ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第28話 episode・Destron 仕事なんて忘れて、バカンスしただけで帰りたい(切実)

 青い空、白い雲、どこまでも広がるエメラルドグリーンの海。

 周囲には人っ子一人いない、完全なプライベートビーチだ。

 波が打ち付ける音と海風の音が実に心地よい。

 

 白い砂浜に設置したパラソルの下、アロハシャツ姿の俺はのんびりとチェアに体重を預け、横に置いておいたよく冷えたトロピカルジュースを口に含む。

 甘味とほんのりと感じる酸味が口の中に広がっていく。

 

 陸地側に目をやるとやたら豪華な別荘があり、ここからは見えないが使用人用の宿舎という名目の小さな集落もあるという贅沢っぷり。

 島全体が個人所有の別荘らしい。

 金ってあるところにはあるのだなと感心させられる。

 

 さて、そんな前世今世来世含めて二度と出来ないだろう贅沢な南国リゾートを満喫しているように見える俺だが、実のところ気持ちはあんまり晴れ渡ってない

 

「あーあ、このまま時間が止まればいいのに」

 

 正直、このままバカンス気分を満喫したまま日本に帰りたい。このままタヒチにでも寄って、お土産でも買って帰れれば最高だろう。

 超帰りたい。すごく帰りたい。

 でも仕事なんだよなぁ……。英気を養うって意味で、一日はバカンスしているけど、仕事なんだよなぁ……。大切な事じゃないけど二度言いました。

 

「お兄ちゃん、なにファウストみたいな事を言っているの?」

 

 ほっとくとブルーになりそうな俺の背後から、聞きなれた忌々しくもかわいらしい声が聞こえてくる。

 

「お、ミカ来たのか」

 

 やってきたのは我が残党ショッカーの実質的な暫定指揮官であり科学部トップのミカ・ウェスト博士。

 女の着替えは長いので先に荷物持って準備していたのだ。

 俺は振り向きもせず手だけを上げてひらひらと振るう。

 

「もう、こういう時はちゃんとこっちを見てよね」

 

 不満げだけど妙に楽しそうな声が聞こえてくる。

 島に着いた時は一日自由時間とか聞いて、水着持ってきていないとかぶうぶうと言っていたくせにさー。

 ところがどっこい、態々ミカ用に結構な数の水着が準備されていたのだよね。これだから金持ちはやることが派手だ。

 

「へいへい……って!?」

 

 怒らせても仕方が無いので立ち上がりながら振り向き……思わず固まる。

 

 いつもの金髪にツインテールは良いとして、身に着けていたのが白いビキニだったのだ。

 ミカは黙っていれば間違いなく美少女である。胸のサイズこそまな板オブまな板ではあるが、スタイルが悪いという訳ではない。

 日よけのパーカーの下から見えるスラリとした肢体は均整が取れており、幼いながらも健康的な美しさがある。そんな彼女があまり飾り気のない白ビキニを着ているのは、正直目のやり場に困る。

 別にこれ相手に何か邪な感情を感じるわけではないが、思わず顔をそむけてしまう。

 

「見とれた、お兄ちゃん?」

 

 人の反応を見て、ミカの奴がしてやったとばかりに満面の笑みでぴょんぴょんと俺の視界に入ってこようとする。

 素直に反応するのも悔しいので、そっぽを向いたまま嫌味を一つ。

 

「いや、あまりの平らさにな……」

「ほほう、ほんとうかなぁ?」

「これ、水着姿で引っ付くな!」

 

 うわー、普段ならムキになって言い返すのに、今日に限ってにやにや笑いながら引っ付いてきやがった。

 ミカがひっついてくるのはいつもの事だが、水着姿だと破壊力が違う。

 ボリュームが無いとはいえ、やっぱ少女特有の柔らかさとかきめ細かい肌の感触とかがダイレクトに伝わってじつにやばい。

 

「えーい、離れろ、離れろー!」

「きゃー!」

 

 引き離そうと振り回すが、さすがに怪我をさせたるような乱暴な引きはがしかたをする訳にもいかないので、軽くぶん回すだけだ。

そんなもんだからミカもますます強くしがみついてきて、楽しそうにますますひっついてクルクルと回っている。

 まったく、人の理性を削ろうとするんじゃないですよ! この中学生マッドサイエンティスト!

