ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第14話 episode・000 閑話・振り払う拳、繋がる手

 逃亡者、追跡者の双方にとってやりにくい状況であった。

 園子を拉致した怪人だが、小柄な少女といえども人を一人抱えてビルの屋上を飛び進むのは楽ではない。この少女に今すぐ危害を与えるわけにはいかない。何としても人前に連れていき、分かりやすく殺害する必要がある。

 何より空を飛ぶ相手に追撃を振り切るのは容易ではない。

 

 追跡者……オーズにしてもやりにくい状況だ。

 タジャドルコンボ時に左腕に装着される円形の盾‥…タジャスピナーには射撃能力がある。

 だが、園子が囚われの身になっている以上、それを使うわけにはいかない。強襲して助けるにしても、東雲を抱えたままでは不可能だ。

 

 結局の所、折れたのは怪人だ。このまま拠点に案内してしまうよりは、どこかで決着をつけた方が良い。

 歴戦の仮面ライダーオーズを相手にしても後れを取らないだけの戦績と自信が彼にはあった。

 

 

 それなりに広さのあるビルの屋上に怪人は立ち止まりオーズを待つ。

 オーズも時を待たずして屋上に着地する。オーズに掴まっていた東雲は、若干フラフラとはしながらもオーズの横で怪人に対峙する。

 彼は怪人物……白のメタリックに輝く甲冑にどこか蜘蛛を思わせる緑の複眼を持つ怪人に向かい、語り掛ける。

 

「し、東雲先生、ちょっと……」

「それは……パイダス……。お前、後藤田なんだろう……」

 

 東雲の言葉にパイダスと呼ばれた怪人は、無言で手首に手を当て蜘蛛を模した機械を取り外す。

 彼の身体から金属のヘクスが剥がれ落ち、中より一人の老人が姿を現す。

 年齢は東雲とそう変わらないだろう。だが、その歳になっても鍛え続けた肉体は健在であり、衰えた様子は微塵も無かった。

 

「久しぶり……と言うには先日も顔を合わせたばかりだが……、こうやって素で話すのは久しぶりだな、東雲」

「ああ……お前がZECTを抜けて海外に渡って以来か……」

 

 かつて存在していた、異星人であるワームに対しての防衛組織であるZECT。東雲と後藤田は創設者である加賀美陸により集められた創設時のメンバーであり、二人は立場こそ違えど友と呼んで良い関係であった。

 彼らの間に亀裂が入ったのは、同じく創設時のメンバーである日下部総一が別の異星人であるネイティブにより暗殺されたのが切っ掛けだ。

 暗殺した日下部に擬態したネイティブを前に、創設時のメンバーは二つに割れた。一つは総督である加賀美を筆頭としたネイティブに服従する者。もう一つは失望してZECTから離れる者だ。

 東雲は加賀美を信じZECTに残り、後藤田は媚び諂う加賀美に失望してZECTを離れた。

 

 ZECTを離れた後藤田であったが、ワームに対する防衛やネイティブに対する恨みを忘れた訳ではない。彼らと戦うための力とスポンサーを求め海外に渡る。

 その際にカブトゼクターと同時期に設計されていた未開発ゼクターの一つ、パイダスの設計図を盗み出し、独自に完成させた。

 

「結局は全て、加賀美さんの掌の上だったんだがな……。お前も知っていたのだろう」

 

 東雲の言葉に、後藤田は自嘲の笑みを浮かべる。

 

「ああ、お前に物資を流すよう手配したのは私だからな……」

 

 東雲もかつての友の言葉を心苦し気に肯定する。

 そう、すべては加賀美陸の計画の一つであった。日本で活動をする自分達が完全にネイティブの手に落ちた場合に備えて、海外で活動をしていた後藤田に対して東雲を通し支援をしていたのだ。

 後藤田が真相を知ったのは、全てが終わりZECTが解散した後の話である。

 

