ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第3話 episode・W 閑話・求めるS/探偵が出会う悪の仮面

 鳴海探偵事務所に所属する探偵、左翔太郎がどういう人間か。そう問われた時、様々な回答が寄せられるだろうが、好悪のどちらの感情を持つにせよ彼を「物静か」という人間はまずいないだろう。

 翔太郎は決して騒がしいタイプの人間ではないし、かつての憧れの人を真似て寡黙であろうとしている。しかしながら如何せん、喜怒哀楽がはっきりと出る性格に加え、生来のムードメーカー気質のせいかその寡黙な仕草は常に空回りをしていて、どこかコミカルで抜けた雰囲気を醸し出す。

 はっきりと言えば似合っていないのだ。

 そのためだろう。彼に好意を抱く人の多くは彼の事を永遠の半熟……ハーフボイルドと、本人としては甚だ不本意な評価をしていた。

 

 さて、長々とこのような説明を何故したかというと、そんなハーフボイルドな左翔太郎が険しい顔でデスクを見つめていると、周囲はどのように思うだろうか?

 

「翔太郎君、どうしたの? なんか変なもん食べた?」

 

 あまりにも長い時間微動だにしていないもので、すごく心配されていた。なんかスリッパでつんつん突っつかれたりもしていた。

 スリッパで突っつかれた茶色のくせっ毛を手櫛で直しながら、亜樹子に抗議の声を上げる。

 

「あのなぁ……」

 

 所長である鳴海……いや、照井亜樹子の容赦ないいじりに、流石の翔太朗も音を上げる。

 長身で整った顔立ちの男だ。どこかベストとスラックスをどこかクラシックとカジュアルさを併せ持った装束で固めている。黙って立っていれば、若さとその中に苦しみを乗り越えた男だけが見せる事のできる強さを感じさせるだろう。

 黙っていればの話だが……。

 

「こういう時はさ、なかなか渋い男だとか、背中で語れる男って感心するところじゃないか?」

「あー、よかった。いつもの翔太郎君だ」

「まて、どういう意味だ!」

 

 どういう意味もこういう意味も、そのままの意味だ。ハードボイルドな男は自分からこの仕草はカッコいいとかは言わない。基本的に残念な二枚目半なのだ。

 だが、それを言わない情けが亜樹子にも……

 

「こういうハードボイルド主張を口走っては滑るのが翔太郎君らしいって」

 

 情け容赦が無かったようだ。

 

 なかなかひどい指摘だが、自分でも口にした後で『こんな事を言うのはハードボイルドじゃない』という自覚があるものだから反論できずうぐぐぐと唸る事しかできなかった。

 とはいえ、亜樹子も別に翔太郎弄りがしたくて話しかけたわけではない。彼女も彼女なりに心配しているのだ。

 

「でも、真面目な話どっかしたの? 依頼人の話を聞いてから様子がおかしいけど」

 

 その指摘は事実だった。

 

「ま、ちっとな。今回のヤマはかなり厳しそうなんでな」

 

 

 

 その依頼人が鳴海探偵事務所を訪れたのはもう少しでお昼という時間帯だ。

 姉ヶ崎峰子と名乗る女性は古い言葉でトランジスターグラマーというのだろうか。小柄ながら出るところは出ている女性だ。軽くウェーブのかかった髪の下には、いかにも真面目そうな眼鏡がかかっている。

 彼女の表情は曇り、俯きがちだ。

 そんな峰子を心配させないように、言葉を選びながら翔太郎は依頼の内容を確認する。

 

「つまり、帰ってこない彼を探して欲しいと……」

「はい……」

 

 消え入りそうな声の女性に確認を取るのは心苦しい。しかし、彼もプロだ。確認を取らなければ仕事にならない。

 

「あんたの恋人、八伊木製薬に勤める茂木憲太さんが本社に泊りがけの出張に行くと言ってから、一切の連絡が取れなくなったと……」

 

 八伊木製薬は風都から電車で2時間ほど離れた場所にある永州市に本社を構える世界的な製薬会社だ。

 先進的な薬品の開発で名を知られており、一般販売されているヤーギブランドの薬品はドラッグストアでもよく見かける。

 

「はい。私は最初は気にしなかったんです……。でも、携帯がぜんぜんつながらなくて……。会社に問い合わせても社員のプライベートには答えられないの一点張りで……」

 

 この時点では会社はおかしなことは言ってはいない。コンプライアンスが問われる昨今、恋人とはいえ家族以外に従業員の情報を漏らすことは無い。精々、伝言を受け取るぐらいだ。

