ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第2話 episode・W 朝起きたら一緒の布団というハプニングは基本

 意識の覚醒を促したのは、瞼の向こうからもはっきりとわかる強い光であった。

 あれ……、確か授業が終わり、部活も無くて……、ちょっと本屋に寄ろうかなんて考えていて……。なんで寝ているんだ、俺……

 

 身じろごうと腕を軽く動かそうとするが、手首が何かに固定されていて動かない……

 って、まて。なんで動かない? というか縛られて……、いや、この感触は金属?

 

「あら、気がついたみたいね」

 

 聞き慣れない女の声で意識がさらに覚醒する。慌てて目を開ける。

 手足を動かそうとするものの、四肢は金属の枷で固定され身動きが取れない。服を脱がされているらしく、ひんやりとした外気が肌を舐め上げる……。

 ってか、パンツまで脱がされている? 下半身はタオルか何かで隠されているだけっぽい?

 

「気分はどうかしら、……アインロールド?」

 

 羞恥に耐えながら、かろうじて動く頭を声の元に向ける。

 そこにいたのは、黄金の髪の女であった。美人であろう。腰まである癖のない艶やかな髪、整った鼻梁。スラリと伸びた手足……。

 ごく普通に市販されている白衣。その下のブラウスとスカートというともすれば俗で野暮ったい出立ちであっても、彼女の美しさを損なう事はできなかった。

 俺はこの時、深く青い神秘的な瞳に目を奪われた。

 

 これが、俺とミカ・ウェストの出会いだった。

 

 彼女がその唇を動かす。そしてその踵が俺の顎にヒットし……

 

「ふごっ!」

 

 今度こそ、俺の意識は真に覚醒する。

 

 

 自宅自室のベッドの上、当然だが両手両足は拘束などされておらず、格好もちゃんとパジャマのままだ。

 んでもって、顎への衝撃は……いつの間にか人のベッドに潜り込んでいたパッキンメスガキの仕業だ。もう手足をだらしなく大の字に広げ、パジャマの裾がめくれおへそ丸出し。さらには夢心地なニヤケ面でグースカ寝ている。あー、涎まで垂らしているわ……。

 この人のベッドを占領した悪逆非道のお子様こそ、かつて神秘的な科学者だったミカ・ウェストの成れの果てである。

 

 このお子様、どうしてくれよう……。

 報復手段を考えながら、チラリと壁の時計を見るとそろそろ起きる時間であった。今日の朝食当番は俺だ、あまり時間をかけるわけにはいかないな。

 取り敢えず布団を畳むついでに簀巻きの刑としておくか……。

 

 

「もう、お兄ちゃんは乙女をなんだと思っているのよ」

「乙女を名乗るなら人の布団に入ってくるな」

 

 俺の準備したトーストを齧りながら、ミカはプリプリと怒っているフリをしている。もっとも、本当に怒っているわけじゃないだろう。簀巻きにされながら「きゃー、襲われるー」なんて楽しそうだったし。

 まったく、この悪の科学者様は何を考えているのかさっぱり分からない。

 

「男の人は喜ぶってリスナーが言っていたよ!」

「子供に乗られても重いだけ……って、蹴っ飛ばすな、行儀が悪いぞ」

 

 子供扱いされてむくれている姿は、どう見ても年頃の女子中学生にしか見えない。  

 いや、実際に髪をツインテールにまとめ市立中学の制服を着た彼女は、ハーフということを除けばどこからどう見ても普通の女の子だ。

 

「サイクロンヘル、洗い物はお願いね」

 

 いつの間にか朝食を食べ終わったミカは、食器を水に漬けながらキッチンの外に呼びかける。しばらくして、ふよふよとマジックハンドを生やしたみかん箱がやってきた。

 俺の専用バイクであるサイクロンヘル。仮面ライダー1号の乗るサイクロンの強化発展系として開発されたそれは、サポートAIといくつかのオプションが搭載されている。

 この作業用ドローンもその一つなのだが……、咎める人がいないとはいえショッカーの超技術の産物に皿洗いをさせているのはどうかとは思う。

 

 ちなみに、今この家の住民は俺とミカ、そしてサイクロンヘルの二人と一台だ。

 高校生の一人暮らしに女の子が転がり込むなんてエロゲのようだが、転がり込んできたのが悪の科学者なのだから笑えない。

 

 何より笑えないのは少女がショッカーの科学者と知っているのにもかかわらず、こうやって一緒に生活をしているのが楽しいと感じてしまう俺自身の心だった

 

 だけど……

 

