ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第40話 episode・Hibiki いったい何をしたっていうの!?(白目

「彼はこの時代の侑斗ではない、つまり侑斗の生き別れのご兄弟か何かなのか?」

「ご兄弟でもあんなにそっくりになるものかしらぁ?」

「確かに。侑斗が分裂したと考える方が自然」

 

 妙に仲良く会話を始めるカマタロスとデネブに桜井侑斗さんが切れ散らかす。

 あ、デネブが殴られた。

 

「何が自然だ! 人間にそんな機能は無い! それ以前に何を仲良く会話をしているんだ!」

 

 唐突に表れたそっくりさん二人に、一瞬とはいえ場の空気が弛緩する。

 まぁ、本当に同じ顔に見えるから仕方ない。前世知識なら演じた役者さんが一緒、今世で考えるなら他人の空似。

 いや纏っている雰囲気とか角度とか違うよ、きっと。

 

 とはいえ、そんな場合ではないと彼らもすぐ気が付く。

 

「魔化魍出現と聞いてやってきたが、まさかイマジンと会うとはな」

 

 先に落ち着きを取り戻したのは桐矢京介さんだ。

 流石にあそこまでウィットに富んだ軽快な会話をするカマタロスを魔化魍だとは思わなかったようだ。

 

 魔化魍……、大自然で唐突に発生する怪異。

 人食いの化け物であり、未だ謎の多い存在だ。

 

 というか、ここ魔化魍が出現してたのか……。唐突にやばい情報をぶっこむのはやめて欲しい。

 

「魔化魍が出現したところにイマジンが現れる。偶然の一致ではないだろう。話を聞かせてもらうぞ」

「あら、良い男の熱烈なラブコールは嬉しいんだけど、まだお話する訳にはいかないのよん」

 

 桐矢さんが発する闘志と使命感に、御茶らけていたカマタロスも襟を正して闘志を見せる。

 カマっぽい喋り方は変わらないけど、不気味さはその分増している。

 

 一方、ゼロライナーの二人組である桜井さんとデネブも雰囲気ががらりと変わる。

 傍から見ているとゾクっとする気配を滲ませ、カマタロスを睨みつける。

 

「そうだな。この地で起こる大破壊。あの怪物を守った黒いショッカーライダーと共にいたお前をここで逃がすわけにはいかない」

 

 ん? 何それ?

 この地で何らかの大破壊が起こるの?

 いや、それ以前に黒いショッカーライダーって俺だよな? 大破壊って何よ? そんな予定は無いぞ!

 

 困惑する俺をよそに、カマタロスは獰猛な笑みを浮かべ答える。

 

「あんら、あれを見ていたの。愛しのあの方の事も遠くから盗み見したのかしら?」

 

 愛しのあの方って誰よ、俺か?

 いや、RXか檀黎斗が血迷ってショッカーに入ってくれたのかもしれない。

 だって、俺こんなカマイマジン知りませんよ?

 そうだ、そうだ、そうに決まっている。

 未来の俺、何をしているの!?

 

「顔色真っ青だけど、大丈夫?」

「大丈夫、俺は大丈夫だから、ちょっと吐いていい?」

 

 どんどんやばい情報をぶっこまれ、困惑して動けない俺をよそに戦いの火ぶたは切って落とされる。

 動き出したのは桐矢さんだ。

 

 どこからともなく取り出した和風の意匠が施された金の音叉、変身音叉・音角を腕時計に軽く当てた。

 金属が震える澄んだ音があたり一帯に響き渡る。

 桐矢さんが音角を額に当てると同時に、その身から紫の炎が吹き上がる。

 

「きゃっ!? えっ!?」

 

 唐突な人間トーチに高槻が悲鳴を上げるが。あれは燃えているわけではない。

 鬼の炎が桐矢さんの身を清め、討魔の戦士に相応しい形へと変えているのだ。

 

「はっ!」

 

 その身が完全に切り替わった瞬間、そこには新たな戦士が出現していた。

 黒ともいえるほど濃い紫のボディ、赤い縁取り、全身を締め付けるベルト。

 

 そうか、この世界では彼はちゃんと受け継げたのか……

 

 彼の名は……

 

「響鬼……仮面ライダー響鬼」

 

 彼の名前を告げたのは、後からやってきた青年だった。

 彼も鍛えているのだろう。服の上からでも常人とは違う筋肉の付きようがうかがえる。

 

「えっ! うそ! 仮面ライダーなの!? でも、前に見たのと違う‥…」

 

