ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第42話 episode・Hibiki 幕間・嘆く鬼

 どうする、どうする、どうする……

 

 なんで仮面ライダーが来るんだよ! 

 

 どうする、どうする、どうする、どうする……

 

 あの妙な奴のせいでこっちの手駒は少ないっていうのに! 栄養が足りなくて増やせないって言うのに!

 

 どうする、どうする、どうする、どうする、どうする……

 

 くそ、二人でどっかいけよ、何で一匹残るんだよ!

 

 どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする……

 

 このままじゃ人が来ちゃう! ここが閉鎖されちゃう! 餌が足りない! 調べられたら鬼が来る! 逃げきれない!

 

 どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする……

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 一夜明けペンション前は昨晩までと様相が一変していた。

 まず、夜が明けて1時間もしないうちに他のキャンプ客を迎えに行っていた桐矢がキャンプ客を連れて帰ってきた。

 鬼の脚力を活かし遠い第三キャンプ場から回り、第二キャンプ場まで下り一晩過ごしたらしい。説得も携帯が使えなくなっていた事や、落ちた橋の画像を見せる事でスムーズにいった。

 

 幸い、そちらには襲撃も無く、誰一人欠ける事なく第一キャンプ場に避難を完了した。

 

 次に、彼らの到着からしばらくして自衛隊の本隊がやってきた。

 昨晩到着した部隊は先行の偵察部隊であり、彼らから連絡が無かった事をもって極めて危険な事態と判断し、本命の部隊を派遣したようだ。

 

 第一キャンプ場はもともとドクターヘリの離着陸にも使えるよう整備されている。

 自衛隊のヘリと同時に、複数の武装した自衛官がこの地に到着した。

 

 

 そんな中、自衛隊のヘリの中より明らかに民間人とわかるアウトドアジャケット姿の男女が降り立つ。

 彼らは対魔化魍の迎撃組織である猛士の者たちだ。

 日本の地で古くから人知れず魔化魍の脅威と戦い続けてきた彼らは政府とも関係を持っていた。

 

 今回は鬼が魔化魍退治に向かった土地で起きた事件だ。

 半端者の鬼では対処できない更なる脅威が出現したと判断した猛士は、追加の人員を現地に送り込むべく政府に打診し、同乗してやってきたのだ。

 

 

 ヘリから降り立った者たちの、桐矢に対する態度は何処か余所余所しい。はっきりと言えば、腫物を触るような扱いだ。

 

 かつて、今では伝説となっている最後の響鬼に弟子入りして1年という最短記録で鬼の力に覚醒する事に成功した桐矢京介だが、彼の成長はそこで停滞した。

 期待外れの半端者。それが桐矢京介という男の当時の評価だ。

 それでも師匠である響鬼がいた頃はマシであった。

 

 だがある日、何の前触れもなく、響鬼が姿を消す。

 

 どれだけ厳しい修行を繰り返そうとも、殻を破れない。

 日に日に厳しくなる周囲の目。

 そんな中、響鬼を名乗り鼓屋ツトムを弟子としてしまった事が明るみとなる。すでに鬼であった為に弟子を取った事が問題視される事は無かったものの、襲名をしていない響鬼の名を勝手に名乗った事は周囲から反感を買った。

 

 いや、正確には違う。

 

 元々自信過剰で尊大な桐矢京介を内心で疎ましく思っていたものは少なくなかった。

 なまじ別の道に進んだもう一人の弟子が素直な努力家であり人当たりの良い性格であった為に、勝手な事をする桐矢京介に対する風当たりはより一層強くなった。もう一人の弟子が鬼を続けていた方が良かった、そう囁かれる事も少なくなかった。

 彼が猛士の中で孤立するには大した時間はかからなかった。

 

 その後紆余曲折があり、ある出会いを経て桐矢京介は響鬼を名乗っても良い力ある鬼となるのだが、未だ彼は正式に響鬼の襲名を許されていなかった。

 

