ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
時の列車デンライナー、その先にあるのは過去か、未来か……。
♪♪♪♪♪
このあたりの事を聞いた事がある。
近くに大国であるリントの国があるため、リントの勢力圏外にも村が集まっている。白蟻怪人が騒ぎお起こした市も、そんなリントの国との交易で栄えた市だ。
白夜王を名乗る男はリントの国のみならず、リントの影響を受けたこの地域一帯を滅ぼすと宣言した。
この際奴は『これでは歴史が大きく変わってしまう』と言った。預言者か未来人かは知らないが、奴はこの先の歴史を知っており、このままではリントの国が長く後世に残ってしまうと考えたのだ。
奴は歴史を俺たちが知る『リントの国が忘れられた歴史』にするべく、ゴルゴムの兵隊をグロンギに変えてあたり一帯を壊滅させる気らしい。
士は奴らの目的を『終活』と称した。この虐殺劇と終活がどうつながるかは不明だ。
そして奴の目的がどうであれ、この虐殺劇は阻止しなければならない。それだけは確かだ。
「ライダーパンチ!」
逃げ惑う人々を襲うグロンギの頭を吹き飛ばす。
首から上を失ったグロンギは痙攣をおこしながら仰向けに倒れ、その機能を停止する。
不幸中の幸いはこのグロンギどもが肉体だけの張りぼてで、中身が伴っていない事だろう。
ゲームに興じるような知能は無く、ただ本能の赴くままに暴れるだけの存在だ。一直線に市に向か移動を開始したので、なんとかバイクやデンライナーで先回りをする事が出来た。
グロンギの津波に対し俺たちは後ろに下がりながら奴らの数を削る事を余儀なくされていた。
大将軍の本体を倒しに行った、ジョアイさんとリクさんとは合流が出来ていない。
当代クウガと一緒なのだから平気だとは思うが、出来れば早く合流をしたいところだ。
「くそう! キリがねぇ!」
「口を動かさないで、手を動かして!」
「わーってるよ! ほんと、どれだけいるんだ!?」
焼けクソ気味に叫ぶモモタロスに、小野寺さんのクウガが言葉を返す。
もっとも、注意をしている体だが小野寺さんの声にも疲れが混じってきている。
幸い、上空からデンライナーの爆撃は有効ではあった。
ウラタロスは先に戻ってもらい、空中からのデンライナーによる爆撃支援に徹して貰ってはいる。際限なく湧き続けるグロンギには焼け石に水だが、それでもやらないよりははるかにマシだ。
「本当に終わりが見えない」
「だが、ここで踏ん張らないと村に到達してしまう。
苦しそうなのはギーツの力を失った生身のエースさんと、体力に劣る野上さんであった。
ゴルゴムの軍勢との戦い以降連戦だというのもあるが、こうも終わりの見えない状況は気力の維持が不安になる。終わりの無い戦いというのは、士気を保ち続けるのは難しい。
こんな状況なのに誰一人逃げる様子が無いのは、流石は仮面ライダーと言ったところか。
「誠太郎、気が付いているか?」
俺の隣で戦っていた五代さんがこう話しかけてくる。
恐らくは俺と同じ事に気が付いたのだろう。俺は小さく頷きながら、皆に聞こえる大きな声でこう返す。
「こいつらが、厳密に言えばグロンギじゃないって事か?」
「ああ」
俺の返答に五代さんが頷き、イマジンズとエースさんがぎょっとした表情を浮かべ、ライダーたちもピクリと反応する。
千を優に超えるゴルゴムの軍勢と、大将軍が吐き出したロボット兵士の残骸が闇に喰われてグロンギとなった。当初はそう考えていた。
トカゲ兵士は怪しいが、正規のゴルゴム怪人が闇の力を受けたからって、グロンギ化は無いだろう。ロボット兵士に至っては生命かどうかすら怪しい。
恐らくあれらはパワーリソースに使われたのだろう。このグロンギどもはン・ガミオ・ゼダが持つ闇の力で作り出した、仮初の存在なのだ。
でなければ、延々とわき続けている事に対する説明が付かない。
もっとも、これが分かってもさほど意味はない。
仮初だろうが何だろうが、力は本物だからだ。