 それ、俺です。あとショッカーライダーです……とは言えないので、高槻の発言は聞こえないふりをした。

 それよりも聞くべきは後からやってきた奴が何者かだ。

 

「あんたは?」

「俺は鼓屋ツトム。ヒビキさんの弟子だ。それよりも、腰を抜かしている連中を」

「あ、そうか!」

「ああ、俺も手伝う!」

 

 あまりの衝撃に固まっていたが、先輩方を助けなきゃいけない。

 俺と鼓屋さん、あとなんか慌ててこちらに駆けてきたデネブで手分けをして腰を抜かしている先輩方を立ち上がらせている間に、もう一人の男……桜井さんも動き出す。

 

 彼はその手に持っていたバックルを腰に当てると、ベルトのサイドポーチからカード、いや、パスを取り出すとバックルに差し込む。

 

「変身!」

 

 次の瞬間、彼の姿が変わる。

 黒と緑を基調としたボディースーツに、金色のレールが走る。

 その頭部を先ほどのゼロライナーとそっくりの小さな鉄道が走り、頭部に到達すると複眼とアンテナに変形する。

 

「はじめに言っておく。俺はかーなーり、強い!」

 

 彼の名は仮面ライダーゼロノス。時の運行を守る仮面ライダー。

 

「うそ! 仮面ライダーが二人も!? す、すごい!」

 

 ゼロノスの出現に状況を忘れて興奮しているのは部長だ。

 まぁ、オカ研なんてやっている人間にとって、正義の都市伝説仮面ライダーは一度は遭遇したいロマンなのだろう。

 大抵事件とセットなので、会っても良い事なんて無いのだが。

 

 同じ顔をした男が、まったく別の仮面ライダーに変身を遂げる。

 二人の強豪仮面ライダーの出現に、カマタロスは怖気るどころかニヤリと気持ち悪く笑う。

 

「あんら、頑張った甲斐があったわ。仮面ライダーが来てくれるなんて、オードニーう、れ、し、い♪」

 

 くねくねと動くその動きに、二人の仮面ライダーも流石に気味が悪いのかどう手出しをするべきかと動きを止める中、カマタロスが先手で動く。

 奴は手に持った金棒をどんと地面に突き立てると、宣言する。

 

「とはいえ、まだあの方はお見えになっていないのよねぇ。だぁかぁらぁ、あのお方が求める水準に達しているか、あたしが試してあげる。はっ!」

 

 気合一発、カマタロスが掛け声を上げると同時に、奴の姿が三つに分かれる。

 長剣を構える赤いカマタロス、弓に矢をつがえる青いカマタロス。そして金棒を抱えた黄色いカマタロス!?

 カマが増えた!?

 

「さて、仮面ライダーの力とやら試させてもらうわよ!」

 

 気持ち悪いおねえ口調とは裏腹に、赤いカマタロスの斬撃は早く鋭い。

 狙われた響鬼は二本一組の音撃棒・烈火で受け止めるものの、パワーに押され大きく飛びのく事となる。

 ってか、あのカマタロス、鬼とパワーで争えるのかよ!?

 

「くっ、なんて馬鹿力だ!……はっ!」

 

 とはいえ、弾き飛ばされた響鬼も並の仮面ライダーではない。

 後方に下がる動作と合わせ音撃棒・烈火の先端に火球を作り出すと、着地と同時にカマタロスに向かい解き放つ。

 剛力のカマタロスと言えども鬼との力比べは全力だったのだろう。剣を振り切った姿勢では迎撃で弾く事も出来ず、やはり後ろに飛んで火の玉を回避する。

 

 一人と一体の鬼が距離を取り、油断なく対峙する。 

 

 

「さて! あたしも行くわよ!」

 

 続いて動き出したのは黄色いカマタロス。

 その剛腕は巨大な金棒の重量もものともせず、まるで小枝かのような速度で振り回す。

 その暴風のような攻撃に、ゼロノスがゼロガッシャーのサーベルモードで受け止めようとするが、受け止めた剣ごと弾き飛ばされ体勢を崩す。

 

「脆いわね! もらったわ!」

 

 だが、それは早計だった。

 態勢を崩したかのように見えたゼロノスは自らの身体をブラインドにゼロガッシャーをボウガンモードに切り替えていた。

 

「誰が脆いだと! くらえ!」

「え、あれ? いやーん!」

 