「俺みたいな猪じゃ到底追いつけない超人だよ、あの人は……」

 

 どこか懐かし気に、後藤田は遠くを見つめるような表情を浮かべる。彼の脳裏には、まだ全員がいた若き頃の輝かしき日々が浮かんでいた。

 その思いは東雲も同じだ。だが、だからこそ彼は納得できない。

 

「なら……なら、何で今更、園子を狙うんだ! もう、もう終わったんだよ……お前にとっても、園子は孫だろう!」

 

 単身海外に渡った後藤田の残された妻子を援助したのが東雲だ。それが縁で、東雲の息子と後藤田の娘が出会う事となる。

 

「えっ!?」

 

 祖父の口から突然知らされた事実に、園子は自分を拘束する老人に対して振り向く。

 だが、もう一人の祖父だと伝えられた老人の目は、氷のように冷たいままだった。

 

「俺に家族などいない……」

 

 捨てたものに未練など無い。娘など、初めからいなかっただけだ。

 

「何より……」

「やっ、やめろ! 後藤田!」

 

 彼が何を言おうとしたか察した東雲が慌てるが、後藤田は意にも介さない。

 淡々と事実を口にする。  

 

「こんな化け物、俺の孫ではない」

 

「ば、ばけ……もの?」

「ち、ちがう! 園子は!」

「これが化け物とどう違う」

 

 そう言うと後藤田は片手で園子の首を掴み持ち上げる。園子の足が地面から離れる。

 老人とは思えぬ怪力で首を絞められる園子が息苦しさに悲鳴を上げようとするが、のどが潰され声も出ない。

 

「や、やめるんだ、後藤田先生!」

 

 事の次第を見守っていたオーズが慌てて飛び出そうとする。

 だが……。

 

「シャアアア!」

 

 後藤田の方に待機をしていたパイダスゼクターが叫びをあげ糸を吐く。

 鋼すら断ち切る糸の弾丸に、さすがのオーズも足を止めた。

 

「くっ!」

「黙って見ていろ、火野! この…世界の病巣を!」

「違う! 園子ちゃんが何をしたって言うんだ!」

 

 オーズの叫びは、後藤田には届かない。

 後藤田の指に加わる力が、より一層強まる。

 

「あああっ……」

 

 少女が初めて感じる生命の危機。手足に力が入らず、だらりとぶら下がる。

 その危機に、彼女の中で14年間目覚める事の無かった何かが蠢く。

 

 手足の肌が薄紅色の硬質の皮膚に変化する。背中からは透明な節くれだった羽が……。

 頭部にそれまで存在しなかった器官が生まれ、彼女の世界が広がる……。

 ああ、自分は……。自分は……。

 

「これのどこが……」

 

 後藤田が姿を変えていく少女だったものを見て吐き捨てるよう呟く……が。

 

 

「その辺にしとけや、クソジジイ!」

 

 黒い風が吹き抜ける。

 老人の手で首を絞められていた少女はもういない。

 

 ただ、少し離れた場所に、黒い仮面ライダーが彼女を抱きかかえていた。

 

「き、貴様は!?」

 

 パイダスゼクターすら反応できない速度で立ち入った唐突な乱入者。

 彼は後藤田の問いかけを無視して、ゆっくりと少女を地面に横たえる。

 

「え、貴方は……」

 

 人とネイティブの姿への変化を繰り返す少女に、黒き乱入者はそっと口に指を一本だけ当てる。

 そして彼女にだけ聞こえる程度の小声でこう囁く。

 

「もう大丈夫だ。後は俺が何とかしてやるから、休んでな」

 

 そして彼は立ち上がり後藤田に向き直る。

 

「そ、園子!」

 

 慌てて園子に駆け寄る東雲を横目でちらりと見ると、後藤田に向き直る。

 

「思い出したぞ、貴様! ショッカーのアインロールドだな……ショッカーが地球外の化け物を庇うか!」

 

