ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
時の列車デンライナー、その先にあるのは過去か、未来か……。
♪♪♪♪♪
大将軍は自身の事を『世紀王の居城』と称したが、確かにそれは間違いではなかった。
道路と言っても過言ではない広い通路に、武器のみならず食料などの生活の為の生産プラントすら内蔵している。おどろおどろしいゴルゴムセンスではあるが、設備だけ見れば長期の軍務に耐える事の出来る移動要塞だ。
こんなものを数万年前から建造しているのだから、ゴルゴムという組織の底力は計り知れない。
俺と電王、そしてギーツの三人は広い通路をひた走りに走る。
背後から追撃を仕掛けてくるのは、チャリオットに乗ったロボット兵士たちだ。バイクに追い付けるロボット恐竜というのは流石だが、ロボット恐竜を使うならチャリオットどころか騎乗すらいらないんじゃないか?
「ローマと中国で使っていた奴を引っ張り出してきたんだろう。火力だけなら騎竜よりあるからな」
俺の後ろでチャリオットに反撃をしているギーツの言葉が俺の疑問の答えであった。
なるほど、人類に対する示威に使った訳か。それならこの時代の住民にわかりやすい力の形にまとめるだろう。
ここで持ち出してきたのは、火力を補うためか?
「自分をぶっ放してまで止めたいのか?」
「サイズがサイズだ。俺たちが多少暴れても問題無いんだろう」
モモタロスの疑問ももっともだが、相手は千メートルを超える巨大戦艦だ。人間サイズの放つ火力が多少さく裂したところで、全体のダメージなど高々知れている。
この時代の……と、注釈が付くが。現代に戻るとふざけた過剰火力を持つ連中がゴロゴロいるからなぁ……。筆頭は今表で大将軍の注意を引いているだろう魔王様なんだが。
「僕たちはウィルスか細菌ってわけか」
電王の肩から響くウラタロスのこの言葉が、俺たちのサイズ差を一番よく表しているだろう。
奴にとっては多少の怪我を負っても中枢を破壊されなければ勝ちなのだ。少なくとも奴はそう思っている。
「ウィルス? 細菌?」
俺の後ろで今更のようにギーツがローマ人アピールをしているが、これは気にしなくて良いだろう。実際ローマ人だし。
それより問題は追いかけてくるロボット兵士と……やはり来たか。
俺はサイクロンヘルからもたらされた情報をライダーたちに伝える。
「それより、曲がり角の先でバリケードを築いているぞ!」
「やっぱ、そうくるか!」
追手のチャリオットとバリケードによる挟み撃ち。古典的ではあるが、有効な手段だ。
俺が先行して叩くか。もっとも、俺が言いだすより先に動いたのが電王の中のウラタロスだった。
「それなら僕に任せてよ!」
クライマックスフォームの中の主導権がどうなっているのか分からないが、電王がデンガッシャーをロッドに切り替えるとマシンを一気に加速させる。
そのまま電王が角を曲がると同時に通路の先からエネルギー弾や弓矢が次々に飛んでくる。
「おおっと! レディの形をしている物を傷付けるのは僕の流儀じゃないけど……」
もっとも、電王を構成する4人のイマジンの中でも器用に立ち回るウラタロスだ。わかっている攻撃を躱せない筈もなくバイクを跳躍させ難なく砲撃を躱すと離れた位置だというのにロットを真横に振るう。
無論ただ振るったわけではない。ロットの先端から飛び出したワイヤーが一番端にいたロボット兵士たちの一団に絡みつき拘束する。
「ゴルゴムのロボットなら話は別だ! キンちゃん、後は任せた!」
「おう、まかせとき!」
そのまま電王の主導権がウラタロスからキンタロスへと変わると、キンタロスはバイクを着地させると同時にその場で横にスピンさせる。
力自慢のキンタロスと、マシンデンバードのパワーに、ロボット兵士が引っ張り上げられ吊り上げられる。
