ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
暗い神殿内で白いフードを被った深い皺が刻まれた白い肌を持つ小柄な老人が、同格の二人に語り掛ける。
「大将軍が死んだ……」
老人の名は大神官ダロム。創世王に次ぐ地位を持つゴルゴムの三神官の長を務める存在だ。
ダロムは先日起きた事件を語りながら、死んだ大将軍に思いをはせる。
大将軍はゴルゴム創成から生きる古老であり、世紀王の居城にして乗騎となる改造を受けた怪人だ。まだゴルゴムが弱かった時期の事も知っており、ゴルゴムと創世王に対する高い忠誠心と、よく言えば慎重、悪く言えば臆病な性格をしていた。
三神官とも互角の力を持ち大きな派閥をまとめ上げる目障りな存在ではあったが、死んだと聞くとそれなりに感慨が浮かぶものだ。
「世界各地で我らを邪魔した黒い戦士が今回も関わっていたようだ」
そしてそれ以上に重要な報告がこれであった。
世界各地の人間社会の有力者に恐怖を植え付けるため、怪人を暴れさせる作戦をゴルゴムは行っている。
その作戦は一定の成果を得る事は出来たが、その作戦に従事した怪人は軒並み討ち取られる結果となっていた。その中で異彩を放つのが、正体不明の黒い戦士である。
いずこから現れたのか分からない。名前すら残されていない。ほとんどの怪人が連絡を残す暇もなく倒された為、わかっているのは黒い鎧と赤い目、そして輝く剣を持っている事ぐらいだ。
「まさか黒い戦士がジョアイの手の者であったとは……」
「輝く剣とは失われたサタンサーベルの片割れだったか。怪人が次々に討たれた事も頷ける」
同様の報告を受け取っていたバラオムとビシュムも、神妙な顔で頷く。
極東の島にて、何度もゴルゴムの作戦を邪魔した怨敵の手の者が、世界各地でゴルゴムの邪魔をしていたというのだ。原始人と侮っていた事が裏目に出た。
「まぁ、良い。ジョアイは死に、サタンサーベルは地中深くに失われた。それよりも……」
確かにこの時代に世界各地に配下を送り込んでいたジョアイの先見の明は脅威と言って良いが所詮は人間だ。死んでしまえばそれまでであり、サタンサーベルが失われた以上は配下の脅威もいずれ消える。
どのみち、百年持たず死ぬ人間は真の意味でゴルゴムの脅威とはなり得ない。
それよりも、極東の島での顛末は別の脅威が再び動き出した事を現していた。
「リントの国は失われ、北の狂王が再び動き出した」
ダロムの言葉にバラオムとビシュムが嫌悪の表情を浮かべる。
北の狂王、白夜王。未来において大西洋と呼ばれる海に浮かぶ大陸を数百年支配していた王の名だ。
表向きは大陸を最小の流血で次々に支配下に置き、ついには大陸を平和に導いた英雄王。知恵に富み、学問を推奨し、画期的な手法を生み出し大陸を富ませた賢王だろう。
だが、裏ではアギト因子を始めとした超能力因子、宇宙人、異世界人、悪魔、様々な怪異を研究しつくし、それらを取り込んだ改人類を作り出した。そして、それらをを市井に紛れ込ませ大陸の人類その物を改良した狂気の王、それが白夜王である。
最終的に白夜王が作り出した国は、市民の一人一人が強力な力をもつ兵器となり、ゴルゴムやバタンといった脅威を退ける更なる繁栄を求め膨張し、対岸のローマ帝国にまで食指を伸ばし始めた。
白夜王の行いは当然神の怒りを買う事となる。
最終的に白夜王と改人類に抵抗していた僅かな人類を除き大陸の全ては滅ぼされた。大陸は神の力で封印され、ゴルゴムの怪人とておいそれと足を踏み入る事が出来ない。あと百年もすれば大陸は完全に海の底へ沈み存在は無かった事になるであろう。
リントやグロンギどころではない脅威、それが白夜王であった。
「再び神が動くな」
「白夜王を追う、真人類どもも動くであろう」
本人以上に、白夜王を守る改人類の騎士団は極めて危険な存在だ。
再び地上は荒れる。人類と闇の戦いが巻き起こる事は必至であった。
「各地の有力者への浸透は進んでいる。しばらくは見に徹する事にしよう」
創世王の代替わりが二千年後と直近に迫っている。ゴルゴムはそれに注力し、外界の争いとは距離を置くべきだろう。
新たな世紀王を生み出してからでも遅くはない。時間はゴルゴムの味方であった。
「確かに」
「次の世紀王の誕生まで、そう時間はありませんからね」