ン・ガミオ・ゼダの姿はグロンギの群れの中に飲まれ見えなくなっていた。
隠れるようなタマではないので、更なる闇の力を引き出すために力を蓄えているのか、グロンギの量産に力を回しているのかのどちらかだろう。
つまり、俺たちのやらなきゃならない事はこうであった。
「グロンギの進軍を食い止めつつ、ン・ガミオ・ゼダを見つけ出し倒す。この状況を打開するにはそれしかない」
厳密には、オーマ・ガイ・ジオウを倒すという選択肢もあるが、こっちはゴルゴム大将軍の肉体の消滅と共に、ジオウやゲイツと共にいずこかへ消えてしまった。
多分この近くに居て戦ってはいるのだろうが、力の差を考えると現実的な選択肢ではない。
あのオーマジオウもどきとン・ガミオ・ゼダのどちらがマシかと問われると、どっちも遠慮したいというのが本音だが。
方針は決まった。
だが、そんな考え通りに事は進まない。
唐突に聞こえて来た風切り音と共に、先頭にいたグロンギの一体に矢が突き刺さる。
無論、これを放ったのはエースではない。もっとはるか後方からだ。
慌てて振り向くと、そこには市にいただろう兵士の一団!?
まて、村に籠って援軍が来るまで防戦をするんじゃなかったのか!?
損のれの焦りなどお構いなしに、グロンギに矢を当てた事で気が大きくなったのか、兵士の一団が気炎を上げる。
「やったぞ! 当てた、当てたぞ!」
「クウガがいる! 天の助けだ」
「皆の言う通りだ! 俺たちだってやれるんだ!」
ゾクリ。背筋に冷たいものが流れる。
なぜ、今の今まで気が付かなかった。
市になぜ白夜王がいた?
様々な人々が行きかい物々交換をするという性質上、関所は有っても基本的に人は入り放題じゃないのか?
白夜王の手の者が、すでに潜り込んでいた可能性をなぜ考えなかった?
意地でも踏み縛って、出来る限り離れた場所で戦うべきであった。
あるいは、エースだけでも先に戻して、村に籠っているよう伝えるべきであった。
グロンギの数的に踏みとどまるのは不可能であり、エースを単独で帰すのはサイクロンヘルを使っても極めて危険の高い行為ではある。
それでも、俺は致命的な失敗をしてしまった。
グロンギどもの目に、獲物を見つけた喜びの光が灯る。
背後の兵士たちは、クウガという援軍と、グロンギの軍勢という恐怖の前に正常な判断能力を喪失している。
そして、虐殺は始まった。
「た、たすけ……!」
「引き離す! 耐えるんだ!」
兵士に噛みつくグロンギを、俺は力任せに強引に引きはがす。
食事を邪魔された事に怒りを覚えたのか、グロンギが俺に向かい牙を突き立てようとする。
俺は片腕を奴の口に突っ込む。グロンギは俺の腕に噛みついた事に愉悦の笑みを浮かべるが、すぐさまその表情が驚きに変わる。人間に噛みつくつもりで俺を噛んでも、俺の装甲は抜けない。
慌ててt牙に力を籠めようとするが、それを許す俺ではない。
「ライダー! チョップ!」
開いている腕で奴の首を刎ねる。それで終わりだ。俺はグロンギの頭を腕から引き剥がし投げ捨てると、兵士の介抱に向かった野上さんとエースさんに尋ねる。
「そっちの彼は!?」
「駄目だ、もう……」
「くそっ!」
最初の一噛みで毒でも注入されたのか、すでに彼はこと切れていた。
どうにもならない現実に怒りを覚え地面を拳で叩きながらも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
あれからどれだけの時間が経っただろう。
長く戦っていた気もするし、短い時間の気もする。
他のライダーからははぐれてしまった。傍にいるのは野上さんとエースさんとサイクロンヘルだけだ。
壁という防壁無しでは一部の超人以外は人間がグロンギと戦うのは厳しい。白夜王の手の者に扇動され、討って出た兵士たちは瞬く前にグロンギの餌食となった。少数は逃がす事は出来たが、ほん等に少数だ。
さらに、乱戦となった隙をつかれ相当数のグロンギの突破を許してしまった。
不幸中の幸いは、先にウラタロスをデンライナーに戻していた事だろう。
