ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

31 / 102
第30話 episode・Destron 面倒事は起きて欲しくない時ほどよく起こる

 ショッカー・アイランド・シップ視察に旅立つ前日。

 俺の姿は当然だが通っている学校にあった。

 表向きの身分は高校生だ。平日は当然学校に通って授業を受けている。ミカの奴も今頃中学校で授業を受けているはずだ。

 

 前世も高校生活経験もあったと思うが、よく覚えていないのでなかなか新鮮だ。社畜と聞くと拒否反応も出るし、こんな感想を抱くあたり前世の俺は社会人だったんだろう。

 それはさておきホームルームも終え帰り支度をしていると、帰宅部仲間のクラスメイトが近づいてくる。

 

「これから皆でカラオケに行くんだけど一緒に行かないか? 山岸たちとさ、明日から休みだから行こうかって」

 

 クラスメイトからこの手の誘いを受ける事は割と多い。

 なんせこの身は改造人間。あまり燃費が良いとは言い難いのでこういう席では食べ物を割り勘で多めに頼んでしまうのだ。

 当然、シェア料理を頼むものだから一緒にいく連中もおこぼれにあずかるわけで、要は財布である。

 

 騒がしいのは嫌いじゃない。用事が無い限り普段なら快く付いていくのだが……。

 

「わり、今日は帰らなきゃならないんだ」

「えっ? またどうして?」

「明日からミカと一緒に海外なんだよ。親戚がね……」

 

 俺の言葉に、クラスメイトの顔が驚愕に歪む。

 一応、俺に金髪の義理の妹がいる事はなんか知らないが知れ渡っている。ミカが体育祭の時に突撃してきたからだが。

 

「お前、ミカちゃんとワイキキビーチで一足早いおバカンスでございますだと!?」

「勝手に妙な行間を読むな!」

 

 タヒチを経由するので半分ぐらい当たっているが、総合すればそんな楽しい話ではない。

 アホな絡み方をしてきたクラスメイトにリバーブローをかましてじゃれていると、教室に入ってきた人物がこちらに近づいてきた。

 近づいてきたのは……学級委員長の高槻か。

 眼鏡の真面目な学級委員長が何の用だ?

 

「カラオケ行くと聞いたんだけど、直行する気なら校則違反よ」

 

 咎めるような声に、俺と友人は思わず顔を背ける。

 確か制服のままそう言った施設に行くなって生徒手帳に書いてあったっけ?

 

「いや、ちゃんと帰ってから行くよ」

「俺は行かないからセーフだな」

「おい、裏切るなよ」

 

 二人で妙な芝居を打ちつつごまかす事にする。

 別にチクるような娘さんでも無いと思うのだが、学級委員長としては注意をしないといけないと思ったのか。

 

「まぁ、いいわ。それよりも先生に呼ばれていたわよ、ついて来て」

「えっ? 俺?」

 

 学生としての俺は家の都合で休みがちだが真面目な生徒の筈で、教師に呼び出されるような生徒ではないと思う。正体は悪の秘密結社の暫定幹部ですけど。

 あるいは、その休みがちな部分でなんか引っかかったか?

 仕方なしに友人に謝罪と別れを告げ、鞄を片手に高槻の後をついていく。

 

 だが、高槻は教師に呼ばれているという言葉とは裏腹に、職員室とは正反対。人気の無い方向に俺を誘導していく。

 俺が普通の男子学生なら、これはと何か期待を感じてしまうかもしれなシチュエーションだろう。

 

 が、悲しいかなこの状況を喜べるような人生を俺は歩んでいない。

 人気が完全に消えたのを確認し、おれは高槻に向かい話しかける。

 

「何のつもりだ?」

 

 自分の精神が一介の学生から、ショッカーの暫定幹部に切り替わっていくのを感じる。

 冷たい目を向ける俺に高槻は立ち止まると、振り向き芝居がかった慇懃な礼をしてみせた。

 

