ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第18話 episode・FOURZE 令和の世で悪の秘密結社活動をやるのはどう考えても難しい

アメリカ国際宇宙開発研究所

 

 

 緊急の報告を受けた沖一也が到着した時は、すでに一面が火の海だった。

 基地深くまで侵入したアリコマンドが重火器を容赦なく撃ち続け、あたり一帯を見境なく破壊していく。

 警備の兵士たちも物陰から応戦するものの、持ち込まれた火器の火力もさることながら、兵士の能力の差が大きい。

 

「なんて事を……ネオショッカーの仕業か!」

 

 仮面ライダーに簡単に蹴散らされる事の多い戦闘員だが、彼らも簡易とはいえ改造人間だ。

 その全身黒タイツの下には、常人の数倍を誇る筋力があり、触角を模した突起がある頭部は些細な変化も見逃さない感覚器が備わっている。

 大人の男でも持ち上げる事が不可能な重量の火器を容易く持ち上げ、数倍の反射速度で物陰から姿を見せる兵士を撃ち抜いていく。さらには、恐怖心がマヒをしている彼らは自らの身が傷つく事を恐れず前進してくる。

 たとえ銃器で武装していても、並の人間では敵う相手ではないのだ。

 

「ヒャイーッ!」

 

 一也の侵入に気が付いたアリコマンドが銃器の引き金を引く。

 弾幕が地面を抉り、土埃をたてる。

 

「トゥッ!」

 

 だが、一也はその並でない人間の一人だ。

 彼は銃弾の雨を跳躍で避けるとアリコマンドたちとの距離を詰める。

 

「フアッ!?」

 

 跳躍とは思えない一瞬の移動にアリコマンドたちも一也の居場所を見失う。

 

「とりゃっ!」

 

 そのまま彼らに振り向く暇も与えず、アリコマンドたちを殴り飛ばす。

 赤心少林拳の達人である一也の拳は文字通り岩をも砕く。その威力の前にアリコマンドたちは抗う事も出来ず意識を刈り取られる。

 だが、一也が一息をつく暇もなく、他で破壊活動を行っていたアリコマンドたちがこちらに振り向く。

 先ほど以上の多勢に無勢。だが、一也は慌てる事などない。この程度の窮地、何度も潜り抜けている。

 

「行くぞ!」

 

 一也は腕を振り上げるとゆっくり降ろしながら腕を交差させる。

 

「変身!」

 

 そして、赤心少林拳の構えを経由し、手首を合わせ花を思わせる掌の構えを回転させる。

 彼の中でスイッチが起動する。

 一也の身体が瞬時に代わる。銀の腕、銀の胸、銀の足、銀の頭……。そして赤い複眼。

 もはや彼は一也ではない。彼は惑星開発用に開発された改造人間……その名も、仮面ライダースーパー1。

 

「トゥッ!」

 

 変身前でも常人をはるかに上回る膂力と鋭さを持つ拳を持つ男だ。

 スーパー1の姿となった彼をアリコマンドごときで止められる筈もない。重火器を乱射するものの、その全ては躱され、数名のアリコマンドが一瞬で吹き飛び動かなくなる。

 だが、それでもアリコマンドたちの動きは止まらない。いや、止まるような意志自体が薄いのだ。

 

「倒さないと……進めないか」

 

 むしろ攻撃が集中するのは好都合、研究所の人間が逃げる隙を作れる。

 だが、彼の考えを否定する声が炎の中から響く。

 

「おいおい、お前らはこいつの相手をする必要は無いよ」

 

 出現したのは、奇妙な出で立ちの……、おそらくは少女だ。

 不思議な素材でできた赤い水着を思わせる服に、関節部を覆う正体不明の金属で出来た鎧。同じく炎のように赤いフード付きのマントを羽織っている為に顔は分からないが、フードの端から黄金色の髪が零れ落ちている。

 少女を最も特徴づけているのは、その手に持った巨大な漆黒の戦斧だ。大人の身長よりも大きく……2mはあるだろうか。

 

 戦斧を持った深紅の少女は炎の中から歩み出るとアリコマンドたちに命令を下す。

 

「お前らはさっさとザリガジンと一緒に目的のブツを探すんだよ。こいつ……スーパー1の相手はあたしがするよ!」

 

 そう言うと少女は先ほどの一也の跳躍に勝るとも劣らぬ恐るべき速度で踏み込むと、巨大な戦斧を軽々と振るう。

 

