ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「ブラック・ダミーか……。また、こんな物を!」
自分を取り囲む二体のブラック・ダミーを見て、かつて起きた悲劇を思い出しRXが怒りの声を漏らす。
一方、ありえない乱入者に恐れおののくのは、棘だらけの女怪人だ。怪人の顔でもはっきりとわかる驚愕の表情を張り付け、呆然と呟く。
「あ、ありえない。この地はゴルゴムの科学力で封じていたのだぞ……」
強力な力を持つSUNが別のライダーと組めば、一軍に匹敵する力を発揮する。如何に世捨て人のような生活をしているとはいえ、SUNを誘拐するにあたり乱入者の横やりが最大の懸念であった。
それゆえに光学的な迷彩や方向感覚を狂わせる磁場などを使用し幾重にもこの地を隔離し、今回の作戦に及んだのだ。
それなのに、よりにもよって一番来てほしくない仮面ライダーBlackRXがやって来たのだから、女怪人の驚愕ももっともな話であった。
そんな女怪人の驚愕に、RXは力強くこう答える。
「キングストーンだ!」
そう、確かに光太郎がこの地に来た時、最初は磁場の狂いや光学的な隠蔽の罠にはまり、進めど進めどこの場所にたどり着く事は出来なかった。
これはおかしい。そう考えるが対処手段が無い。感覚もだが、GPSや原始的な方位磁石ですらまともに機能しないのだ。
流石の南光太郎も幾重にもわたる妨害工作の数々には手を焼き、状況を打破できず途方に暮れていた。
だが、その時不思議な事が起こった。
光太郎の体内に埋め込まれたキングストーンが、疑似キングストーンを持つもう一人の南光太郎の危機に反応して彼をこの地に導いたのだ。
SUNの誘拐には間に合わなかった。だが、二人の子供の命が奪われるという最悪の事態が起こる前にたどり着く事が出来たのだ。
「そ、そんな、馬鹿な!?」
「いくぞ、ゴルゴム! とぅ!」
SUNを誘拐した手際を考えれば、長く問答をしていれば相手に選択肢を与えてしまう。そう判断したRXの行動は素早かった。
先手必勝とばかりに跳躍し、拳に力を籠める。
「RXパンチ!」
エネルギーの籠った拳が女怪人に迫る。
彼女の護衛はかつてのBlackと同等の力を持ったブラック・ダミーだ。RXの動きに対応し割り込むと、腕を交差してパンチを受け止める。
だが、彼が出来たのはそこまでだ。RXの拳を受けた腕の装甲はあっさりとひしゃげ、砕け飛び散る。
声帯を排除されているのか、声なき悲鳴を上げながらのけ反る同僚を押しのけるようにもう一体のブラック・ダミーが前に出ると、奇怪な叫びを上げながらRXに向かいキックを繰り出した。
「食らうか! とりゃぁ!」
ブラック・ダミーのキックに対し、RXも蹴りで応戦する。
人の脚同士がぶつかったとは思えない大きな音と衝撃に、周囲の草が一斉に折れ曲がり背後で見ていた誠太郎と葵は思わず身構え衝撃をやり過ごす。
蹴り対決の勝者は、当然RXだ。片足を打ち砕かれ、ブラック・ダミーが同僚を巻き込みながら後方に倒れる。
「RXキック!」
その大きな隙を見逃すRXではない。
すぐさま跳躍すると、両足を揃え必殺のキックを繰り出す。エネルギーの輝きが籠る脚は、二体のブラック・ダミーの胸を貫き、その機能に致命的な損傷を与える。
成す術もなく吹き飛ばされたブラック・ダミーは後方に吹き飛び地面に数回叩きつけられ、ついには悲鳴を上げる間もなく爆散した。
「ば、馬鹿な! RXと言えども、こうもあっさりとブラック・ダミーを!?」
「勝負だ、ゴルゴム!」
圧倒的な力であっさりとブラック・ダミーを葬ったRXは女怪人に標的を定める。
残った子供など早々に始末しておけば……、いや、SUNを確保した時点で同時に撤退していればこのような事態にはならなかった。ほんの少しの遊び心が致命傷となった。
とはいえ、女怪人も誇りあるゴルゴムの怪人だ。覚悟を決め、その最大の武器である棘付きの蔦を伸ばし振るう。
「死ねぇ! RX!」
