが、まさか一発でゴルゴムの怪光線までも消し去るとは思わないじゃないか。しかも、余裕ありそうだし。
俺は一発弾くだけでエネルギーダウン起こしたんだぞ?
この一発での怪光線封印はこの戦場に劇的な変化をもたらした。
一つは大将軍が驚き一瞬固まった事。ロボット兵士どもの動きは変わらないが、大将軍そのものからの直接攻撃が一瞬止まった。
そしてなにより、その驚きと恐怖はゴルゴムのトカゲ兵士や怪人たちに伝播したのだ。
「わっ……わわあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ま、待てお前ら! 行くな! おじいさまの邪魔になる!」
勝鬨の声、あるいは恐慌の叫びを上げ、ゴルゴムの怪人とトカゲ兵士たちが一斉になだれ込んでくる。
経験上、怪人や改造人間の統制は難しい。圧倒的な力を持つという自負故に、どうしても自己の判断を優先させる気が強いのだ。俺は割りと聞き分けの良い古参改造人間に恵まれたが、それでも初期の頃は現場ごとの独断専行は日常茶飯事だった。
特にこの軍隊はあの大将軍の力とカリスマにより保たれていたのだろう。そこにクウガというこの時代の有名人が、圧倒的な力を持つ大将軍の力をあっさりと無効化して見せた。こうなると、怪人連中は自分たちの力を超える存在に耐えられない。
女騎士が必至になって統制を保とうとしているようだが、ありゃもう無理だ。指揮権は持っているのだろうが、本人の格がまったく足りていない。
敵の兵が恐慌に駆られた事は、俺たちにとってチャンスとなる。
「いくよ、ゲイツ!」
「わかった!」
『ARMOR TIME! 3・2・1! FOURZE!』
フォーゼアーマーを纏ったジオウと、ゲイツリバイブ疾風になったゲイツが地面を蹴り飛び立っていく。
あれで良い。あれでしばらくは抑えておいてくれるだろうし、最悪は撃沈も可能だ。
次だ……。
俺は怪光線が飛び交い、ゴルゴムの軍勢とライダーたちが戦う戦場で二人の人物を探すと、怪人を蹴散らしながら彼らの元に行く。
俺が向かったのは当然ジョアイさんだ。
「誠太郎!」
俺が寄ってきたことに気が付いたジョアイさんがサタンサーベルでゴルゴムの怪人を切り倒しながら声を上げる。
背後からジョアイさんを襲おうとした怪人の頭を叩き割りながら、指向性を持たせた小声で言葉を掛ける。
俺の言葉がジョアイさんに届いたかどうかは確認しない。
空飛ぶ大将軍、小声での相談をきっちり聞き分けた地獄耳だったからな。長時間の会話は割かし危険だ。
あとは、雑魚を蹴散らしながらチャンスを窺うしかない。
殲滅は難しいが、ここで半数は討っておきたい。
大人しくゴルゴムに逃げ帰ってくれればいいが、残党が野盗化なんてしたら目も当てられない。数万年生きる山賊なんて嫌だぞ……。
平安時代あたりであっさり倒されそうだけど。
それはともかく、怪光線が降り注ぐ戦況だが、実のところ先ほどまでの圧は無い。
こちらの数が倍以上に増えた上に、ジオウやゲイツによる空中からの攻撃、そして怪人たちへの誤爆を避けるためか怪光線の密度が減ったからだ。
まぁ、それでも四方どこを見ても敵しかいない状況なのだが。
「おめーら、邪魔だ邪魔!」
「あー、ほんと数が多い!」
「右右右、先輩右!」
「左からも仰山来たでぇ!」
相変わらずやかましく剣を振るっているのが電王だ。一人で4人分騒ぐので本当にうるさい。
しかし、チンピラ気質ではあるがバカ……じゃないと思いたいけど、モモタロスたちの勝負勘は間違いなく高い。このままじゃ埒が明かないのはわかっているが、切り札を斬れないでいるのだろう。
それは彼らも同じだった。
「まったく、キリが無いな」
「でも、余裕はあるかな」
