ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
前日の予告通り、誠太郎はその日の早朝にやって来た。
巨大なサイドカー付きのバイクに跨り、いくつかの大荷物を積み込んでいた。
彼は到着するや否や、葵に向かい紙袋を投げてよこす。
「これに着替えろ」
「なに、これ?」
「キャンプ用品に偽装した対怪人用のコンバットジャケット一式だ。気休めだが、無いよりはマシだ」
ショッカー戦闘員のスーツにも使われている特殊素材を使用したジャケット一式だ。無論生身の人間が着てゴルゴム怪人の攻撃を耐えられるものではないが、流れ弾程度なら運が良ければ助かる程度に防御性能は高い。
葵が誠太郎の言葉に納得しバスに入り着替えている間に、誠太郎は手元の端末で一晩で集めた現地の情報を確認する。
先日山梨で発生したミラーモンスター事件は解決し、応援として山梨に入っていた各都道府県警のG3隊は撤収を完了した。また、山梨県警もミラーモンスターの駆除を終えて通常シフトに戻っている。
蟹がまだ居れば盾代わりに使ったのだが、残念ながら蟹こと須藤も警視庁に戻りネオショッカーの捜査に当たっていた。
筑波や城戸、秋山も東京に戻りもう山梨にはいないだろう。巻き込む気など初めから無かったが、変身機能を失った自分が失敗した時の葵の預け先が無いというのも困りものではあった。
「着替えて来た」
本来のキャンプ用なら発見を容易にするカラフルな彩色が定番なのだが、今回は目的が目的なので迷彩柄だ。とはいえ、勘違いのミリタリーファッションと言い通せないレベルでもない。
葵の服装を確認すると、今度は小型のポーチを手渡す。
「食料と薬、それと金が入った緊急キットだ。絶対に手放すな」
「お金? なんで……」
「俺とはぐれた場合はどんな状況でも街に逃げ込む事を第一に考えろ。その為の金だ。これを受け入れられないなら連れてはいけない」
この場では言わないが、中には誠太郎の知る限りの仮面ライダーの連絡先を入れておいた。
便利使いをするのは申し訳ないが、一般人の安全は最優先である。なあに、どうせこっちは元ショッカーライダーだ。ライダーをはめて便利に使うのはお手の物だ。
彼女がポーチを装着したことを確認すると、誠太郎は思い紙袋を手渡す。
「これは?」
「拳銃だ」
誠太郎の言う通り、紙袋の中身は黒光りを放つ拳銃であった。
以前巻き込まれた事件の最中、武器は何度も見ている。とはいえ、こうやって実際に手に取るとやはり何か恐ろしい圧力を感じた。
唾を飲む葵に、誠太郎は不快そうにこう忠告をする。
「気休めだ。護身用に渡すが、使うな。ゴルゴム怪人には通用しない」
口径の大きい専用弾頭を使うならまだしも、素人の女子供が使えるハンドガンだ。この世界のゴルゴム怪人相手には豆鉄砲にもなりはしない。
正直誠太郎としては持たせたくは無いのだが、何も持たせないのも不安であった。
「基本的に戦わない。仮に戦っても俺だけだ。RXが暴れるだろうから、ゴルゴムもこちらに気を回す余裕は無いだろうがな」
一番の理想は到着した時にはRXがもう一人の南光太郎を救出している事だ。RXの力なら必ずしも不可能ではない。
だがゴルゴムも狡猾となり、弱者の戦術を身に付けつつある。RXと言えども一晩ですべての本拠地を見つけ出し救出まで終えるのは難しいと言わざるを得ない。