 朝食を終え登校前に端末を確認していたミカが、何やら突然百面相を開始する。何を顔芸をやっているんだと思ってみていたが、やがてため息を一つついて俺に話しかけてきた。

 

「お兄ちゃん、夕方ちょっとお使いお願いできないかな……。ハチ子さんじゃ厳しそうだから」

「お使い?」

「そそ。八伊木製薬」

 

 どれだけ楽しそうに見えても、俺たちはショッカーでしかない。

 

 

 

 強化ブーツの硬質な足音が郊外の廃工場に響く。

 

 既にショッカーライダー・アインロールドに変身をしている。

 俺の正体がまだ高校生というのもあるが、これから少々荒事が起こる可能性もあったからだ。

 

 ウェスト博士より命じられたのは、傘下企業からの徴収。

 

 

 我らショッカーが傘下とする企業は多く、その役割も様々だ。

 今回問題となった八伊木製薬もそんな傘下企業の一つ。戦後弱小製薬会社であった八伊木製薬であったが、ショッカーからの技術供与により世界的な製薬会社にまで成長を遂げる。

 

 ショッカーが彼らに求めたのは一部薬品の治験と実験体の確保。逆に禁じたのはショッカーが提供する技術以外の危険な闇の技術。

 

 如何に強大な力を持ち社会の各所に根を張っているショッカーと言えども、ことあるごとに誘拐などしていては効率が悪い。研究用に表の企業を使う事もあった。

 また、そのような企業に目立つ真似をされるのも面倒なため問題となりそうな品の所持は禁じていた。

 

 

 俺が指定した廃工場に到着した時には、企業側の人間はすでに到着していた。

 企業側の担当だろう特殊保管用のアタッシュケースを持つ比較的若い男……交渉人と、黒服のボディーガードが2名。更には……どうやら少し離れたところに人を忍ばせている。廃工場の中だけでなく外にもいるようだ。

 

「アインロールド……」

 

 交渉人が俺の名を口にする。俺の赤い双眸に見据えられ、黒服の男たちに緊張が走る。片方の男が懐に忍ばせた物に手を伸ばそうとするが、流石に同僚たちが止めていた。 

 呼び捨ては許すにしても、まったく度し難い。

 人を集めれば何とかなるかと思ったか? 妙な野心など見せず粛々とショッカーの命令を聞いておけばいいものを……。

 

 俺は工場の外に待機させておいたサイクロンヘルにジャミングを命じる。

 これで外部への通報や録音は不可能となった。

 

 ん? ジャミングを開始した途端、待機していた人間が動き出したな……。まぁ、どうでも良い。

 

 さてと……。

 

「貴様らが確保したネビュラガスおよびアマゾン細胞を全て引き渡してもらおう」

 

 前置きなど不要。この危険物二点の回収。それが今回の俺の任務だった。

 

 ネビュラガス。宇宙由来とも言われる正体不明のガス。投与された人間を怪物に変える。

 アマゾン細胞。野座間製薬が研究していた、人食いの怪物を生み出す細胞。

 

 ネビュラガスに関してはスカイウォールの無いこの世界になぜ存在するか疑問に思わないでもないが、今考える必要のある問題ではない。

 重要なのはどちらも極めて危険な物質であり、ショッカーが八伊木製薬に所持を禁じていた物質だ。

 

 命令を無視し、このような物質を収集するならば早々に反逆者として始末してしまえばいいものを、ウェスト博士は物品の回収と破棄、入手ルートの提出のみで許す気らしい。

 粛清をする手間すら惜しい。それが理由なのだが、彼女自身も素直に聞くとは思ってはいなかったのだろう。ゆえに、この場に俺を派遣したわけだ。

 

 その予想を違える事なく、憎々しげにこちらを睨んでいた重役が俺の言葉に嘲りの笑みを浮かべた。

 

「ははっはっ、いつまでも支配者気取りか!」

 

 目に見えて怯えながらも、重役は声を荒げる。

 

「どういう意味だ?」

「我々が知らないと思っていたのか! 貴様らショッカーが……すでに壊滅していることを!」

 

 その言葉に、俺の回答は一言であった。

 

「それがどうした?」

「なっ!?」

 

 ショッカーが壊滅している……事実だ。

 

 前世紀に一度ゲルショッカーに吸収され、さらにはデストロンやネオショッカーと変遷を経たショッカーではあるが、今世紀には今までの組織を統合、組織理念も当初に立ち戻った新生ショッカーとして再編されている。

