ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「どうなっているんだよ、これ……」
遥か眼下で二体の怪人が争っている。
一体はゴルゴムの蜘蛛型怪人で、生物に近いフォルムを残し背中から4本の脚が生えている。観察者の記憶と事前のレクチャーによればゴルゴムの蜘蛛怪人はチームで動く事が多い。
たった1体で動いているのは、正規の性能が発揮できなかった不良品か何かなのかもしれない。
問題は、その蜘蛛型怪人と戦うもう一体の怪人だ。全身が黒一色のトノサマバッタ型怪人だ。最大の特徴は腰に巻かれた金属パーツ……ベルトのバックルだろう。金属製のサークル上の部品の中央に、赤いパーツが組み込まれている。
その怪人の正体が何か知識がある故に、俺は頭を抱える。
「おいおいおい、この世界はRXがいるよな? 怪人が市民権を持っているとか無いよな? なんでアレまでいるの?」
俺の知る限り、この世界で怪人が市民生活を営んでいるという事は無い。無論様々な理由で市井に紛れ隠れ住んでいる者もいるだろうが、それはあくまで人間に擬態しての事だ。
少なくとも怪人の姿のまま市民生活を営んでいるなんてロックな奴の話なんて聞いた事が無い。少なくとも、この世界は表向きは普通の世界だ。
まぁ、普通の世界かと言われると俺は首を横に振る。なんせ一皮むくとショッカーが暗躍し、ゴルゴムが虎視眈々と世界を狙い、その他もろもろの邪悪な存在が世界を脅かしている世界だ。そしてそれらと戦う人類の自由と平和を守る戦士たち、仮面ライダーが数多く存在する世界だ。
普通の世界とは言わない。
そう、この世界は仮面ライダーが多く存在する世界だ。俺の前世では創作に過ぎなかった仮面ライダーたちが実在し、人類の自由と平和の為に戦っているという世界だ。
とはいえ、全てのライダーが存在するかと言われるとそうではない。本郷猛は一人だけであり、THE FIRSTやシンの本郷猛は存在しないし、ジオウはいるのにビルド勢も何故か活躍したという記録が無い。
このあたりは凡人である俺には全く分からなくても仕方が無いだろう。
それより問題、地上で戦っている黒殿様飛蝗怪人の事だ。
あれが真の力を発揮した時の名前は仮面ライダーBlackSUN。
そう、仮面ライダーBlackの可能性の一つなのだが……。先ほど呟いた通り、この世界にはちゃんとRXがおりゴルゴムとクライシス帝国をぶっ潰している。
その後もなんやかんや活躍しており、この業界では有名な存在だ。
それなのにあれがいるとはどういう事だ?
いや、今回の任務自体が割と怪しかったからなぁ。
与党の有力政治家であり人類の裏切り者、堂波真一とその周辺を纏めて始末する事が今回の作戦だ。その作戦の遊撃として奴の手駒であるゴルゴム怪人を倒すのが俺の任務だ。
うん、まぁ、前世の記憶が正しいのならBlackSUNの登場人物だ。
とはいえこの世界のゴルゴムはBlack版であり、奴はゴルゴムの壊滅直後から残党を匿い勢力を伸ばしてきたらしい。またそれとは別にゴルゴム怪人の力をブースト、あるいは人間に投与すれば麻薬になるヒートヘブンの流通にも深く関与している。
そこまで思い出しつつ、ふと重要な事に気が付く。
あれ? このままほっとくと、あの男は創世王になっちゃうんじゃね?
創世王はBlackが倒したので、創世王もどきか?