銃撃をしながら雑魚を蹴散らすギーツの背中を守るのは、小野寺さんのクウガだ。
ギーツの放つ弾幕でゴルゴム怪人たちは面白いように倒れ、仮に弾幕を潜り抜けてもタイタンフォームの防御力を前に手痛い洗礼を受けるという二段構えだ。
一方、ゴルゴム怪人を蹴散らす俺のカバーに来たのは五代さんのクウガだ。
怪人に封印パワーを注ぎ込み爆散させながら、俺の隣に並び立つ。
「まったく、ゲイツではないが物好きな」
嬉しくないと言えば嘘になるが、俺の口から出たのはこんな憎まれ口だった。
一人で放浪し他の仮面ライダーとの接点がほぼ無いとはいえ、五代さんは警察に知己が多い仮面ライダーだ。俺のような真正の悪党と付き合うべきではない。
そう思うのだが、どうも彼らには違うようだ。
「相変わらずだ。元気そうで安心したよっ! とっ!」
迫りくる怪人をいなしつつ、五代さんが仮面の下で笑う。
まったく、ほんと物好きだよな。憎まれ口をたたかれて笑うなよ。
そう考えつつも、この数をどうしたものか。駆け寄ってくる怪人たちを見ながら、ふとある程度数を削れそうな一つの技を思いつく。
失敗しても俺が恥ずかしいだけだからやってみるか。
俺は戦闘の怪人の攻撃を受け流し後方に跳躍すると、そのまま敵に対して背を向ける。
「なにっ!? に、逃げた!」
「追え!」
背を向けて走り出す俺を、ゴルゴムの怪人たちが追いかけてくる。
恐慌状態を引き起こしている上に、この時代のゴルゴムの連中じゃこんな技はわからないよな。
ショッカーではライダーの恐るべき戦術として教本にも載っているけど。
「せ、誠太郎!?」
唐突に逃げ出し、ゴルゴム怪人に追いかけられる俺を五代さんが驚きの目で見る。
とはいえ、つかず離れず、連中が追いかけやすい速度で、それでいて少しづつスピードを上げて……。
「何やってるんだ、誠太郎!?」
「ちょ、ちょっと!?」
横を通り過ぎたギーツと小野寺さんのクウガが、一見すれば一目散に逃げていくだけの俺を見て思わず声を掛ける。
だが、勘弁してほしい。この技は見た目に対してとても繊細なのだ。しかも、本来は二人でやる技だ。一人でやるような技じゃない。
会話に応じる余裕は無いのだ。
「馬鹿野郎、誠太郎! 何的に背中を向けているんだ!」
「いや、まって! これって一号と二号の!?」
「ああ、あのおじさんたちの!」
横を追通り過ぎた電王が何か叫ぶ。モモタロスは気が付かなかったようだが、ウラタロスには思い至る技があったようだ。
流石は時の運行の守護者だろう。
俺と怪人の追いかけっこは、やがて風を起こし竜巻を作り出す。追いかけているはずの怪人たちは、何時しか足を止める事が出来なくなる。
足の遅い怪人は後から来た味方に踏みつぶされ、あるいは竜巻に飲まれ消えて行く。 俺を追いかける怪人たちの列に飲まれ、俺を追っていなかったゴルゴムの兵士たちは動きを取れなくなる。
これぞ仮面ライダー一号と二号が生み出した必殺技の一つ、ライダー車輪。
本来は相手の動きを支配し、行動の選択肢を奪い、その上で相手をクラッシュ褪せる恐ろしい技なのだが、残念ながら俺と怪人たちのスペック差がありすぎてそこまでうまくはいかない。
敵が追いかけてくる移動経路と速度をコントロールして、相手の選択肢を奪うのが関の山だ。
とはいえ、俺が一人ではない以上、それで十分だ。
敵が十分に集まった。そう判断した俺は、電王が一番狙いやすい位置を考え跳躍をする。
唐突に追いかけていたはずの目標が消えたとはいえ、怪人たちは急に止まれない。
そして、この纏められた相手を一網打尽に出来る技が、電王にはあった。
「おう! ナイスだ誠太郎! エース、お前もきばれ!」
「ああ、こんな策があるとはな」