ダロムの判断に、残りの二神官も頷く。
かくして、ゴルゴムは二千年の間静かに世界を侵食していく事になる。
黒き太陽が目覚めすべての悪を薙ぎ払う、その日まで……。
ゴルゴムの大侵攻と白夜王によるグロンギ召喚事件から一月ほどたったその日、山中での作業に一区切りを終え旅支度を始めたリクの元に一人の男が訪ねて来た。
出迎えたのは、リクの元で厄介になっていたエースだ。
「初めまして、リクはいるかな?」
「奥にいるが……あんたは……」
不思議な男だった。
確かにエースの目の前にいる事は認識できる。だが、存在がよく分からない。顔も良くわからず、輪郭もぼやけている気がする。
そんな不気味な存在だというのに、気味の悪さは無い。正常な空気のような不思議な存在に、エースは何とも言えない微妙な表情を浮かべた。
「ああ、今の君には私を完全に認識するのは難しいだろう。それにしても、君もまた数奇な運命を背負っているようだ」
「なんだ、それは?」
「ごめんごめん。今の言葉は忘れて欲しい」
要領の得ないその存在の言葉にエースが眉をひそめていると、彼の背後の扉が開き一人の男が姿を現す。
この時代のクウガであるリクと呼ばれる男だ。
リクは旧知の間柄である来客に若干表情を崩す。
「誰か来たのか、エース? って、あんたは?」
「久しぶりだね、リク」
「なんだ、こっちに来ていたのか」
その存在はかつてジョアイやナスカと共にグロンギと戦っていた時、様々なサポートをしてくれた恩人であった。
名前は知らない。そもそも姿も定かではない。
ただ、真なる人類と彼の事を呼んでいた。
「ああ、大変な騒動があったと聞いてね。ジョアイも……」
「あいつらしい死に様だったよ」
思えば長い付き合いだ。前世の息子たちを探している。そんな世迷い事を言う、変な奴であった。
だが、その実力は本物であり、ケーサツカンなる男の頭脳と経験は悪辣なグロンギのゲゲルを阻止するのに彼の力は大変助けになったものだ。
そんな男が本当に前世の息子と再会し、息子と世界を守るために命をとして戦い死んでいった。
悲しくないと言えば嘘だ。だが、奴らしい最後だったとリクは思う。
「そうか、君は旅支度を?」
整理され食料品がほとんどなくなっている家の中や、準備された荷物を見ながら真なる人類は尋ねる。
その言葉にリクは素直にうなずく。
「ああ、墓づくりはとりあえず中断だ。マイちゃんやナスカさんは相変わらず行方が知れないし、グロンギがだいぶ残ってしまったしな」
あの事件でグロンギの王を封印した時、変化は起こった。
未来からやって来た戦士たちと、グロンギたちが一斉にこの世界から消え去ったのだ。
何者かが未来から来た戦士たちを元の時代に戻し、仮初のグロンギは王の封印とともに消えてしまったのだろう。
だが、しぶとさに定評のあるグロンギだ。世界に居残り、各地に散っていった個体もそれなりにいる。
それを放置しておくことなど彼にはできない。
いざという時の事態に備えクウガへの変身装置、アークルを未来に残すための特別な墳墓を作っていたが、その作業は中断である。
友人の妻や忘れ形見を探し、残ったグロンギを封印するために旅に出る事をリクは選択したのだ。
「そうか。それなら私もたまに情報を伝えるために顔を見せるよ。私も彼女たちの事は心配だからね」
「それは助かるよ。あんたはこれからどうするんだ?」
「私たちは白夜王を追うよ。あれは放置しておける存在では無いからね。神が動き出すより前にケリを付けなければ、今度はこの島が海の底に沈みかねないよ」
かつて北の海で自らが作り出した改人類を操り、長き年月にわたり人々を苦しめ続けた巨悪だ。
配下となる改人類もまた危険な存在だ。一見すれば理性的で紳士的な存在だが、同族以外は極めて雑に扱う。気に食わなければその場で殺し、誰かに笑われたというだけで村を焼き滅ぼす事も平然と行う。エゴと優越感を強化された存在が改人類であった。
人類の存続を願う真人類として、白夜王とその眷属の存在を許すわけにはいかない。
そんな支援者の説明に、リクは頷きこう返す。
「そこまでの奴だったのか。わかった、グロンギが片付いたら俺もそっちに向かうよ」
「助かるけど良いのかい? 妹さんに何か言われるんじゃないのか?」
「あいつももう子供もいるんだ。わかってくれるさ」