 

「出張前にどうしても会いたいって言われて……。その時、自分に何かあったら警察かここに相談に行けって……」

「ここに?」

 

 茂木憲太……翔太郎の記憶には無い名前だ。

 だが、翔太郎もそれなりに名の売れた探偵だ。どこかで自分の事を知ったとしてもおかしくはない。

 そんな思考をよそに、依頼人は語っているうちに興奮してきたのか、テーブルに身を乗り出して当時の状況を語る。

 

「その時、すごく怯えた様子だったんです! あの時止めておけば……どうしてあの時!」

「峰子さん、お、落ち着いてください」

 

 今にも翔太郎に掴みかからんばかりの勢いだった依頼人を亜樹子が慌てて羽交い絞めにする。

 それでも興奮が収まらないのか、亜樹子を振り回す。

 

「ちょちょっと! 私こんなの聞いてな……うわああああぁっ!」

「わ~た~し~が~! あの時止めていればぁ!」

 

 儚げな女性かなとおもったのだが、どうやらずいぶんとパワフルガールのようだ……と翔太郎はぼんやりと眺めた。

 峰子が落ち着いたのは、それからしばらくたってからだ。

 

「すいません、私興奮すると……」

「いや、お構いなく。興奮するクライアントは珍しくありませんから」

 

 所長を振り回す女性は珍しいが。そういう役回りは基本的に翔太郎だ。

 

「それで、話を戻します。茂木……憲太さんと一切の連絡が取れなくなったと」

「はい……。前から研究の詰めがあるって言っていたので、最初は仕事が忙しいのかなって気にしていなかったんです。でも出張前日にすごく怯えた様子で……」

「おびえた様子で?」

「ショッカーが来るって……。ショッカーって何って聞いても、答えてはくれませんでした」

 

 その言葉を聞いた瞬間、翔太郎の表情が強張ったのを亜樹子は見逃さなかった。

 

 

 

「ショッカーって聞いてからだよね。翔太郎君の様子がおかしくなったの。竜くんにも連絡を取っていたし……」

 

 椅子に深く腰を掛ける翔太郎に、亜樹子が依頼人の事を思い出しながら問いかける。

 ショッカー……。どこかで聞いたことがある気もするが、すぐには思いつかないふうに視線を逸らしながら、思考を巡らせる。場合によっては名前を知っているだけでも危険に巻き込まれかねない、そんな存在だ。

 鳴海探偵事務所の所長とはいえ、肉体的に一般人の亜樹子に伝えて良いものか……。

 

 だが、相棒の考えは違ったようだ。

 事務所の奥からにゅっと現れた男が口を開く。

 

「ショッカー……。世界支配をもくろむ秘密結社の名前だよ」

「フィリップ!」

 

 そこにいたのはどこか浮世離れをした姿の男だった。

 指穴付カットソーに袖なしのロングパーカー。首には地球を模したネックレスをかけている。

 これだけなら変わってはいるが普通の服装の範疇ではあるが、外に跳ねるハネっ毛を押さえる文具のクリップが彼の姿を奇抜なものに見せていた。

 

 彼の名はフィリップ。この鳴海探偵事務所の最後のメンバーの一人にして、左翔太郎の相棒だ。

 

「翔太郎。単独でショッカーがらみの依頼を受けるなら、亜樹ちゃんにも説明しておかなければならないと思うよ」

「……それもそうか」

 

 一瞬だけ言葉に詰まるが、フィリップの言葉は正論であった。

 知っているだけでも危険な名前ではあるが、立場上知らないままというのはもっと危険だ。

 

「なあ、本郷さんって覚えているか? 1年前ぐらいにここに来た……」

「えっと、お父さんの友達だったっておじさんの事? お父さんの友達にしてはだいぶ若かったと思うけど……」

 

 バイクに乗った一人の男が探偵事務所にやってきたのは今から1年ほど前だ。知性と力強さを兼ね備えた静かな男。それが彼の印象だった。少なくとも、目の前にいるハーフボイルドな探偵とは違う、父と同じハードボイルドな男だったと思う。

 そんな彼は翔太郎とフィリップになにやら頼み事があったらしく、翔太郎は彼と共に数日間出かけていた。

 

 

「っていうか、あん時は何度聞いても所長の私には何も説明しなかったわね」

「しかたねーだろう。説明するのも危険なんだから」

 

 なので有休扱いだったのはここだけの秘密だ。

 