 黄色いカマタロスのボディに火花が飛び散り、大きく弾き飛ばされる。

 それをチャンスと見たゼロノスが追撃を行おうとするが……。

 

「中々の頭脳派さんね。でも、させないわよん」

 

 一人突撃をしていなかった青いカマタロスが手に持った弓を放つ。

 解き放たれた光の矢は通常ではありえない曲線的な軌道を経てゼロノスのボディに突き刺さる。

 

「くっ!?」

「侑斗! させない!」

 

 俺の見立てではゼロノスのダメージはそう大きくない。だが、黄色いカマタロスが体勢を立て直してしまえばそうもいかないだろう。

 ゼロノスの危機に動いたのは先ほどまで先輩方を助け起こしていたデネブだ。

 

 彼は慌てて駆けだすと指の銃口を黄色いカマタロスに向けた。

 一斉に火を放つデネブの指に、黄色いカマタロスの周囲の地面がはじける。

 

「いやーん、こわーい」

 

 流石に当たると無事では済まないのだろう。黄色いカマタロスは黄色い悲鳴を上げながら金棒を盾に後退した。

 

 

 あのカマタロス、強い。

 分身能力も脅威だが、それ以上に戦巧者だ。

 気持ち悪いおねえ言葉と仕草に惑わされがちだが、まだ余力を持って二人の仮面ライダーをあしらっている。

 

 無論、響鬼とゼロノスが弱いわけではない。俺が今まで遭遇した仮面ライダーに勝るとも劣らない力と余力を見せている。

 問題は試すつもりのカマタロスと、倒すのではなく捕らえる気の二人のライダー。

 戦闘目的の相性問題だ。

 

 響鬼の目的はこの地に出現した魔化魍の討伐。ゼロノスの目的は未来で起こる大破壊の阻止。

 そのどちらに対しても重要な情報を持っていると思われるカマタロスをここで倒す気は無い。

 

 しかし、自然発生する魔化魍はともかく大破壊ってなんだ。

 認めたくないが、認めたくはないが、本当に認めたくはないが、黒いショッカーライダーとは俺の事だろう。

 大破壊を引き起こす、化け物を守る。気持ち悪くなってきたけど、命じられたならば俺はやる。

 

 桜井侑斗はその関係で俺がカマタロスに指示を与え過去に送り込んだ。そう考えたのだろう。

 

 ショッカーライダーという立場を考えれば十分あり得るし、やりかねない。

 問題は、この土地にそんな価値は無い事だ。少なくとも俺やミカならこんな不便で人がそれなりに出入りする場所に基地や研究施設を作ろうとは思わない。

 攻撃目標となるような物も、勿論無かった。

 

 俺が一人状況に悩んでいる間にも、二人のライダーとカマタロスの戦いは続く。

 何度となく打ち合い、どちらかが優勢になるものの、青いカマタロスやデネブのサポートで均衡を取り戻す。

 そんな戦いが続き、やがて3人のカマタロスが大きく後ろに下がったかと思うと、合体して黒いカマタロスへと戻る。

 

「あーん、やめやめ。これ以上やっても疲れるだけよん」

「観念したか?」

 

 油断なく武器を構える二人のライダーに、カマタロスがくねくねと動きかぶりを振るう。

 

「そうね、これ以上やってもあたしが不利。だぁかぁらぁ……」

 

 自らの不利を認める言葉と共に、カマタロスはその手に持った金棒を強く地面に打ち付ける、

 唐突な行動に二人のライダーは反応できない。

 周囲に巨大な振動が鳴り響き、砂埃が舞い散る。目隠しか、これは!

 

「そこの守護を諦めて逃げるわん。愛しのあの方が来てくれるまで、死ぬわけにはいかないのよぉ」

 

 だから愛しのはやめろぉ!

 マジで鳥肌が立つから!