 だが、そのショッカーも某国にあった本部が仮面ライダー1号と2号の強襲を受け壊滅をしている。ほか有力支部も同様に仮面ライダーの襲撃を受けた。

 我が支部も支部長以下怪人及び戦闘員が仮面ライダースーパー1に倒され、事実上の壊滅状態である。現在は他の支部との連絡も取れず暫定支部トップのウェスト博士の元、生き残りが独自に活動を行っている状態である。

 

「ショッカーは滅びん。人の世がある限り何度でも蘇る」

「な、なにを言っている……、そんな戯言……」

 

 別に戯言ではなく単純な事実なのだが、こいつらに説明をしてやる義理もない。

 

「我らショッカーの要求はただ一つ。貴様らが確保したネビュラガスおよびアマゾン細胞を全て引き渡してもらおう。引き渡すなら今まで通りの技術供与を。拒否するなら死をくれてやる」

「答えはどちらもNOだ! 貴様らに支配されるのも、もうここまでだ!」

 

 交渉人の拒否の言葉と共に、物陰に隠れていた黒服たちが飛び出してくる。

 その手には自動小銃が握られている。

 まったく、ここは日本のはずだが、どこからあのような物騒な代物を手に入れたのか……。少なくともショッカー経由ではない事だけは確かだ。

 

 一斉に銃口が火を噴く。恐怖を振り払うかのように、男たちはマガジンの弾を撃ち尽くすまで引き金を離さない。

 まぁ、それだけだ。

 

「で?」

 

 カチカチとむなしく引き金を引きなおす音だけが響く中、俺はつかみ取った銃弾を手の中で弄ぶ。

 

「とりあえず返すぞ」

 

 そのまま銃弾を指で適当にはじく。

 

「ぎゃあっ!」

「がふっ!」

 

 弾丸は次々と自動小銃を構えていた男たちに命中。男たちはその場に倒れ伏した。

 

「ば、馬鹿な……対怪人用の特殊弾頭だったんだぞ……」

「聞く事が増えたな……。どこでそのような物を手に入れた」

 

 海外ならいざ知らず、日本ではそのようなものを手に入れるのは容易ではない。

 そして本部や実働部隊が壊滅状態と言えども、ショッカーの持つ情報網はいまだ健在だ。傘下企業である八伊木製薬がネビュラガスやアマゾン細胞……、さらには火器などを手に入れるような動きやルートは存在しなかった。

 本当にごく最近、何者かによってもたらされた……と、考えるべきであろう。

 

「どこの組織が接触をしてきた。言えば楽に死なせてやろう」

「くっ……、ふ、ふざけるな! ま、まだだ! 我らにはまだこれがある!」

 

 その言葉を合図に、交渉人と傍に控えていた二人が懐に忍ばせていた物を取り出した。

 拳銃でも持っているのかと思っていたが、どうやら違うようだ。

 

「ガイアメモリか……」

 

 数日前にも見たUSBメモリにも似た危険なアイテムを、男たちは自身の身体に差し込む。

 

【COCKROACH】

【MAGMA】

 

 メモリから音声が響くと同時に男たちの姿が不気味に歪み、交渉人は獅子を思わせる炎の魔人に、護衛は直立した甲虫へと姿を変えた。

 本当に、次から次へと聞くことを増やしてくれるものだ。

 

「やれ!」

 

 交渉人の命令と同時に、二体のゴキブリドーパントの姿が消える。

 あのドーパントの特徴は、きわめて素早い動きだったか。つまり……。

 

「遅いな」

 

 無造作に放った回し蹴りが、1体目のゴキブリドーパントの頭を蹴り飛ばす。

 ゴキブリドーパントは一直線に吹き飛ぶと、放置してあったドラム缶に頭から突っ込みそのまま動かなくなった。

 

「なっ!?」

「ショッカーからの使者が、数打ちのドーパントに後れを取ると思ったか」

 

 組織そのものが大幅に弱体化していたとしても、ウェスト博士より最新最高の体を与えられた俺の力が衰えるわけではない。

 

「まだだ、まだ2対1だ!」

 

 ドーパントどもは慌てて飛びのくと、マグマドーパントが火炎を放つ。

 

 奴の狙いは俺ではなく、俺の上にあった構造物であった。

 さすがドーパントの放つ炎は強烈だ。廃工場のクレーンや天井を容易に破壊した。

 なるほど。ダメージにはならないが、この落下物は相応に動きを制限される。逆に、ゴキブリドーパントの素早さを、マグマドーパントの火炎攻撃を当てやすくするためか。

 

「浅はかな……。まぁ、良い。付き合おう……ブースト」

 