デンライナーが拠点として機能し、情報が伝わってくる。
はぐれたイマジンズはデンライナーを拠点に、逃げてきた女子供や年寄りをを守っているそうだ。
もっとも、最初の突破で避難民にも相当被害が出たようで、結果は芳しくないらしい。
マイちゃんとナスカさん。それに使用人の老夫婦は行方不明だ。ナスカさんの操る虫型の鬼はかなり強力なので無事だと信じたい。
五代さんと小野寺さんのクウガは散ってしまった難民や兵士を守り、リントの国方面に逃がすよう活動している。
守る範囲の広さに対してたった二人。上手く行っているとは言い難い。
ジョアイさんとリクさんに至っては、未だ合流できていない。
こうなると、戦場に残った俺たちの役割は、なんとかン・ガミオ・ゼダを見つけ出す事だ。
一人でも多くを生かすためには、それしか方法がない。
「誠太郎……」
「大丈夫だ、それと、多分この先だ」
不幸中の幸いは、未来で俺は一度ン・ガミオ・ゼダと遭遇していた事だろう。
奴の闇の波動は覚えている。さすがに正確な位置はわからないが、闇が深い所に向かえばいる可能性は高い。
あっと、その前に一つやる事があった。
「サイクロンヘル、ヘルメットを出せ」
俺の言葉にサイクロンヘルのシートが開き、俺が普段愛用しているヘルメットが姿を現す。
一見市販品のヘルメットだが、ショッカー謹製で様々な機能が備わっている。ン・ガミオ・ゼダが垂れ流す毒に対しても有効な事は確認済みだ。
「エースさん、被ってください。あのグロンギは毒を垂れ流しますが、そのヘルメットを被っていればある程度耐えられます。とはいえ、サイクロンヘルからは離れるないでください」
「ああ、分かった」
俺の言葉にエースさんは神妙に頷く。後は……
「野上さん、貴方は……」
「ここまで来たら、僕も付き合うよ。いざとなったらみんなを呼ぶから」
野上さんなら今はデンライナーを守っているイマジンたちを呼ぼ寄せる事も可能か。
ライナーフォームは強いけど、野上さん自身が戦い向きとは言い難い。対応力だけならイマジンが憑依している状態の時が上だ。
このあたりの判断は俺が口出しをする事ではない。戦闘向きでは無くてもこの人もまた伝説のライダーだ。
「分かりましたけど、無理はしないで」
「君こそね、誠太郎」
そして、闇の深い場所。山の中腹付近にそれは存在していた。
巨大な岩を玉座に、赤い狼のグロンギは静かに座り何かを待ち構えていた。
招かれた客か、招かざる客か。
俺たちの到着に、グロンギの王は静かに瞳を開く。その目は緑色に輝いている。
畜生、正気かよ。
「何の用だ、未来の戦士よ」
「この事態を止めるために、貴様を倒しに来た」
「確かに俺を倒せばあのまがい物どもは消える。道理よ」
俺たちの予想が正しかったと、グロンギの王はあっさりと認める。
少なくとも対処手段はある。第一関門の突破に俺が少しだけほっとしている横で、グロンギの王を問い詰めたのは野上さんであった。
「あなたは、あれを止めらないんですか?」
「この俺に、グロンギの王に暴虐を止められないかを聞くとは豪胆な。その勇気に免じて答えてやろう、俺自身も愚王により呼ばれた仮初の存在よ。己の意思で、下らぬ茶番を止める事はかなわぬ」
野上さんの問いかけに、愉快さと不快さを合わせた回答をン・ガミオ・ゼダがする。
愉快さは自身に対して物おじせずに問い掛けて来た野上さんの豪胆さを受けて、不快さは自分を呼び出した白夜王に対してだろう。
いや、ある意味予想できる内容ではあった。
未来でのこいつの言動をいる限り、この状況をグロンギの王は望んではいないのは明白であった。
「召喚物として与えられた役割は果たした以上、静かに終わりを待つ気だったが……。よかろう、貴様らの心意気に免じ、その挑戦を受けてやる」
そう言って、グロンギの王は静かに立ち上がる。
未来で戦った時よりも格段に強い。ただ話しているだけでも気圧されそうだ。一挙手一投足の全てに隙が無い。
よくこれと、俺は未来で戦えたな。理性のあるグロンギの王とは、ここまで違うのか?
