ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「部活に出ろ?」
帰り支度をしていた俺は、彼女からの言葉に首をかしげる。
俺に話しかけてきたのは学級委員長の高槻だ。
鞄の中に教科書を詰めた事を確認した俺は、彼女の言っている事を必死に考えるが思いつかない。
「部活って?」
結局、どういう意味か問い返すしかなかった。
俺は帰宅部だったはず。ショッカー活動……、もとい、家の事が忙しいので部活に入っていない。
何だって部活なんて話が出てきたんだと考えこむ俺に、呆れ顔の高槻はこう言った。
「呆れた。4月のオリエンテーションで、全員何処かに入部しなきゃいけないから入部しろって入部届を出したでしょう」
そうだっけ?
あああ、そういやなんか書いた記憶はある。別に重要事項でも何でもないからすっかり忘れてた。
「俺、どこの部活入ったっけ」
あ、盛大に呆れられている。
仕方ないだろう! ここしばらくWやヴァルバラドやオーズやローグやフォーゼやメテオやスーパー1やライダーマンやクソジジイの相手で忙しかったんだから!
なんかここ数カ月のライダー遭遇率バグっていない?
というか、良く生きているな、俺……。
「いや、ごめん。本当に覚えてないんだ。半分寝てたから」
「わかった、わかったから。オカルト研究会よ、私と同じ」
オカルト研究会?
委員長そんな部活入っていたんだ……。意外だ。
さて、前世世界と今世世界。違いは多々あるのだが、このオカルト部というのもかなり違う。
前世では趣味人の非公認サークルがほとんどだろうが、本当に怪異であふれているこの世界では似たようなサークルが学校公認でどこの学校にも一つはある。
大半はネット情報を探したり、新聞の切り抜きを集めたり、事件があったとされる場所をめぐるだけの部活であり活動内容はあまり前世世界と変わりはない。
だが、ここは本当に怪人がいたり、異世界からの侵略者だとか宇宙からの侵略者だとか、正体不明の怪物だとかがいる世界だ。
こっち側になってみると危ない部活だなと思うが、若者の好奇心は抑えられないのだろう。
俺もオカルト研究会だったらしいが。
「お、来たか。3組のイケメンくん」
誰がイケメンやねん。このまごう事なきモブフェイスのどこがイケメンだ。嫌味か、貴様。
高槻にオカ研の部室に連行されてきたのだが、そこでたむろしていた先輩の一人が軽い調子で話しかけてきた。
なんか小さい人だ。ミカほどじゃないが背は低いし全体のパーツも胸を除き小さい。が、何ともパワフルな印象を受ける。
ボブカットのかわいらしい女性ははきはきと話しを続ける。
「呼び出してごめんなさいね。でも、うちは幽霊部員もOKだけど、先生に部員の事を確認しとけって言われてね」
「え、えっと……」
「オリエンテーションであいさつしたと思うけど、部長の三屋よ。よろしくね」
「あ、すいません」
部長の人だったか。
奥を見ると他の生徒が何やら名簿に赤ペンでチェックを入れている。どうやら俺で最後らしいが、これを提出するのか‥…。
なるほど、学校の言いだしそうな事だと思っていると、部長が何やら手作りらしいパンフというかチラシを渡してくる。
「というわけで、週末に域里道の廃トンネル探索に行くから、イケメンくんも来なさいね」
域里道の廃トンネルってのは、このあたりじゃ有名なオカルトスポットだ。
夜な夜な怪物が出現して人を攫って洞窟の奥に連れて行き、連れていかれた人は帰ってこない。そんなありがちな都市伝説が存在する。
んで、ここからがショッカーライダーとしての知識なのだが、クライシスの連中がゆ゛る゛さ゛ん゛!!された場所なのだ。
簡易基地があったのだが、完膚なきまでに破壊されて今では残骸すら残っていない。
クライシスは滅んでいるので、もう単なる廃トンネルになっていた。
「俺、幽霊部員なんですけど」
いきなり連れてこられて、活動に参加しろってひどくない?
俺がため息交じりに抗議をするが、この小さくてパワフルな先輩は取り合ってくれなかった。
「用事があるなら無理にとは言わないけど、一度くらいいいじゃん。美男美女が映っているのといないのじゃ部報の売れ行きが違うのよ!」
「いや、用事は無いですけど……」
美男美女って誰だよ。先輩や高槻は美女でも良いと思うが、俺が美男は無い。
何の特徴も無いモブオブモブオブモブに何を言っているのだ。目ん玉おかしいんじゃない?