 

 

 自分はいつも間違ってばかりだ。

 

 握りしめた拳の隙間から血をにじませながら、桐矢は自嘲する。

 

 無茶をしそうな少年に身を守る力を預けたら、このざまだ。

 彼は級友を助けるために果敢に魔化魍に挑み、夜の谷底に消えて行ったという。

 

 結果だけ言えば彼の犠牲で少々の怪我人が出ただけで済んだ。悪い話ではない。

 だが、そんな事をするために預けた訳では無いのに……。

 

 彼の死に呆然となり、日が開けても抜け殻同然となっている少女に声をかける事すら出来ず立ち尽くす桐矢だったが、状況が彼を自由にはしてくれなかった。

 背後からやってきた男が桐矢に向かい声をかけてくる。

 

「桐矢、ちょっと良いかな?」

「安達か?」

 

 そこにやってきたのは柔和な顔立ちの白衣を着た若い男であった。

 彼の名は安達明日夢、かつては桐矢と共に響鬼の弟子であった青年だ。

 本業は医者なのだが、猛士の関係者として怪我をした鬼の治療や魔化魍関連の事件に巻き込まれた人のケアも行っている。

 

 今回も大勢の人が魔化魍がうろつく土地に取り残されたという事も有り、志願して域里道にやってきたのだ。

 

「ああ、とりあえず報告だけ。君が見つけた魔化魍が磔になっていた隠し部屋にはトドロキさんたちのチームが向かっている。それと、桜井さんだっけ? 彼の言うゼロライナーを使って一気に退避させる事になったよ」

「そうか、すまない。手間をかける」

「いいよ、これくらい。大丈夫かい?」

 

 高校時代からの友人であり、猛士で孤立する京介を擁護していたのは明日夢だった。

 人を見る職業だからだろうか、明日夢は京介の微妙は変化を見抜き訪ねてきたのだろう。

 

「ヒビキさんには到底及ばないと実感しているところだよ」

 

 見抜かれてはいたが、それでも京介は強がって見せる。

 多少どころではない。自身の失策で未来ある若者の命が失われたのだ。

 力なく地面に転がっていた小石をけ飛ばすと、京介は天を仰ぎながらこの場にいない人に向けて弱音を口にする。

 

「ヒビキさんは、どんな覚悟で俺たちを守っていたんだろうな……」

 

 普段は飄々としていて、どこか抜けていた。でも、あの人は誰よりも優しく誰よりも強かった。人生で唯一の師を思い浮かべる。

 京介はいずこかへ消え去った師の事を思う。許されるなら、もう一度会いたいと思う。

 

 同じく、あの人にもう一度会いたいと願う明日夢は、この場にいないあの人の代わりに、きっと彼が京介に伝えるだろう言葉を口にした。

 

「わからないよ。ただ、鼓屋君だけでなく僕にとっても、今の響鬼はヒビキさんではなく君だ」

「そうか……、ありがとう、安達」

 

 他の誰が認めてくれなくとも、友と弟子が自分を響鬼と信じてくれるなら、これ以上嬉しい事は無い。

 

 

 

「はーい、皆さん、こちらですよー。はい、そこちゃんと並んで!」

 

 唐突に表れた鉄道に、黒ずきんの怪人。

 当初は恐怖におののいていたキャンプ客や警戒を解けない自衛隊であったが、怪人に協力する高校生の一団や、大量の飴ちゃんを甲斐甲斐しく配るデネブを見てはいつまでも緊張は続かない。

 

「こら、そこから先はプライベートスペースだから入るんじゃない。くそ、やはりやめておけばよかった……」

 

 当初、自衛隊は大型ヘリで子供や老人、怪我人を輸送し、自力で動ける大人は徒歩で退避させる予定であった。

 だが桜井からの提案で彼の所有するゼロライナーで一気にキャンプ客及び自衛隊員を出口まで輸送する案が提案された。

 本来なら上に掛け合い検討しなければならない事態なのだが、今回派遣されていた指揮官は柔軟な思考の持ち主であり通信封鎖があった事もあり、彼からの提案を喜んで採用した。

