ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第16話 episode・000 フラグをへし折るのもオリ主の役目

 ヘンリーのおっさんから連絡が来たのは数日前の事だ。

 あのおっさんが言うには、護衛対象であった園子に会って欲しいというのだ。

 

 無論、俺は当初は断った。

 そりゃそうだ、堅気の人間がショッカーの幹部に会って良い事など何もない。

 俺とおっさんのつながりは全て消してある。さらにあっちは議員の孫。ここで会えば色々台無しになる恐れがある。

 ついでに言うと、後藤田が残した告発メモのおかげで忙しかった。奴の告発状にはショッカーと繋がりのある連中の事も記載されており、ミカなんぞ秘書の蛇女と一緒に連日アジトに缶詰だ。

 

 もっともうちはマシな方で、デストロンは都市再開発の裏でやっていた秘密基地建造計画がばれてV3のカチコミを食らったらしい。

 

 それはともかくとして渋る俺だったが、百戦錬磨のアナリストの説得に根負けし、いくつかの条件で1回だけ彼女の希望をかなえる事にした。

 

 

 そんな訳で俺はミカの目を盗み、指定した公園へと足を運んだわけだ。

 

 

 時間より少々早く着いてしまったが、園子さんはすでに待っていたようだ。

 淡い色のワンピースに胸元のリボン、同じ色の大きな帽子……女性の服装は詳しくないが、彼女に似合っているって事だけはよくわかる。

 可愛いから美人に成長しつつある園子さんの姿はすごく絵になっており、このまま見ていてもいいぐらいだ。

 

 まぁ、ほっとくとナンパ男が寄ってきそうか。実際、ちょっと離れたところで数人の男が彼女をチラ見しながらヒソヒソ話しているし、早々に声をかけるか……。

 とはいえ、なんて声をかけるか……。

 

「ったく……ヘンリーのおっさんにも困ったものだ……会う気はなかったのだけどな」

 

 結局、口から出たのはこんなセンスのない言葉だ。

 そもそも、俺に気が利いたセリフを求めるのが間違っている。

 

「すいません。せっかくのお気遣いを……でも、貴方には直接お礼を言いたくて、ヘンリーおじ様に無理を言ってお願いしました」

 

 聞きようによっては毒を吐いているように聞こえる言葉だったが、園子さんは満面の笑顔で返してくる。

 

「悪い奴は親切を装うんだよ」

「悪い人は、あんなにボロボロになりません」

 

 わーお、事件の時と違って返してくるね、この子。

 命の危機や身内の心配ってストレスが無いから、こっちが彼女の地なのかもしれない。

 

「まったく、君が将来悪い奴に騙されないか心配だよ。ここで立ち話もなんだから、少し歩くか」

「はい」

 

 芝生を抜けて海岸沿いを歩きながら、彼女が話してくれたのは自分の出生の話だった。

 

 

 彼女の父、三郎太の元となった人物は幼い頃から病弱だった。10歳を超えられないと医者から宣告されており、事実その通りだった。

 そんな息子を不憫に思い、彼が好きだった宇宙人……ネイティブを引き合わせたのは東雲のせめてもの親心だ。

 まだ若い……あるいは幼い個体だったネイティブと三郎太はよほど馬が合ったのか、すぐに親友になったという。

 

 そして医者の宣告より早く、9つの誕生日を前に三郎太は息を引き取る事になる。

 家族の崩壊が始まった。

 まず東雲の妻が心を病んだ。生前より丈夫に産めなかった事を悔やんでいた妻は、三郎太の死を切っ掛けに奇抜な行動が目立つようになる。

 それに嫌気がさした長男と次男は家に寄り付かなくなり……そんな時、家族を救ってくれたのが三郎太の親友のネイティブ……つまり後の園子さんの父だ。

 

 三郎太に擬態した彼は病気が治った、元気になったと東雲の妻に息子として接した。

 東雲の妻は正気だった頃と同じように心穏やかな生活を送れるようになり、家族の致命的な崩壊はぎりぎりで回避された。

 

 そんな中、ZECTの重要人物がネイティブにより暗殺される。

 擬態能力を持つネイティブにより監視される日々。ZECTを離れるもの、残る者、様々な人がいる中で東雲はZECTに残る事を選ぶ。

 

 東雲は人間のリーダーの手足となり、ネイティブ打倒を目指し働く。

 皮肉にも息子に擬態したネイティブと暮らす東雲は、悪しきネイティブたちにとって既に軍門に下った取るに足らない男であり、彼に対する監視は無いに等しかった。

 更に、人類という親愛なる隣人を支配しようなどという妄言を実行に移すネイティブ指導層を三郎太は見限っており、東雲の行動を悟らせないように欺瞞工作を積極的に行っていた。

 

