ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第17話 episode・000 閑話・ほんとうの怪物

「いいのか、父さん……」

 

 出かけていく姪の姿を見ながら確認する長男に対して、東雲は大した様子もなくこう答える。

 

「別に構わんさ。これで消されるようなら、園子の居場所はこの世界に無い。ならばせめて心を許した相手の手に掛かるのも悪くはないだろう」

 

 相変わらず冷静に狂っている。

 目の中に入れても痛くないとばかりに可愛がっている孫娘であるのにもかかわらず、平然と突き放す。

 末の弟の存在も、母の心の病も、こいつは利用しつくした。

 それがどういう理由でどんな効果をもたらしたか分かっていても、長男は父親が怪物に思えてならない。それこそ、ネイティブなどよりもよほど父の存在が恐ろしい。

 

「あの子もかわいそうに……」

 

 三郎太となったネイティブに対して思うところが無いわけではないが、それ以上に同情の意識が大きい。

 彼も情の心をこの男に利用されつくした者の一人だ。そして自分も、知らなくて良い世界の闇を無理やり教えられ、この男の後継者としてもう逃げる事が出来ない。

 長男は同じ男の被害者として、三郎太にある種のシンパシーを感じていた。

 

「園子はただデートに行くだけさ」

「それは……そうですが」

 

 痛まし気に園子の姿を追う息子をまだまだ未熟だと感じ、当分は自分が現役だと考える。

 

「まぁ、悪い結果にはならないと思うがな。あのショッカーの使者はだいぶ甘いようだ」

 

 ライダー殺しの異名を持つショッカーの処刑人も、素の顔はずいぶん甘い。

 舐めてかかれる相手ではないだろうが、慈悲の心を期待できない相手ではない。

 

 

 

 先日園子に語った三郎太に擬態していたネイティブの話。あれは中学生の少女を傷つけずに聞かせるため、だいぶ甘く優しく脚色したものだ。

 実のところ病弱な息子を若いネイティブに引き合わせたのも、発狂した妻を慰めるために擬態化を許したのも、すべては東雲にとって計算の内である。

 

 すべてはネイティブたちの懐に入り込み、油断を誘うため。

 

 東雲の思惑通り血を分けた息子の死すら無かった事にし擬態化したネイティブを受け入れた東雲は他の人間からの不信感……いや、嫌悪を買い、ZECT創設メンバー内でも孤立した。

 親友だった後藤田ですら彼とは距離を取るようになり、主要な決め事からは外されることになる。

 そのような状態だ。言われるままに仕事をこなすだけであり家庭をネイティブに依存している東雲はZECTでも存在感が無くなり、やがてネイティブたちの監視の目も御座なりになる。

 監視が離れたのを良い事に、総帥である加賀美の手足となり打倒ネイティブの行動を東雲は進める。

 

 そう、家族の病すら利用する男の真意を知っていたのは、GOD機関の構成員だった東雲をZECTに引き込んだ加賀美一人だけだった。

 

 

 息子を下がらせると、東雲は部屋の電話を手に取る。

 特注の盗聴対策が施されたそれは、すぐに相手先につながる。

 

「すまないな、ヘンリー。手間を取らせた」

「はははは、これで貸しは2だ、東雲」

 

 連絡を取ったのは、現在GOD機関を率いている旧友のヘンリーだ。

 アナリストとしての表の顔を持つ旧友は、いつものように陽気に、それでいて有無を言わせぬ言葉で語りかけてきた。

 それに対し東雲は、若干ばつが悪そうに返す。

 

「まさか後藤田が園子を狙うとは思わなかったよ」

「だいぶ人外に煮え湯を飲まされていたみたいだからな。表の世界の連中はこれだから困る」

「それを言ってやるなよ」

 

 若い頃より闇の世界に染まっていた東雲からしてみれば、人間だろうと人外だろうと敵対しているかどうか、それだけだ。悪辣な侵略者などごまんといる以上、敵対する意識が無い連中を刺激する必要性などない。

 ましてネイティブは生き残りが少数かつ人類と混じっても勝つのは人類だという事が、ネイティブとのハーフである園子という貴重なサンプルを調べつくした結果判明している。どう考えても、追い立てるリスクが許容するよりも高すぎだ。

 東雲からしてみれば、後藤田の行為はたとえ親友といえども愚かとしか言いようが無かった。

 

「ところでどうだい、俺の推しのライダーは」

「また妙な日本語を覚えたな……。腕は立つようだが、少々甘くはないか?」

 

 噂を聞いた時はもっと冷酷な男を連想したのだが、ずいぶんと甘い事だと思ったものだ。

 

「わかってねえな、そこが良いんだよ。こっち側のくせに善人ぶりたがる……。たぶん転生者だろうが、試練を与えりゃ勝手にもがき苦しむんだ。ありゃ大首領も気にいるぜ」

「お前や大首領に気に入られるのか、彼は苦労するよ」

 

 精神的サディズムの嗜好を持たない東雲には理解しがたい感情だ。恩人がこれからも苦労するだろう事実に、流石の東雲も同情をする。

 その後も今後の事をいくつか話し、東雲はヘンリーとの連絡を終えた。

 

 

 その日のすべての予定を終える頃には、すでに日が傾くころだ。

 気力こそあるが肉体はすでに老齢だ。東雲は背もたれに体重を預けると半ば口癖となった言葉をつぶやく。

 

「私は死んだら地獄行きだな」

 

 家族の情すらも道具として使いつぶす自分は、まともな死に方は出来ないだろう。

 もっとも……。

 

「地獄とてこの世界よりはマシだろうがな」

 

 薄氷の上に成り立つ人類の繁栄。いつ何時滅んでもおかしくない、人類はそんなか弱い存在だ。

 それを知る老人はそれでも足掻く事を止める気はなかった。

 




短いですが、追加のおまけ。
文章力不足&園子視点なので……という事で書けなかった東雲視点の話。

次回任務

  • ライダー抹殺指令
  • 敵対組織の計画阻止
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