回避する事は容易い。だが、下手に避ければ無数に枝分かれをした棘のある蔦は後方にいる子供たちを巻き込むだろう。鉄骨すら両断する蔦の鞭に巻き込まれれば、子供などひとたまりもない。
ならば、RXにやる事は一つだけだ。
「させるか! リボルケイン!」
腰のサンバイザーに腕をかざし、力を籠める。
風車が備え付けられたグリップが具現化し、唸りを上げる。光の粒子が集結し、刀身として物質化する。これこそがRXの代名詞とも言える専門武装、リボルケイン。
目にもとまらぬ高速で飛び交う蔦の鞭をRXの赤い複眼は正確に捉える。そして、自らに迫りくる瞬間を完璧に測り、無造作にリボルケインを斬り上げた。
まるで鋭い刃で草を刈る様に、リボルケインの一撃はあっさりと蔦を切断する。
「わ、私の蔦が!?」
女怪人が悲鳴を上げるが、その程度で躊躇するようなRXではない。そのまま蔦の鞭を次々に切り捨てながら易々と前進して、女怪人との間合いをあっさりと詰める。
そして、流れるような動作で怪人の腹部にリボルケインを突き立てた。
凝縮した太陽の力が、女怪人に注ぎ込まれる。その力の奔流の余波は火花となって、傷口から漏れ出し周囲に飛び散る。
抗う事の出来ない力の奔流を前に、悪意のままに振舞う怪人では抗う事はかなわない。
リボルケインが引き抜かれ、女怪人は仰向けに倒れていく。
RXが身をひるがえし光り輝くリボルケインを下すのと、女怪人が爆発四散するのはほぼ同時であった。
ゴルゴムの怪人を完全に駆逐したことを確認した南光太郎は変身を解く。元の精悍な青年に戻った光太郎の前には、この場にいた少年と少女が残っていた。
意識しているのかいないのか、少年の立ち位置は少女を守る位置にある。
勇敢な子だ。そんな事を考えながらも、確認しなければならない事を頭で整理しながら彼らに話しかけた。
「大丈夫だったか、君たち」
「ええ、助かりました。貴方は……」
答えたのは少女であった。警戒の色を隠さない少女……葵に、光太郎は仕方ないと割り切りながら苦笑いを浮かべる。
なにせ自分は唐突にやって来た乱入者だ。ましてもう一人の南光太郎の知己である彼女たちにとって、自分は怪しげな男に過ぎない。
そんな事を考えていると、もう一人の少年が不可解な行動をとる。
先ほどまでは葵を守る位置に陣取っていた少年は、もうこの場は安全だとばかりに一歩引いて見せたのだ。
「君は……?」
そのアンバランスさに思わず声を掛ける光太郎に、誠太郎はつまらなさそうにこう返す。
「悪いが俺は巻き込まれただけだ、RX。聞きたい事があるならそっちの女に聞け」
「ちょ、ちょっと?」
「事実だ。ここにいた男の事を聞かれても、答えようがない」
実のところショッカーの幹部として、もう一人の南光太郎と和泉葵は要警戒対象として刺激をしない程度に監視を置いていた。そのため光太郎が知りたい事どころかそれ以上の事も答えられるのだが、誠太郎にその気は無い。目の前の危機に咄嗟に対応はしたものの、それ以上は自分などが関わっても碌な事は無いと考えていた。
一方そんな経緯を知る由もない二人ではあったが、この場から立ち去らず廃材に腰を掛けながら周囲を警戒しているあたり、葵を守る気だけはあるのだろう。
光太郎は誠太郎の正体を知らぬゆえに、葵は誠太郎の正体を知った上で考えがあり、とりあえず彼の事は触れずにおく。
「貴方は南光太郎さんで間違いないですか?」
「ああ。その通りだ。ここにいた俺と同じ名前の人、攫われた南光太郎さんの事を少し教えて欲しい」
自分と同じ名前をさん付けで呼ぶのも何かおかしいな。
そんな事を考えながらも、南光太郎はもう一人の南光太郎が、仮面ライダーBlackSUNの戦いの話を、葵の口から聞くのであった。
南光太郎が話を聞き終えたのは、日もだいぶ陰っての事だ。
聞きたい事を確認しゴルゴムの施設で得た情報から彼らの狙いを察した光太郎は拳で掌を叩く。こうでもしなければ、怒りではちきれそうなのだ。
「ゴルゴムめ。性懲りもなく、創世王を生み出す気か!」