 アインロールドは後藤田の言葉を鼻で笑う。

 

「下らぬ奸計でショッカーの名を汚した貴様に、俺の名を呼ぶことを許した記憶はないが?」

 

 傲慢かつ尊大なるショッカーの使者は、大義を掲げる老人を嘲笑う。

 

 アインロールドの答えに、後藤田が失望と怒りの感情をにじませる。

 

「所詮、化け物は化け物か」

「ああ、貴様と同じ、惨めで醜い化け物だ!」 

「なにっ!」

 

 だが、怒りの感情が振り切れているのはアインロールドとて同じ。

 後藤田の侮辱を侮辱で返すと、彼は高らかに宣言をする。

 

「貴様の行いは万死に値する……。その薄汚い命、ショッカーに捧げてもらおう」

「大局を知らぬ者に何を言っても無駄か……。まぁ、良い。ショッカーで最強と名高いアインロールド……。この地で討ち取らせてもらおう」

 

 後藤田はそう言うと、外していたパイダスゼクターを再度腕にセットする。

 

「変身」

【HENSHIN!】

 

 老人の肉体をヘクスが覆う。赤と青に塗り分けられた二色の鎧を身を包み、蜘蛛を連想させる意匠が施されたヘルメットが装着される……。

 仮面ライダーパイダス。後藤田が海外を中心に怪物どもを葬ってきた、彼のもう一つの姿……。

 

「かかってこい、ショッカーの化け物……。年季の違いを分からせてやる」

「旧式が吠える」

 

 ショッカーライダーと外道のライダー、二人の男が激突する。

 パイダスの拳をそのパワーで軽く払ったアインロールドが、頭部に向けて逆襲のパンチを繰り出す。

 だが……。

 

【CLOCK UP!】

「クロックアップか!?」

 

 当たるかと思われた瞬間、パイダスの姿が掻き消える。

 次の瞬間、真横からのキックがアインロールドに突き刺さる。辛うじてガードこそ間に合うものの、威力と勢いを完全に殺しきれずそのまま吹き飛ばされる。

 

「がぁっ!」

 

 吹き飛ばされたアインロールドの向かう先には、いつの間にか無数の糸が張り巡らされており……。

 

「させない!」

 

 それを阻止したのは、半ば無視される形だったオーズだ。

 タジャスピナーから炎の円刃を出すと、アインロールドに迫る糸を全て切り裂いてしまう。

 

「仮面ライダーがショッカーを助けるか!」

「どう考えても間違っているのは後藤田さん、貴方だ! 園子ちゃんが何をしたって言うんだ!」

 

 その言葉共にオーズの背後からクジャクを思わせる燃える羽根が出現し、パイダスに襲い掛かった。

 それに対しパイダスはゼクターが装着された左腕を突き出すと、糸ではなく網を射出する。網が盾となり、炎の羽根を絡め取り……。

 

「化け物というだけで、もはや罪なのだ! 人類守護の戦士とて、俺の邪魔をするなら容赦はせん!」

 

 網を振り回し、塊となった炎の羽根をオーズに向けて投げ返す。

 

「無茶苦茶な!」

「させるか! ライダァァァァパァァァンチ!」

 

 だが、アインロールドが割り込むと、エネルギーを込めた拳をアッパー気味に殴りつける。

 弾き飛ばされた炎の弾は進む方向を変え、はるか上空で大爆発をして消えた。

 

「余計な真似をするな、オーズ……」

「何を言っているんだ。ライダーは助け合いでしょ」

 

 どこかで聞いた……いや。どこか遠く、ここではない記憶の彼方で、巨大な映像越しに観た台詞だ。

 まさか自分が言われる立場になるとは……毒気を抜かれる。

 

「それに今、君だって助けてくれたじゃないか」

「本当にどいつもこいつも……」

 

 もし仮面を被っていなければ、苦虫を嚙み潰したような表情が見れたであろう。

 