 

 

 カマタロスが逃げてからが大変であった。

 まず響鬼が変身を解除したのだが、元に戻ると裸になるんだよね、鬼って。

 なもんだから、一回木陰に隠れて変身を解除してから服を着るわけだが、女子が多いオカ研。

 

 弟子の鼓屋さんが服を投げ込むものだから、何が起きているのか想像してキャーキャー騒いでいました。

 

 で、自分のそっくりさんがそんな状態なので、微妙に居心地の悪い桜井さん。

 一方のデネブは俺の知っているデネブであった。

 

「君たち、侑斗の事をよろしく。あ、これお近づきの印にどうぞ」

 

 と、大きな怪人がバスケット片手に、銃身の手でキャンディを配り始めるのだから、オカ研のメンバーも困惑するしかない。

 俺はこれが噂のデネブキャンディーかと、普通に食べた。

 

「手作りなんですか?」

「おお、君分かるか。このキャンディ、全部俺の手作りなんだ」

「お前は何を朗らかに会話をしているんだ! お前も、肝が据わりすぎだろうが!」

 

 荒れる桜井さんだが、流石に巻き込まれた一般人に手を出すような人ではない。あと人前だからかデネブへの制裁も無かった。

 ちなみに、この辺りにまだカマタロスがうろついている可能性もあって、彼らと一緒にいる。

 まぁ、妥当だろう。魔化魍もいるみたいだし、一般人がうろついて良い環境ではない。

 

「何を荒れている、お前?」

 

 着替え終わった桐矢さんが茂みから出てくる。

 自分と同じ姿をしている青年相手に、かなりつんけんとした対応だ。

 まぁ、無理もない。

 

「そんな場面じゃないからな。お前が響鬼か? 俺が知っている響鬼とは違うようだが……」

「それはおそらく先代の事だ。それより……」

 

 桜井さんの言葉に桐矢さんの顔が若干曇る。

 あの態度、恐らくは先代に何かあったのだろう。生きている相手の名前を継ぐって事はまず無いもんな。

 質問した桜井さんも地雷を踏んだと思ったのか、ばつの悪い顔をして謝罪の言葉を口にする。

 

「すまない、余計な事を聞いたようだ。俺の名は桜井侑斗。見ての通り、仮面ライダーだ」

「ああ、先代を知っていたようだが、俺は桐矢。見ての通り、鬼をやっている」

 

 こうして、二人のライダーの顔合わせが終わる。

 しかし、服装と髪型以外ほんと見分けがつかないな、この人ら。

 

 

 

 さて、ライダーたちの顔合わせは終わったが、それで終わりという訳ではない。

 まずは俺たちをどうするか。魔化魍やカマタロスがいる場所に放置しておけるわけがない。もっといえば、奥のキャンプ場やペンションもそのままという訳にはいかないだろう。

 そしてカマタロスが守っていた廃トンネルだって調査をしなければならない。

 

 どうやら桐矢さんが山にディスクアニマルを放って監視しているので、あちらで異変が起これば何とかはなるそうだ。

 

 ん~、サイクロンヘルもキャンプ場に待機させておくか。

 どうせ暇だろうし、ちょっと来い。

 

「さてと、後はあのトンネルだな」

 

 素人集団だけで動かすわけにはいかないし、一刻も早く調査はしたい。

 この難問に、ヒビキさんと桜井さんが出した答えは実に脳筋解決法だった。

 

「しかたない、後ろについてこい。デネブ、こいつらの守りは任せたぞ」

「任せろ、侑斗!」

 

 良いのか、それって。

 ショッカーライダーの俺が言うのもなんだが、激しく不安だ。

 ちなみに桐矢さんも何も言わないところを見ると、同じ考えのようだ。

 

「すげぇ、仮面ライダーと一緒に廃トンネル探索だなんて」

「生きててよかった……」

「あ、あの、後で握手を」

 

 先輩方だがのど元過ぎれば何とやら、仮面ライダーと行動を共にできる事に興奮している。

 まぁ、すごく気持ちはわかる。俺も何も知らなかったら大興奮だろう。

 

 正直、未来で黒いショッカーライダーが何かやらかしていると聞いて、別の意味でドキドキしていますが。

 

 そして、一行はトンネルの中に入る。

 懐中電灯の明かりを受けたそこには、何やら人影が!?

 

 咄嗟に動いたのは二人の仮面ライダーとデネブ、そして俺だ。

 素人の先輩方を守るよう、自然と体が動き彼らを庇える位置に動く。

 一歩遅れて鼓屋さんも守りの姿勢を取る。

 

 もっとも、彼が動いた段階では俺は警戒を解いていた。もとい、警戒する余裕が無くなっていた。

 そこにあったのは石で作られた彫像であった。

 やたらめっちゃ精巧に刻まれ、ピカピカに磨き上げられているそれは、腕を斜め上に上げるお決まりのポーズを取っていた。

 

「これは、仮面ライダー1号?」

 

 警戒を解くことなく石像を調べる桐矢さんだが、彼の言葉を俺の横にいた高槻が否定する。

 