電王が腰のベルトにライダーパスを読み込ませる。紫の輝きが迸り、胸のリュウタロスの顔がパカリと展開する。
一方、ギーツも腰のベルトからバックルを取りだ外すと、白い専用銃に装着する。銃口が輝きエネルギーの輝きが迸る。
「いけぇぇ!」
「とどめだ!」
電王の胸から一斉にミサイルが解き放たれ、あるいはギーツの銃口から強力なエネルギーが解き放たれる。
一か所に固まった怪人や兵士たちに逃げ場はない。爆発に巻き込まれ、悲鳴を上げて引き飛んでいく。
だが、これで終わりじゃない。本命は上のゴルゴム大将軍だ。
「電王!」
「わかってらぁ! お前ら乗りこめぇ!」
ゴルゴムの軍勢が爆発に飲まれ、煙で地上が見えなくなった隙に、電王はデンライナーを呼び出し入り口を開く。
当然だが俺たちは駆けだしデンライナーに乗り込んでいく。
「すごいな、未来にはこんな乗り物が……」
デンライナーの中を見てひとり驚くのはギーツだ。
彼は2000年前のローマの住民だ。金属製の箱である鉄道の中身は未知の領域であった。何時もの超然とした雰囲気をかなぐり捨てて、ただただ圧倒され内装を見つめながら先を進む。
「ほう、君が……。頑張りたまえよ」
途中すれ違った壮年の男、このデンライナーのオーナからの激励を受けながら、俺たちは先頭車両に到達する。
先に到着していた電王は運転席を兼ねたバイクに跨っていた。
しかし……。
「狭いんだよ! てめぇらなんでここに来るんだ! 途中で待ってろ!」
電王の、いや、モモタロスの叫びが操縦席に木霊する。
うん、大の男が5人も揃うと狭く感じる事は事実だ。まして今の電王はクライマックスフォームだ。一人の身体に4人も入っている状態なのだから、心情的に俺たち以上にせまっ苦しく感じるだろう。
とはいえ、今回ばかりは勘弁してほしい。
「そんな事を言っている場合じゃないだろう、急げ!」
「くそ! 誠太郎! 後できっちり話付けるからな!」
まぁ、そう言いながらも相手が態勢を立て直すより先に動くべきことはモモタロスもわかっている。
デンライナーを起動させると、宙に向かいレールを伸ばしていく。
空ではジオウとゲイツの二人が大将軍に向かい攻撃を繰り返していた。
全ライダーの中でもかなりの火力をもつ二人ではあるが、巨大すぎる大将軍相手には攻めあぐねているようだ。
そうするよう、俺が依頼したしな。
「いくぜぇ! まずはありったけを叩き込む!」
デンライナーの各所が開き、各種兵器が次々に展開していく。
ミラーワールドで見た時もそうであったが、その火力はすさまじい。砲撃に晒された大将軍の各所で巨大な爆発が次々と起こる。
だが……。
「小童め! その程度の攻撃、効かんわ!」
そう、大将軍の言う通り巨大な爆発が何度も起こっているが、それでも大将軍の巨体は揺るぎはしない。
悠々と空を飛びながら、怪光線をこちらに向かい放ってきた。
デンライナーはアクロバットな軌道で怪光線を回避する。デンライナーの中が嵐の海を行くように大きく揺れる。
「モモタロス! このままじゃやばい!」
小野寺さんが車両の一部に掴まりながら運転しているモモタロスに向かい叫ぶ。
確かに、このままなら縦横無尽な動きを見せるデンライナーと言えども怪光線に捕らえられるのは時間の問題だ。
もっとも、その悲鳴を聞きながらも電王の中のモモタロスは好戦的ともいえる声でニヤリと笑う。
「問題なんてねぇ! このまま行けるぜ!」
「どうやるんだ!?」
ギーツがモモタロスに尋ねる。
その問いに対するモモタロスの答えは、単純無比で痛快な物であった。
「いいか、あの手のデカブツはなぁ! 腹の中から食い破るってもんよ!」
そう宣言すると、デンライナーの先頭車両を大将軍に向ける。
狙うのは……先ほどの砲撃で開けた大穴か!?