いや、わからん事が多すぎる。少し独自調査して動くかなぁ……。どうせあの女を狙ってゴルゴムの怪人どもが動くだろうから、それを順次始末していけば上から文句を言われる事は無いでしょ。
俺は蜘蛛怪人が倒されるのを確認し、この場を後にした。
俺の名はアインロールド。ショッカーの幹部候補生であるショッカーライダーである。
「あの、和泉葵さん……ですよね!」
学校の廊下で知らない声に声を掛けられた葵は、流石に困惑する。
何事かと思い振り向くと、そこには一人の少年がいた。自分より背が高い、年齢の割にかなり大柄ではあるが、つけているバッチを見る限りどうやら自分より一つ下のようだ。
顔はアイドルと見間違わんばかりに整っている。優し気な柔らかな雰囲気の顔に、伸ばし始めたばかりの柔らかそうな髪。そんな少年が、頬を上気させ名前を呼び呼び止めたのだ。
葵の記憶に無い顔だ。少なくとも知り合いではない。同じ学校の制服を着ているので後輩なのだろうが、流石の彼女も全校生徒の顔と名前は一致しない。
とはいえ、こんな目立ちそうな子の事が記憶に無いというのも……。
「あ、ごめんなさい。山田成人って言います。先週転校して来たばかりで……」
「は、はぁ。その転校生が何の用で?」
転校生なら知らないのも不自然ではない。
とはいえ、1年の転校生から呼び止められるとは……。
「あの、国連でスピーチをした葵先輩で間違いありませんよね」
「あ、ああ。うん。そうだけど……」
「僕、あのスピーチを見て感動しました。そ、それで先輩を見て声を掛けてしまって……ごめんなさい、ご迷惑でしたか?」
「あ、いや、うん。ありがとう」
中々ぐいぐい来るアグレッシブな少年に、流石の葵も困惑する。
いや、それ以前に目立つ。
アイドル顔負けの美貌を誇る少年が頬を上気させ、グイグイと話しかけてくるのだ。どう考えても周囲からは良い見世物である。周囲からの蔭口には慣れているし、国連スピーチ後の好奇の視線にも慣れている。
とはいえ、天使のような美少年にグイグイ話しかけられて注目を浴びる状況には慣れていない。周囲の同級生がひそひそと話し、廊下の角を見れば一年生の女子らしい集団が陰からこちらの様子を盗み見している。
鉄の精神を持つ葵とはいえ、これは流石に恥ずかしい。
「あ、えっと。ちょっと来なさい!」
その羞恥心に耐えきれずとった行動は、山田成人なる少年を引っ張っての逃亡。
周囲の生徒たちはそれを視線で追い、ポツンと一人だけ葵の幼馴染の少年は置いて行かれる。
「えっ!?」
周囲の視線が今度は彼に集中する。
何故だか知らないが、ものすごく同情心の籠った視線が彼に注がれた。
「葵! 逃げなさい!」
椅子に縛られた年配の女性が、娘を逃がさんと必死に叫ぶ。
だが、出来るのはそれだけだ。縛られた手足では何もできず、ただ叫ぶだけでは何の助けにもならない。
「お母さん!」
叩かれた母親を守ろうと、愚かにも葵は母の望みと真逆の行動に、母を庇おうと動く。
それをあざ笑うかのように、ビルゲニアは葵の肩を掴み引きはがす。
「ははっ……。準備しろ!」
配下のノミ怪人にそう命じる。ノミ怪人は一瞬だけ躊躇して動きを鈍らせるが、それでもビルゲニアには逆らえないと動き始める。
このままでは、葵に凄惨な運命が待っていた事だろう。
だが、この世界では彼女を助けようとする意志があった。
廃工場に、駆け込む一陣の影があった。
「うわああああっ! 葵先輩、逃げて!」
その人物はあっさりとノミ怪人を弾き飛ばすと、そのままビルゲニアにタックルを仕掛ける。
思わぬ一撃に、ビルゲニアもバランスを崩し葵を手放してしまう。
何が起きたのか。そう驚き彼女が見開いた眼には、いつの間にか飛び込んできた成人の姿があった。
「なんで成人君が!?」
「なんか先輩の様子がおかしかったから! つけてきて! 良いからお母さんを連れて逃げて!」
「で、でも」
後輩の奮闘に、このまま逃げて良いのか? 葵は一瞬の躊躇をしてしまう。
それはゴルゴムの怪人に対しては大きすぎる隙だ。ビルゲニアは飛び込んできた成人を振りほどき、あっさりと壁に叩きつける。