じりじりとすり足で、円を描くように奴との間合いを取る。
何とか攻撃のチャンスを見つけ出そうと、奴を観察するが……本当に隙が無い。メインで戦う俺を視界の中央に据えながら、野上さんやエース、サイクロンヘルからも注意を反らしていない。
「いつまでそうしている、若い戦士よ。そちらから来ないのなら、こちらから行くぞ!」
一瞬だった。
その僅か一瞬で奴は俺の懐に入り込むと、その赤い剛腕を振るう。
ガードが間に合わない。回避も出来ない。それほどまでに緩急の切り替えが早い踏み込みであった。
腹が吹き飛ぶんではないか。そう思えるほどの衝撃に意識が持っていかれそうになる。
とはいえ、一発で沈むほど俺も柔ではない。力が抜けそうになる足を気力で踏ん張らさせ拳を振るう。
だが、並の怪人ならそれだけで砕く拳もン・ガミオ・ゼダには通じない。
現代の格闘術など知らない筈なのに、見惚れるほど華麗なブロックで俺の連打を受け流してしまう。
「技術はある、だが非力にて未熟!」
牽制にしもならない連打を止め、拳にエネルギーを集中させた。一撃必殺となる赤く輝く拳を振るう。
「だったら! ライダーパンチ!」
だが、その拳もン・ガミオ・ゼダはあっさりと掌で受け止める。
俺のパンチをあっさりと受け止めたグロンギの王は、嘲るのでもなく淡々と事実のみをこう指摘した。
「ただ力を乗せただけの拳など、この俺に通用すると思うな!」
掴んだ拳をそのままに俺の身体を持ち上げ振り回す。
まるでタオルか何かを振り回すかのように、奴のなすがままに振り回されてしまう。踏ん張りも、空中での姿勢制御も出来やしない。
何度も地面に叩きつけられ複眼に皹が入り、口の中が切れたのか血の味が口の中に広がる。
何とか動く左腕で奴の手首を捉える。奴の手首を破壊し、拘束を解こうと藻掻く。
だが、鋼のごとき筋肉は俺の攻撃をはじき、脱出する事が敵わない。
「性能に頼りすぎたな、若造!」
そのままン・ガミオ・ゼダは俺を岩に向かって投げ飛ばす。
抵抗は愚か立て直しも出来ず、俺は岩に叩きつけられる。血反吐が口から溢れ、マスクを赤く染める。
「誠太郎!」
「させるかっ!」
一瞬の攻防で俺がずたずたにされたのを見て、電王が駆けだしエースさんが矢を解き放つ。
だが、ン・ガミオ・ゼダは矢を意にも返さない。
矢をその強靭な皮膚で弾き返し、電王には拳を振るいあっさりと弾き飛ばす。
「力も闘志もある、だが、そのような手を抜いた状態で俺の前に立つな! 無礼者!」
手を抜いた状態? イマジンたちの事を指しているのか?