 その後、隕石に乗りワームが飛来。仮面ライダーによるワーム殲滅。そして人類支配……いや、改造を企んだネイティブ指導層が倒される。

 

 それを全て見届けた三郎太は、東雲の前から立ち去ろうと考えていた。

 この頃には東雲の妻……園子さんの祖母も鬼籍に入っており、悪しきネイティブが居なくなった以上は擬態を続ける意味もなかった。死んだ三郎太君の姿を取り続けて申し訳なかった。優しかったおばさんが変わって行くのを見ていられなかった。三郎太はそう涙ながらに語った。

 去ろうとする三郎太を止めたのが東雲と、その息子たちだ。ネイティブの青年は既に掛け替えのない家族になっていた。

 

 その後、残った三郎太が後藤田の娘である光江と恋に落ち結ばれる。

 当初は子供をあきらめていた二人だが、園子さんを授かることになる……。そして、二人を襲う超常事件とは何ら関わりのない、どこにでも有りそうな交通事故……。

 

 

「お父様は……。この地球を……人類を愛していたんです。人としてこの地に生きて、骨をうずめる……常々そう言っていたそうです。お母様は、お父様のすべてを知って、受け入れて結婚したそうです……」

 

 

 研究者の話ではネイティブが人類と交わり続ければ園子の子か、孫の世代には完全に人類の中に溶けて消え去るという。

 強力な擬態化能力ゆえに、他種族と交わればすぐに同化して消える……そんな儚い運命なのだそうだ。

 

 

「それをなんで俺に?」

 

 はっきりと言えば俺は無関係な他人だ。

 わざわざ会ってまで俺に話そうという彼女の真意を問いただす。 

 園子さんは形の良い唇に指をあてうーんと考えると、こう語った。

 

「あの時……。正体を表しそうになった私を助けてくれた人に黙っているのは何か違うかなって思って……。自分の中で、整理できないかなって思って……」

 

 なんとも要領の得ない言い回しだが、彼女の言わんとしている事はなんとなくわかる。

 俺も改造人間だ。普通の人間とは違うという事実が整理しきれない時もある。彼女も人外である俺に話すことで、心の整理を付けようとしたのだろう。

 気持ちが分かるだけに彼女を突き放す気にもなれず……今日一日ぐらいは気晴らしに付き合っても良いかと妙な仏心が首をもたげる。

 

「さてと……」

 

 彼女の話が一区切りつくのを待って、俺は身体を伸ばす。

 そして、妙に不安そうな表所を見せる園子さんに向かって、片手を伸ばしながらこう誘う。

 

「俺はまだ昼を食べてないんだけど、一緒にどう? バイト代も入ったし奢るよ」

 

 園子さんははにかみながらその手を取った。

 

 これくらいは良いだろう。

 この年頃の娘さんのエスコートは、ミカの我儘で慣れている。

 

 

 昼食は彼女の希望でハンバーガーチェーン店という事になった。

 もう少し良い物でも良かったのだが、彼女は入った事が無くこの機会に食べてみたいと言った。良いところのお嬢さんは流石に物が違う。

 

「ちょっとドキドキしますね……」

「そうなの?」

「街ではよく見ますけど……実際入るのは初めてで……」

 

 園子さんはハンバーガーの包み紙を丁寧に剥きながら、まるで宝物を見るような目を薄いバンズとミートに向ける。

 そんな大したもんのじゃないのだが、やはり初体験は違うのか。

 

「あれ?」

 

 もぐりと噛みつくが……あーあ、ソースこぼしているしほっぺについてら。

 

「気を付けないと、服を汚すよ……ちょっと、染みになるって」

 

 俺はハンカチを取り出すと、彼女の頬をぬぐい、他も服を拭くようにとハンカチを渡す。

 まぁ、豪快にかぶりついて顔をべたべたにするミカに比べれば、実に上品なものだ。

 

 

 服が汚れたという事で、近場で買い物をすることになった。

 女性の買い物は長い。特に服はそうだ。ミカの買い物に付き合わされると……うん、下着売り場で待たされた事を思い出すのはやめておこう。お前の洗濯板にはいらねーだろうと言ったらライダーキックを食らったし……。

 

 まぁ、今頃アジトで缶詰喰らっている大平原しかない科学者はさておき、大山脈をお持ちのお嬢様は早々に服を決めた。

 先ほどまでのワンピースとうって変わって活動的なパンツルックだ。

 

「あの、似合ってます?」

「うん、良く似合っている。可愛い」

「子供扱いしないでください! もう……」

 

 おっと、むくれられてしまった。

 

 この後も、彼女の希望でカラオケボックスやアミューズメントパークなどを転々とした。

 俺には慣れた場所が多かったが流石は良いところのお嬢様で、行ったことが無い場所が多かったそうだ。

 

 先日は沈んだ顔しか見る事が出来なかったが、こういう年頃の少女らしい笑顔を見れた事だけは会って良かったと思う。

 

 

 まぁ、とはいえ中学生を連れまわせる時間は限られている。

 夕方には家に帰さなければならない。

 

「あの……最後に……一つだけお願いを聞いてもらっていいですか?」

 

 彼女の気晴らしではあるが、ここまで連れまわしたのだ.