そのまま他のロボット兵士たちを巻き込みながら真横に吹き飛び、さらには上に吊り上げられると今度は後方の追手たちに向かい投げ飛ばされた。
「どっしゃぁ!」
「やったー! ストラーイク!」
一網打尽とはまさにこの事だろう。
前方のロボット兵士はもとより、追手のチャリオットも巻き込まれ転倒し、大きなダメージを負っている。
この先の隔壁か。俺は仮面の奥でニヤリと悪党らしい笑みを浮かべると、ギーツとサイクロンヘルにこう伝える。
「ギーツ、後ろは任せた。俺は前をやる。サイクロンヘル、ギーツをエスコートしろ」
「分かった」
伝えるが早いが俺はサイクロンヘルから跳躍し、ギーツがサイクロンヘルのハンドルを片手で握り後方に向かい銃口を向ける。
ちょっと運転を切り替える一瞬、サイクロンヘルが歓喜の叫びを上げた気がするが気にしないでおこう。スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズのファンだったしな、あいつ……。
空中に飛び上がり、俺は片足にエネルギーを集める。
普段と違うのは収束ではなく拡散させている事。一体を倒すキックではなく、敵集団を巻き込み殲滅するためのエネルギー放出技だ。
空中で体を捻り、高速で回転しながら前に向かって突き進む。
「ライダースクリューキック!」
赤いエネルギーの嵐を引き起こしダメージを負ったロボット兵士にとどめを刺しながら、一つ筋の矢となり突き進む。
ギーツの放つ弾丸がチャリオット軍団を打ち砕く音を聞きながら、俺もまた正面の隔壁を打ち砕いた。
砕かれた隔壁の残骸が飛び散る室内に、俺は着地し立ち上がる。
その後ろから、電王とギーツも同じように室内に入って来た。
「よもや、ここまで来ようとはな……」
中枢の中央に鎮座しているのは、一抱えほどある巨大な脳みそであった。
脊髄に当たる部分から無数の光を放つコードが伸びており、背後の壁に接続されている。よく見てみれば、脳の下の部分にはスイカほどのサイズの眼球が二つ付いていた。
一言で言えば、巨大な脳みそのクラゲと言ったところか。何となくではあるが、巨大な心臓となっていた創世王や頭だけだったクライシス皇帝を彷彿させる姿だ。
あれが中枢ユニットか。
その醜悪でありがちな姿を見ながら、一歩前に出た電王を中心に、左右を俺とギーツが固める。
「おう、来てやったぜ、いじめっ子大将軍!」
「道化が……」
モモタロスの言葉に、大将軍の声から怒りと憎悪が漏れだす。
よほどゴルゴムという組織に忠誠と誇りがあるのだろう。些細な嘲りも侮りも許さない、そんな思想が感じ取れた。
もっとも、こいつに対して怒りを感じているのは此方も同じである。縁もゆかりもない古代の事とはいえ、本当に好き勝手暴れてくれたものだ。
「道化以下の口先だけが良く吠えるな。ゴルゴムらしいと言えばゴルゴムらしいが」
モモタロスの言葉を引き継ぎ、挑発する。
禍根を立つ為にも、奴の冷静さをできる限り削いでおきたいところだ。
「よほど惨たらしく死にたいらしいな!」
「生かして帰す気も無いのに、下らん前口上だ。それとも長く生きすぎて何も思い出せないほどぼけたか?」
「100年生きられぬ小童どもが!」
俺の言葉がよほど逆鱗に触れたのか、壁から引き抜かれたコードが触手のように蠢き、矢のような速度で俺たちに向かい襲い掛かる。
冷静さを欠いた攻撃だ。避けられぬ攻撃では無かったが、それでもコードは床に突き刺さると輝き、突き刺さった床とその周囲を分解し消し飛ばす。どうやら、馬鹿に出来る威力ではなさそうだ。
力を振るった事によりわずかながら冷静さを取り戻したのか、大将軍は宙に浮かび後方に下がると、いくつかのコードを壁から引き抜く。
コードの先端が光り輝き、先端からスパークが迸る。
次々に繰り出されるコードによる突きを銃撃で迎撃しつつ、ギーツがこんなぼやきをこぼす。
「長く生きたからって偉いわけじゃない」