苦痛の呻きを漏らしながら崩れ落ちる少年を見て、忌々し気に呟く。
「付けただと。この程度のお使いも出来ないとは、人間はやはり……」
葵をおびき寄せるために使ったニックを忌々し気に履き捨て、継いで少年を見る。
壁に叩きつけられ崩れ落ちた少年の肩は震えていた。
恐怖か、痛みか。まぁ、どうでも良いと、視線を葵に向ける。
そんなビルゲニアの耳に、少年の呟きが届く。
「あーあ。逃げてくれれば楽だったのにな」
まるで自分を嘲るような声に、慌てて振り向く。
すでにその場所に少年の姿は無い。忽然と消えた少年の声が、建物の出入り口から聞こえてくる。
「ノロマめ。まぁ、シャドウムーンに切り捨てられた道化ならその程度か。いや。本人ではなく名前を継いだ間抜けか? どっちでも良いが」
「なっ!?」
ほんの一瞬だけ視線を逸らした隙に、少年は葵のみならずその母親まで助け出し、建物の入り口まで移動していた。
その事実にビルゲニアが驚愕する。
同じ驚愕を葵もしていた。可愛い後輩だと思っていた男のあまりにも人を超えた動きに声が震える。
「き、君は……」
「悪いな、葵先輩。中学生ごっこは此処までだ。ここからは悪党の時間だ」
そう言うと、彼は一歩前に出た。
そして、背後の二人を見ずにこう伝える。
「さっさと消えろ。お前たちに用はない」
明らかに様子がおかしな相手に、ビルゲニアが怪人体に姿を変え、剣を抜く。
これは見た目通りの子供ではない。敵だ。
歴戦の剣聖としての本能がそう訴えかける。
「貴様、何者だ?」
そんな怪人の問いかけに対し、少年の返答はこうであった。
「ライダー変身!」
少年の腰に命のベルトが出現する。
掛け声と腕の動作を初動とし、周囲にエネルギーの嵐が吹き荒れる。
少年の姿が変わる。
黒い強化戦闘服、黒い仮面、赤い複眼。そして真紅のマフラー。
それはこの世界を知る者なら誰もが知る伝説に酷似した姿だ。
「か、仮面ライダー……だと?」
ビルゲニアの驚愕の呻きに、その黒き戦士はこう答える。
「節穴め。俺はショッカーライダーアインロールド。貴様の薄汚い命、ショッカーに捧げてもらおう」
光太郎の手から落ちた二つのキングトーンを、クジラ怪人が拾い上げる。
ゴルゴム壊滅後、人間社会に潜伏するうちに戦いに嫌気がさし、人間世界で静かに暮らす事を選択した怪人たちにとってこの石が新たな創世王を生み出すと知ったら、とてもではないが目の前の銀色の存在に渡すわけにはいかない。
そう考えるのも無理も無い事であった。
「そっちに!」
次々に投げ渡しパスを繰り返す二つの石を追い、銀色の男。ShadowMOONは静かに歩く。
その気になれば一瞬でこいつらを皆殺しに出来る。だが、この下らぬ茶番に付き合うのもまた一興。
自身の本心が、キングストーンを揃える事を拒んでいる事を無視して、彼は怪人たちの後を追う。
やがて、最後に投擲された石は蝙蝠怪人の手に渡る。だが、それを彼は取りこぼし、慌ててそれを追いかけ……。
「そこまでだ」
これで終わりか。
失望と昂揚の感情が混じったShadowMOONが蝙蝠怪人の腕を掴み、まずは緑の石を取り上げようとする。
そして、本来ならばキングストーンは彼の手に劣る筈であった。
そう、そのはずであった。
それを阻止したのは、一発の銃声だった。
立て続けに解き放たれた銃弾は緑のキングストーンのみならず、蝙蝠怪人が掴んだはずの赤いキングストーンまで弾き飛ばす。さらには飛んだはずのキングストーンは数回跳弾で弾き飛ばされ、銃弾を放った男の足元に転がった。
「何者だ!」
唐突な乱入者に、ShadowMOONが怒りの声を上げる。
そんな怒気などどこ吹く風と、その青年は石を拾い上げ値踏みしながらこう返す。
「中々良いお宝だったんでね」
整った顔立ちの青年ではあったが、それ以上に彼を特徴づけているのは手に持つ銃であろう。
大型の拳銃であり、四角い銃身に二本の金と銀のラインに挟まれた、青の文様。少なくとも、一般的な銃ではない。
そんな銃を持った青年は、軽やかに笑いながら、ShadowMOONと怪人、そしてようやく立ち上がったSUNを眺めていた。