 あと一つぐらいは聞いても良いだろう。

 

「俺に出来る事なら」

 

 快く了承する俺に、園子さんは顔を真っ赤にしながらこう言った。

 

「あの、もう一度だけ、バイクの後ろに乗せてもらって……良いですか?」

 

 ああ、逃げるとき無理やり乗せたっけ。

 まぁ、乗せるのは構わないけど……って、おい。

 

 唐突に暗がりからサイクロンヘルが姿を現す。

 お前……ついて来ていたのかよ……。ステルス能力の無駄使いも良いところだ。

 

 まあいいや。俺はヘルメットを取り出すと、一つを彼女に投げて渡す。

 

「家まで送るよ。後ろに乗りな」

 

 彼女は俺の後ろに乗ると、ぎゅっと抱き着いてくる。

 あ、ちょっとミカには無いボリューム感。ここはお兄さんの意地でライダー平常心。

 さてと……。彼女がしっかりと掴まったのを確認して、俺はアクセルを吹かす。

 

「しっかり掴まってなよ」

「はい!」

 

 

 そこからの帰り道は、彼女の口数は少なかった。

 夕方、帰宅のラッシュを適当に避けながら俺は都内を進む。

 そして、彼女の家の前にバイクを止めた。

 

 これでお嬢様の気晴らしは終わりだ。

 

 ここからは、彼女は一人の人間として、日常を生きていかなければならない。

 闇の住民である俺との道は交わってはいけない。

 

「ありがとうございます」

「いいさ。気晴らしにはなったかい」

「はい」

 

 そう言ってバイクから降りた彼女は少しだけ寂しそうな、それでも飛び切りの笑顔を見せる。

 名残惜しいがこれでお別れだ。

 

「じゃあな。俺が言うのもなんだが……」

 

 どう言うべきか……。少し考えた後、俺はこう締めくくる。

 

「負けるなよ」

 

 多分、この言葉が一番良いだろう。

 そうして、バイクのアクセルを……。

 

「あ、すいません!」

「え?」

 

 吹かそうとした俺に、園子さんは声をかけてくる。

 何か忘れ物でも……。そう思って振り向いた俺の首元を彼女は引っ張り……。

 

「初めてです。それじゃ、ありがとうございました」

 

 そう言って、門の向こうに姿を消していった。

 まったく、最近の中学生は……。

 

 唇に残る感触に苦笑をしながら、俺はアクセルを吹かした。

 ショッカーライダーの俺が祈っても神は応えないだろうが、それでも彼女の未来に幸が多い事を願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 その少年は、先日まで普通の少年であった。

 だが、その日の晩、彼の運命は変わる。

 

 彼が約束の時間に遅れたため、彼を育ててくれた人は怪物の牙の前にその命を散らすことになる。

 

 叔父が怪物に貪り食われる様を、彼は見ている事しかできなかった。

 

 彼はそのことを警察に訴える。

 だが、警察は子供のたわ言として処理をして、事件は闇に葬られる。

 

 叔父の死はよくある事件の一つとして風化するだろう。そして怪物は町の闇に潜み続ける。

 彼はその事実が恐ろしくて、何もできない自分が惨めで、それでも真実を知る自分が何とかしないといけないと考えていた。

 そんな時だった。

 

「き、君は……」

 

 少年の目の前に現れたのは、小さな機械。

 鋼の蜘蛛。

 求める資格は、全てを投げうってでも弱き者の為に戦う勇気。

 

「君を使えっていうのか?」

 

 そして、少年は機械の蜘蛛を手にする。

 

 異国の地で新たなる仮面ライダーが巨大な悪と戦う事になるが、それはまた別の話……。




エンディングはget wildのイメージで……。


なお……。


主人公
 この後、ミカさんに折檻を受ける。


祖父があえて言わなかった真実
〇 二人は恋に落ちた
◎ 人外ゆえに距離を取ろうとする三郎太(擬態)を光江が喰った

肉食系は母の血。


サイクロンヘル
 ミカに対する報告を怠る。
 映像が見たかったら課金をするように迫った(即課金)
 ただし最後のシーンは非公開


謎の少年?
 たぶん出番は無い。
 というか、なんとなく思いついたネタ。
 地獄からの使者!(てれってっててー♪)

次回任務

  • ライダー抹殺指令
  • 敵対組織の計画阻止
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