「……まぁ、いい。せいぜい利用させてもらう」

「素直じゃないな……、昔のアンクを思い出す」

 

 先に動いたのはアインロールドだ。彼は瞬時にパイダスとの距離を詰めると拳を振りかぶる。

 だが……。

 

「クロックアップ!」

【CLOCK UP!】

 

 再びパイダスの姿が消える。

 

「がぁっ!」

 

 次の瞬間、無数の打撃がアインロールドの身に突き刺さった。致命的な打撃になりかねないキックこそ受け止めたが、全身に衝撃の火花が飛び散る。

 軽くは無いダメージに動きを止めるアインロールドのカバーにオーズが走る。

 だが……

 

「アインロールド!」

 

 再び姿を現したパイダスがオーズを確認すると、再び時の狭間にその身を滑り込ませる。

 

「仮面ライダーオーズ……古代の王との戦いの試金石に丁度いい。クロックアップ」

【CLOCK UP!】

 

 再び姿を消したパイダスに、オーズは飛行して距離を取ろうとして……。上空に張り巡らされた糸に気が付き飛翔を中断し、防御の姿勢を取る。

 

「うわああああっ!」

 

 四方八方から繰り出される打撃に、身に纏う装甲が火花を散らす。

 決して軽くは無い攻撃に、オーズと言えども無事ではない。大きなダメージ負い体勢を崩す。

 

 ほんの僅かな時の後、離れた場所にパイダスの姿が現れる。傍から見れば一人で二人のライダーを圧倒して見せた老人だが、仮面の下の表情はすぐれない。

 

「倒しきれないか……。あの力、本郷や一文字に匹敵する……」

 

 長き時間を仮面の戦士として生きてきた老人の呟きは誰にも聞こえなかった。

 一方のダメージを負った二人のライダーだが、肩で息をしながらも闘志を鈍らせる事は無い。

 

「おい、オーズ。奴の動き……見えているか?」

「ああ、何とか……。でも早すぎてこの姿じゃ追いつけない」

 

 クロックアップ……。ZECT系のライダーシステムが標準で装備をしている特殊システムだ。ほぼ停止した時の中で動き回るその能力は、全ライダーの中でも最速と言っても過言ではないだろう。さらに、パイダスは攻防に使える糸と網があり遠距離の攻撃も通じにくい。

 せめて別の姿なら対処方法もあるが、如何せんメダルを持つアンクは置いてきてしまった。現状のタジャドルコンボしか無いオーズでは対処手段がない。

 

「オーズ、ライダーは助け合い……だったな」

 

 だが、見えてはいる……。それを確認できれば、アインロールドには十分だった。

 

「えっ?」

「もう一回で良い。奴の攻撃を受けてくれ。そうすれば、奴の動きを止める事が出来る」

 

 普通に考えればショッカー・ライダーの提案など聞くに値しないだろう。

 

「わかった。任せる」

 

 だが、オーズは二つ返事で引き受けると、パイダスに向かう。

 オーズの拳がパイダスに迫る。だが……。

 

【CLOCK UP!】

 

 パイダスの身は再び時の狭間に紛れる。

 まずはバックステップでオーズの拳が描く軌道の外に出る。

 次にゼクターから糸を射出し、アインロールドの身に絡める。怪人も切断する糸だ。さすがにライダーを微塵切りにはできないだろうが、不用意に動けば全身が切り刻まれ大ダメージは必至だ。

 そして最後に、オーズを仕留めるべくゼクターのスイッチを起動する。

 

【ONE TWO THREE】

 

「ライダー……キック」

 

【RIDER KICK】

 

 パイダスの放つ原子を砕く回し蹴りが、止まった時の中でオーズの身体に激突する。

 後は時が動き出せば……。

 

「捕まえたぞ!」

 

 だが、止まった時の中で老人の耳に響いたのは、アインロールドの声。右腕を掴む

 ありえない。同種の力を持ち合わせねば干渉できない世界に、何故こいつが!?