 

 自衛隊としても、魔化魍や謎のイマジンがうろつく土地で徒歩で移動する100人を超えるキャンプ客を守り切れる自信はない。

 大型の乗り物で一気に移動できるのならそれに越した事はないのだ。

 

「侑斗……」

「わかってる! ガキが命懸けで俺たちのミスの尻ぬぐいをしたんだ。ここで出来る事をしないという訳にはいかないだろう!」

 

 そう、あれは自分たちのミスだ。

 窓側からの侵入も事前の防衛計画では十分予測していた。そのために射撃能力に長けたデネブを内部に残し、侵入者を内部から外に叩き出し機動力に長けたゼロノスが迎撃に出ていたのだ。

 日が落ちバリケード等を築く時間が無かった、敵の数が予想以上に多かった事など言い訳にならない。

 

「彼は……」

「言うな。無駄な希望を持たせる事になる」

 

 魔化魍を道連れに崖下に落下した少年だが、彼の遺体は発見できなかった。

 夜が明けたタイミングで、デネブは単独で調査に向かった。実体化を解除できるイマジンである彼だからこそできる技だ。

 だが、落下地点と思しき場所に彼の姿は無く、魔化魍が爆散したと思しき痕が残るのみであった。

 

 考えられる可能性は二つ。

 

 一つは彼が何者かに助けられ生きている。

 もう一つは彼の体は別の魔化魍に貪り食われ一片も残っていない。

 

 希望的観測で生きている可能性を口にする事は容易い。

 だが、真実が後者だった場合の事を考えると二人はこの事を誰にも言い出せず彼の姿は発見できなかった事を伝えるのみに留まった。

 

「遅くなってすみません。私も手伝います」

 

 そんな会話をしていた二人の元に、オカ研の部長である三屋がやってきた。

 目は泣きはらしたのか真っ赤だが、顔に生気は戻っている。

 

「大丈夫なのか?」

「部員が手伝っているのに、私だけ泣いているわけにはいきません」

「そうか……」

 

 幽霊部員だった彼を呼び出しここに連れてきたのは自分だと自責の念で呆然としていた彼女だが、どうやら動くことに決めたようだ。

 後になってさらなる後悔やフラッシュバックがぶり返すだろうが、死んだように呆然としているより動いたほうが良いだろう。

 

「なら、ガキどもの御守りを頼む。妙な所に入り込まれてはたまらないからな」

「わかりました!」

 

 桜井の指示を聞きはきはきと動き出す部長を見て、二人は自然と笑みを浮かべる。

 後悔するのは後でも出来る。今は動く時だった。

 

 

 

 ゼロライナーへの搭乗はスムーズに行えたとは言い難い。

 当然だが自分を優先しろと騒ぐ奴はどこの世界にもいる。

 

「わ、私たちが後回しですって?」

「なんで、なんで!?」

 

 騒ぎ立てているのはペンションのオーナーだ。

 自分を先に乗せろと騒いでいるのだ。

 

 本来この地の責任者が見せる醜態に、誘導をしていた自衛隊や学生たちの目が冷たいものへと変わっていく。

 そんな空気の変化などお構いなしに、オーナー夫妻は騒ぎ続ける。

 

「で、でも、でもね、私たちが、私たちが乗らないと!」

「そうよ、そうよ!」

 

 もう言葉が支離滅裂だ。

 状況によるストレスにしてもあまりにもひどい。一回無理にでもこの場から引き離すべきか。

 自衛官が目くばせをして、彼らを引きはがそうとしたその時だ。

 ゼロライナーの出入り口から子供の相手をしていたオカ研の部長が顔を出す。

 