自分たちが出来るのは精々RXの邪魔をしないようにする事。そして、ゴルゴムの隙をつきもう一人の南光太郎を見つけ出す事だ。
「分かっている。流石に怪人と戦えるとは思っていない」
葵の返事に誠太郎は頷くと、オートバイに積み込んだ大荷物を視界の隅に入れる。
一応はいざという時を考え切り札を容易はしてきたが、一人でゴルゴムの怪人と戦うには若干の力不足だ。使わないに越した事は無いだろう。
「なら、行くぞ」
葵に乗るよう促し、誠太郎はバイクを発進させた。
もっとも、こんな誠太郎の考えは初手から躓く事になる。
「やあ、久しぶり。誠太郎に葵ちゃん」
「えっ!? 海東さん!?」
「げっ……。出た……」
それは彼らが休憩に寄ったパーキングでの出来事だ。
まるで待ち構えるかのように……いや、実際待ち構えていたのだろう美貌の青年が野外席に陣取り真夏のアイスコーヒーを楽しんでいた。その光景に誠太郎は心底嫌そうな顔を、葵は驚きの表情を浮かべる。
二人にとっては知己であり、誠太郎としては面倒くさいので二度と会いたくなかった相手だ。担当のショッカー大首領代行のもやしはさっさと来て引き取れなどと、内心で毒づいていたりもする。
「そんなところに突っ立っていたら邪魔だろう。これから混む時間だし、どうだい?」
そんな誠太郎の内心などどこ吹く風と、その青年……海東大樹は二人を呼び寄せる。
本音を言えば無視して早々に立ち去りたいところだが、どうせ立ち去っても行く先々で出てくる。そして何より、非常に腹が立つが絶対に有益な情報を持っている。
そう考え誠太郎は海東の向かいに腰を掛け、その隣の席に葵もつく。
事前に頼んでいたのだろう。二人が席をついたその直後に、カフェの店員が冷たい飲み物と軽食を3人分持ってくる。この辺りのキザな気遣い、もしくは席を立たせないようなテクニックは、どこぞの破壊者にはできない技だ。
食べ物とドリンクに罪はない。そう割り切った誠太郎は無糖のアイスティーで喉を湿らせつつ、目の前の胡散臭い男に尋ねる。
「何をしに来た?」
「ひどいな。かつての戦友に会いに来て悪いかい? 誠太郎」
「どの口で言う」
いつの間に人の本名を知ったのか。疑問に思わないでも無いが、聞いたところで意味があるわけでも無いので誠太郎はあえて無視をする。
だが、同行していた葵にとっては、山田成人が知らない名前でスムーズに受け答えをしている様は非常に気になる事だ。
それゆえに、かつての事件で何度も助けられ、妙な所でひっかきまわしてくれた不思議な青年にこう尋ねる。
「あの、誠太郎って?」
「渡世誠太郎。彼の本名さ、葵ちゃん。というか誠太郎、君教えてなかったの?」
「俺の本名などどうでも良い」
葵としてはどうでも良い話では無いのだが、誠太郎としては呼ばれても良いが触れたくも無い話題なのだろう。
明らかに不機嫌そうなポーズを解かない誠太郎に、葵はとりあえず名前に関する疑問を棚上げする。その上で彼女も海東に対して誠太郎と同じことを尋ねた。
「でも、海東さんがどうして?」
アインロールドがモデル創生王を倒し、BlackSUNと睨み合っている場面に唐突に表れ、アインロールドから人造サタンサーベルを受け取り早々に立ち去った。
それが海東を最後に見た場面である。そんな彼がなぜ出てきたのか?
