ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第15話 episode・000 閑話・何かが終わっても世は動く

 ホテル襲撃事件から半月ほどの時間が経過した。

 当初は事情聴取や支持者や党への説明と忙しい日々を送っていた幻徳であったが、ようやく落ち着いた時間を取る事が出来るようになっていた。

 

「後藤田先生はこれがやりたかったのか……」

 

 幻徳は手に持った書類から目を離さずに、テレビから流れるニュースを聞きながら呟く。

 ここ数日報道を賑わせているのは、後藤田議員の死と同時に公開された後藤田メモ……一部のタカ派議員や自衛隊幹部によるG4計画から連綿と続く、超常犯罪がらみの背信行為の暴露だった。

 

 

 後藤田が園子を狙った理由は単純に都合が良い……ただ、それだけだ。

 

 超常犯罪防止法反対派議員の身内に人に擬態した化け物がいる。さらにその人物とショッカーなど怪物が白昼堂々と抗争を行う。これを見た一般人はどう思うだろうか。

 どこに潜んでいるかわからない怪物に怯え、国会議員すら化け物に操られているのではないか……。そんな疑念からパニックになる事は必至だ。

 

 園子がどういう人間かはもはや関係ない。化け物が潜み社会を操っている。そう疑惑を生じさせればいいのだ。

 

 故意にパニックを引き起こし、超常犯罪防止法という過激な反超常を掲げる自分に一般市民の支持を集める。それが後藤田の描いた図面だった。

 

 

「用意周到だったよ、あの老人は……」

 

 

 だが、社会に潜む超常の者を狩る法は、あえて欠陥を放置したいつ何時一般市民に牙を剥くかどうか分からない危うい代物だ。自分が采配できる間は良い。命を狙われてもライダーとしての力を持つ後藤田なら対処できる。

 だが、人間である以上は采配できなくなる時が必ず来る。

 

 だから彼は自身が采配できなくなった時に備えた準備を怠らなかった。

 

 法案に賛同する者の内、欠陥法を利用しようとする闇の勢力と繋がりがある者を調べ上げ詳細にまとめ、更には政治家や自衛隊内の超常技術を使った過剰な力を求める人物をピックアップする。

 過激な思想家という看板は、そういった腹に一物を抱える者たちを吸い寄せる事に実によく役に立った。

 最後に、自身が行ったグリードとの取引の詳細な記録を証拠とともに残し、後藤田自身の失脚、もしくは死と同時に握りつぶせぬよう複数のメディアへむけてリークされるよう手筈を整えた。

 

 後藤田メモに関してはすでに警察も動いており相当数の逮捕者と、逮捕されないまでも失脚する者が多く出る事になるだろう。少なくとも政府内で闇の勢力に与するものは一掃される。

 彼は自らが死んだ場合、国を蝕む病巣と危険な法案が同時に葬られるよう手筈を整えていたのだ。

 

 もはや推進派は虫の息であり、超常犯罪防止法は廃案となる見込みである。

 

 ふと手元の書類から目を離しモニターを見ると、画面が切り替わり笑みを浮かべた東雲の姿が映っていた。

 疎遠だったとはいえ親友を失ったばかりだというのに、彼は精力的に働いた。

 

「この人も、強いな……」

 

 過激な法案にとって代わるのは、東雲が推し進める各組織の垣根を超えた連絡会議の設置と共同の研究施設の開設だ。

 後藤田が己の命や名誉すら捨ててまで求めた大義……守るべき人々の為に……東雲は次の戦いを始めていた。

 

「大義の為の犠牲か……」

 

 後藤田の行った行為に賛同はできない。だが、彼の姿は仲間と出会えなかった、自分のもう一つの姿ではないのだろうか。幻徳にはそう思えてならない。

 

「仲間……か」

 

 思い浮かべるのは幻徳自身の仲間。微妙に性格の悪い愛と平和の天才物理学者の事だ。

 

「ん? 奴を新しい研究所にぶち込めないか?」

 

 性格は悪いし、時たま人を嵌めるし、寝癖は直さないというちょいとばかり問題児だが、天才物理学者であることに間違いはない。

 なにより、彼を研究所に所属させれば新組織に妙な連中が紛れ込んでも何とかなるだろう、多分。

 問題は素直に言う事を聞く奴じゃないという事だが……。そんな事を考えていると受付から来客の知らせが届く。

 すぐさま通すよう指示を出すと、さほど待たずして彼はやってきた。

 

「あの事件以来だな、火野。アンクは?」

 

 議員としての意識より戦友としての意識が勝っており、幻徳は素の自分で対応する。それは映司も同じだったようで、彼もまた軽い調子で片手を上げた。

 

「こんにちわ、氷室さん。アンクはめんどくさいってその辺をうろついているよ」

 