「お前は何者だ! なぜこんなことをした!?」

 

 少女の見た目に、流石のスーパー1も制止の叫びを上げる。

 だが、少女はフードから辛うじて見える口をにんまりと吊り上げると、斧を振るいながらこう返す。

 

「教えるわきゃないだろう、スーパー1! 恨みどころかあんたには感謝しているぐらいなんだ。無抵抗でいてくれるなら、一発で楽に殺してあげるよ!」

 

 あまりにも重く、鋭い斬撃。

 歴戦の戦士はその銀の腕で斧の軌道を反らし、身を守る。

 とはいえ、少女の攻撃は嵐のごとく激しい。さすがのスーパー1も後退を余儀なくされる。

 

「このパワーは……。チェーンジ……パワーハンド!」

 

 常人はおろか最上級の怪人とも渡り合えるだろうその膂力だ。このままではまずい。

 スーパー1は叫びながら腰のボタンを押す。次の瞬間、彼の腕が機械のガントレットを装備した赤い姿に変わる。

 

「噂のファイブハンドか!」

 

 再び少女の戦斧が振るわれる。スーパー1の拳が戦斧を迎撃する。だが、スーパー1のパワーハンドは500tもの超パワーを秘める。

 少女の斧と赤き腕が衝突し……。激しい爆音を響かせながら後退したのは攻撃をしたはずの少女だった。

 

「あはっ。流石は音に聞こえたスーパー1だ。やるねぇ!」

「これ以上やるなら……容赦はしない!」

 

 見た目や細かい仕草こそ完全に年端もいかない少女だが、その力は人間のそれではない。

 スーパー1の必殺の宣言。だが、その宣言がなされる前に事態が動く。

 

「いや、残念だけどもう終わりみたいだ」

 

 彼女の言葉に反応したわけではないだろうが、建物の奥深くから複数の閃光弾が打ち上げられる。

 撤収の合図だ。

 

「目的の物は手に入ったみたいだからね。お暇させてもらうわ」

「逃がすと思うか!」

「逃げるのさ!」

 

 その叫びと共に、少女は掌から突如火球を放つ。

 不意打ちにもかかわらず、スーパー1はその攻撃をあっさりと避ける。

 だが……。

 

「逃げたか……」

 

 テレポーテーションか、それに類する能力があったのだろう。

 爆炎が晴れた後には、少女の姿はどこにもなかった。

 

 あの恐るべき戦闘能力を持っていた少女の行方は気になる。だが、連中が撤退したとしたのなら……まずは救助を優先しなければならない。

 日本より借り受けていた人造コズミックエナジークリスタルが奪われている事が判明するのは、数時間後の事であった。

 

 

 

※※※※※

 

 

「これ以上はやらせんぞ! 俺の名前はサンマジン! ぎょえー!」

 

 ネオショッカー基地の大半を叩き潰し、最後に立ちふさがったのは魚の頭部をもつネオショッカー怪人であった。

 サンマジンは腰の刀を抜くと、蜻蛉の構えで突っ込んでくる。

 振り下ろす太刀は鋭く、速い……。だが。

 

「ぎょっ!?」

「ネオショッカー怪人とやらも……大した事は無いな」

 

 それはあくまでも人間目線だ。

 刀を白羽取りで止めると、そのまま力任せに取り上げて、無防備な顔面にパンチを叩きこむ。

 一発、二発……そして力を込めた三発目。奴の身体は大きく吹き飛び、後ろの機械を巻き込み止まる。

 

「とどめだ……、ライダー……キック!」

 

 とどめに放つのはエネルギーを込めた必殺の蹴り。俺のキックは肉体に致命的な破壊を生じさせ、奴の機能を狂わせる。

 常時高熱を放つネオショッカー怪人は、その衝撃に耐えきれず大爆発を起こしこの世から消滅した。

 

「ここも外れか……」

 

 俺は小さくつぶやく。

 すでに探索は終えている。ここに目当ての品が無い事はわかっている。

 あとは……。

 

 俺は研究施設に併設されてるサディスティックに恐怖心を煽るためだけに作られた謎の牢屋に向き直ると、そちらに近寄る。

 今の戦いを見ていたのだろう、中で捕らわれていた連中が小さく悲鳴を上げた。

 

 まぁ、俺の戦い方は正義の味方じゃないので無理もない。

 