「申し訳ありません、アインロールド様。早急に接触を取る必要がありましたので、このようなご無礼な手段を取らせていただきました」

「外商か……。何の用だ」

 

 外商。それは俺と幾度となく接触している財団Xのエージェントのコードネームだ。

 本名は知らない。ただ時折、ビジネスとしてのみ付き合いのある相手。

 正直、こいつが日常に踏み込んできたのは相当不愉快ではあるのだが、殴り飛ばす相手が目の前にいない上に必要な接触というからには本当に用事があったのだろう。

 

 財団Xと他の組織の関係というのは、何とも一言で表現しにくい物がある。

 基本的には敵対関係のような、それでいて協力関係のような、かと思えば取引があったりとその場その場でコロコロと変わる。なんせ各セルごとに動きがまちまちで、同じセルでも担当者が変われば方針が全く変わるなんて事もあるぐらいだ。

 

 俺は苦虫をかみつぶした表情を隠すことなくこいつの話を聞き、そして盛大にため息をついた。

 まったく、面倒ばかり起こる。

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 

 実のところ、SIS計画は一大プロジェクトの為、進捗や要望は逐一受ける事にしている。

 今回の視察は現場の慰撫と、俺たちが実際に一度見てみたいという希望が大きい。

 

 ほんとそれだけで済めば良いんだけどね。

 

「やはり兵器製造区画は後回しにせざるを得ないか」

「はい、偽装とはいえプルトンロケットを自爆させましたので、完全に破壊されております」

 

 周囲には元が何であったかわからない残骸の山。上を見上げれば天井が完全に吹き飛んでおり、南国の青い空が見える。

 元は改造人間や兵器の製造プラントがあった区画だが、もはや完全に廃墟となっており見る影もない。

 東京を一発で消し飛ばせるプルトンロケットの自爆だ。これだけで済ませた関係者の命がけの献身には頭が下がる思いだ。ショッカーでなければ……などと少しでも考えてしまう自分が嫌になる。

 

「聞いてはいましたけれども、ここはもうどうにもなりませんね……」

「はい、強度の問題がありますので、現在は新たな兵器プラントの設置先とこの場所の再利用ができないかを検討中となります」

「それが良いわね。この船に求められる役割を考えると多少時間がかかっても手を抜ける話でも無いわ」

 

 その多少が何十年先と考えるとかなり頭が痛い話ではあるが、こればかりは仕方がない。

 島から新たな場所を選定し、地質を調査し、試掘をし、穴掘って、プラント建造して……。しかも大規模だからほんと長期計画だ。

 ショッカーの科学力をもってしても、どうにもならない問題というのも多いのだ。

 

「廃墟をいつまでも見ていても仕方あるまい。生活区画の進捗はどうだ?」

「そちらは順調に進んでおります。とはいえ、一年以上海の底にあったもので……」

「そちらも時間はかかるか」

 

 こっちも建物の建築に並行して消毒やら清掃やらとやる事が案外多くて時間がかかるらしい。非改造人間を入れて病気でも流行ったらそれこそ事が事だ。

 ほんと悪の秘密結社がこんな事を悩んでいるのだろうと思うが、現実の壁という問題の前には悪の秘密結社といえども割と無力なのだ。

 本当に泣ける。

 

「そっちの案内も頼む。確認しておくが奴隷等は……」

「ご命令通り使っていません。現代では非効率かつ高コストすぎて入れるメリットがありません」

「それならいい」

 

 実際にアマゾネアの言う通り、島の各所で作業を行っているのは工事用ドローンを操作している戦闘員たちだ。

 人間の手でやらせるよりドローンの方が低コストで作業が早いのだからわざわざ一般人を誘拐する意味が無かった。

 人手が必要となる重要な場所は、それこそ専門技師の出番で一般人はお呼びではない。

 