そして、いくつかの情報を交換した後、真人類の男は再び旅立とうとする。
そんな別れ際のひと時に、リクはふと思いだした単語について尋ねた。
「そういえば、ショッカーとか仮面ライダーとか知っているか?」
「なんだい、それは? 残念ながら知らないよ」
「そっか」
それだけで、二人の脳裏からこの単語の存在は奇麗に消え去り、以後は話題に上る事は一度も無かった。
神のごとく力を持つ真人類の彼とて、未来の全てを見通す事など出来ない。
いずれ自分がショッカーと呼ばれる組織を率いる事も、仮面ライダーなる希望となる宿敵を生み出す事も、彼はまだ知らない。
くちゃり。
地の底で、その虫は蠢く。
くちゃり。
虫に涙腺など無い。それでも、その虫は血の涙を流す。
くちゃり。
悍ましい。そしてその全てが許せない。
くちゃり。
長く探し求めていた息子にようやく出会えたのに。あの二人は本当に喜んでいたのに。
くちゃり。
もっと旅を続けていたかった。愛する人々と、気ままに旅を続けていたかった。
やっと見つけた息子と共に行く旅路は、輝けるものになっただろう。
くちゃり。
夢を見る。どこまでも続く青い空を、あの夫婦が進む。
それを追って小さな少女と青年が歩みを進める。
自分たちはそれについて行けばいい。彼の頭の上で昼寝をして、少女の腕に抱かれ、父の肩で一服し、母の背で休む。
それだけで、それだけで自分たちは幸せだった。
くちゃり。
だが、その未来は永遠に閉ざされた。
くちゃり。
悍ましい。鬼として、契約通りに主の伴侶の遺骸を取り込む自分が悍ましい。
だが、取り込み力を増さなければ、奴らに復讐は出来ない。
その蜘蛛に似た鬼の背に、髑髏が浮かび上がる。
流浪の民の勇者の記憶と力を取り込み、その怪異は成長を続ける。
黒き悪魔の名を冠する虫の怪異が、この世界に生れ落ちようとしていた。
その少女は、一人孤独に歩いていた。
いや、一人ではない。大きすぎる虫を三体引き連れている。片眼がつぶれた蟷螂を、片羽根がもげた蝶を、胴体が半分千切れた蜻蛉を。
母からは戦乱の最中はぐれた。術者である母は、最後まで全線に残ったのだ。
父は兄を追って戦場に向かった。
兄だと思った青年もまた、戦場に向かった。
誰一人帰ってこない。
使用人の老夫婦は、彼女を逃がすための囮となり化け物の爪に切り裂かれた。
客人の異国の青年も、戦場に消えて行った。
兄だと思った人の友人たちもまた、戦場に消えた。
誰も、誰一人も帰ってこなかった。
少女は歩く。どこに向かっているのか自分でもわからない。
ただ、死体の山が積み重なる道を歩く。
どれだけ歩いただろう。靴は擦り切れ、膝から下は傷だらけだ。
そんな最中、彼女はそれと出会う。
「おや、君は?」
彼女が出会ったのは、風変わりな青年だった。
父や兄だと思った青年を超える長身に長く伸ばした流れるような髪。死体が重なるこの地を悲しそうに見つめていたその青年は、彼女の存在に気が付き声を掛けて来た。
「大丈夫かい?」
青年はひざを曲げ、彼女と同じ位置まで視線を下げる。
美麗な顔の青年が発した問い掛けに少女は答えた。
「大丈夫じゃない」
「大丈夫じゃない?」
少女の問いかけに、青年はオウム返しをする。
その言葉が癇に障ったのか、少女は声を荒げた。
「父様も、母様も、兄さまも、じいやもばあやも、誰も、誰も帰ってこなかった!」
当たり前に続くと思っていた日々はもう帰ってこない。
その事実に少女は声を荒げ泣き叫ぶ。
青年はそれをただ静かに、憐れみと同情、そして少しの驚きをもって受け続ける。
どれだけ時間が経っただろうか。
青年の背後から、一人の男が姿を現す。
「王よ、ここにおられましたか?」
「ああ、ヴォズか」
「難民の子ですか?」
自らの手で全てを奪った事の罪悪感など微塵も見せず、従者の男は酷薄に問いかける。
始末するか? そう言外に問いかける従者に、青年は首を横に振り、決定を静かに告げた。
「いや、連れて帰るよ」
「この地の住民をですか?」
遥かに劣る人類を連れていくとは何事だ。
そう驚く従者に、青年は静かに言葉を返す。
「この子は巻き込まれた被害者さ。自己満足に過ぎなくとも、助けたいと俺は思うよ」
旧人類すら思いやる優しき王の言葉に、従者は王に対する忠誠心をより一層強める。
二千年の宿命と地獄はこうして始まった。