 いかにも彼らしい。人外の青年が常時張り付けていたしかめ面を思い出し幻徳は苦笑する。

 

「で、彼の件はどうなった?」

 

 お互い忙しい身であり、畏まったやり取りが必要な話題でもない。

 早々に本題を切り出す幻徳に、映司は首を横に振った。

 

「駄目だったよ。いくつかの伝を当たってみたけど、追いかけようがなかった」

 

 彼らが話題としているのは、あの時の少年……、おそらくはアインロールドだった少年の事である。

 

 後藤田の死を看取りもう狙撃が無い事を悟った彼は、そのまま何も言わずに姿を消した。

 

 消えてしまった世界ならともかく、現在の幻徳はそこまで特殊なコネクションを持ちあわせていない。その為、姿を消した少年の探索は難しかった。逆に映司はその経歴から妙なコネクションが多く、その伝をたどって少年探しを買って出たのだ。

 

「経歴や紹介状は全て偽造、防犯カメラ等の映像は全て破損……。こうなると俺たちが見た姿も本当の姿かどうか怪しいな……」

 

 これは幻徳の考え過ぎではあるが、彼が過去に戦った敵は姿を変える能力があり疑うのも無理のない話であった。

 

「アインロールドの最近の目撃情報は永州と風都。俺の知人が目撃している」

 

 映司は探偵を生業とする知人から聞いた話を幻徳に話す。

 話を聞き終えた幻徳はため息を一つつくと、半ば呆れを滲ませながらこう評した。

 

「よく平気だったな、そいつら……」

「頼りになる人たちだからね……でも……。彼の噂がどこまで正しいか……」

「ああ、それは俺も同感だ」

 

 幻徳は直接アインロールドの姿を見た訳ではない。

 だが、クスクシエでの姿や映司から聞いた彼の戦いを聞く限り、単純な悪党とは到底考えられなかった。

 

「これは俺の勘だが……おそらくはもう一度、彼は俺たちの目の前に現れるだろうな」

「俺もそう思うよ」

 

 再び姿を現した時、彼は敵だろうか、味方だろうか。

 だが、立場がどうであれ手を伸ばさなければきっと後悔する。映司はそう考えていた。

 

 

 

 

 その日、園子は一人で街に出ていた。

 あのような事件の直後だ。家の者は祖父を除き反対したが、一緒に襲われた祖父が行ってきなさいと快く送り出したのだから、伯父や伯母、あるいは使用人はそれ以上誰も文句が言えなかった。

 

 最初に寄ったのはクスクシエという店だ。先日の事件でお世話になったお店であり、お礼を兼ねた訪問を店主の女性は快く出迎えてくれた。

 彼女からは熱心にアルバイトに来ないかと誘われたが、まだ中学生の身。一年以上後なのでその時に考えると保留にしたが、知世子と話していると社会勉強として一度やってみるのも悪くはないかなと考えた。

 

 知世子とは小一時間ほど話しただろうか。ランチの仕込みもあるという事で、次の約束の時間までだいぶ間があったが、園子はお店を後にした。

 

 それから暫くは町を散策した。

 別に深窓のお嬢様というわけでもない。町を独りで出歩くのが初めてというわけでもないのに、妙にウキウキした気持ちを押さえられない。

 結局、目的地に着いたのは約束よりかなり早い時間であった。

 

 ついたのは市民の憩いの場となるソコソコの大きさを持つ公園だ。

 その日は天気が良かったという事もあり、緑の芝生には親子連れも見受けられた。

 

 彼女に幼い頃に事故で無くなったという両親の記憶はあまりない。

 ただ、自分も彼らのように公園で遊んでもらったのだろうか。帰ってみたら、アルバムを開いてみよう。そんな事を思いつく。

 

 妙に浮ついて、ワクワクドキドキしながらほんの少しだけ待つ。不意に、エンジンを吹かす爆音が彼女の耳に届く。

 顔を上げてみれば一台のバイクが公園に入ってきているところだ。

 

 見た事のあるバイクに乗った少年はオートバイを片隅に止めると、こちらの存在に気が付く。

 彼はヘルメットを取ると、不機嫌そうな、困ったかのような、それでも微笑んでいるかのような妙ちくりんな顔でこちらに向かってくる。

 

「ったく……ヘンリーのおっさんにも困ったものだ……会う気はなかったのだけどな」

「すいません。せっかくのお気遣いを……でも、貴方には直接お礼を言いたくて、ヘンリーおじ様に無理を言ってお願いしました」

 

 やってきたのは、あの時自分を助けてくれた仮面ライダーの少年だった。




 ちょい短いけど、ライダー側のエピローグ
 次回はエピソード000の最終話


 今のところ次回任務も光落ちルートが優勢……

次回任務

  • ライダー抹殺指令
  • 敵対組織の計画阻止
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