 瞬間、ベルトの風車がうなりを上げ、俺の動きが一段速くなる。

 銃を捨て回り込もうとしていたドーパントの真正面に先回りし拳を構える。

 

「使わなくとも見えていたが……。動きが単調すぎる」

 

 俺が同じ速度で動くと思っていなかったのか、ゴキブリドーパントはパンチをまともに受け吹き飛ぶ。

 だが、それで終わりではない、ギアをもう一段上げると、今度はドーパントの吹き飛んだ先に回り込み、もう一撃を加え飛ぶ方向を調整した。

 

「食らえ!」

 

 そんな高速戦闘をしている俺達と一テンポ遅れてマグマドーパントが火炎を放つ。

 だが、先ほどまで俺がいた場所から俺の姿は消えており、替わりに俺に殴り飛ばされた姿勢のゴキブリドーパントの姿がそこにあった。

 

「ぎゃああああああああああっ!」

 

 そして、爆音とともに廃工場に響き渡る悲鳴。

 

「さすがのゴキブリも、火炎は苦手のようだな」

「そ、そんな……」

 

 のたうち回るゴキブリドーパントを前に、マグマドーパントが呆然と呟く。

 荒事には慣れていないのだろう。知った事ではないが。

 

「さて、残ったのはお前ひとりだ……」

「ひっ、ひいっ!」

 

 俺の視線が自分に向いたことに気が付いたマグマドーパントが尻もちをつく。力の差が理解できたようだが、遅かったとしか言いようがない。

 

「素直に全てを吐け」

 

 一歩ずつ、奴に近づく。

 尻もちをついたまま後ずさる。もはや戦意など消失しているのだろう。

 さて、何から聞くべきか……。

 

 

「ちょっと、待ってもらおうか」

 

 

 不意に声が響く。

 先ほどの工場の外に潜んでいた奴か。俺の行ったジャミングで中の様子が分からなくなり突入したのか……。逃げておけば良いものを……。

 そう思い振り向いた瞬間、今度は俺が硬直した。

 

 そこにいたのは黒い服のまだ若い男だった。

 

 もっとも、そのあたりで倒れている製薬会社のボディガードではない。

 

 黒いスラックスに、同じ素材の黒いチョッキの組み合わせ。赤い若干派手なネクタイもなるほど若い男にはよく似合っていた。

 整った顔立ち。どこか甘さが滲んではいるが、同時に歴戦の凄みが潜んでいる。

 

 俺はこの男の名を知っていた。

 

「ずいぶんと派手にやったな……。一号……本郷さんじゃねえな、あんたいったい何者だ?」

 

 ごくりと唾を飲む。先ほどまで俺にあった余裕は最早無い。

 緊張のあまり声が出ない。

 

 ドーパントなんぞがいくら来ても負ける気はしないが、彼らは別格だ。

 

「だんまりかよ。まあいい、頼むぜフィリップ」

 

 そんな俺の感情なんてお構いなしに状況は進む。

 トレードマークなのだろう。彼は黒いソフト帽の位置をそれとなく直すと、この場にいない誰か……おそらくは風都の事務所にいるだろう相棒に声をかける。

 どんな返答が来たのかは俺にはわからないが、いつの間にか彼の腰には赤いベルトが装着されていた。

 

「変身!」

 

 何の前触れもなく、ベルトのスロットのうちの一つに緑色のガイアメモリが出現する。

 さらに、彼……左翔太郎は懐から取り出した黒いガイアメモリを取り出すと、空いていた側のスロットに突き刺し、押し込んだ。

 

【CYCLONE】

 

【JOKER】

 

 二つのメモリが読み込まれる。

 よどんだ廃工場の空気が、ショッカーライダーという巨悪により淀んでいた空気が、正義の風に吹き消される。

 

 風に乗って、金属質のパーツが左翔太郎の身を覆い変質させていく。

 

 そこにいたのは黒と緑の戦士……。人々の悲しみをぬぐう、風都の守り手。

 

 その名を……。

 

「か……、仮面ライダー……W」

 

 無意識のうちに、その戦士の名を口にする。

 俺のつぶやきが聞こえたのか、聞こえなかったのか。だが、Wの声だけは俺の耳にしっかりと届いていた。

 

「さあ、お前の罪を数えろ!」

 

 罪の数など、もはや数える事などできない。




 仮面ライダーで工場バトルは外せない。
 Wは変身前に1回メモリーの読み上げが入るんだけど、今回はテンポが悪くなるので無し。

 次回は翔ちゃんがこの町に来た理由。照井だったら警察の捜査で済んだのに!(おい
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