「だが、時は我らゴルゴムの味方よ」
「空虚に生きても仕方が無いだろう」
浮世英寿の2000年に及ぶ旅路とその後を知る身としては、なんとも反応に困る言葉だ。
そんな俺の感傷はさておき、ギーツの弾幕と大将軍のコードの槍は正しく拮抗している。エースが撃ち落とし、大将軍が槍を繰り出す。
目まぐるしく動き回る攻防だが、この場にいるのはこの二人だけではない。
側面から回り込んだ俺と電王が大将軍に襲い掛かる。
赤い剣と赤く輝く拳を構え、巨大な頭脳を粉砕するべく跳躍する。
「くらいやがれ!」
いつものように雄たけびを上げて電王が大将軍に斬りかかる。
不意打ちにはならないが、どうせここは敵の領域だ。叫ばなくとも気づかれてはいただろう。
実際、大将軍のコードの一本が電王の剣を受け止め火花を散らす。
「その程度の攻撃、通用するか!」
「ならばっ!」
加速は使わずコードを躱しながら肉薄し、拳を振るう。
だが、俺の拳は大将軍の中枢ユニットに届く前に、不可視の盾により受け止められた。
「バリアか!」
「その通り! くらえっ!」
俺の拳を受け止めたバリアが唐突に破裂する。
そのコアから迸った怪光線が、不用意に接近していた俺と電王の表面を焼く。
俺はその攻撃を後方に下がり避けるが、電王は違った。左肩を盾にして、怪光線を突っ切る。
「あちっ! あちっちっ!」
「いたたたたたっ!」
「ぎゃっ!」
怪光線の熱量に思わず悲鳴を上げるのは、クライマックスフォームに点在する頭部マスクの主であるイマジンたちであった。
そういや、クライマックスフォーム、顔部分に対する攻撃は担当するイマジンのダメージにはなるが、電王自身にダメージは行かないんだっけ?
「へへっ! この程度の攻撃食らうか!」
「いや、食らっとるやろ! もろに食らっとるやろ!」
「また人を盾に! 回避ぐらいしてよ、先輩」
「ぶーぶーぶー! 嘘はいけないんだぞ!」
「やかましい! これが一番早いんだよ!」
勝ち誇るモモタロスと抗議の声を上げるイマジンズという一人芝居(?)はさておき、怪光線を突っ切った電王のデンガッシャーの一振りが大将軍の表皮を切り裂く。
コードの数本が地面に落ち、脳を守る保護ケースに大きな切り傷が刻まれる。
「まだまだ! いくぜ! いくぜぇ!」
さらに電王は一歩踏み込むとコードを次々に切り落としていく。
こうなると電王の、モモタロスの突進力は馬鹿に出来ない。その凄まじい速度に脳みそから伸びたコードは次々に切り落とされ……。
「おい、何時でも避けれるように準備しておけ」
抵抗に繰り出されるコードの槍を叩き落としつつ、弾幕を張り続けるギーツに小声で話す。
「分かった」
ギーツも違和感に気が付いたのだろう。
小声で答え、弾幕を張りながらも周囲を警戒する。
一方、テンションが上がった電王はそのままデンガッシャーの刀身を切り離すと、オーラソードでVの字切りに大将軍の本体に斬りかかった。
「とどめだ! 俺の必殺技! パート1!」
赤い刀身は縦一文字に巨大な脳みそを切り裂く。
左右に切り裂かれた脳みそは左右に開きながら倒れ、ポーズを決める電王の背後で大きな音を立てて爆発をした。
「へへっ、どんなもん……」
「避けろ!」
電王が勝ち誇るのと、俺とギーツがこの場を飛んで引くのはほぼ同時だった。
俺とギーツは襲い掛かるコードの槍を何とか回避するが、必殺技を決めた直後の電王だけは回避する事が出来ない。
クライマックスフォームの手足に、壁から生えた無数のコードの槍が巻き付いていく。
「な、何だこりゃ!? うげぇ!?」
コードは手足のみならず首にまで巻き付き電王を締め上げる。
その姿を俺たちに誇示しながら、部屋全体から響くのは先ほど電王が倒したはずの大将軍の声だった。
「くくくくく、仮に中枢ユニットを倒そうとも、儂を倒すには至らん!」