 

「楽しんでおられますか、お二人とも?」

 

 そんな俺たちに向かい、別荘からやってきた女性が声をかけてくる。

 一応俺たちは招待客という立場なので、おバカなじゃれあいを止めてそちらに振り向いて、俺とミカが固まる。

 

「あの……、二人とも?」

 

 やってきたのはテオドラ。こちらはデストロンの司令官代行である。

 表向きの顔は欧州の名門のお嬢様であり、この南国の小島も彼女の家の所有物である。ちなみに彼女の背後にはおつきのメイドが控えている。

 

 さて、そんなテオドラさんは普段は時代錯誤な白銀の鎧に身を包んでいる銀髪縦ロールのお嬢さんだが、今日は浜辺だけあって水着を着用している。

 その水着なのだけど……、ミカと同じ白ビキニなのだが……。なんというか、布面積がすごく小さいです。それとね、普段は鎧に押し込められているけど脱ぐとすごいんですよ、彼女。

 悪の組織も最近はセクハラに煩いんで具体的な数字は避けるが、ぼんきゅぼんなんですわ。

 まだ十代の若さと、ダイナマイトなエロスに同性のミカも思わず固まってしまったわけなんです。

 

「あの、似合いませんか?」

 

 いや、頬を赤めながら言わんでください。

 破壊力がすごすぎますよ、テオドラさん……。

 

 なんか張り付いているおこちゃまなミカのストンとは違うんです」

 

「誰がおこちゃまでストンよ!」

 

 あ、やべ、声出た?

 

「こら、殴るな、乗るな!」

 

 一瞬で人をよじ登り肩車状態になりやがって頭部にぽかぽかエルボーを叩きこむミカ。

 いや、ミカがいくら叩いてもダメージにはならないのだが、痛覚そのものは普通にある。痛いものは痛いのだ。

 

「ほっほっほ。アインロールド様は事実を指摘しただけですわよ」

「あんだってー!?」

 

 胸を揺らしながらうちの科学者を煽らんでください、テオドラさん。健康診断で胸囲だけは全く変わらんのですよ、この子。

 

 

 

 さて、このショッカーの指揮官とデストロンの司令官、後おまけのショッカーライダーの俺が雁首揃えて南国にいるかと言うと、当然だがバカンスを楽しむためではない。

 正直このままバカンスだけやって帰りたいところだが、今回赤道直下までやってきたのは無論仕事があっての事だ。

 

 およそ1年前に仮面ライダーの総攻撃を受けて再生ショッカーが滅んだのは以前にも言ったと思う。

 その時だがおよそ名だたる幹部が討ち取られ、幹部以外にも重要施設がいくつも破壊された。

 大規模怪人プラントや大型兵器のほとんどは修理不能なレベルで破壊され、現在も再建の目途が立っていない。

 

 ショッカー・アイランド・シップもそんなライダーにより破壊され、海の藻屑となった施設の一つだ。

 

 元々は島一つを改造した巨大船であり、兵器や怪人の製造プラントのみならず、完成すれば数十万人が生活できる能力もあるという現代の箱舟だったのだが、完成前にライダーに潰されて海の藻屑となったのだ。

 そんな超弩級施設がまだ原型を残して海底に沈んでいると、現場海域の調査を行っていた怪人から一報が入ったのがおよそ二カ月前の事だ。

 

 

 

 会議室の壇上に立ち報告書を読み上げるのは、紫の体色をした魚の特徴を色濃く残した怪人だ。

 名前はアマゾネア。かつて2号ライダーと戦ったアマゾニアという怪人の発展形怪人であり、俺の部下という事になる。

 

「えっ? 使えそうだって?」

 

 アマゾネアの報告を耳にしたミカが驚きの声を上げる。

 まぁ、これに関しては俺も同じだ。あの施設は最終的にプルトンロケットにより自爆をして海に沈んだと聞いていた。

 てっきり粉々になっており、残っていても残骸くらいだと思っていたのだ。

 

