ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第31話 episode・Destron 閑話・南国の企て

 地元民がよく利用する食堂の入り口をくぐった結城丈二は、顔を見て寄ってきた笑顔の店員と一言二言話すと、案内されるまま店の隅の席に向かう。

 さらには顔なじみの客も、結城の顔を見ると手を上げて軽く挨拶をしてくる。

 

 すっかり地元民と馴染んだ友人の仕草に、風見志郎は微笑を浮かべながら向かいの席に腰を掛けた。

 

「慣れたもんだな」

「何だかんだ、節目にはこちらに帰ってきているからな」

「そうか」

 

 自分たちのような根無し草の風来坊でも、帰りたいと思える場所があるという事は良い事だ。

 風見は戦友の言葉に優しい笑みを浮かべ、出てきた飲み物に口をつける。

 もっとも、旧交を温めるためにこの地に来たわけではない。風見は表情を引き締めると早々に本題を切り出した。

 

「俺を呼んだという事は相応の事があったのだと思うが、一体何があった?」

 

 大抵の厄介ごとは、結城一人で片が付く。そう断言できるだけの頭脳と力を持ち合わせた男だ。

 そんな結城が自分を呼んだという事は、それ相応の厄介ごとがこの南国の島で発生している事は容易に想像できる。

 

 風見の言葉に、結城は食堂のなじみに見せていた柔和な表情をひっこめると思案をしながら風見に事態の説明を始めた。

 

「風見、少し前に沈んだショッカーの移動要塞は覚えているか?」

「ボケるような歳じゃないぞ。もちろん覚えている」

 

 太平洋上にショッカーの移動要塞が発見されたのはおよそ1年と少し前の事だ。島を一つ丸々改造された移動要塞は複数の兵器製造プラントや改造人間製造プラントを内包した超兵器であった。

 移動要塞を発見したその仮面ライダーは移動要塞に突入、最終的に要塞の司令官を倒す事に成功する。

 要塞の司令官は最後の悪あがきにプルトンロケットを自爆させ要塞もろともライダーを葬り去ろうとするがライダーは脱出に成功、移動要塞は海の藻屑と消えた。

 そんな顛末だったと聞き及んでいる。

 

 出てきた料理に舌鼓を打ちつつも事件の顛末を思い出す風見は、自分が呼ばれた理由を察し驚きの声を上げる。

 

「まさか?」

「ああ、沈んだはずの移動要塞が再浮上した」

 

 きっかけは結城が懇意にしていた漁師だ。

 海の上で急に気分が悪くなったと相談を受けたのだ。調べてみたものの特に病気も無く、体調が悪かったのだろうとその時は流したのだが立て続けに同じ症状の者が続出する。

 これは何かおかしい。そう考えた矢先に漁師たちの症状はパタリと収まるが、今度は町の遊覧船の乗組員が同じ症状を訴え始めまた数日でパタリと収まった。

 

 実害という意味では軽微だ。だが、見過ごすにはあまりにも不可解な現象だったために調査に乗り出したのだが……。

 

「近くの海域を調べていたら、光学迷彩で隠されていたこいつを見つけたわけだ」

 

 ポケットから取り出したスマートフォンの画面に、先日撮影した画像を映し出す。

 そこには最近まで海底にあっただろう荒れた岩肌の上で、何かの作業を行っているショッカー戦闘員や怪人の姿が映っていた。

 

「よほど人を近づけたくなかったのだろう。対人音響兵器を近づく船舶に照射していたようだ」

「ショッカー……懲りずにまたそんな事を」

 

 海上で意識を失えば転落や遭難の危機がある。昭和の頃の無差別な殺人や奴隷狩りに比べれば丸くなったのかもしれないが、それでも十分危険な行為には変わりがない。

 幾度滅ぼされても世界征服の野望を諦めず悲劇を振りまくショッカーやその系列組織に対しての変わらぬ闘志を見せる風見を頼もしく思う反面、今回はそれだけではないからややこしい事態なのだと結城はため息をつく。

 

「それで、ショッカーだけなら話は簡単だったのだが」

「まだ何かあるのか?」

「これを見てくれ」

 