その言葉と共に壁の一部が開き、先ほど倒したばかりの脳みそのお化けが姿を現す。
脳みそのお化けはそのままコードを伸ばすと、壁のスロットにコードを差し込んでいく。
やはりか。あまりにもあっさりと押せたとは思ったんだ。
あの脳みそのお化けが中枢のコントロールユニットであったことは事実だろう。だが、替えの利くユニットの一つであり本体では無かった、それだけだ。
恐らく本体は……。
「この部屋そのものが我が頭脳! この大戦艦の全てが我が肉体よ。この巨大な肉体を破壊する術は貴様らには無い!」
そう勝ち誇る大将軍を、俺は冷めた目で見つめる。
今の発言で底は見えた。後はこの本体をどう破壊するかだ。
そう考え頭をフル回転させる俺であったが、そんな俺の想像を超える男が一人。
当然だが電王であり、モモタロスであった。
「へへっ、良いのかよ。俺たちにそんな事を話してよ!」
苦しそうにあえぎながらも、電王は勝気な態度を崩さない。
チンピラ気質で負けず嫌い。喜怒哀楽の感情表現が激しい男は、こんな時にも頼もしかった。
もっとも、そんな態度は大将軍には気に食わなかったようだ。コードを通し、破壊光線と同質のエネルギーが電王を襲う。
「その状態で何が出来る! このまま縊り殺してくれる!」
そう宣言すると電王に向かいエネルギーを立て続けに流し続ける。
4人分の悲鳴が室内に木霊する。
まずい、いくらダメージを四人で分担しているとはいえ、このままでは流石に持たないぞ!
「電王!」
「くそっ!」
電王を助けようと駆け出すが、コードの槍が俺の行く先を阻む。
ギーツがコードを排除しようと立て続けに発砲するが、先ほどまでと違いコードの槍は弾丸を容易に弾く。
こうなれば。
俺は再び腕にエネルギーを収束させる。本日二発目のリボルクラッシュでこのコードを消し飛ばし電王を……。
「その技は先ほど見た! させんぞ!」
強化されたコードの槍がリボルクラッシュを止めようと襲い掛かる。
その鋭い一撃を、俺は後方に飛び回避しながらこう言葉を述べた。
「すまなかった」
「謝罪!? いまさら何を!」
大将軍が何かほざいているが、それはどうでも良い。もうこいつは詰んでいる。
俺は彼らに向かい、謝罪の言葉を続けた。
「あんた等を低く見た事は一度も無かったが、それでも貴方たちは俺の想像力を遥かに超えている」
その言葉と共に、電王を拘束していたコードが一斉に斧によって切り裂かれる。
鉄付けにコードを斬り飛ばし、その巨躯で道を切り開く黄色いイマジンは誇らしげにこう答える。
「そか? あんたみたいな強い奴にそう言われるのは光栄や」
そのイマジンの名はキンタロス。
「なっ!?」
防御反応だろう。壁から次々にコードが伸びイマジンや俺たちを襲おうと迫りくる。
だが、突如現れた長身の青いイマジンが振るうロットが、そのコードのことごとくを叩き落としてく。
「ま、確かに褒められて悪い気はしないね」
気障な仕草で華麗に戦うイマジンの名はウラタロス。
そんな彼の仕草に皆が注目する中、壁から生えた触手が根元から爆発し、次々に床に落ちていく。
そう、巧妙に隠されたコードの出入り口を、その紫のイマジンは正確に見つけ出し狙撃して見せたのだ。
「そうそう、僕たちは強いんだぞー!」
立て続けに見せる神業に反し、子供っぽいイマジンの名はリュウタロス。
「貴様ら!? 一体どこから!?」
大将軍が驚きの声を上げる。間抜けめ、彼らは初めからこの場にいた。
そう、俺がリボルクラッシュを使おうと腕にエネルギーを集中させた、誰もが俺に注意を向けたその瞬間を見計らい、彼らは電王の身体から抜け出し実体化して見せたのだ。
時の運行を守り、世界を救った電王を構成するイマジン。彼らの戦闘センスは計り知れない。
「行くぜ行くぜ行くぜ! お前ら、ここで決めるぜ!」
3人のイマジンが抜け出し、元のソードフォームに戻った電王が威勢良く叫ぶ。