あいつ等と会った筈など無い筈なのに、今の電王が全力ではないと見抜いたというのか?
怒声を上げるグロンギの王に、野上さんの返しは何ともとぼけたものであった。
「ごめんなさい。でも、皆今は忙しいんだ。僕一人で戦うしかない」
イマジンたちを呼ぼうと思えば呼べる。
だが、彼らが一人欠けるだけで、逃げている難民が何人も死ぬ。それが分かっているから、野上さんはイマジンたちを呼ばない。呼べない。
その穏やかだが決死の覚悟に、グロンギの王は高らかに笑う。
「どうやら無礼は俺であったな! 許せ、戦士よ! そして命を失っても恨むなよ!」
「死なないよ。死ぬわけにはいかないから」
デンカメンソードを振り上げ、電王ライナーフォームが駆ける。
それを迎え撃つべくグロンギ脳はどっしりと腰をおとし構える。
「おっと、俺を忘れるなよ!」
そう叫び動いたのはエースだ。
弓矢は貧弱すぎてグロンギの王には通じない。そう悟ったエースさんは弓を投げ捨てると、サイクロンヘルから取り外したレーザーバルカンの引き金を引く。
って、まてや!? それ外れたのか? 俺知らないよ、それ?
あ、いや、外れないか。エネルギーチューブが繋ぎっぱなしか。無理やりパージして、即興で使えるようにしたのか。
まぁ、それはともかく、一人と一台が突っ込む電王を支援するべく、射角を変えた弾幕をグロンギの王に浴びせる。
矢はともかくサイクロンヘルのレーザーバルカンは流石にダメージなると考えたのか、珍しく迎撃ではなく防御姿勢を取った。
十字に組んだ腕をレーザーバルカンが焼いていく。そして、防御の構えを取ったグロンギの王を倒すべく、電王ライナーフォームがその必殺技を解き放つ。
ン・ガミオ・ゼダの足元に、電王から伸びた金色のレールが走る。その上を電王が滑るように疾走していく。
「いくよ! 電車斬り!」
ライナーフォームの必殺の一振りがン・ガミオ・ゼダの肉体に食い込む。その速度とパワーでグロンギの王の肉体を斬り裂かんと押していく。
さすがのン・ガミオ・ゼダもこの技を前に先ほどまでの余裕はない。歯を食いしばり、刃が食い込む腕に力を籠め、筋肉を数倍に膨れ上がらせる。
動きを止めた事は、俺にとってもチャンスであった。
「こいつもくれてやる! ライダーキック!」
俺は天高く跳躍をすると、空中で一回転し赤き流星となってグロンギの王を襲う。
必殺のライダーキックが、電車斬りを耐えるグロンギの王の背中から突き刺さる。
前方と後方、その両方から受ける超必殺技に、流石のグロンギの王と言えども耐える事は難しい。
デンカメンソードの刃が赤い腕に喰い込み、ついにはその腕を両断した。
「やったか!」
宙に舞う赤い腕を見て、エースが歓喜の声を上げる。
だが、必殺技を決めたはずの俺と電王の背筋に冷たい物が流れた。
そう、たった今腕を斬り飛ばされた筈のグロンギの王は、歓喜の笑みを浮かべていたのだ。それは戦士を祝福する為の笑みであり、その強者を打ち倒す事を喜ぶ笑みであった。
奴は俺たち二人を見据え、笑いながらこう宣言する。
「大義だ! 若き戦士たちよ。俺の腕を斬り飛ばしたその力、あの世で誇るが良い」
次の瞬間、残された左腕から膨大な量の電撃が迸る。
俺が放つ電気の数倍の威力を誇るそれは、あたりを白く染め上げ音を消し飛ばす。
咄嗟にサイクロンヘルがバリアを脹れなければ、エースの肉体は消滅していた事だろう。
だが、その膨大な破壊の嵐を止めた代償に、サイクロンヘルも深刻なダメージを受け火花を散らして崩れ落ちる。