 そう言って結城が次に見せたのは、海を行く一隻の船の映像だ。

 海の色を見る限り、この周辺の海域なのだろう。

 

「普通の遊覧船に見えるが……」

「少し前から正体不明の船舶が数隻、移動要塞近くの海域をうろついているんだ。ちょっと、拡大するから見てくれ」

 

 そう言うと画像の一部、船を拡大する。

 スマートフォンの小さな画面でも拡大すればわかる事は多い。

 まず、まっとうな遊覧船ではない。巧妙に隠されてはいるが、武装と思しき装置があちこちに見える。材質もおそらくはマトモな代物ではないだろう。

 

 そんな船の上で、これまた怪しげなマスクに軍服姿の男たちが何やら観測機械と思しき装置を操作し、その傍らには彼ら以上に奇妙な姿の人物が一人立っていた。 

 

 そう、奇抜な格好だ。凹凸のある濃い茶色をした日本の鎧武者を連想させる鎧兜に、黄色いバイザーと銀のマスク。腰に締める銀色の何やら装置の付いたベルト。

 少なくとも、この者は南国のクルーズ観光を楽しむ出で立ちには見えない。

 

「これは……黒影トルーパー?」

「ご名答」

 

 ユグドラシル・コーポレーション、世界規模のテロリストの烙印を押され崩壊したその組織が使用していた量産型のアーマードライダー。それがこの黒影トルーパーだ。

 組織崩壊後も裏社会ではマツボックリロックシードが量産型戦極ドライバーと共に流通、あるいは組織崩壊後も何者かの手によって新造されており、ガイアメモリほどではないがよく見かける闇のアイテムの一つとなっている。

 

「これだけじゃないぞ。ライオトルーパーにデザイアグランプリ系のライダー。ミラーワールド系のライダー。更にはライドプレイヤーまで確認済みだ。武装していない人間も乗っているようなので、もしかすると他にも隠し玉があると思う」

 

 半ばやけくそともとれる結城の説明に、流石の風見といえども頭を抱えた。

 重火器で武装した兵士たちに、量産型ライダーシステムの集団。そのあまりにも節操のない武装集団の構成を聞いた時、風見の脳裏にある組織の名前が浮かび上がった。

 

「財団Xか?」

「一番可能性が高いのは、あいつらだろうな」

 

 超常的な兵力を有し、様々な組織、個人に援助を行う死の商人。

 その組織の全容や目的は謎に包まれているが、様々な闇の事件で彼らの影が見え隠れする。

 組織力、技術力は極めて大きく、様々な技術を蓄えていると推測される。実際、彼らが関わる事件に使われる技術は節操が無い。

 

 財団Xとショッカーが敵対関係にあるという話は聞いたことが無いが、自らの利益の為なら平然と裏切るのが財団Xだ。

 ショッカーの移動要塞に財団Xの欲する物があるのなら、躊躇う事なく攻め込むであろう。

 

「つまり、おそらくは財団Xと思われる団体と、ショッカーの移動要塞……その二つを相手どらなきゃいけないわけか」

「すまん、風見。本当はもう少し移動要塞を調査してから皆に声をかけるつもりだったのだけど、所属不明船の動きが活発化していて、おそらく移動要塞に接触するまでさほど時間が無い。連絡が付いたのはお前だけだった」

 

 仮面ライダー。特に昭和生まれの自分たちは一部例外を除き悪と戦うため、あるいは改造人間の秘密を狙う者達との戦いの為に風来坊の根無し草である事が多い。

 無論、居場所がはっきりとしている者もいるにはいるが、それとて多忙な彼らと連絡を取るのは難しかった。

 

「いつもの事さ。アイタペアペア、だったかな?」

「そう来たか……」

 

 風見の返しにさすがの結城も苦笑いを浮かべる。

 確かに、この程度のハードミッションはいつもの事であった。

 

 

 

 

「どうやら最後の搬入が終了したようですな」

「そのようですね」

 

 タヒチの高級ホテルのスイートルームで部下からの連絡を受け取った男は、飲みかけのワインのグラスを置き不敵に笑う。

 