「まあまあ……。あの時とは事情が違うからね」

「あの時って、何やってたのよ」

「本郷さんたちのフォローかな。ま、今回の件とは直接関係がないから後で話すわ。それよりショッカーの事だ」

 

 ショッカーは第二次世界大戦直後に結成された世界征服を目的とする秘密結社なのだ。

 一般のはるか先を行く科学力を持ち、人類社会の各所に根を張り、様々な犯罪、テロ行為に手を染めている。人と動物を融合させた改造人間などを作る技術も1970年代には既にあったという。

 そんなショッカーだが、前世紀に一度仮面ライダーの活躍により壊滅している。

 

 

「仮面ライダー?」

 

 二人の説明を聞いていた亜樹子が素っ頓狂な叫びをあげる。

 

「どうしたの、亜樹ちゃん?」

「いや、仮面ライダーって言ったよね、今。仮面ライダーって二人や竜ちゃんのことじゃ……」

 

 仮面ライダー……。この風都を守る戦士のこと。少なくとも亜樹子の認識ではそうだった。

 

「俺たち以外にも沢山いるぜ。流石に何人いるかまでは把握していないけどな……」

「むしろ、Wが彼らに似ていたから、仮面ライダーって呼ばれたんだよ」

 

 ライダーの活躍により壊滅したかに見えたショッカーだが、ゲルショッカーという名の組織に吸収される。

 そのゲルショッカーもライダーに敗れ壊滅、残存勢力が他の組織に吸収され……、そのような事を繰り返していたのだが、21世紀に入り再度ショッカーとして活動を開始する。

 だが、その復活ショッカーも1年ほど前、仮面ライダーの活躍により再度の壊滅をする事となる。

 

 

「壊滅したなら良いんじゃない? それに、今の話とお父さんの友達となんの関係が……?」

 

 亜樹子の当然の疑問に、翔太郎は厳しい顔で答える。

 

「おやっさんの友人……、本郷さんがその仮面ライダー、始まりの一号なんだ。そして壊滅したショッカーだが、いまだに残党が活動をしている」

「ええええっ!?」

「あの人が何十年も戦い続けて、いまだに完全に滅ぼすことのできない危険な秘密結社……、それがショッカーなんだ」

「ちょ、ちょっと。あの人幾つなのよ!? 今の話が本当なら70……、ううん、80近い年齢にならない!?」

 

 事務所に顔を出したのは穏やかな青年だ。

 少なくとも老人と呼べる年齢では無かった。

 

「正確な年齢は僕たちも知らないよ。ただ、見た目通りの年齢ではない事だけは確からしい」

 

 ガイアメモリなどといった不思議アイテムがあるのだ。歳を取らない人間というのがいてもおかしくはない。

 亜樹子も女性だ。若さを保てるのが羨ましいという感情はあるのだが翔太郎とフィリップ、二人の表情から茶化して良い内容ではないと考え何も言わない。

 変わりに出たのは確認の言葉だった。

 

「そんな危ない連中……ショッカーが関わっている依頼を受けるの?」

 

 回答は分かりきっている質問だ。とはいえ、所長としては確認をしなければならない。

 そして翔太郎の回答はこの場にいた誰もが想像した通りの回答であった。

 

「そりゃ、な。この街で泣いている奴がいるなら、その涙を拭ってやるのが俺の仕事だ」

 

 ハーフボイルドでどこか二枚目半な男ではあるが、こういう本心からすんなりと出る気取った言い回しは実によく似合っている。

 それはこの場に現れた男も同じようだった。

 

「左、お前ならそう言うだろうな」

 

 素直な賞賛なのだが、声をかけられた3人のうち二人が驚きの声を上げる。

 フィリップだけは気が付いていたので軽く片手で挨拶をしていたが。

 

「竜くん!?」

「照井、いつの間に!?」

 

 やってきたのは亜樹子の夫であり風都署の超常犯罪捜査課に勤める刑事だ。

 トレードマークとも言える赤いライダースーツ姿の精悍な若者は、勝手知ったるなんとやらと、話し込んでいたようなので勝手に入ってきたのだ。

 若干バツの悪そうな顔をしながらも、連絡を入れたのは自分だと翔太郎は話を進めることにした。

 

「まぁ、いい。詳しいことは依頼なんで言えないが、ちっとばかりショッカー絡みの調査をすることになった。場合によっては数日は永洲市に泊まり込みになるかもしれねえから、その間は街のことを頼もうと思ってな」

「永洲か……」

 