「はい、内部を調査した結果、自爆は偽装で原形をとどめる形で自沈した模様でした」

 

 アマゾネアが持ち帰った資料や水中カメラの映像を見る限り、確かに島の一部に大きな穴は開いているが原形はとどめている。

 流石に浸水はしているようだが、施設の通路などはしっかりと残っていた。

 

「どういう事だ?」

「はい、ショッカー・アイランド・シップは最終的に全環境対応要塞を目指しておりました。ライダーに奪取されるくらいなら、プルトンロケットの自爆を装い未完成の潜水モードを使用した物と思われます」

「無茶をする……。いや、これはその無茶を成功させた建造責任者の機転を褒め称えるべきだな」

 

 ショッカー・アイランド・シップはその巨大さゆえに複数のライダーに攻撃を受けたと聞いている。

 建造にあたっていた戦闘員や怪人もほぼ討ち死に。

 最終的に基地司令も仮面ライダーと一騎打ちとなり、敗北したらしい。

 

「再浮上はできそう?」

「エネルギープラントの修復が出来れば可能かと」

 

 その言葉に会議室内がにわかに騒めく。

 再生ショッカーでも大きなプロジェクトの一つだったから無理もない。

 

「ウェスト博士」

「何かしら、アインロールド?」

 

 俺の発言にミカが反応する。

 言わんとしている事はわかっているのだろうが、ここはパフォーマンスが必要な場面だ。

 

「ショッカー・アイランド・シップ計画の再開を具申いたします。かの箱舟は大首領の御心に寄り添った重要施設。また、本計画の責任者としてアマゾネアの強化改造をお願いしたく存じ上げます」

 

 俺の言葉に会議室がさらに大きく騒めく。

 無理もない。俺は元々、怪人や戦闘員の消耗を嫌って大規模作戦には消極的と思われていたし、現在のショッカーというか、うちの系列組織は怪人を積極的に製造できないレベルで部品供給が困窮している状態だ。

 そんな中、消極派の俺が積極的に動くべきだと進言したのだ。そりゃ騒めきも起ころうってもんだ。

 

「ア、アインロールド様?」

「貴様と、貴様の同僚たちの手柄だ、大いに誇れ。そして完成をもって建造にあたっていた仲間たちの無念を晴らすが良い。そのために必要なものは俺が用意しよう」

 

 なんでアマゾネアまで驚きの声を上げている。

 我、君の上司よ。探索を許可したのも俺よ。そりゃ一般人に迷惑はかけたくないが、あの施設は色々と重要な施設だ。まだ使えるなら再建しない理由は無い。

 

「アインロールド様……私のみならず仲間にまで……。必ず、必ずや、一命に変えても再建を成し遂げて見せましょう」

 

 いや、命大事にね。

 あの船は再建してほしいが、死なれるとそれはそれで困るからね。

 

「勝手に話を進めないでくれるかしら。とはいえ、アインロールドの言う通り、再建可能なら放置しておく理由は無いわね……」

 

 感動しているアマゾネアをしり目に、ミカも俺の具申に対しては乗り気であった。

 かくして、ショッカー・アイランド・シップの再建が決定された。

 

 

 とはいっても、ショッカー・アイランド・シップほどの巨大船を単独で建造できる様な人員は今のショッカーに無い。技術的な問題は何とかなるのだが、深海深くに沈んだ船に到達、修理を行える怪人の数が少ないのだ。

 そんなこんなでおよそ二カ月。デストロンなど系列組織も巻き込んでの一大作戦となり、この度ようやく船の再浮上が可能となったので俺たちが視察に行く事になったわけだ。

 日本からの長旅なもので、近くにあったテオドラの別荘で一日休んだのちに明日には船を視察する予定となっている。

 

 

 

 バカンスの翌日、俺たちの姿はヘリの中にあった。

 ミカはいつもの偽装大人姿でテオドラも白銀の甲冑。どっちも金髪の美しい少女なので、服装こそちゃんとしているが変身前はモブ顔の学生にすぎない俺だけは場違いに浮いている。

 変身してもいいのだが、暴走モードがあるから冷静な判断できなくなりそうで嫌なのだ。

 特に京都での一件以来、必要な場面以外ではなるべく変身しないようにしている。

 

「何もない島ですね」

「ずっと海底にあったのだから当たり前でしょう」

 

 海水浴の時は喧嘩をしてなかったのに、またなんかつんつんし始めたよ。頼むから人を挟んで喧嘩をしないで欲しい。

 というか、なんでこの中じゃ一番立場が下の俺が真ん中に座らされているのよ?