 鍛え抜かれた巨体を持つスキンヘッドの彼は、独裁政権下にあると言われる某国の正規の軍人であった。

 彼が祖国を離れ遠くタヒチまでやってきたのは、ショッカーが建造中の移動要塞を手に入れるためだ。

 

 世界各国が極秘裏に凌ぎを削っている超常兵器の開発において、彼の祖国は後塵を拝していた。怪人など化け物の勢力が活発化しているこのご時世だ。超常の力こそが次世代の覇権を握るために必要な力だと考えた彼は、移動要塞の情報を得るや否や配下の特殊部隊を動かし、極秘裏にタヒチにて活動を開始した。

 島一つを丸々改造した超兵器プラント。あのショッカーが手掛けた超弩級要塞にはどれだけの叡智が蓄えられているだろうか。

 あの要塞を是が非でも手中に納めなければならない。

 そして、その功績を以て先見性のある自分こそが軍を掌握し、いずれは……。

 

 盛る野心に心を焼きながらも、彼は今回の最大の功労者に対する礼も忘れてはいない。

 

「貴方からの情報は実に有意義でしたよ」

 

 大佐は目の前で酒を酌み交わしていた男に対して語り掛けた。

 黒いスーツと同色のシャツ。クリーム色のネクタイで身を固めた壮年の男は大佐の言葉に口元を吊り上げて応える。

 

「それは何より。君に情報を流した甲斐があったものだ」

 

 以前より大佐が個人的に取引をしていた男だ。

 改造人間の派遣や兵器の供与などの見返りに、優秀な素体や実験場を提供してきた間柄だ。今の大佐の地位があるのも、この男の助力が大きかった。

 使う怪人から推測すると、デストロン系列だと思われる男だ。

 

 ここしばらくは連絡が無かった上に、今回情報と共に引き連れてきたのは量産型ライダーシステムやガイアメモリの使用者だ。

 戦力的にはともかく、組織内でも落ち目で内部に動かせる駒が無いのだろう。

 この移動要塞攻略の成果次第で、手の切り時なのかもしれない。

 

「さて、この辺でお開きにしましょう。明日は作戦なので」

 

 そんな考えをおくびにもださず、大佐は明日の作戦を理由にお開きを申し出る。

 男もそんな大佐に柔和な笑みを浮かべ送り出す。

 

「ええ、貴方の成功を祈っておりますよ」

「はははっ、朗報を待っていてください」

 

 そして、大佐の気配が。

 

「やれやれ、愚鈍な男を使うのも骨だな。すべてお膳立てしてやらねばならない……。ヨロイ元帥も、もう少し使い勝手のいい駒を残してくれればよかったものを」

 

 闇の力を使う傭兵、特殊船舶、ショッカーと戦えるだけの兵装。すべてこちらで手配した。

 表には出せないヨロイ元帥の隠し遺産を勝手に使ったのだから、手間だけでこちらの腹はさほど痛まないのが救いといえば救いだが面倒な事この上ない。

 復活したヨロイ元帥が目減りした隠し資産を見て何かを言うかもしれないが、それはどうでもいい話であった。

 

「まったく、邪魔者を消すのも手間がかかる。ああ、あの下らない遺産も使いつぶさないとな」

 

 男は自らの顔に手を当てると、音を立てて皮をはぎ取る。

 壮年の仮面の下から、冷たい氷のような目をした若者がその姿を現す。

 

 若者は席を立つとバルコニーのドアをくぐり夜の海を眺める。

 だが、彼の目はこの海を見つめてはいない。

 海のどこか、海底に潜む悪意の塊を見つめ、どこか芝居がかった仕草で悪意に語り掛ける。

 

「ヨロイ元帥、貴方の遺産は精々私の為に使わせてもらいますよ」

 

 ヨロイ一族の若き当主の声は、タヒチの夜に溶けて消えていった。

 もっとも、予想外の乱入者がすでに行動を起こしている事を、彼はまだ知らない。

 




 なお、若者の名前はジェネラル・ヨロイ
 流石にダサすぎるのでボツです
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