 とはいえ、やることは変わらない。牢屋の入り口をつかむと、力任せに引っ張り鍵や蝶番を破壊する。

 

「あ、あんた……助けてくれるのか」

「物のついでだ。地上までは案内しよう。電波は届く、地上に出た後は自分たちで警察でも呼べ」

 

 そう言うと、比較的元気が残っていそうな男性に拾っておいたスマートフォンを投げてよこす。

 誰のかはわからないが、そこまで気にしてやる義理は無い。

 

 結局、一人だけ衰弱が激しく歩けないようなので、俺が抱えて行く羽目になったが、それはともかく洞窟の入り口に捕らわれていた連中を放置して俺は一人山道を進む。

 森を抜けたあたりで、山の麓に広がる町が見えてくる。

 そこに広がっていたのは見慣れたいつもの街ではない。駅前に見えるライトアップされたタワー、町のいたるところに存在しているのはライトアップされた寺社仏閣。

 

 日本が誇る千年都市、古都京都である。

 

 

 俺がこんなところでネオショッカーの連中を潰して回っているのは、数日前にアメリカで起きた事件が原因だ。

 米国の研究機関より人造コズミックエナジークリスタルなる名前を聞くだけでやばそうな代物が、ネオショッカーという頭の螺子がまとめて消し飛んだ連中に奪われたという。

 当初は完全に他人事と聞き流していた俺たちだったが、そうもいかない状況となった。

 

 大首領から直々に人造コズミックエナジークリスタルの奪取をショッカーに命じられたのだ。

 

 泣いて良い?

 

 ネオショッカーはうちらの系列みたいな顔をしているが、実は全くの別組織。

 連中の正体はB26暗黒星雲から来た侵略者の先兵にて人類抹殺を企む悪の秘密結社である。

 当然だがうちとは完全に敵対関係。

 

 そんな連中にやばい物を持たせておく訳にはいかないのは仕方ないが、直々の命令なもんだから失敗は許されない。

 そんなわけで、残党ショッカーの最高戦力たる俺が、クリスタルが運び込まれた京都近辺にあるネオショッカーの拠点を虱潰しに叩き潰しているわけである。

 

 

 変身を解き鉄道を乗り継ぎセーフティハウスへ向かう。

 普段の移動はバイクなのだが、サイクロンヘルは現在は別行動だ。便利なものに慣れ過ぎたのか、おかげで面倒で仕方がない。

 だいぶ時間も遅いので、車内には寝ている酔っ払いも多い。俺は何をするともなしに車内に備え付けられた液晶モニターを見ると、先日アメリカで起きた国際宇宙開発研究所に対するテロ事件が盛んに報じられている。

 

 突然の大規模襲撃を受けた研究所は、壊滅的な被害を被った。

 日本でも有名な所長の沖一也博士は学会に参加するために研究所を離れていたらしく難を逃れたが、警備の兵士を中心に相当数の犠牲者が出たらしい。

 現在アメリカ当局はテロ犯の特定を急いでいるとの事だ。

 

 これが表向きの発表である。

 

 すでにネオショッカーの仕業だってのは当然米国もつかんでおり、第二第三の事件を警戒して警備を固めているらしい。当然だが沖一也も防衛の一環として米国に留まっている。

 これは俺にとって幸いな事だ。

 奪われたクリスタルを奪還するためにスーパー1が来日するなんて事態になったら、ネオショッカーとショッカーとスーパー1の三つ巴の戦いになりかねない。

 

 流石にスーパー1と争うのは勘弁してほしい。頼みのスペックですら完全に負けているんだよなぁ……。

 

 それはさておき、何時しか電車はセーフティーハウスの最寄りの駅に到着する。

 観光都市だ。中心部の繁華街は夜にもかかわらず賑わっているだろうが、その賑わいを避けるように裏路地に入っていく。観光に来たわけじゃないし、何より……補導が怖い。

 

 俺の見た目はどう見てもごく平凡なモブ臭の漂う高校生だ。黒髪黒目中背で特徴のない顔、卒業したら顔も思い出されないようなモブ、それが変身前の俺だ。

 ついでに言えば、今の服装はごく普通のズボンにシャツという私服。

 こんなのが京都の夜の繁華街をうろついていたら、補導員が誘蛾灯に誘われる虫のごとくやってくるに決まっている。

 

 そんな訳で裏路地を歩いていると、不意に路地から何かが飛び出してくる。

 