「違います、これは仮面ライダー1号ではありません。よく見てください、仮面ライダー1号にある腕のラインがありません。更にヘルメットの形状もアイラインが少し鋭いなど違います。また、肩パットを装着しているなど明らかに装甲も過多でありこれは別のライダーです」

「お、おう」

 

 むっちゃ早口で言い切る高槻に、桐矢さんがドン引きする。

 というか、俺も引いた。というか委員長、冷静沈着な真面目さんだと思っていたが、こんな人だったのか……。

 

「ちなっちゃん、どのライダーかわかる?」

 

 部長の声に、高槻の眼鏡がきらりと光った気がした。

 いや、廃トンネルの闇の中なんだけど、なんだか知らないけど光って見えたのだ。

 

「武装等の隠しギミックがありませんから過去に出現したという偽ライダーでもありません。おそらくは既存のライダーではないでしょう。おそらくは、ベルトが若干細い所や肩の装備の形状から私が以前遭遇した謎の新ライダーかと思われます」

 

 早口でまくし立てる高槻に、今度は俺が戦慄する。

 ドーパントが出てきた時の事だろうが、本郷さんに擦り付ける気で仮面ライダーを名乗ったが、しっかり別個体と認識しているよ、この人。

 あんな暗い所で一瞬の邂逅だったのに、ちょっと怖いぞ!?

 

 半分高槻にドン引きしつつも、逃避できない現実がここにあった。

 ショッカーライダーとしての俺の姿があいつの守っていたトンネルにあった以上、未来でやらかしたショッカーライダーは俺で決まりである。

 ほんと何やったの、俺?

 

「あ、待ってください。この彫像、腕が動きますよ」

 

 彫像を調べていた高槻が俺の彫像の腕を触る。

 ガコン。

 大きな音を立てて、トンネルの壁が開きだす。

 このギミック自体は過去にクライシスの連中が作ったのだろうが、この先はカマタロスが隠したかったものだ。

 

 誰かの唾を飲み込む音がする。

 扉が完全に開く。天井に備えつけられていた照明が一斉に点灯して中を照らす。

 

「ひっ!?」

 

 隣にいた部長が軽く悲鳴を上げ、俺にしがみついてくる。

 他の部員も同様だ。隣にいた人間にしがみついたりしている。

 

 そりゃそうだろう。素人が見るには刺激的な光景だ。

 俺も驚きで目が点になっている。

 

「こ、これは魔化魍? 死んでいるのか?」

 

 桜井さんが奥の光景を見て呆然と声を出す。

 そう、そこには大小多数の魔化魍が巨大な杭により壁に磔になっていた。

 そして、どの魔化魍も死んだかのようにピクリとも動かない。

 

「いや、違う……、魔化魍は死体が残らない」

 

 呆然とそう答えたのは、対魔化魍の専門家である桐矢さんだ。

 そう、彼の言う通りだ。魔化魍の死体はありえない。奴らは死ねばその身は即座に大地に還り消滅する。

 どういう理屈かわからないが、この杭は魔化魍を仮死状態にして封じているのだろう。

 

 あまりの衝撃に誰もが言葉を失う中、さらには事件は加速する。

 

 トンネルの中まで聞こえる轟音。そして振動。

 

「きゃあああっ!」

「うわあっ!」

「くそっ!? 桐矢さん、桜井さん、先輩たちを頼みます!」

「お、おい、あんた!」

 

 先輩たちが悲鳴を上げる中、俺は機敏に駆け出しトンネルの外に駆け出す。鼓屋さんが俺を引き留めようとするが、彼にかまっている暇はない。

 何が起きたのか、まずは状況を確認しなければならない。

 

 そして表に出た俺の目に留まったのは、森の向こうに見える巨大な煙だった。

 

「あれは、橋の方か!?」

 

 直感的に、何者かがこの域里道に続く橋を落としたのだと悟る。

 

 域里道は渓谷と山林に囲まれた地形だ。

 ここに安全に入る道は入り口の橋しかない。森山を抜けるのは素人に難しく、険しい渓谷を徒歩で抜けるのも危険が伴う。

 

 つまりこの瞬間、この地は陸の孤島となったのだ。

 この地にいる人間を狙う存在の悪意は、すぐそこまで迫っていた。




ゆるさねえ、ゆるさねえぞ黒いショッカーライダー!
橋を落として人々を閉じ込めて、何を企んでいる!
正義の仮面ライダーが悪を倒すと信じて次回に続く。
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