「あの、中に真白ちゃんと陽太君がいなんですけど」

 

 子供の相手をしていた彼女が顔を出したのは、オーナー夫妻の声がしたからだ。

 中にオーナーの子供たちがいない。大人、しかもこの地の責任者である二人が最後になるのは仕方が無いが、子供たちがいないのはいくらなんでもおかしい。

 

「あ、あの、その、真白はちょっと用が……」

 

 明らかに動揺する二人に、部長の違和感は限界に達する。

 特に強く意識したわけではない。自然と口が動き、彼女は二人に向かいこう問いかける。

 

「貴方たち、何者ですか?」

 

 それが切っ掛けであった。

 それはオーナー夫妻の姿をしたもののストレスの限界だったのかもしれない。

 あるいは、そう問われたらそう返さないといけない習性だったのかもしれない。

 真実は誰にもわからない。だが、この瞬間状況が一気に動く。

 

「あああああっ、もう限界!」

「だめ、だめだめだめだめ、でも美味しいご飯が逃げちゃう! 昨日から何も食べてないの!」

 

 唐突に、オーナー夫妻の身体が燃え上がったかと思うと、ぶよぶよの肉に覆われた二体の化け物にその姿を変える。

 開きっぱなしの口から腐臭のする粘液が零れ落ち、瞼の無い目がぎょろりと周囲を睨みつける。

 

 ある存在により改良を施されたそれが童子と姫。魔化魍を育てる役目をもつ化け物が姿を現す。

 

「うわああああああっ! 敵襲、敵襲!」

 

 自衛官が叫び声を上げる。

 手に持った自動小銃を構える。

 

 そして、それとほぼ同時に地面のあちこちが盛り上がり、地中から複数の魔化魍が姿を現す。

 周囲に怒号と悲鳴が響き渡る。

 

「荷物は捨てさせろ! 民間人の避難を優先するんだ!」

「くそっ! 撃て! 撃つんだ!」

 

 自衛官やG3を装着した警察官、さらには猛士から派遣された鬼が魔化魍に応戦する中、二体の童子と姫はゼロライナーへの侵入を試みる。

 だが、入ろうとした二体の化け物の顔面に、小柄な部長の背後から飛び出してきた二人の男の拳と蹴りがめり込む。

 

 生身の人間の一撃だったのにもかかわらず、童子と姫はあっさりと転がると表に転がり落ちる。

 

「ぎゃああああっ!」

「いたい、いたい、いたい!!」

 

 騒ぎ立てる二体の化け物を見ながら、片方の男が驚きと呆れ声を上げる。

 

「なんなんだ、こいつらは?」

 

 桐矢の知る童子と姫はこんなに弱い存在ではない。とりあえず追い出すつもりで放った攻撃で痛がる姿は、あまりにも彼が知っているそれとはかけ離れていた。

 一方の桜井はそこまで魔化魍の生態に詳しくはない。

 こいつらがどうであれ、やる事は決まっていた。

 

「まったく、オーナーがこんな化け物だったとはな。とはいえ、わかったのならやる事は決まっている」

 

 まったく、今回は大盤振る舞いだ。数に制限があるというのに……。

 腰にゼロノスベルトを装着しながら内心で毒づく。

 

「確かにな」

 

 一方の桐矢も変身音叉・音角を取り出すと、ゼロライナーの壁に軽く打ち付ける。

 魔を清める澄んだ音が周囲に響き渡り、桐矢の身を紫の音が焼き清める。

 

「変身!」

 

 桜井のゼロノスベルトにカードが装着される。

 電子音声と共に、黒いボディースーツと緑のアーマーが装着されていく。

 身体に走る金色のレールを小さなゼロライナーが走り、頭部で複眼へと変形を果たす。

 

「はああああっ、はぁ!」

 

 紫の炎の中で桐谷の身は鬼へと変わる。

 黒とも呼べる濃い紫の身体に、赤い縁取りの仮面と全身を締め付けるベルト。

 