 ちなみに、実動部隊の長として俺は無駄な誘拐や殺人を禁じている。

 記憶消去で酔っぱらいの戯言で終わらせられる話を殺人事件に発展させてみたり、特に希少でもない民間人を誘拐して神隠し事件として騒動になるのは、警察ですら対怪人用装備を用意している現在においてはリスクの大きい行動だ。

 俺個人の精神安定的な意味もあるのだが、それ以上に妙な所から仮面ライダーに作戦をかぎつけられるのを避けるためという意味が強い。特に昨今はSNS等で情報が一気に拡散するので、静かに世界征服をしたい、あるいは人類を存続させたいショッカーとしてはかなり気を使っている。

 

 そう言った意味でショッカー海軍は実利主義者が多く、話が通じやすくて助かっていた。

 

 その後の視察も滞りなく進んだ。

 滞りなくと言っても最終的には数十万人が生活できるようにする予定の超巨大施設だけあって時間は相当かかる。

 最後の視察場所である指令室についたのは日が傾き始めてからだ。

 

 表に出れば夕日がきれいなのだろうが、そんな中異変が起きた。

 

 

「アマゾネア様!」

 

 責任者のアマゾネアに報告に来た戦闘員がこちらをちらりと見るが、俺は手でアマゾネアに報告を進めるようジェスチャーをする。

 そのしぐさに安心をしたのか、戦闘員が手元の報告書をよどみなく読み上げた。

 

「こちらに接近をする国籍不明の船舶が5隻ほど確認できました」

「地元の漁師ではないのか?」

「いえ、ドローンからの映像では武装した乗員がいるようで……」

 

 なかなか穏やかな話ではない。

 俺は難しい顔をしているアマズネアに尋ねる。

 

「良くあるのか?」

「いえ、初めてです。ここは一般的な航路から離れている上に、光学迷彩の展開をしておりましたので発見されたこと自体ありません。また、船の位置も定期的に移動させておりますので」

 

 どうしても接近してきた船のみ、対人ジャマーを使い進路を変えるよう誘導したそうだ。

 このまま指令室に向かう傍らアマゾネアの説明を受けるが、船の防衛設備が未完成な事もあり、防衛と防諜、そして隠匿には相当気を使っていた。

 

 しかし、そうなるとこれは……。

 あー、やっぱ来たか。当たってほしくなかったな。

 

「現状を報告せよ!」

「はっ! 現在光学迷彩を展開し、接近中の船舶に対人ジャマーを照射しておりますが、全船こちらへの航路を変えておりません」

 

 副官らしいクラゲの怪人の報告に、アマゾネアが険しい顔をする。

 分かってはいたが、明確な意思をもってこの船を目指しているという事だろう。

 指令室に詰めている者達が張り詰めているのも、浮上後初の実戦が近づいているのを感じているからだ。

 

「映像は出せるか?」

「はっ! こちらを」

 

 若干横紙破りになるが、指令室の面子に敵対船の様子が分からないかどうかを尋ねる。

 ミカとテオドラという要人二人を引き連れているのだから、素早く判断したいのでこればかりは勘弁してもらいたい。

 程なくしてドローンからの中継が指令室の大モニターに映し出される。

 

 一見すると観光クルーズ目的の旅客船にしか見えないが……。

 

「あんな旅客船はありませんわ。財団Xかしら……」

 

 テオドラが真っ先にあそこを疑うのも無理はない。

 5隻の船だが、材質がこっち側の連中が使う強化素材が使われている特注品だ。隠されてはいるが見る人が見れば武装があるのはバレバレだ。

 ついでに言うと……。

 

「黒影トルーパーにライオトルーパー……、デザグラライダーにミラーワールド系。うわ、ライドプレイヤーまでいる」

 

 画面を見ていたミカがうんざりした声を上げる。

 船の上には重火器で武装した所属不明の兵士に交じって、量産型ライダーが何人も混じっていた。

 こういった節操のない真似をするのは財団Xのお家芸だ。テオドラが彼らを連想するのは無理もない。

 だけど……。

 

「多分、財団Xではない」

 