正面に構えたデンガッシャーの刀身が分離し、オーラソードが何処までも伸びていく。
電王が剣を振りかぶり、刀身を解き放つ。
「俺の、俺たちの必殺技!」
「させんぞ!」
飛び出した刀身が部屋を切り裂きながら飛び交う。
この部屋すら破壊しようとするその刃を、大将軍が怪光線で打ち砕こうとする。
だが、ここまで来てそれは無いだろう。
「それはこっちの台詞だ。ここからはクライマックスなんだ」
俺は片足にエネルギーを籠め跳躍すると、飛んで来た剣先にエネルギーを流し込みながら強引にその進路を変えた。
俺のエネルギーを吸収した刀身は進路を変え怪光線がむなしく宙を切る。
進路を変えた刀身を、今度はキンタロスが斧で撃ち返す。
「せやな! ここからがクライマックスや!」
打ち返された刀身は速度を増し、今度はウラタロスの元に進む。
その刀身をロッドで絡めとったウラタロスは、楽しそうで皮肉が籠った言葉を紡ぐ。
「毎回クライマックスは芸がなくない?」
「でも、モモタロスってそれが決め台詞じゃん」
絡めとられた刀身は真っすぐにリュウタロスの持つ銃の銃口に収まる。
ウラタロスの力を吸い取った刀身が勢いよく飛び出す。
そして飛び出した刀身は、今度はギーツの持つ白い銃に収まった。
「それなら、他のセリフはどうだ、モモタロス?」
「やかましいぞ、お前らっ!」
いつものワンパターンを指摘され、モモタロスが吠える。
そんな何時もの軽快なやり取りとは裏腹に、無数のエネルギーを帯び金色に輝く刀身がデンガッシャーに装着された。
5人……いや、6人のエネルギーを注ぎ込まれた剣を構えたモモタロスの中から、こんな声が聞こえてくる。
「それなら、こんなのはどうかな……」
「おっ、良太郎にしては珍しくいいセンスじゃねえか」
モモタロスは楽しそうな声を上げながら、剣を振りかぶり突進した、
そして、今回放つ必殺技の名前を高々に宣言する。
「いくぜぇ! 食らいやがれ! 俺たちの必殺技、ハイライトバージョン!」
エネルギーの奔流が迸り、コードは元より部屋すらも破壊した。
その力は部屋のみならず、ついには巨大戦艦の外壁までも砕き日の光がこの不気味な空間に注ぎ込まれる。
それだけではない。電王の放った膨大なエネルギーは更に巨大戦艦の各所に誘爆を引き起し、ついには大地に向かい落下していく。
「ば、馬鹿な!? こ、こんな道化に!? 世紀王の居城がぁぁぁぁぁぁぁ!?」
※※※※※
電王の放った必殺技のエネルギーに耐えきれず、爆発し落下を始めるゴルゴム大戦艦を遠くに見つめながら、そのロボット兵士は一人この場を後にしようと歩みを進める。
「まさか、我が肉体を破壊するとは」
ロボット兵士の外装がはがれる。
その奥から見えたのは若く見える女の顔だ。聖騎士ヴェザーラによく似た容姿ではあるが、彼女のような化粧は無い。
ただシンプルに、目立たぬように工夫されたゴルゴムの女は遠くを見ながらこう呟く。
「恐るべき戦士たちよ。だが、我が本体を見ぬく事は出来なかったようだな」
そう、この女こそが数十万年を生きたゴルゴムの古老、大将軍の真の頭脳体であった。
電王やギーツ、アインロールドが戦った本体は頭脳体さえ無事であればいくらでも再生できる。本体が無事であれば、頭脳体はそこから再生できる。
どちらか一方さえ無事ならよい。男としての大将軍の姿も、孫として扱っていた高級ロボット兵士も、自らの頭脳体を隠すためのデコイに過ぎない。
そうやってゴルゴム大将軍は、数十万年に及ぶ時を生きて来た。
本体の再生には数百年の時間を要するが、その程度の時間はゴルゴムの民にとっては大した時間ではない。
むしろ、人間はその短い期間に死に絶えるのだから、ちょうど良いぐらいであった。
そうやって一人この場から立ち去ろうとしたゴルゴム大将軍だが、不意に彼女の前に立ち塞がる存在に歩みを止める。
突等に現れたその知古を前に、彼女は驚愕の表情を浮かべる。