それはともかく、下から見上げてくる部長の期待に満ちたキラキラした視線が痛い。
よく見ると部員も妙に期待した目で見ている。
なんか名簿にチェックをしていた男子生徒だけが申し訳なさそうな目で無言でこっちに謝ってきているのがもっと辛い。きっと振り回されるポジションなんだろうな、あの人。
「わかりました、ちょっと家族と相談してきます。家庭の事情がありますので行けなくても恨まないでくださいよ」
結局、その圧力に負けて俺はこう答えるしかなかった。
んで、週末。
俺の姿は域里道にあった。
あの後帰ってスケジュールを確認したところ、ショッカーの仕事は丁度空白だった。
ミカの奴も週末は学校の友達と買い物に行くらしい。
夏が近いし、色々入用だとか言っていた。
当たり前だが改造人間といえども四六時中ショッカーの陰謀を企んでいるわけじゃない。オフ時間もきちんとある。取れるとは言っていないけど。
一人家で転がっていても良いのだが、あの期待に満ちた目を思い出すとゆっくり休める気がしない。
行くべきかどうかギリギリまで悩んだのだが、結局はオカ研の活動に参加する事にしたのだ。
「あー、着いた着いた」
一時間に一本しかないバスから先頭で降り立ったのは部長さんであった。
学生服ではなく夏用の長袖シャツに頑丈なズボンとシューズ。おしゃれと実用性を考えてのチョイスなのだろう。
彼女に続きぞろぞろと同じような格好の学生が6人ほどバスから降りてくる。高槻の姿も当然そこにあった。
さらに数人の集団が下りてくる。リュックやクーラーボックスを持っているところを見ると、奥にあるキャンプ場に行く客だろう。
天気は快晴。今日は絶好のキャンプ日和だ。
「こんちわーっす」
一方の俺はバスには乗っていない。
市販バイクに偽装したサイクロンヘルで先回りだ。
「イケメンくんてバイクになんて乗っていたんだ」
「すげーバイクだな……」
待っていた俺のバイクを見て部長が驚きの声を上げ、男の先輩たちは興味津々に俺のバイクを眺める。
いや、本当は俺もバスで来るつもりだったよ。
「すんません、家業の手伝いに急に呼ばれて」
ショッカーを家業と言うのは嫌だが、嘘は言っていない。
ちっとばかし人のシマで誘拐事件を起こそうとする異世界人のアホがいたので、追いかけて退治しておいたのだ。誘拐された連中も保護したが、なんか妙なアクスタみたいな物にされていたので技術部に預けておいた。
技術解析が終わったら元に戻して解放しておくよう言ってある。
おかしいな、これって仮面ライダーの仕事でショッカーライダーの仕事じゃねえだろう……。
「いや、無理しなくても良かったのに……、大丈夫?」
「問題ないですよ」
改造人間だから体力は有り余っている。
家に帰ってもする事ないし、休みの日にショッカー基地に行く趣味も無い。
四六時中基地にいる大幹部とか迷惑以外の何物でもなかった。昔は怪人たちとヒソヒソあの人いつ帰っているんだろうと語ったものだ。
はっきり言ってパワハラである。
山道入り口の有料スペースにバイクを預ける……ふりをする。
どうせこいつの事だから、勝手に抜け出してその辺ほっつき走るだろう。
妙な都市伝説が増えない事を祈るばかりだ。
駐車場もそこそこ埋まっていた。赤い四輪車などパワーのある車が多いのは、ここまでの道のりも山道だからだろう。
オカルトスポットの廃トンネル以外にも域里道には大きなキャンプ場がある。
週末を楽しむキャンプ客が来ているのだ。
実際、先輩方も大きなクーラーボックスを抱えている。
俺達も廃墟探索が終わったらキャンプの予定だ。
とりあえず俺はクーラーボックスを持てる限り預かる事にする。
「重くないの?」
左右と背中にクーラーボックスを抱えた俺を高槻が心配そうにのぞき込んでくる。
もっとも、この程度は俺にとっては何ともない。
「鍛えてますから」
軽く微笑み力こぶを作ってみせる。
「え、ほんと? あ、カチカチじゃん! 高槻も触ってみなよ」
そんな俺の二の腕を部長がぐにっとつまんでくる。
ちょ、先輩方こぞって人の腕をつまむのはやめてください。高槻も恐る恐るつまむんじゃありませんよ。
域里道へと続く渓谷に掛かる大きな橋を渡り、俺たちは登山道に入る。
多くの人がキャンプ場へと続く道に進む中、俺たちオカ研の面々は廃トンネルに向かう道を進む。