 俺の発言に指令室の視線が俺に集中する。

 一人事情を察しただろうミカだけがすごく嫌そうな顔をした。まぁ、あいつ苦手だもんね、ミカ……。

 

「こちらに来る前に財団Xの外商と会ってな。この船に関与する予定は今現在ありませんと言われたよ」

 

 SIS浮上に関する情報が流れている、視察が狙われるかもしれないので注意してください。

 態々そんな事を伝えに現れたのだ。

 

「その外商とやらは信用出来て?」

「全く信用できないよ。ただ、安い嘘はつかないさ」

 

 テオドラの問いに肩をすくめて応える。

 財団Xを信じるほど馬鹿じゃないが、今までの取引をご破算にするほど短絡的な奴でもない。

 視界の隅でミカがうんざりとした顔をしているが、口を挟まないところを見ると同じ考えなのだろう。

 

「つまり、情報を流した奴がいると。狙いは私たちの誰かという事ですか……」

 

 外商の人間性は欠片も信じていないが、奴が持ってきたSIS浮上に関する情報拡散は本当であろう。  

 

 SISに関しては統合時代からの作戦なので知っている奴は知っている。かなり派手に系列組織に協力を要請したので、ショッカーが再建を進めている事は外部にも漏れていても不思議ではない。

 だが、再浮上させたのは最近の話で、外部に漏れるにしては早すぎる。

 

 系列組織の幹部クラスが、情報を流しているのだろう。しかも、情報をコントロールしてSIS襲撃と俺たちの視察を合わせてきた可能性が高い。

 でなけりゃ視察のタイミングで襲撃なんて来るはずがない。

 

「あいつらはどこかの国か組織の連中だろう。だが、組織の裏切り者か、あるいは別組織の刺客か。本命は別に来る。アマゾネア、お前ならあのネズミどもをどうする?」

 

 後から来るだろう本命の前に、あのネズミどもを始末しておくに越した事はない。

 自分から武器を持ってこっちの世界に来ている連中に手加減してやる必要も無いだろう。

 対応を尋ねると、俺の意を汲んだアマゾネアもニヤリと笑いながら返してくる。

 

「そうですね。せっかくのお客様なので乗船いただいた後、海水浴を楽しんでお帰りいただこうかと」

「出来るのか?」

「はい、航行機能は最優先で修復しております。再潜航も可能です」

 

 この島の防衛システムは現在未完成だ。とはいえ、島が一つ沈む際の海流の乱れはどれほどだろうか。

 しかも乗員は島に降り立った後を狙うという。中々えぐい事を考えるね、このイケメン。

 

「そうか。では、そのように。俺は少し出てくる」

「アインロールド?」

「沈めば駆除できるとはいえ、ネズミに船の中に入られるのも業腹なのでな。本命が来る前のウォーミングアップでもしておくさ」

 

 俺の肉体は全環境対応型、宇宙空間はもとより深海も対応している。船が沈もうと泳いで戻れるし、なんならサイクロンヘルを呼んで単独で太平洋横断としゃれこんでも良い。

 それに、何というか……。首筋の後ろがピリピり来ているんだよね。

 出ておいた方が良い、直感がそう告げているのだ。

 

「なら、私もご一緒いたしますわ。私も少し体を動かしたいので」

 

 テオドラもそう言うと、部屋から出て行こうとする俺を追ってくる。

 本音を言うと止めたいが、俺にテオドラを止める権限はない。

 

「ウェスト博士」

「はいはい、私は此処にいるわ。いざとなったら一人で帰るから、ちゃんと帰ってきなさいよ」

 

 セリフと裏腹に目つきが怖い。あれは絶対不機嫌だよな。

 でも、この船を破壊されるわけにはいかないんだから我慢してください。

 

 後でミカの機嫌を取ることを考え恐れ慄きながらも、俺は侵入者の迎撃に向かった。

 




地獄のバカンス編はもうちょっと続くのじゃ……。
もはやバカンスではない気もするけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。