「うわっ!」

「きゃあっ!」

 

 っと驚くが、別に転んだりはしない。別に鋼の身体ってわけじゃないが、改造人間ゆえに体幹に優れているのだ。

 一方、そんな改造人間にぶつかった相手はぶつかった反動をもろに受けてしりもちをついた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

 転んだのは、俺と同じくらいの年齢の女性……地元の高校生かな? まだ肌寒いのでジャケットの下に、薄手のセーターとスカート、そしてショートカットの髪型。

 なんか気が強そうな感じの女性の顔には怯えの表情が浮かんでおり……怖がらせるようなことをした覚えは無いんだが。

 

「た、助けて!?」

「えっ? いや、何もしないよ、ぶつかったぐらいで」

 

 いや、いきなりそんなことを言われても正直困る。

 俺のモブフェイスのどこにそんなぶつかっただけで因縁をつけるような悪党要素があるというのだ。いや、正体は人間の悪党が裸足で逃げ出すレベルの悪党だけど。

 普段はほんと大人しいよ、俺。

 

「そうじゃないの! 先生が!」

 

 先生?

 その言葉を俺が咀嚼するより早く、彼女は立ち上がると俺の腕をむんずと掴み飛び出してきた路地の方向に引っ張っていく。

 って、意外と力が強い。よく見たらスカートの下の足も筋肉がついているようだし、何か体育会系なのか!?

 

「こ、こっちに! はやく!」

 

 いや、何があったのか知らないけど、同じ年と思われる相手を引っ張っても……。もう完全に気が動転しているな、この子。

 感じからしてみて、その先生とやらの身に何か危機が迫っているのだろう。

 

 帰宅前のボランティア活動でもするか。

 

 後になってこの時の自分を殴りたくなるような、もしくは運が良かったと思うべきか、そういった判断を俺は下すと彼女の導くまま路地裏に駆け込む。

 路地を進むと少し開けた場所にたどり着く。

 

「げっ」

 

 街灯が無いのでよくは見えないが、なるほど一人の男が襲われている。

 問題は、襲っているのが額から触角を生やした黒タイツの男たちだって事だ。

 

「アリコマンドじゃねえか……。怪人もいる」

 

 月明りを頼りによく見てみると、アリコマンドたちの背後には三叉の槍を持ったエイに手足を付けたような怪人が控えていた。

 ほんとゴキブリのごとく湧いて出てくるな、あいつら……。まぁ、ショッカーも似たようなものだが。

 

「くわっはっは、散々てこずらせてくれおって……この場で始末してくれる!」

 

 あ、よく見たら足元にアリコマンドが数人転がってら。

 やるな、あの先生……じゃなくて!

 俺は小声で隣にいる女に作戦を手短に説明する。

 

「おい、あんた、名前は?」

「え?」

「あ、いや、あとでいいや。あんた、俺が飛び出したら後から飛び出して、先生をこっちの路地裏に引き込んで逃げろ」

「え、何を言って!?」

 

 気が動転して見ず知らずの人を連れてきた、その事実に気が付いたのか彼女は焦るが、そんなのを気にしている時間はない。

 俺はにやりと笑うと、彼女の言葉を無視してこう言い放つ。

 

「あんた、幸運だよ。後は俺に任せな、何とかしてやる」

 

 そこまで言うと、俺は路地から飛び出し、注意を引くために叫びを上げる。

 いわゆる、仮面ライダーたちの真似事だ。

 

「まていっ!」

 

 あっ、テンション上がるな、これ。

 上から叫ぶ仮面ライダーたちの気持ちがちょっとわかったわ。

 

「な、なんだ!」

 

 叫び声に驚き、こちらを振り向くエイの怪人。

 背後から誰かが飛び出す気配。よし、大丈夫だな。

 さてと……。

 

「変身……」

 

 腕を振り上げ、宙に大きく弧を描く。

 それと同時に、腰にベルトが出現し中央の風車が激しく回る。

 肉体に流れるナノマシンが肉体を強化する。身体の各所に埋め込まれた補助装置が神経を鋭くする。

 身を守る黒い強化戦闘服が肉体を覆い、頭部に赤い複眼のヘルメットが装着される。

 そして最後に、赤いマフラーが風に翻る。

 

「ま、まさか、仮面ライダー!?」

 

 節穴が……。

 だが、これから死ぬ奴の誤解を解いてやる気もない。

 こいつらと遭遇したのは偶然だが、ここでネオショッカーの戦力は削らせてもらう。

 