「人間! 楽に死にたければその石をすぐに渡せ」
唾棄するべき人間におちょくられている。その事実にShadowMOONの怒りのボルテージが上がる。
もっとも、青年はその怒りすら受け流す。
「おー、怖い怖い。でも、せっかく手に入れたお宝を簡単に渡すと?」
「ならば死ね!」
「やめろ! 信彦!」
ShadowMOONの手から怒りに任せた衝撃波が飛ぶ。
その強行を止めようとSUNが叫ぶ。
だが、当のその青年はその衝撃波を見て鼻で笑いながら、自らが持つ銃身に一枚のカードを差し込む。
『KAMEN RIDE』
「変身!」
『DIEND!』
青年の周囲に影法師が舞い、ShadowMOONの放った衝撃破を打ち消す。
影法師は青年の身を包み、更には空中に現れた青い石板が次々と青年に融合していく。
そう、そこにいたのはただの青年ではない。
そう、そこにいたのは……。
「まさか! 仮面ライダー!?」
「そう。仮面ライダーディエンドさ。長い事世間から離れていたので知らなかったのかい?」
そう、青年の名は海東大樹、またの名を仮面ライダーディエンド。
異世界を股にかけ、お宝を集めるコソ泥……もとい、トレジャーハンターであった。
「なんだって、ディエンドまで出てくるんだか……」
ゴルゴム残党の本拠地に単身で乗り込みつつ、俺は呆れ半分に呟く。
まぁ、助かったと言えば助かった。あいつが疑似キングストーンを持ち逃げしてくれたおかげでShadowMOONと南さんはそっちに行ってしまい、このゴルゴム残党の本拠地は手薄になっていた。
残りの残党に関しちゃショッカーが堂波を失脚させる為に抑えている。
今頃国会は大混乱だろう。葵先輩のスピーチに合わせ、総理目前とされる男の麻薬密売疑惑を証拠付きで大暴露だ。さらに人身売買だ、殺しだと出るわ出るわ。
いやさ、うちの情報部が頭抱えてたぞ、あれ。いくらなんでも出しちゃいけない情報が多すぎるって。どれだけ悪事を働いて来たんだ? うちの情報部が頭を抱えるなんてよっぽどだぞ。
まぁ、そっちの政治的判断は上司がやる事だ。
俺はビルゲニアから奪ったサタンサーベルもどきを肩に担ぎ、ゆっくりと地下に続く階段を降りていく。
モデル創世王破壊の許可は得ている。
ショッカーの恐怖を植え付ける為、存分にやれと上司のお墨付きだ。
まぁ、好きにやって良いのなら、精々大暴れさせてもらうとしよう。
鋼鉄の扉を押し開ける。
そこには、見上げるほど巨大な怪人が、玉座……あるいは終末医療用の椅子に腰を掛けていた。
「何者だ……」
くぐもった声が、巨大な広場に響く。
死にかけだというのに、相当な重圧だ。それだけの迫力はある。
もっとも、うちの大幹部連中や大首領に比べりゃ怖くは無い。
なにより、こいつをここで滅ぼしておけばもう南さんと葵先輩の悲劇は回避できる。
悪のショッカーライダーとはいえ、別に悲劇が好きな訳では無い。やる気を出さない理由なんて無かった。
俺は腹に力を籠め、目の前の巨怪に向かいこう返す。
「Blackの代わりに貴様らの妄執に終止符を打ちに来た者だ。貴様の哀れな生涯、ショッカーに捧げてもらおう」
原作知識を使って好き勝手しているけど、戦闘では毎度死にかけていた模様。
なお、一番好き勝手していたのは実はディエンドこと海東。
BLACK表記について、どれが一番見やすいですか?
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BLACKRX/BLACKSUN(半角)
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BLACKRX/BLACKSUN(全角)
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ブラックRX/ブラックSUN
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ブラックRX/ブラックSUN