世界に色が戻った時、立っていたのは片腕を失ったン・ガミオ・ゼダだけだ。
俺と野上さんは変身が解除され地面に倒れていた。サイクロンヘルに守られていたはずのエースさんもまた、崩れ落ち地面に横たわる。
幸い意識はある。だけど、あまりのダメージに指一本動かす事が出来ない。
これが本来のグロンギの王の力……。強い、圧倒的に強い……。
「ほう、まだ生きているとは。だが、もう指一本も動かす事など出来まい」
ああ、その通りだよ、こんちくしょう。
何とか立ち上がり、再度変身しようと藻掻くが、本当に指すら動かせない。ナノマシンにまでダメージが来たのか回復の速度も普段より鈍かった。
意識を保つのが難しい中、グロンギの王はまず俺にとどめを刺すべく近づいてきて……。
「させるか!」
飛び込んできたのは、赤い剣を振るう一人の男だった。よほど急いできたのだろう、行きも絶え絶えに駆けこんできた男の鎧はボロボロに壊れ、全身に傷が無い所など無い。
だが、その技の冴えはすさまじかった。生身の人間だというのに、その鬼気迫る刃はン・ガミオ・ゼダの胸板を切り裂き後退させることに成功する。
グロンギの王は自らの胸板に刻まれた一筋の傷を面白そうに眺めながら、男に、ジョアイさんに惜しみない賛辞を贈る。
「良い腕だな。異界の魂を持つ戦士よ」
「誠太郎たちに手出しはさせん!」
肩で息をしながらそう叫ぶジョアさんに続いて、当代のクウガであるリクさんが森の奥から飛び出してくる。
彼は俺たちをかばう様に間に入り構えると、隣に並んだジョアイさんに叱責の言葉を述べる。
「ジョアイ! 先走るな!」
「そんな場合じゃなかっただろうが!」
「ほう、この世界のリントの戦士か。そこの若造どもよりは楽しめそうだな」
「まったく、こっちは憂鬱だよ。なんだって今更グロンギが出てくるんだ」
「呼ばれたからな。我らが世界の闇は永久に取り除かれたというのに、この世界の闇は未だ晴れぬようだな」
未来で戦ったグロンギはン・ガミオ・ゼダの事を異世界から来た、自分たちが封印された後の存在と言っていた。
恐らくは士や小野寺さんがと戦ったクウガの世界、もしくはそれに近い顛末を迎えた世界から呼ばれたのか。
ただ、グロンギによりリントは滅んだという歴史を作るために……。
何とかジョアイさんやリクさんに加勢しないと。
だが、先ほどの電撃で炙られた肉体は動かない。野上さんやエースも意識はあるだろうが、動くどころかイマジンたちに連絡を取る事すら難しそうであった。
倒れる俺たちを尻目に、ジョアイさんたちは戦い始める。
片腕を失ったグロンギの王だが、その力は圧倒的であった。生身のジョアイさんは元より当代クウガのリクさんですら寄せ付けない。
封印エネルギーを何度も受けている筈なのに、そのエネルギーを受け流しているらしく動きが鈍る様子すらない。
サタンサーベルの切れ味は鋭さはグロンギのひょひすら容易く切り裂くのに、鋼のような筋肉でその全てを受け止めている。
片腕を失っているというのに、ジョアイさんとクウガは押され始めていた。
そして、以下にジョアイさんが怪人とやりあえる超人と言えども、グロンギの王とクウガの戦いにいつまでもついていけるわけがない。
徐々に彼の動きが鈍り、ついにその拳がジョアイさんを捉える。
回避不能の必殺の一撃だ。あれを受ければ超人とて命は無い。
「させるかっ! ライダー変身!」
一番最初に戦線復帰が可能だったのは俺であった。