 

「アインロールド様、もうすぐSISに到着いたします」

「そうか、ご苦労だったな」

 

 ヘリのパイロットの声に反応したわけではないだろうが、下を見れば山の一部がゆっくりと開き、中からヘリポートが姿を出現させていた。

 ああいうギミックは男心をくすぐるものがあるなと、悪の秘密基地といえども少しワクワクする。

 

 やがて、ヘリはヘリポートに着陸し、俺たちは順番に降りていく。

 

 まず目についたのは、テオドラの感想ではないが草木など一本も生えていない岩肌だ。

 もっとも、本当に何もないわけではなく海水で腐食した樹木の残骸や、枯れた海藻、へばりついた貝やフジツボなどはところどころに散見しており、ここがつい最近まで海底にあった事をうかがい知る事が出来る。

 また、山の中腹だというのに染みついた匂いも濃い海のものだ。

 何というか実に寂しい光景であり、人を不安にさせる景色であった。

 

「ウェスト博士、テオドラ将軍、そしてアインロールド様。お待ちしておりました!」

 

 島の中腹、岩に偽装された扉が開くとその中から精悍な整った顔立ちの若者と、ショッカー戦闘員儀仗兵が姿を現す。

 ショッカー儀仗兵は良いとして……えっと、誰だこいつ?

 短く整えた黒髪に、アイドルでもやってそうな整った顔立ちの男だ。鍛え上げた長身に、海辺で暮らしている人間特有の焼けた肌……。身に纏うのは旧再生ショッカー海軍の礼服だ。

 当然関係者なのだろうが、ちょっと記憶にある顔ではない。

 

 もっとも、そんな俺の疑問はミカの言葉であっさりと解消する。

 

「出迎えご苦労、アマゾネア。とはいえ、今回は進捗の視察だからそこまでかしこまった対応は必要ないわ」

 

 こいつ、アマゾネアだったのかよ……。基本的に基地内では皆怪人体で過ごす者が多い。よほど親しい間柄でなければ人間時の顔など知らない事もざらだ。

 素顔を常日頃から晒しているのは科学班か大幹部程度のものだろう。

 さらに言えば、アマゾネアが再改造を受けていた時期は京都で単独任務に当たっていた物で、長い事こいつとは顔を合わせてなかった。

だからこいつの顔を知らなくても俺は悪くない。証明完了。

 

「申し訳ございません、ウェスト博士。ただ、このSISは我らショッカー海軍にとって悲願の船。この艦の再建を推し進めていただいた幹部のお歴々、そしてアインロールド様に対する感謝の気持ちを表したかったのです」

 

 はきはきと答えるアマゾネアの姿は、どっからどう見ても海軍士官の好青年だ。あの魚怪人の素顔がこんな美形の好青年ってもはや詐欺だろう。

 なんかほんと、モブオブモブオブモブフェイスの俺だけ見た目が場違いで泣けてくる。

 とはいえ、箔付けに大幹部連中のあのファッションセンスを真似しろと言われても嫌だけど。ショッカー壊滅前に大幹部から貰った妙な被り物なんて一度しか使っていない。

 

「俺は大した事などしていない。すべてはお前たちの熱意と献身の賜物だ。だが、その気持ちは受け取っておこう。それでは、建造の進捗状況を説明してもらえるかな?」

「ははっ。それでは、こちらに!」

 

 かくして俺たちはショッカー・アイランド・シップに足を踏み入れる事になる。

 だが、素直に視察だけして帰る事など出来ない事を、俺たちは知る由も無かった。

 




という訳で新章突入。
今回は悪の組織のお話なので、かなり短めになる予定(は未定)
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