「ジョ、ジョアイ!?」
そう、そこにいたのはサタンサーベルを奪った憎き仇敵のジョアイであった。
彼は目の前の大将軍を呆れた表情で見ながら、こう言葉を紡ぐ。
「まさか誠太郎の読み通りとはな。しかし、爺さんじゃなくて婆だったのか」
ゴルゴムとの戦いの最中、ジョアイがアインロールドより伝えられたことが、これであった。
『あの巨大船とは別に、ゴルゴム大将軍の本体がどこかにいる』
自分を誇示する態度、ダメージを顧みない戦い方、そして女騎士とその姿を模したロボット兵士。そこからアインロールドは大将軍の実態を推測して見せたのだ。
「まったく、驚きだな。彼の言葉通りとは」
大将軍の背後に現れたのは、この時代のクウガであるリクであった。
アインロールドの言葉を半信半疑に思いながらも、二人はデンライナーに搭乗せずにどさくさにまぎれ戦場を離脱し、逃げる者が無いかを見張っていた。
そして、たった一体で逃げ出すロボット兵士を見つけ出していたのだ。
「ば、馬鹿な!?」
「馬鹿はお前だろう。せこい手ばかり使いやがって。だが、貴様らゴルゴムとの悪縁も此処で絶たせてもらうぞ」
日の光を受け、サタンサーベルがきらりと輝く。
歪み、堕ち、優しさを忘れたゴルゴムを討てと、サタンサーベルがジョアイに語り掛ける。
そして、その声は大将軍には伝わらない。ただ古の妄執を果たさんと、古老はその爪を振りかざす。
「こうなれば! サタンサーベルを返してもらうぞ!」
後方を塞ぐのはグロンギを封じたクウガだ。どのみち活路は前にしかない。
跳躍し、ジョアイを討たんと大将軍が迫りくる。
だが、そのような老怪の抵抗は無意味だった。
ジョアイがただ無造作にサタンサーベルを振るう。それだけで、ゴルゴム大将軍の肉体は真っ二つに斬斬り裂かれる。
「そ、そんな……世紀王……さ……ま」
これが、ゴルゴム大将軍の真の最後の言葉であった。
爆発することなく風に溶けて消えて行く大将軍は、かつて仕えていた世紀王の姿を幻視する。偉大なる世紀王が、彼の手にもサタンサーベルがあれば。あの方にサタンサーベルを……。
決して叶わぬ過去の妄執に支配された老人に、幻の世紀王が何かを応える事は永遠に無かった。
大将軍が完全に消滅したことを確認したリクは、ジョアイに話しかける。
「終わったな」
「ああ、とりあえずだけどな」
「これからどうするつもりなんだ?」
付き合いはグロンギと戦っていた頃からだ。
戦いを知らぬリントである自分をふらりとやって来たこの男は支え、最後まで共に戦ってくれた親友であった。
そんな日々の中で聞いたジョアイの都合。それを思い出しながら、親友に今後の方針を尋ねた。
「そうなんだけどなぁ……」
もっとも、一騎当千の強者らしくない、何とも曖昧な受け答えをジョアイはする。
勇猛果敢なこの男にしては珍しく、尻込んでいるのだ
その仕草にリクは仮面の下で苦笑する。まぁ、ここから先は自分の出る幕は無い。
ジョアイ自身の事情だ。友人として、笑いながら眺めてやればいい。
だが、そんな彼の考える微笑ましい未来は訪れない。
それは、彼らから離れた戦場で起こる。
唐突に、戦場に闇が広がる。
落雷が落ちる。
背筋が逆立つ、恐るべき寒気を感じる。
「あ、あれは!?」
「何が!?」
リクとジョアイの視線の先。
そこに先ほどまで落下を続けていたゴルゴム大将軍の姿は無い。
ただ、巨大な闇が天に向かい立ち昇るのみ。
未来の神が止めたかった2000年前の惨劇は、こうして始まるのであった。
モモタロスの必殺技のナンバリングはその時の気分により適当。
逢魔降臨暦にもそう書かれている。
Q.マイちゃんは先代クウガと面識は無いの?
A.両親の友人として面識は当然ある。ただし、リントであるリクにとってクウガである事は誇りでも何でもなく、クウガとは伝えていない。その為に、リントの面白いおじさんとしか思っていない。