だいぶ雑草に浸食された道を進むと、トンネルが見えてくる。
「やっと着いた……」
「思ってたより小さい……」
大体へとへとになっている中、元気が余っているのは部長と俺ぐらいだ。
たいした荷物が無かったとはいえ、改造人間の体力についていける先輩ぱねぇな。
「おーし、一回ここで休憩しましょ。イケメンくん、そっちのクーラーボックスからスポドリ出して」
「わかりました。でもイケメンはやめてください」
モブフェイスの持ち主にイケメンは嫌がらせにしかならない。この妙なあだ名が固定されるのだけは勘弁してほしいものだ。
俺の抗議を笑って聞き流した先輩だったが、配られた冷えたスポーツドリンクを飲みながら部員に向かって指示を出す。
「んじゃ、一休みしたら中を探索、写真を撮るから。まずは表で集合写真かな?」
彼女の言葉に地面に座りスポドリを飲んでいた部員たちが頷く。
一方、俺は……このピリピリとした感覚に一瞬で意識が切り替わった。
「困るのよねぇ、ここの中に入られたらん」
何処からともなく聞こえてくる野太い声。
その声に部員たちの誰かが反応するよりも早く俺は行動を起こしていた。
「危ない!」
咄嗟に駆け出すと、部長を腕に抱えその場を飛びのく。
それと同時に、そこまで部長の居た場所を何かが通り過ぎる。
「あらっ?」
それが巨大な金棒だと気が付いた時、俺は金棒を振るった人物から距離を取り、部長をおろす。
生身の人間相手に……明らかに殺意のある相手の出現に、俺の精神は学生からショッカーライダーへと切り替わる。
「へ? え? あれ? 何が?」
何が起きたか理解できない部長を庇うよう、一歩前に出る。
そこにいたのは異形の怪人だ。身長は優に2mを超えるだろう。黒いボディにぶ厚い筋肉、人ではありえない面のような顔。そして額から生える二本の角と瞳の無い赤い目。
怪人は振り下ろした金棒に何の感触も無かった事に驚き金棒をしばらく不思議そうに見つめると、次に俺を見て笑った……ような気がした。
「あらぁ、ハンサムさんねぇ……。ぼうや、今のタイミングで女の子を助けるなんて、君すごいわねぇ」
うわ、ぞっとした。
なにこのおねえ言葉?
舐め回すような声に背筋が逆立ったぞ!?
いや、気持ち悪いが、気持ち悪いがそれどころではない。
地面に腰を掛けていた高槻をはじめとした部員の誰もがこの状況についていけていない。
俺が時間稼ぎをしないとまずい!
「お前、何者だ!?」
気持ち悪いのを耐えながら、俺は黒い鬼に問いかける。
俺の問いに黒鬼は地面に金棒を立てかけながらうーんと天を見上げながら答えを考える。
「ここの守護者ってところかしら。ちょっとここには入って欲しくないのよね」
「ここに何があるっていうんだ!?」
たいして興味は無いが、聞くだけ聞く。
とにかく部員たちが状況を飲み込み動けるようになるまで時間を稼ぐ必要があるのだ。
「教えて欲しいぃ? でもね、ひ、み、つ」
指を唇に当てながら応える。
牙がむき出しの顔でやられても怖いだけだ。
「か、怪物!?」
ようやく状況が飲み込めたのか、高槻が立ち上がりながら声を上げる。
その言葉が不服だったのか、黒鬼は腕を腰に当てさも怒っているかのようなポーズでこう返した。
「失礼ね! あたしには麗しのオードニーという立派な名前があるのよぉ! 麗しまでちゃんと名前だからね! 麗しのオードニー、はい、リピート!」
「嘘だ! お前の名前はカマタロスとかオニタロスとかいうんだろう!」
「なによ、そのセンスの無い名前! チンピラっぽい連中が名乗っていそうね、それ!」
思わずツッコんでしまったが、こいつ絶対にイマジンだ。こんなトンチキな奴イマジンに決まっている。
くそ、驚きのあまり腰を抜かしたのか高槻以外は立ち上がれそうにない。
身分を消して拠点を変更するのが面倒なので変身はしたくないが、もうやむを得ないのか‥…。
距離を保ちつつも、何ともいえない会話をしながら考えていると、状況はさらに動く。
森の奥より、不意に甲高い音を立てて不思議な幾何学的な模様が刻まれた動物を模した存在がカマタロス(命名)に向かい飛びついてくる。
「いやーん、何よこれ! 離れて、離れて!」
くねくねと身をよじりながら金棒を振り回すが、機敏に動くそれに当たらない。
あれは猛士の使うディスクアニマル!?