変身シークエンスをすっ飛ばしての緊急変身だ。戦う力なんてもう残っていない。それでも、ジョアイさんとン・ガミオ・ゼダの間に身を割り込ませる。
腐っても改造人間だ。俺なら耐える事が出来るかもしれない。命に代えても、彼を家族の元に、マイちゃんやナスカさんの元に返さないと……。
ン・ガミオ・ゼダの拳が俺に迫る。
受ければ砕けるだろう。これまでの戦闘経験がそう俺に訴えてくる。
逃げるよう警告する本能を、意思の力で強引にねじ失せ、両手を交差させ防御の姿勢を取る。
そんな俺を背後から伸びた腕が押しのけた。
押しのけたのは、ジョアイさんだ。
グロンギの拳が、ジョアイさんの腹を貫いた。
「ジョアイ!」
「ジョアイさん!」
「そんな! ジョアイ!」
皆の叫びがあたりに響く。
そんな中、力を失ったジョアイさんの肉体が俺のいる方向に倒れ込みそうになり、寸前のところで踏みとどまる。
まだ、彼の闘志は尽きていない。だけど、腹の傷はどう見ても致命傷で……。
「だ、大丈夫だったか?」
「なんで俺の前に出た! 俺なら耐えられる可能性があったのに!」
思わず怒声を上げる俺に、死相を漂わせたジョアイさんは、曖昧に笑いながらこう返した。
「仕方ねえだろう。身体が勝手に動いたんだ。息子には何時だってかっこいい所見せたいんだよ、親父としちゃあな」
え? 何を?
「悪いな、■。探すのに手間取って」
だから何を……。
「母さんはさ、すぐに見つかったんだ。信じられるか、あいつお姫様だったんだぜ。いい歳こいた婆だった癖に、化け物を沈める生贄の乙女に選ばれてさ。あんときは大変だったよ……」
何を言っているんだよ、あんたは。
「だからさ、お前たちも生まれ変わっているかも。そう考えて日本中を探したんだ」
フラッシュバックが起こる。
魂の奥底で、名前を思い出す機能すら破壊された魂が記憶の断片を蘇らせていく。
前方から迫りくる、二台の自動車。
ガードレールを突き破った瞬間。
前方に迫りくる地面。
家族の悲鳴……。
かつて、仮面ライダーが創作だった、俺の魂が生まれた異世界。
そこで俺と俺の家族の最後となった瞬間。
「見つからない筈だわ。お前が生まれ変わったのが、二千年も先の未来じゃな」
「なに……言って……」
「まさか、仮面ライダーになっているなんてな。会えて、嬉しかった。元気な姿を一度でも見れて、本当に良かった」
命が零れ落ちていく。
慣れ親しんでしまった感覚。いや、そうだ、デンライナーなら、未来の医療技術ならもしかして。
無理だという理性と、助けたいという感情が交差する。
ジョアイさんは、最後の力で俺を抱きしめる。
そして、俺の耳元に向かい小声で語る。
「母さんとマイを頼む。未来に連れて行ってもいいぞ」
「やめてくれ……そんな……遺言みたいな事! ふざけんな、マイちゃんはいくつだよ! 父さんは帰らなきゃ駄目だろう!」
「お前よりはしっかりしているさ」
ジョアイは……親父はそう言って優しく微笑みかけると、俺を押しのけサタンサーベルを掲げる。
赤い剣がひときわ強く輝き、あたりの力を集めはじめる。
腹の傷から血を流しながらも武器を構える親父に、ン・ガミオ・ゼダが賞賛の感情を込めて訪ねる。
「息子との別れは済んだか、異界の戦士よ!」
「あんがとな、グロンギの王様。俺の知っているグロンギの中じゃ、一番マシな奴だったぜ。それと、リクも面倒をかける」
「馬鹿野郎が……」
「まて、俺もたたか……」
急いでこいつを倒して、何とかしなければ。