 

「俺のスピードとパワー、そしてタキオンを観測できるセンサーがあれば……一瞬なら時の止まった世界に入門できる……」

 

 そう、動けるのは本当に刹那の時。

 だからこそ、隙を作る必要があった。パイダスがオーズを攻撃する、その瞬間を待たねばならなかったのだ。

 

「ば、馬鹿な!?」

 

 パイダスも止まった時の中に侵入される可能性を考えていなかったわけではない。

 その為に今回は切断糸トラップを仕掛けたのだ。

 だが……。

 

「あの糸を……切り刻まれるのもかまわず動いたというのか!?」

 

 アインロールドの様子はひどいありさまだ。身を守るプロテクターは刻まれ、いくつもの部品が脱落している。

 強化戦闘服の端々からは血が滲み、赤いマフラーはズタボロだ。

 

「手足が無事なら……貴様を……」

 

 それが限界だった。右手こそがっちりとホールドされてはいるが、アインロールドはピクリとも動かない。

 止まった時に干渉できるタイムリミットを過ぎたのだ。

 

「所詮、自己満足! この程度の策!」

 

 パイダスはそう叫ぶと、アインロールドの身体を持ち上げ、地面に叩きつける。

 だが、その衝撃でも掴んだ手は離れない。

 

「生意気な!」

 

 引き離すべく倒れたアインロールドに蹴りを入れる。だが、それでも手は離れない。

 さらに蹴りを入れる。何度も、何度も、何度も……。

 

【CLOCK OVER】

 

「……ぶちのめせる!」

 

 そして時が動き出す。

 パイダスの誤算は3つ。

 一つは栄光の7人に匹敵する、アインロールドの強靭な肉体。

 そして……。

 

「投げとは、こうやるんだ!」

 

 通常の時の流れでは、アインロールドは圧倒的な速度で動けたことだ。

 

 掴んだ腕をそのままに、パイダスの身を持ち上げる。そのまま離すと同時にパイダスを高速で回転させる。

 

「なっ!」

 

 あまりの回転速度に、周囲の空気が歪み渦を巻く。

 

「ライダアアアアアアア!」

「お、おのれ」

 

 クロックアップで逃れようにも、あまりの回転速度と遠心力で手足がろくに動かない。

 それどころか、装甲が軋み、手足があらぬ方向に流れていく。

 

「きりもみぃぃぃぃぃぃ!」

 

 ストリングを射出し逃れようとするも、渦を巻いた風は竜巻となり、糸をバラバラに引きちぎる。

 視界が歪む、センサーが次々とエラーを叩き出す。

 

「シュート!」

 

 超高速回転をそのままに、パイダスがはるか上空に投げ飛ばされる。

 このままでは受け身も取れず、地面に衝突して砕け散る。

 

 だが、パイダスとて百戦錬磨の強者。この程度であきらめる男ではない。

 そして、この技は……まだ本来の使い手である仮面ライダー一号に比べて掛かりが甘い。

 

「く、クロックアップ!」

 

【CLOCK UP!】

 

 手を離れた一瞬の隙に、切り札となるクロックアップを発動する。

 止まる時の中に入り込んでも、与えられたベクトルが消滅するわけではない。だが、敵が行動するよりも早くアクションを起こせる。

 無数の糸を射出し、自分の身を周囲に固定しようとあがく。目を極限まで詰めた網を生み出し、空気抵抗で回転を止めようとする。

 

 僅かに回転が鈍る。わずかに上昇速度が落ちる。

 何とか着地が出来る可能性をつかみ取ろうと、必死にもがく。

 

【CLOCK OVER】

 

 だが……。

 

【SCANNING CHARGE!】

 

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 

 パイダスよりはるか上空から、裂帛の気合の叫びが響く。

 

「ひ、火野!? いや、オーズ!?」

 

 そう、パイダスのライダーキックを耐えきったオーズは、彼が投げ飛ばされるより先に遥か上空へ飛び立っていた。

 