「やっほー! このままいっけー!」
電王の胸からリュウタロスの威勢の良い声が響く。
「皆、動かない物に掴まって!」
こういう時に気遣いが出来るのがウラタロスの良いところか。
俺たちも彼の声に従い、運転席の動かない物に掴まる。
「いっけー! ぶちかませぇ!」
キンタロスの怒声をと共に、デンライナーの頭が大将軍の胴体を突き破り内部にめり込む。
突入した大将軍の内部はかなり広かった。外の姿を知らなければ、地下都市か何かと勘違いしていたかもしれない。
特に通路は広く、これならバイクなどで十分に走れる。奴は自身の事を世紀王の居城と言っていたが、内部に相当宏居住空間を有しているのか。
人間サイズから都市並みの巨大空中戦間に変化できるって、割と悪夢みたいな兵器だな。
俺が大将軍の内部に驚いている横で、モモタロスは運転席のバイク型端末、マシンデンバードを切り離す。
彼はのまま敵の中枢に切り込み叩くつもりなのだ。
「おっしゃぁ! 行くぜ行くぜ行くぜ!」
「まて、どこが中枢なのかわかっているのか?」
「あっ……」
おい、まてや。そこが分かっていなかったのか? 走りだそうとして慌ててバイクを止めた電王に、皆が呆れかえる。いや、モモタロスらしいと言えばモモタロスらしいが。
そんな電王に助け舟を出したのはギーツだった。
彼はあの短時間の戦闘で、大将軍の中枢を見つけ出していたのだ。
「頭部部分だ。奴の中枢はおそらくそこだ」
「何故?」
「人間形態の時、奴は攻撃を平然と受け続けていたが、頭に向けた攻撃だけは無意識に防御していた」
俺の攻撃や電王の剣を自らの肉体で受け続けた大将軍であったが、ギーツが銃を乱射した時だけは大将軍は頭に向かった攻撃だけは防御姿勢を取っていた。しかも、あの動きは無意識の動作だ。
確かに奴の中枢が頭にある可能性は高い。
それを聞いた電王が、マシンデンバードのアクセルを全開に吹かす。
「おっしゃ! 頭だな! 偉そうな奴の考えそうなこった! 行くぜお前ら!」
そう言うと一人で駆け出していく。
走って追いかけるか? そう考えていた俺に、未来からやって来た二人のクウガが俺に声を掛けてくる。
「誠太郎、ギーツ、あんたたちはモモタロスを追うんだ!」
「だが、足が」
「大丈夫だ。未来から誠太郎を追いかけて来たのは、俺たちだけじゃない」
その言葉を聞いていたのだろう。
デンライナーの奥でモンスターマシンが目覚める。聞きなれたエンジン音が、俺の耳に届く。
まったく、ほんと物好きばかりだ。
しかたないな。
「あいつも来たのか。まったく……来い! サイクロンヘル!」
俺の呼びかけに呼応し、貨物室の入り口が開く。
純白の我が相棒が、待ち望んだ出番に歓喜の声を上げる。
サイクロンヘルに跨り、残った3人に声を掛けた。
「ギーツは俺の後ろに!」
「分かった!」
「五代さんと小野寺さんは……」
「退路を守る」
「後は任せたよ、誠太郎!」
彼らの視線の先を追えば、外敵を排除しようとロボット兵士の軍団がこちらに向かってきていた。
確かに全員で向かっては、デンライナーが破壊される恐れがある。退路を守る人間は必要だろう。
「お願いします!」
かくして、俺はギーツを乗せサイクロンヘルで電王を追いかける。
目指すは一点、大将軍の中枢ユニットがあるだろう奴の頭部であった。
主人公は悪のショッカーライダーです。
目上や正義のライダーにも尊大な口調を崩しません。ほら、悪のショッカーライダーでしょう!(力説)