 やがて、二人の男はその身を戦いの姿へと変える。

 

 仮面ライダー響鬼。魔化魍を退治する浄化の鬼。

 仮面ライダーゼロノス。時の運行の守護者。

 

 二人の仮面ライダーはゼロライナーから飛び降りると、尻もちをついていた童子と姫に向かい跳躍する。

 

「ひいいいいいいっ! 守れ、守るんだ!」

「いや、いやだ、いやあああああ!」

 

 童子と姫の悲鳴に、周囲にいた魔化魍が数体割り込んでくる。

 流石にこいつらを無視できないと、ゼロノスは足を止めて迎撃の姿勢を取る。

 

「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!」

 

 ゼロガッシャーをクロスボウモードに切り替え、包囲しようとする魔化魍に対して光の矢を連発する。

 次々に撃ち抜かれ火花を散らし跳ね飛ぶ魔化魍たちだが、童子と姫に対しての壁になり続ける事だけは徹底している。

 

「どういう事だ!?」

 

 魔化魍を音撃棒・烈火で殴り飛ばしながら、あまりにも性質の違う魔化魍たちに響鬼が疑問の声を上げる。

 そもそも、これだけの魔化魍はどこから来た?

 これではまるで……。

 

 思いつく現象は一つ。だが、その予兆があったなどという話は聞いたことがない。

 先代の響鬼が鎮めたオロチ現象が最後だったはず。

 

「ぼさっとしているな!」

「すまん!」

 

 響鬼の背後から襲って来ようとする魔化魍を、ゼロノスが撃ち抜く。

 確かに考えている場合ではない。まずはあの童子と姫を倒すべきだと気持ちを入れ替え前にいる魔化魍を殴り倒し消し飛ばす。

 

 魔化魍の壁がどんどん崩れていく様に、尻もちをつきながら後退を続けていた童子と姫の精神はもう限界であった。

 

「もう、だめ、だめだめなの!」

「もう、呼ぼう、あの子を呼ぼう! あの子なら勝てる!」

「そう、よぼう、私たちの真城を! あたしたちのウバを!」

 

 二体の化け物がそう言った瞬間だった。

 ペンションの手前の地面が大きく盛り上がる。

 

「な、何が!?」

 

 誰かが突然の変化に驚きの声を上げるが、その現象は変わらない。

 地面が粘土のようにぐにゃぐにゃと盛り上がると、徐々にその姿を変えていく。

 

 それは巨大な肉の塊であった。

 真っ白いぶよぶよした肉に、身体の表面には無数の半透明で巨大なイボが連なっている。

 目を凝らせば、そのイボの中には胎児のように丸まっている魔化魍の姿が見えていた。

 

「な、なんなんだ、こいつは!?」

 

 魔化魍なのだろう。それでもこれまでに知られていた魔化魍以上の悍ましい姿に、誰かが嫌悪の声を上げる。

 

「破滅の化け物! もう存在していたのか!」

 

 一方のゼロノスはその怪物を見上げ、吐き捨てるよう。

 

「知っているのか?」

「ああ、未来で黒いショッカーライダーが守っていた化け物が奴だ。奴の能力は、際限なく魔化魍を生み出し続ける事!」

 

 その声に反応したわけではないだろうが、巨大魔化魍のイボが一斉に弾け、どろりとした粘液と共に複数の魔化魍が産み落とされる。

 ゼロノスが語ったその能力。それはまるで、オロチ現象ではないか?