攫われたブラックサンのプロトタイプであるBlackSUN。以前の事件でゴルゴム残党が作ろうとした創世王の合体テストを行った巨大怪人。そして現れたというブラック・ダミーとシャドウ・ダミー。
これらを総合して考えれば、ゴルゴムの狙いも読めてくる。
恐らくはもう一人の南光太郎の肉体を研究し、新たな世紀王を2体生み出し創世王を作り出す気なのだ。
もっとも、このゴルゴムの企みは今回が初めてではない。今までも何度か似た企みを、光太郎は阻止してきている。
違いは誰が創世王になるかだ。自分が創世王になると言った野望を持つ者、シャドウムーンを再生しようとする者、異世界の世紀王を連れて来ようとする者まで様々であった。今回は試作怪人の肉体を研究し、自分たちで一から作ろうというのだろう。
本拠地としている場所も、うっすらとだが推測はつく。以前の経験と、体内のキングストーンがもう一人の南光太郎の位置をおぼろげながら伝えて来るのだ。
「お、おじさんは!」
葵の記憶にある創世王は、巨大な怪物であった。
彼女たちが踏み込んだ時には黒いショッカーの使者が単独で世紀王を滅ぼした直後であり、全身がボロボロとなったショッカーライダーが片膝をつくその奥で、崩れ行く怪物を見ただけだ。
だが、あんな存在にもう一人の南光太郎が成り果ててしまうなど、考えたくも無かった。
「大丈夫だ。光太郎さんは俺が必ず救出する」
「待ってください! それなら私も……」
「駄目だ、危険だ。君たちは此処で待っているんだ!」
自分も連れて行くように訴える葵の懇願を、光太郎は考える事も無くあっさりと断る。
光太郎の判断は常識的で正しい判断だろう。これからゴルゴムの本拠地に踏み込むのだ。高校生の少年少女を連れていけるような場所ではない。
断られる事を予測していたのだろう。葵はあっさりと訴えを退けた。
「おそらくはもう連中が襲ってくる事は無いだろうが、君たちも十分に注意するんだ」
そう言うと、光太郎はもうひとりの南光太郎の救出のためにこの場を後にする。
目指すは富士樹海。かつてゴルゴムの特殊訓練施設があった場所だ。
恐らく今回の連中の本拠地はそこであり、もう一人の南光太郎は捕らえられ、世紀王を新たに作ろうとしている場所であった。
南光太郎が立ち去った事を確認し、周囲に誰もいない事を確認した誠太郎は腰を上げる。
恐らく危険はもう無いだろう。ゴルゴムの残党は幾つもの少数グループに分かれており、一グループあたりの手駒の数は少ない。一々ただの人間にかまっている余裕など無い筈だ。
この場にはもう用は無いと無言で立ち去ろうとする誠太郎を呼び止めたのは葵であった。
「待ちなさい」
硬い声で呼び止める少女に、誠太郎は思わず立ち止まる。
これがただ立ち去ろうとする少年を呼び止めるだけの声なら、誠太郎は無視をして去っていたであろう。だが、少女の声は固く決意に満ちていた。それは、以前の事件の時に、国連スピーチを行った時と同じ、何らかの決意を固めた人の声であった。
その力強さは、虚無になりかけた少年を呼び止めるのに十分な力を持っていたのだ。
「俺に用は無い」
「私にはある。アインロールド」
先ほどまでの普通の高校生の目ではない。ゴルゴムの怪人すら認めさせ従えた、鉄の女の視線だ。
その事に若干気後れしながらも、誠太郎はその感情を隠し立ち去ろうとする。
「もう一度言う。俺に用は……」
「私を連れて行きなさい。アインロールド」
「俺に何のメリットも無い」
誠太郎もまた、話の内容からもう一人の南光太郎が何処に連れ去られたかをかなり正確に推測していた。
富士樹海でゴルゴムの動きが小規模ながらあった事も聞いており、ブラック・ダミーを持ち出した以上は、かつての施設を再稼働させたのだと感づいてはいた。
無論、一度は攻略された施設をそのまま使うような間抜けでは無いだろうが、一部施設などはそこから動かす事が難しい。本拠地は近場に置き、施設を利用しているとあたりを付けている。