葵の問いかけに、意外にも海東は素直に敬意を応える。
「いや、南のおじさんが攫われたって聞いてね。君らが助けに来ると踏んで待っていたのさ」
「嘘をつけ。目的はなんだ?」
「ひどいな」
海東の言葉を一刀両断にする誠太郎に、流石の海東も憮然とする。
とはいえ、直ぐに胡散臭い笑みを浮かべこう切り返す。
「聞き及んで待っていたのは本当さ。まぁ、僕としてはお宝を手に入れる為ではあるけどね」
「それを最初から言え」
どうせ海東のおごりだとサンドインチをかじりながら、誠太郎は塩対応で切り捨てる。
この手の奴は、恩に着せるような言い方をしてくるので塩対応で本音を引き出す事が重要なのだ。そうでなければケツの毛までむしり取られる。
「冷たいね。南のおじさんを助ける為に態々僕に依頼をした人物とは思えないね」
そんな誠太郎の態度に、海東は嫌がらせの反撃を思いつく。
ひねくれ者の対処は、門矢士で慣れている。悪ぶりたい少年など、海東にしてみればおちょくるのは簡単な話であった。
「お前な……」
「それってどういうことですか?」
「あれ? 聞いていない? モデル創世王が死ぬタイミングで二つの疑似キングストーンと試作世紀王が揃っていると創世王を継承する可能性があるから、引き離すよう僕に依頼したんだよ、彼」
モデル創世王王を滅ぼすために戦いに挑む直前に、アインロールドは海東と接触をした。その時、BlackSUNとShadowMOONを決戦の舞台から引き離すよう海東に依頼したのだ。彼らが間違って創世王にならないようするための処置であり、その報酬がアインロールドがビルゲニアから奪った人造サタンサーベルであった。
自分が知らなかった危険な裏事情を知らされ目を見張る葵に対し、誠太郎はますます不機嫌そうな表情を浮かべる。
隠していた事実の暴露を打ち消すように、誠太郎は固い口調で話を進める。
「脱線するな。つまり、お前は南光太郎がどこにいるか知っているんだな?」
「その通り」
「それはっ!」
海東の言葉に葵がいきり立ちそうになるが、それを誠太郎は片手で抑える。
こいつの様なトリックスター気取りに感情を見せるのは得策ではない。それを良く知る誠太郎は、硬い声を崩さず海東に疑問をぶつけた。
「なら、なぜRXに伝えない?」
「僕にメリットが無いからね」
現在RXはゴルゴムの創生王新造計画の阻止に手間取っている。如何に強大な力を誇るRXと言えども、一人である事に変わりはない。
ゴルゴムが基地を分散させ攻略拠点を増加させれば、どうしても事件解決までの時間が必要になる。目につく基地を潰し情報を集めてはいるだろうが、南光太郎が捕らわれた拠点の発見はRXと言えどもそう簡単な話ではない。
とはいえ、それは戦力的な問題ではなく。あくまでも時間がかかるというだけの話だ。
海東が知る情報を知らなくても、時間さえかければRXはもう一人の南光太郎が捕らえられている基地にはたどり着くであろう。
それゆえに、海東はRXに情報を伝えなかった。
海東の目的はあくまで狙った宝を手に入れる事だ。もう一人の南光太郎がどうなってもいいなどと考えるほど畜生では無いが、自分の利益を投げ捨てられるほど聖人君子のつもりもない。
「RXに教えたら、お宝を手に入れるための時間が無くなるだろう」
「だから俺たちを待っていたと?」
「そうさ。RXは他の拠点を先に潰しゴルゴムの計画を早期に阻止できる。君たちはおじさんを救出できる。そして僕はお宝を手に入れると三方良しさ」
「ずいぶんと都合の良い三方良しもあったものだ」
「ま、君たちから見るとそうだろうけど、RXが現在攻略しているのはダミー・ブラックやダミー・シャドウの生産拠点だよ」
そちらの施設には改造用の素体として捉えられた人々が大勢いる。もう一人の南光太郎を軽視するわけでは無いが、そちらはそちらで放置できる状況ではない。
ダミー生産施設を優先しなければ一般人の被害が増えるばかりだと、海東にしては珍しく不快そうに吐き捨てる。
確かにその通りだろうと誠太郎はますます苦虫を噛み潰したかのような表情となり、葵はかつての事件で怪人に改造された父親を思い出し顔色を青くする。
「だったら、おじさんが捕らえられているのは……」
「キングストーンの研究施設さ。僕たちが攻略するのはね」
その言葉に、誠太郎は深くため息をつく。
海東は強力な仮面ライダー、ディエンドに変身する。そう言った意味では戦力が増えたのだが、信用して良いのかと問われれば首をかしげる存在だ。
自分のような悪党では無いが、自己の利益を優先する事も多いため信頼していい人物とも言い難かった。
「まったく。面倒な事だ」
この呟きが、誠太郎の本音であろう。
だが、目的地が定まった以上、次にやる事は決まっていた。そういう事であった。
天を継ぐもの、見てきました。大真面目に馬鹿をやる疾走感、実にカブトでした。
(;´・ω・)←現在の私。大丈夫、本作に組み込める……。他作品勢が頑張ってくれただけで、致命傷ではない。
Q.ショッカーが表に出せない情報って、堂波真一は何をやらかしたの?