「すいません、大勢でお邪魔してしまって」
「大丈夫、気にしなくていいよ。心配だね、彼」
2000年前の戦いから一夜が明けた。
遥か過去で戦っていた仮面ライダーやイマジンたちの姿は東京にあるクジゴジ堂にあった。
ジョアイがン・ガミオ・ゼダを倒した。それからしばらくして、彼らは一斉に現代に戻されたのだ。
何か不思議な事が起こったのか、それとも未来からの干渉を嫌ったオーマ・ガイ・ジオウが何かをしたのかはわからない。ただ、忽然と元の時代に帰っていたのだ。
「誠太郎は寝ているよ……」
「無理もないよ。そんな事があったなんて」
誠太郎の様子を見に行っていたソウゴが、居間に戻ってきた。
憔悴し意識を失った誠太郎は、現在客間で寝かせている。死んだかのように眠っており、ピクリとも反応はしない。
時を同じくして、タイムマジーンの様子を確認していたゲイツとデンライナーを調べていたウラタロスが戻って来る。
「駄目だ。あの時代に向かおうとするとエラーが出て動かなくなる」
「こっちもだ。厳密には2000年前には跳べるけど、日本には入れそうもないね」
「時期をずらしても日本に向かえば、時空の歪みに飲まれる可能性が高い。到達できないならまだしも、下手をすれば世界の狭間に落ちて二度と戻って来れなくなる可能性もある」
二つのタイムマシーンに故障がある訳では無い。ただ、あの時代の日本に行こうとすると唐突に不調が出るのだ。
恐らく別の場所に出て日本に向かって同じ時間の場所にはたどり着けない。ウラタロスはそう予測していた。
エースだけは浮世英寿として現代にも存在するのだが、その事実を彼らは知らない。
「くそっ! 何とかならないのかよ!」
荒れているのは、あの時代に一番長くいたモモタロスだ。
店の物に当たらないだけの分別はまだ残っていたため、誰も彼を止めようとはしない。なにせ、この場にいた皆が彼と同じ心情であったからだ。
荒れるモモタロスを筆頭に、重苦しい雰囲気がクジゴジ堂を支配していた。
このままではいけない。誰もがそう思いながらも、過去の悲劇と憔悴しきった友人に何もできない事を歯噛みするしか他ない。
そんなこの場の空気に耐えられなくなったイマジンの一人、リュウタロスが逃げ出すように誠太郎の様子を見に居間を抜け出した。
そして、すぐさま大慌てで居間に戻りこう叫んだ。
「大変だ! せ、誠太郎がいないよ! どっかいっちゃった!」
「なっ!?」
「そ、そんな!」
そう、誠太郎が寝かされていた部屋はもぬけの殻であり、窓が無造作に開かれている。
そこから彼は一人抜けだしたのだろう。行く当てを示すものは何一つ残されていない。
部屋にかけ込んできた全員が、風に揺らめくカーテンを見て絶句するより他なかった。
三神官を『節穴です』とか、『勘違いです』とか、『二千年後に死にます』とか言うのはやめてあげて!
彼らは真面目にやっているんだ!
白夜王「こんな世界だから、民を改造して強くしないと(善意)」
現人類「ふざけんな! お前らみたいな化け物になんてなれるか!(抵抗)」
改人類「偉大な王の慈悲を理解しないなんて! 生きていても辛いだけだろうから旧人類は殺してあげなきゃ!(善意)」
真人類「(ぴきぴき)色々とアウトだ、馬鹿やろう!」
闇のテオス「(ぴきぴき)ほー、そうなんだ。そういうつもりなんだ……」
現人類→いわゆる普通の人類
真人類→人のまま超越者に到達した人々
古代種→今の人類とはちょっとだけ違う古代の人類。英寿に会いたくてがんばって二千年生きてきた。忘れられていたけど。
改人類→遺伝子や霊を改造して別種族となった人類。本作オリジナル。
改造人間→一代限りのサイボーグ
現在BLACKが半数を獲得し優勢。ギーツが3位なのは意外だった。
次回はちょっと玉突き番外編(いままであとがきに書いていたあれのまとめです)。
NEXT RIDER?
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太陽(仮面ライダーBLACK)
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創世(仮面ライダーギーツ)
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特訓(仮面ライダーZX)