そう考える俺の周囲を、赤い障壁が囲う。いや、俺だけではない。野上さんやエースさんも、同じような障壁に包まれていた。
「サタンサーベル! 俺なんかの頼みを聞くのは業腹だろうが、俺の息子たちを守ってくれ」
親父の言葉に障壁は更に赤く強く輝き、俺の前に立ちふさがる。
ふざけんな! 守るのは俺の役目だ! 何で壁なんて立てるんだ! 必死に壁を破壊しようと拳を当てる。
だが、目の前の壁はピクリともしない。
輝く剣を振りかざし、親父はン・ガミオ・ゼダに斬りかかる。
グロンギの王は腰を落とし、残った腕を深く構え親父とクウガを待ち構える。
「うおおおおっ!」
「がああああっ!」
クウガとン・ガミオ・ゼダの雄たけびがあたり一帯に木霊する。
二人の拳が、蹴りが、たがいのにくたいをくだいていく。
そんな激戦の最中、親父の口元がニヤリと動いた。
「土蜘蛛! 鉄百足! 出番だ!」
そう叫んだ瞬間、ン・ガミオ・ゼダの足元が崩れ始める。
それはナスカさん……いや、母さんが使っていた鬼のうち、百足と蜘蛛の姿を下二匹だった。
二匹の鬼は地中を掘り進み、ン・ガミオ・ゼダの足元に潜んでいたのだ。そして、土蜘蛛は糸を吐き出すと、ン・ガミオ・ゼダの足を縛り体勢を崩す。
「謀ったか! 異界の戦士!」
「おうさ、謀ったさ! 貴様は強すぎだ、卑怯で悪いな!」
「そのような事は言わぬ、人間!」
バランスを崩したその一瞬の隙をつき、サタンサーベルがグロンギの王の胸を貫く。グロンギの王を完璧に封印するべく、クウガが脚に封印エネルギーを集める。
このまま押し切れば、親父とクウガが勝つ。だが、戦いの神ともいえるグロンギの王だ。
心臓を貫かれながらも、奴は口元に笑みを浮かべる。そして、残った赤い左の剛腕を振るい、親父の胸を討ち貫く。
二人の口から、血がこぼれる。
このままだと、グロンギの王は耐えてしまう。
心臓を貫かれた程度では、奴は死なない。
親父に押し切る力は残されていない。クウガの封印エネルギーはまだ溜まり切っていない。
そんな最中、唐突に響くのはエンジン音。
そう、先ほどのン・ガミオ・ゼダの攻撃で中破したサイクロンヘルだった。
サイクロンヘルは自力で起き上がると、グロンギの王に向かい突撃する。
小爆発を繰り返しながら、グロンギの王に体当たりをする。
「なっ!? カラクリが!?」
「■のバイクか!」
親父とサイクロンヘルの捨て身の一撃に、グロンギの王の足が、大地の裂け目に飲まれていく。
そして、ついにン・ガミオ・ゼダを確実に封印できるだけのエネルギーが、クウガの足に集まる。
「うおおおおおおおおおおっ!」
必殺のキックが、グロンギの王を貫く。
クウガが天に飛び、翻り着地する。
「見事だ!」
その言葉と共に、ン・ガミオ。ゼダの姿が地中深くに消えて行く。
そして、それは親父と、サイクロンヘルもまたまた同じだった。
力を失った二人の姿が、地中深くに消える。
大地の裂け目が再び閉じ、戦いの喧騒を打ち消していく。
そして、俺は何をする事も出来ず、ただそれを見ている事しかできなかった。
「うわあああああっ! ああああああああっ!」
ただ、無様に嗚咽の叫びを上げる事。
それが俺に唯一出来た事であった。
次回、本章エピローグ
アンケートの結果で、中間フォーム1が決まります。
太陽はライダーとしての力
創世は観測者としての権能
特訓は鍛えた力と技の覚醒、中間フォームなど無い。
NEXT RIDER?
-
太陽(仮面ライダーBLACK)
-
創世(仮面ライダーギーツ)
-
特訓(仮面ライダーZX)