A.ゴルゴム以外とも取引をして人類に対する裏切り行為をダース単位でやらかし、様々な残党を吸収してこき使う事により私腹を肥やし、怪人の私兵団を操り面白半分で世界各地の治安を乱し、ヒートヘブン売買のみならず怪人売買の大元締めとなり超常兵器を積極的に拡散し、自衛隊を中心に各省庁に怪人の私兵団を潜ませていた。
「俺達でも一人でここまではやらんぞ。なんだ、この無駄な行動力……」は、報告を受けた大幹部の発言。
情報提供を受けた加賀美陸はショッカーの大幹部と揃って頭を抱える羽目となり、堂波の賛同者や怪人私兵団を政治中枢から叩き出すために駆け回り、後に首相(貧乏くじ)となる。
また、本件を切っ掛けに堂波との繋がりがあった世界各国の政治家や官僚、軍人、経済人、有力者などの首が物理的に飛ぶ事となった。
Q.誠太郎って天使のような美少年なの?
A.主役俳優にになれる程度には整っているが、流石に普段はそこまでではない。
ただ、この時は女子中学生に接触する必要があると相談された情報部のお姉さま()方が、無駄に気合を入れて誠太郎のメイクアップ&演技指導をした。
おのれディケイド! 演義の練習に付き合ったテオドラ他数名の性癖が破壊されたぞ!
解説の仕業だ!
海東大樹(出典:仮面ライダーディケイド)
異世界を股にかけ活躍するコソ泥ストーカー……もとい、怪盗にしてトレジャーハンター。大ショッカーから盗み出したディエンドドライバーを駆使し、仮面ライダーディエンドに変身する。
門矢士の旅の行く先々に姿を現し、その世界のお宝を手に入れようと暗躍する。
飄々とした胡散臭い性格だが、門矢士に対しては妙な執着心を見せる。ジオウに客演した際にはアナザーウォッチによりその執着心が暴走し、士を襲う事となった。
キングストーン(出典:仮面ライダーBlack 仮面ライダーBlackRX)
ブラックサンおよびシャドウムーンの体内に埋め込まれた、世紀王の証となる石。他作品では賢者の石とも呼ばれる。
様々な奇跡を起こし、二人に他の怪人を遥かに超える力を与える。
RXではキングストーンの意志が語り掛ける事もあった。その意志は賢者のような性格をしており、決して邪悪な人格では無かった。
キングストーン(出典:仮面ライダーBlackSUN)
こちらも世紀王の証となる石だが、原作と大きく違う点は体外に出す事が可能な点。
和泉葵はその正体も知らず、南光太郎のキングストーンを持つ事になり事件に巻き込まれていく。
二つのキングストーンと世紀王の命が、最後の悲劇を起こす事となった。
BLACK表記について、どれが一番見やすいですか?
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BLACKRX/BLACKSUN(半角)
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BLACKRX/BLACKSUN(全角)
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ブラックRX/ブラックSUN
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ブラックRX/ブラックSUN