「な、何故!?」

 

 アインロールドはオーズにクロックアップ中の相手が見えるかどうかの確認を行った。

 一撃を受ける以外にもアインロールドは自分に役目を求めている。そう考え先に行動をしていたのだ。

 

「せいやああああああああ!」

 

 オーズの脚部が変形し、猛禽類に酷似した鋭い爪が両足に出現する。

 速度とパワー、さらには高度が乗った必殺のキックがパイダスの身体に突き刺さる。

 

 さらには……。

 

「ライダアアアアアアア、キイイイイイック!」

 

 投げると同時に跳躍したアインロールドが、キックの態勢で上昇してくる。

 二つのキックはライダーシステムに致命的なダメージを与える。

 

 同時に着地するオーズとアインロールド、少し遅れてパイダスは受け身も取れず頭から地面に落下して……、彼のライダーシステムは使用者の生命維持を最優先と判断し崩壊していく。

 本来ならば、決着の時だった。

 だが、パイダス……。いや、後藤田は血反吐を吐きながらも膝立ちになり、自らのゼクターをつかむ。

 

「ま、負けられるかぁぁぁぁ……」

「後藤田さん!?」

 

 いくら強固なライダーシステムに守られていたとしても、動く事などできないダメージだったはず。

 それでも立ち上がろうとする老人に、オーズが悲鳴をあげる。

 

「もうやめるんだ! それ以上は命に関わるぞ!」

「命など……知った事か! この世界を……守るため……もはや猶予が無いのだ! 力を……纏めねば!」

「猶予!? どういう意味なんですか!?」

 

 明らかに様子のおかしい老人に、オーズの動きが止まる。その瞬間であった。

 

 老人の胸が貫かれ、鮮血が飛び散る。

 

「なっ!?」

 

 自らの胸から流れる血に、老人が呆然とする。

 それはこの場にいた誰もが同じだった。

 

「ご、後藤田!」

 

 倒れる後藤田に東雲が叫びを上げる。

 

「物陰に隠れろ!」

 

 意識の大半を驚愕に支配されながら、アインロールドが走る。

 東雲と園子の傍に駆け寄ると、硬直している二人を抱え物陰に隠れる。

 オーズもそれに倣い、後藤田を抱えて同じ場所に隠れる。

 

「どこから狙撃が!?」

「わからない……5km先? いや、10km先か!?」

 

 狙撃の世界記録が3695m。それをはるかに超える距離からの狙撃だとアインロールドのセンサーが答えを導き出す。

 

「弾丸で狙える距離ではない……。何らかの異能なのだろうが……」

 

 二射目、三射目を警戒する二人のライダーに対し、東雲は倒れた旧友に縋り付く。

 

「おい、しっかりしろ、後藤田! おい、後藤田!」

「これは……もう助からん……。天罰だな……」

 

 悲痛な友の声に後藤田はうっすらと目を開け自嘲気味に呟く。

 

「何をバカなことを言っているんだ!」

「時間が無い……、聞け……」

 

 東雲を押しのけ、後藤田は語る。

 

「ワーム残党の動きが……活発化している。ワームだけではない……グロンギや魔化魍、アンノウン……ほかの怪物も、急速な勢いで増加している」

「お……おい」

「日本にいるとわからんがな……。海外ではその動きが……顕著だ……」

 

 かつてデーモンハンターとして名を馳せた時のコネクション。そのルートは健在だった。だからこそ気が付けた……。

 東雲を手の動きだけで止めて、後藤田は再び血を吐きながらも話を続ける。

 

「連中を蘇らせている……者がいる……。火野……お前に倒された古代オーズが再び……蘇ったのも……。そいつらの仕業だ……光の創生者……奴らはそう名乗っている……」

「なんで、そんな事を……」

「目的までは……流石に……な。だが、裏と表、両方で……巨大な戦いを起こそうとしている」

「それを……それをなんで私たちに教えなかったんだ! なんで、こんな事をしたんだ!」

 