 

「そんな馬鹿な!?」

 

 あまりにも信じがたい能力に響鬼が絶句をするが、否定したところで怪物の能力が変わるわけではない。

 最初のイボがはじけ飛んだかと思うと、ぶよぶよとした肉の海から次なるイボが姿を表そうとしていた。

 

 阿鼻叫喚とはこの事だった。

 次々に生み出される魔化魍に、自衛隊やG3、鬼たちは劣勢に追い込まれる。

 まして民間人をゼロライナーに誘導しながらの防戦だ。いまだ死人が出ていない事が奇跡のような話だった。

 

 その過程で獅子奮迅の活躍を見せたのが、響鬼とゼロノスだ。

 互いに背中を守るように陣取りながら、魔化魍を次々と撃破していく。

 半端者、継げなかった者の活躍に誰もが目を見張る。

 

 だが、それとて限界はある。

 

 彼らの守りの薄いところを突破してきた魔化魍が、その狂刃を振るわんと腕を振り上げる。

 狙ったのは、呆然自失のままだった柔らかい肉の塊。

 

 高槻と呼ばれた少女。

 

 もし、救いの手がなければ彼女は切り裂かれ無残な肉塊となり果てただろう。

 だが、この世界には救いの手がある。

 

 

 救いの手は、爆音と共に疾風のようにやってくる。

 

 

 純白のマシンに跨った、黒き戦士は一直線に突き進むと、全身に赤き輝きを纏う。

 

「ヘルブレイク!」

 

 掛け声とともに、マシンと一体となった戦士は高槻を襲おうとしていた魔化魍に全身で突撃する。

 その衝撃の前に脅威であるはずの魔化魍の身は粉々に砕け散る。

 

 それだけではない。黒い戦士は勢いを一切殺す事無く走り続けると、ゼロライナーを包囲しようとしていた魔化魍に次々に襲い掛かる。

 その突撃にある魔化魍は弾き飛ばされ、ある魔化魍は砕け散る。

 

「黒い……仮面ライダー?」

 

 呆然としていた高槻がその姿に、記憶にある救い主の名前を口にする。

 

「早く避難しろ。後は俺が何とかしてやる」

 

 バイクから降り立った黒い戦士はそう言うと、少女に避難を促す。

 

「ちなっちゃん、早くこっちに! ありがとうございます!」

 

 ゼロライナーに逃げていく少女たちを振り返る事なく、黒い戦士は巨大な肉の魔化魍、ウバを睨みつける。

 今の突撃でだいぶ魔化魍の数を減らしたのに、新たな魔化魍がすでに生まれつつある。

 

「気を還元して新たな魔化魍を作り出すか……。なかなか厄介な能力だな」

 

 聞き及んだ奴の能力を確認し、黒い戦士はうんざりとした言葉を漏らす。

 

 一方、その戦士を見つけたゼロノスと響鬼が慌てて駆け寄る。

 ゼロノスは警戒を、響鬼は困惑を見せながら。

 

「黒いショッカーライダー! 現れたか!」

 

 武器を構え警戒するゼロノスに、黒い戦士は短い沈黙をする。

 彼が何を考えたのかは、当人以外誰にもわからないだろう。

 

 だが、次の瞬間、彼は意を決しその言葉を口にした。

 

「違うな」

「なにっ?」

 

 否定の言葉に警戒をするゼロノスに対し、肉の魔化魍ウバから目を逸らす事無く黒い戦士は名を名乗る。

 

「今の俺は……、仮面ライダーアインだ」

 

 




色々と台無しになるから入れなかった、きっとあったやり取り。

トドロキ「おい、京介。なんでさっきから人を無視しているっスか?(腕を掴む)」
侑斗  「誰だ、お前?(腕を振り払う)」
トドロキ「なっ!?」
侑斗  「人違いだ(立ち去ろうとする)」
トドロキ「おま、何を、って、うわあああっ!? 魔化魍!? いや、違う!?」
デネブ 「(唐突に出現)侑斗! 話しかけられてそういう態度は感心しないぞ!」
侑斗  「間違えられたのは俺の方だ!」


今回、あまりに人がいないため侑斗はゼロノスカードを大盤振る舞いしております。
客演時はあまり気にせず使ってますから、なんらかの補充手段があるのでしょう、たぶん。
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