だが、それに気が付いたからと言って自分が動く理由が……。
「これならどう?」
そう言って少女が持ち出したのは、小さなアクセサリーだ。一見すれば天然石のお守りにしか見えない。
だが、それが何かを見抜いた誠太郎は顔を真っ青にして少女が持ち出したものを仕舞う様に言う。
「とりあえず仕舞え、馬鹿やろう。人に見せびらかす物じゃない」
「これが何か、わかるみたいね」
あれはもう一人の南光太郎の中にある筈だ。外にあって良い物ではない。
そう考え単語を出さぬよう問い掛ける誠太郎に、葵は事も無しげにこう答える。
「ああ。なぜそれを持っている?」
そう、葵が取り出した緑色に鈍く輝く石こそが、キングストーンであった。あくまでもテスト用に生み出された疑似キングストーンではあったが、本物には遠く及ばなくても、その力は計り知れないものがある。
いや、出力こそ本物より劣るが、機能的にはほぼ同じなのだ。
「おじさんから片割れを預かっていた。何かあった時の為に」
なるほど。創世王もどきを滅ぼし継承される事は無くなったとはいえ、二つが体内にある以上は危険が無いとも言い切れない。ならば片割れを体外に取り出し、別の人間に持たせるというのは合理的な判断ではある。
それに、これはある意味助かったな。誠太郎はそう考える。
疑似とは言え、一つになったキングストーンがゴルゴムの手に渡れば大変な事態になっていた可能性もある。首の皮一枚ではあるがつながったのだろう。
だが……。
「報酬のつもりか?」
「ショッカーのあなたなら、これの価値がわかるでしょう」
少し考え、誠太郎は深いため息をつく。
今なら、俺が事態を制御できるか。
ここで下手に突き放すと、何をしでかすか分からない。この世界では平凡などこにでもいる高校生に過ぎない目の前の女が、可能性さえ違えば反体制テロ組織を率いて世界を滅ぼしかねない存在になる事を忘れていた。
南光太郎がすんなりともう一人の南光太郎を救出を完了させるのなら問題は無いが、そうでなければこの女はもう一人の南光太郎救出のために動くであろう。
その場合何が起きるかは、誰にも予測できない。この女が死ぬ程度で済めば良いが、おそらくもっと大変な事態を引き起こすだろうと誠太郎は考える。
ため息を一つつくと、誠太郎は仕方なしにこう答えた。
「明日の早朝、ここに来る」
「今からではなくて?」
「ゴルゴムの拠点に踏み込むんだ、それなりに準備がいる。それに、ゴルゴムからしても南光太郎は貴重なサンプルだ。すぐにどうこうする事は無いだろう」
希望的な観測ではなくゴルゴムの創世王に対する絶対の信仰を知る故に、確信をもって誠太郎は言う。
そして、こちらは希望的観測であり、多分今回は無理だろうと思いながらこうも付け加える。
「それと、RXが一晩で終わらせる可能性もある。そうなっても恨み言は言うなよ」
「分かっている」
葵の返答を待って、誠太郎はこの場を後にする。
彼女から見えない位置まで一人歩くとスマートホンを取り出していくつかの連絡を入れた。
サイクロンヘルに続き、変身機能も失った。
それでも戦うというのなら、それなりに武器は必要だった。
城戸真司「ライダーピーチ姫クラブにようこそ!(いつものスマイル)」
南光太郎(SUN)「えっ!? 俺もこっちの部屋なの?」
BLACK表記について、どれが一番見やすいですか?
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BLACKRX/BLACKSUN(半角)
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BLACKRX/BLACKSUN(全角)
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ブラックRX/ブラックSUN
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ブラックRX/ブラックSUN