という事は、傍に仮面ライダーが?
俺の予想通り、茂み奥から誰かが駆け出してくる。
髪を茶色に染めた若い男だ。アウトドアを楽しむ人がよく着るような服を身に纏った彼は、鍛え上げられた身体をしている事が服の上からでもわかる。
森の中をかけてきたのだろう。若干呼吸は激しいが息が乱れた様子は無い。
「お前たち、大丈夫か?」
俺たちを助けに来たのだろう。
ディスクアニマルを使っていたという事は、間違いなくこいつは魔化魍という怪物を倒す組織、猛士に属する鬼……つまり仮面ライダーだ。
少なくとも、猛士の鬼であるのならば……人格面でも能力面でも信頼できる。
って、あれ? この人……。
「あんら、良い男が追加ね。うれしいわぁ」
纏わりついていたディスクアニマルをようやく引き離したカマタロスが新たな乱入者に歓喜の声を上げる。
そのねちっこい声に、流石の鬼の青年も若干引き気味な反応を示す。
「な、なんだこいつ?」
「あんら、嬉しいわ。私に興味を持ってくれるのね、私の名前は……」
「カマタロスって馬鹿者です」
思わずあの気持ち悪い名前でなく、俺が内心で命名をした名前を言ってしまった。
だって麗しのなんていわれても、気持ち悪いだけなんですもの。
「失礼ね! 私の名前はうるわ……」
俺の言葉に気持ち悪くぷんすか怒るカマタロスが妙にくねくねとしたポーズをしながら再度名乗ろうとするが、これまた名前は名乗れなかった。
だが、俺達が何かをしたわけじゃない。
状況がさらに動いたのだ。
「あ、あれ何?」
俺たちのやり取りを眺めていた高槻が訥々に空を指さす。
何事だ?
全員の視線が空に向く。そこには何かが空間をこじ開けようとして歪んでいた。
広がる空間、引かれていくレール。
そして出現する緑と黒をメインカラーとした猛牛を模した二本の角の生えた鉄道……ゼロライナーであった。
って、まて!?
その鉄道は音を立てて俺たちの前を通り過ぎると、そこには二人の人物が立っていた。
一人は僧侶を思わせる、黒頭巾の存在であった。
だが、僧侶どころか人ではない。黒い頭巾の下の顔は金色の金属質のマスクに、緑色の瞳の無い目。
その10本の指は銃口となっている。
俺の記憶が正しいのならあれもイマジン、未来からの来訪者。
そしてもう一人、こちらは人間の青年だ。
ごく普通のシャツにズボン。茶色く染めた髪。特筆するべき異形の特徴こそないが、精悍な顔立ちの青年だ。
手には何かベルトのバックルを持つ。
って、おい。
俺と、部長と、高槻と、部員たちと、ついでにカマタロスとやってきたイマジンの首が一斉にギギギと動く。
まず見たのはやってきた猛士の男。
一斉に視線が向けられたのが気持ち悪かったのか、鍛え上げられた鬼にも拘らず一歩下がってしまう。
再び俺たちの首がギギギギと一斉に動く。
視線を向けられたのは、ゼロライナーから降り立った男。
やはり視線の集中に耐えられなかったのか、なんか居心地が悪そうだ。
でも仕方がない。
なんせ鬼の男とゼロライナーから降り立った男の顔が瓜二つだったのだ。
この事態に、真っ先に声を上げたのはゼロライナーから降り立ったイマジン、デネブであった。
「な、なんだとぉ!? 侑斗が二人に分裂したぁ!?」
「違ああうっ!」
「誰だそれぇ!」
なんか失礼な事を言われた猛士の鬼、桐矢京介さんと、ゼロライナーの男、桜井侑斗さんが同じポーズで叫び声を上げた。
なんだ、何が起きているんだ、これ?
すいません、構成を練り直していたので時間がかかりましたが新章開始です。
実写で見てみたい組み合わせだけど、実際にやったら中村優一さんが大変だと思う……。