 東雲のこらえ切れない悲痛な叫びに、後藤田は自嘲する。

 

「お前らを……裏切っておいて……。どの面で……相談できるか……。いや、違うな……。お前たちを……信じられ……なかった……のさ」

「馬鹿野郎……」

「馬鹿さ……むかし……から。面倒をかけるな、東雲……」

 

 意識が朦朧としてきているのか、後藤田の言葉は徐々に要領を得ないものとなっていく。

 

「あの時……残っていれば……。加賀美さんの……助けに……なったのかな……。明美と光江に……苦労を……かけたな……」

 

 混濁した瞳が、園子に向けられる。

 

「ごめんな……光江……わるい、おとう……さん……で……」

 

 彼が見ているのは、もう彼女ではなかった。

 はるか遠い昔、まだ輝いていた懐かしき日々に置き去りにしてしまった一人娘……。

 

 自分を殺そうとした相手だ。祖父だと言われても、どうしていいのかわからない。

 だけど、園子は自然と老人の手を取っていた。

 それが一番正しい行動だと、園子は思った。

 

「怒ってないよ……きっと」

「そう……かな……。あり……が……とう……、そ……」

 

 そうして、老人はこと切れる。

 長き時を戦い続けた仮面ライダーの最期であった。

 

 

 

 

 

 

「あー、任務達成したよ。あの爺さん隙が無いうえに、ゼクターがむっちゃ強力だからなー」

 

 はるか遠くの人里離れた山の中で、フードを被った小柄な人影が誰かに連絡を入れる。

 

 テントに飯盒、さらには固形の燃料などのアウトドアグッズの数々だけを見れば、今流行りのキャンプか何かにも見える。だが、街の方角に向けられた巨大な銃がただのキャンプではない事を如実に表している。

 

「僕が暗殺するのは難しいって前から言ってたよね。やるなら毒殺とか正面からの襲撃が良いって。それを承知で押し付けておいて、遅いって言われても困るよ」

 

 人間では到底不可能な狙撃を一発で決めたそれは、超常の技術で作られた狙撃銃を片付けながら携帯端末越しに文句をぶちまけていた。

 よほど親しい間柄なのか、文句を言いながらもどこか本気の感情は混じらず、どこか陽気で友達と雑談をしているかのようだ。

 

「あー、はいはい。どうせ僕が悪いんですよ。全く人使いが荒い……え? 兄さんに会わないのかって?」

 

 だが、ある話題に変わった瞬間、口調が一転する。

 使っている言葉は同じでも、どこか重く湿った狂気が漏れ出す。

 

「んー、むっちゃカッコよくなってたよ。うん。流石は僕たちの兄さんだ。でも、まだ会えないよ。まだ兄さんは弱いし、なによりもっと素敵になってからじゃないと会いたくないもの」

 

 頬が上気する。心が躍る。今すぐにでも兄さんと会いたい。あって抱きしめたい。抱きしめてもらいたい。その心臓を撃ち抜きたい……。撃ち抜いて欲しい……。

 でも、まだその時ではない。ずっと恋焦がれていたのだ。あと少しだけ待って、劇的に、ドラマチックな再会を演出しなければ意味が無い。

 その為に、生きているのだ。

 

 そう自分に言い聞かせながら、端からこぼれた黄金色の髪を再びフードに押し込みその場を後にした。




Q.ネイティブとハーフなんて出来るの?
A.オルフェノクやファンガイア、グラニュートとのハーフがいるんだから、ネイティブやワームとだって出来てもいいんじゃね?(独自設定)

Q.爺がライダーで良いの?
A.今期の戦隊に爺がいるし……。

Q.政治家がライダーで良いの!?
A.今期の総理はドン・モモタロウだし……。

次回任務

  • ライダー抹殺指令
  • 敵対組織の計画阻止
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