「か、かかれ!」

「ヒャイーッ!」 

 

 エイ怪人の命令でアリコマンドどもがこちらに襲い掛かってくる。

 だが、その動きはあまりにも鈍い。

 

 先陣を切るアリコマンドの頭部を拳で砕き、横から襲い掛かってきたものの胴を蹴り砕く。

 さらに遅れてきた者たちも、軽く叩きのめす。

 

「残ったのは貴様だけだ……。覚悟しろ」

「おのれ、仮面ライダーめ! このドクエイジンを雑兵と一緒にするな!」

「後方で見ていただけの奴が何を……おっと」

 

 何やら下らぬ見栄を見せるドクエイジンとやらを鼻で笑っていると、唐突に手に持った槍を繰り出してくる。

 確かに鋭い突きだが、俺を捉えるには遅すぎる。

 悠々と避ける俺に、ドクエイジンは立て続けに槍を繰り出し……。

 

「もらったぁ!」

 

 不意に槍とは違う何かの鋭い突きが、奴の背後から繰り出される。

 俺はそれをぎりぎりで回避するものの、マフラーの先が掠る。今のは……エイの尾か?

 

「くっくっく、我が必殺の猛毒二槍流、いつまでも躱せると思うな!」

 

 先ほどの尾の先からは毒が出ているらしく、確かにマフラーの先が少々変色している。

 まぁ、大したものではなさそうだ。ナノマシンによる毒の分解とマフラーの再生を命じながら、俺は呆れ声を上げる。

 

「弱い犬ほどよく吠えるとは言ったものだ。マフラーの先をかすめた程度で嬉しそうだな」

「貴様こそ大口を!」

 

 ドクエイジンは再び槍を繰り出す。先ほどよりその速度は速く、鋭い。

 なるほど、先ほどまでの速度は目を慣れさせるための囮。本命の尾の毒を効果的に使うための演技か。

 そして、今度は素早い槍に注意を引き、尾からの注意を逸らす腹積もりか。

 

 一気に決めても良いのだが、少々付き合うか‥…。

 

 槍の攻撃を捌き続ける俺に、今度は足元を這うように尾の一撃が放たれる。

 

 だが……。

 

「実力が伯仲しているならまだしも、この程度の児戯、ネタが知れれば躱すまでもない」

 

 右手で奴の槍を、左手で奴の尾を掴み取る。

 

「ば、馬鹿な!」

「馬鹿は貴様だ、どうれ」

 

 掴んだ槍をへし折り、尾を力任せに引きちぎる。

 

「ぎゃああああ!」

「煩いな……返すぞ」

 

 引きちぎった尾を、奴に向けて投げつける。

 鋭い尾の先は奴の胴体を容易に貫いた。

 腹を貫かれ声も無くよろめくドクエイジンに、とどめの一撃を放つ。

 

「とどめだ。ライダー……パンチ!」

 

 赤いエネルギーを込めた拳はドクエイジンの頭部を容赦なく砕く。

 そのままドクエイジンは悲鳴も上げずに倒れると、次の瞬間爆発を起こしこの世から消え去った。

 

 ふう……。

 

「あんた、仮面ライダー……だったの」

 

 やれやれ、逃げろと言ったはずなのだが……。不用意に出てくる少女に、俺は呆れながら振り返る。

 少女と共に出てきた男が先生か。

 

 珍しいな、リーゼントヘアの教師とは……。グレーのスーツも何やら裾を改造しており妙に短い。

 同色のズボンは普通だが、金のベルトが少々目立つ。

 そして胸にかけているのはドッグタグ……よくこんな格好で教師が出来るな。よほど自由な学校なのだろう……って、おい、まてや!

 

「助かったぜ、仮面ライダー!」

 

 多少殴られたのか唇を切ってはいるがまだまだ元気そうにビシッと腕を突き出す笑顔の男こそ、私立天ノ川学園高等学校にて教鞭を握る如月弦太朗さん。

 つまり、元仮面ライダーフォーゼその人である。

 

 なんだって、この人が京都にいるんだよ!?

 

 かくして、今回の事件は俺にとって予想外の展開を見せる事になる。

 




新章突入……キター!

というわけで、前章では色々とおしかりも受けましたが、今後ともよろしくお願いします。
文章力が欲しいと思う、今日この頃……
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