 その言葉に照井は考え込む。専門はガイアメモリ関連の犯罪だが、超常犯罪を取り扱う部署に所属するゆえにその手の情報は人よりかなり多く持っている。

 だが、彼が持つのは警察の情報だ。信頼する相手とはいえみだりに流して良いものではない。

 

「永洲に行くなら八伊木製薬に気をつけろ」

 

 しかし、この程度の情報なら様々な情報コネクションを持つ左翔太郎ならすぐ辿り着くだろうと考えなおす。

 

「あの会社は、ショッカーのフロント企業だ」

 

 照井の口から出た思わぬ会社名に一同は驚きの表情を浮かべた。

 

 

 

 風都においては情報通の翔太郎ではあるが、地元を離れれば一介の探偵でしかない。

 そんな彼が情報を集めるにはどうするか……。地道な聞き込みと足を使った調査だ。

 このあたりのノウハウは先代からきっちりと仕込まれている。

 

 調査対象が八伊木製薬の本社に入ったまま出てこない。

 そんな情報を入手した翔太郎は八伊木製薬の監視を行うことにする。

 幸いというのもなんだが、元よりその手のツールは事欠かなかったうえに、先輩や後輩との交流で使えそうな道具も増えてはいた。

 

 そして翔太郎に幸運だったのは、張り込んですぐに事態が動いた点だろう。

 あずかり知らぬところでどこぞの番外品が仮面ライダーの真似事をやった結果なのだが、流石にそのような事情までは翔太郎はわからない。

 

 

「動きなさったな……」

 

 黒服の男たちの中に、スーツ姿の若い男が一人。

 あれが行方不明の茂木だ。

 

 もう、この時点で半ば仕事は完了していると言えなくもない。茂木は何らかの事情で会社に缶詰めしており、連絡ができなかっただけ。

 後は本人と接触をして、恋人に連絡をするよう伝えれば良いだけだ。

 

 しかし……。

 

「どうも穏やかじゃねえな……」

 

 明らかにカタギとは思えない、ガタイの良い黒服の男たちの集団だ。

 まっとうな企業の従業員とは思えない。

 

「ショッカーのフロント企業か……。照井の言っていた通りだな」

 

 単なる探偵なら……引くべきだろう。

 だが、風都の涙をぬぐうと決めた男は、さらに一歩踏み込む。男たちの乗る黒塗りの車をバイクで追いかける。

 彼らが向かった先、それは郊外の廃工場であった。更には……。

 

「おいおい、銃だと……? ますますもって穏やかじゃねえな」

 

 男たちが手に持っているのは自動小銃だ。まともな企業の人間が持って良い代物ではない。

 それなりに離れた場所から見るだけでもかなり物騒ないでたちだ。

 近づくのは……、何とかならないこともないが、まずは盗聴をするべきだろうとフロッグポッド……カエル型のツールを工場に向かわせた。

 

 

『アインロールド……』

 

 盗聴器越しに聞こえてくるのは名前だろうか?

 unenrolled……未登録品とは、妙な名前だ。そんなことを考えていると、突如音声が乱れる。

 

「ちっ! ジャミングかよ!」

 

 こうなると、もはや近づくしかない。翔太郎は意を決すると廃工場に向かい歩みを進めた。

 

 

 

「ずいぶんと派手にやったな……。一号……本郷さんじゃねえな、あんたいったい何者だ?」

 

 

「だんまりかよ。まあいい、頼むぜフィリップ」

 

 

「変身!」

 

 

【CYCLONE】

【JOKER】

 

 

「か……、仮面ライダー……W」

 

 

「さあ、お前の罪を数えろ!」

 

 そして、少年の物語は動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あはははははははははははははははははは……

 

 始まった、ついに始まった。

 

 あははははははははははははははははははは

 

 お兄ちゃんが、お兄ちゃんがついに本物の仮面ライダーに出会った。

 

 あははははははははははははははははははは

 

 お兄ちゃんのお話がついに始まる。

 

 あははははははははははははははははははは

 

 裁きの時が、創世の時がついに始まる!

 

 あははははははははははははははははははは

 

 待っていてね、お兄ちゃん

 お兄ちゃんと私の世界を作ろうね……

 

 




重要なネタバレ:依頼人は風都の女

あと改造人間は若い姿をキープしております(独自設定)
戦闘シーンまで行けなかった……

ところで、よく考えたらこれ、ライダー全部復習しないとキャラエミュ出来なくない!?

  • お前の始めた物語だろう
  • (見なくても)何か、行ける気がする!
  • 無理はしなくて良いのよ
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